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■ レリクスウォーカー~真紅の令嬢~

レリクスウォーカー
作者 [ 点睛集積(spellyon さま、和風 さま) ]
ジャンル [ アクションRPG ]
容量・圧縮形式 [ 228MB・ZIP ]
製作ツール [ RPGツクール2003 ]
言語 [ 日本語 ]
配布元 ダウンロード先

(補足)
2022.08.14:現在の最新バージョンは、1.02bです。

レリクスウォーカー レリクスウォーカー レリクスウォーカー レリクスウォーカー レリクスウォーカー レリクスウォーカー

レビュワーハマリ度グラフィック サウンド合計総合判定
ES 9 /10 8 /10 8 /10 53/60 B
赤松弥太郎 8 /10 10/10 9 /10

 《 ES 》  ハマリ度:9 グラフィック:8 サウンド:8

この冒険で「全て」を見つけ出せ! まずは基本操作から。

今回のイチオシ作品「レリクスウォーカー」は、「開発19年!」が見出しに謳われるほど「力」と「念」がこもった作品です。
その作り込みの細やかさは、冗談抜きで「本作の全て」に現れています。ストーリー、マップ、パズル、操作性…ありとあらゆる箇所が「どうやってこれをRPGツクール2003で!?」と思うほどに作りこまれています。
その作り込みは「楽しさ」に繋がるものですが、同時に「難しさ」にも繋がっています。ストーリー、マップ、パズル、操作性…ありとあらゆる箇所が「どうやったらクリアできるんだよ!!」と思うほどに難しいのです。

本作の初めの難所は「操作性」です。「操作コンフィグを自分に合わせる」だけで、冗談抜きで小一時間は掛かります。それというのも、本作はツクール2003特有の多彩な操作ボタン(標準のZ, X, シフトに加え、テンキーの+-*/、キーボード上部の数字キー(0~9))をフルに使用し、それでギリギリ埋められるほどに多彩なアクションを実装しています。
投げナイフ、ブーメラン、火炎瓶、爆弾…従来のアクションRPGでは「サブウェポン」に分類され、装備欄で切り替えるコマンドでさえ、各々を独自でボタンに設定する必要があるのです。
とは言っても、サブウェポンの中で独自にボタンを設定すべきは、ギミック解除用としては重要で、敵への攻撃としては使いづらい「爆弾」ぐらいです。それ以外の飛び道具は、「リンクアクション」に入れて「1回押しで単発発射、連続押しでウェポンキャンセル(速攻連続発射)」と設定した方が便利です。そして、この「リンクアクション」こそが、本作の操作コンフィグを更に複雑に、それでいて「楽しく」している要因でもあります。
本作には、同じアクションを3回以上繰り返すと一定確率で発生するペナルティ「クラムジリィクローズ」があります。「クラムジリィクローズ発生から1.5秒間、移動以外のアクションができなくなる」という非常に重いペナルティです。一瞬の油断で致命的なダメージを喰らうアクションRPGにおいて、乱戦時の「1.5秒の隙」は意外なほど重たくなります。
それ故に、「クラムジリィクローズを起こさない攻撃アクション」「ノックバックする敵相手に連続で当てられるアクション」をリンクアクションで模索する必要があるのです。遺跡の中には「一定以上のコンボ数を稼ぐと開く扉」も存在するため、コンボ数を稼ぎやすいリンクアクションを探し出すのは、あらゆる面で攻略の助けとなります。
個人的には「1ボタン1アクションに設定して格闘ゲーム的な操作でコンボさせる」というのはおススメできません。私自身が「格闘ゲームのように複数のボタンを決められた回数叩く」ことが苦手というのも理由ですが、仕様面で「数多ある攻撃を1つずつ各ボタンに割り振るようにできていない」のが最大の理由です。
「攻撃以外のアクション(ジャンプ・ダッシュ・メニューなど)にもボタンを割り振る必要がある」本作の仕様に加え、「正面の1~4ボタンはZ, X, シフトキーに割り当てられており、設定変更も不可能。JoyKeyなどの特殊なソフトでジョイスティック連携を切らない限り、JoyToKeyで割り振り直すこともできない(JoyToKeyの設定と本体のジョイスティック操作が混ざっておかしな動きをする)」というツクール2003(2000も同様)の仕様も関わってきます。「スクリプトで改造できない時代のツクールの仕様」という、作者側ではどうしようもない原因だけに、満足のいく設定をするためには、外部ツールという更に複雑な手順に手を出さざるを得ません。

散々苦労して「一応の操作ができる」段階になっても、いや、「レリクスウォーカー」の本番は、操作を覚えてストーリー進行に入ってから始まります。「真紅の令嬢」と我々プレイヤーの前に立ちふさがる数々のダンジョンです。
本作のダンジョンは、マップ構成、その中に仕掛けられたパズル共にかなりの高難易度に仕上がっています。どれだけの高難易度かというと、最も複雑と言われ、最も文句が来たと思われる「ディープブルー」「スカイハイ」の攻略が、ゲーム内にFAQとして同梱されているほどです。ただし、FAQではサポートされていない「詰まる箇所」も多数存在しています。2番目のダンジョン「アンダーグラウンド」からして、FAQにある「レナ洞窟南口からの抜け方」に加え、「レッドカード・グリーンカードの使い分け」「レナ洞窟南口から入れるようになる『爆弾』の隠し場所が意外と深い」「そもそも『アンダーグラウンドの入り口』イベントに向かうまでのレナ洞窟北口ルートからして長丁場」「爆弾の存在に気付かないと、何度も長い北口ルートを使わざるを得ない」と、数多くの難所が存在します。
ゲーム内にMAPが実装されていない点が、本作の難しさの最大要因まであります。それほどに、本作のマップはダンジョン・フィールド共に複雑です。ダンジョンのまさに「迷路」と言うべき複雑さは言わずもがな。フィールドでさえその道筋は複雑です。「壁か穴のない端っこは全て通行可能」という仕様になっているため、思いもしない箇所が別マップに繋がり、道に迷う原因となります。意外な所に壁があり、「大体の方角さえ分かれば目的地に到着できる」が通じず、地図を覚えづらい人は何度も同じ箇所で迷うことになります。
まぁ、本作にマップが追加できない理由も、本作の作り込みと広大さを見れば納得せざるを得ません。マップ用のピクチャー素材を作るだけで、冗談抜きで容量が倍加する、それほどに本作のマップは広大なのです。

ちなみに、本作の戦闘難易度は、「シンクロスフィア」という独自のレベルアップシステムさえ把握しておけば、それほど難しくはありません。「シンクロスフィア」の成長に使う「スフィアポイント」は、敵を倒すごとにガンガン集まっていきます。「一定時間だけ獲得スフィアポイントを増やす」アイテム「ブレスストーン」や「単体で使うとスフィアポイントをもらえる」素材「シトロン」もあるため、少し戦えばかなりのスフィアポイントが溜まっています。
特に序盤では「6つのスフィア全てに属性を設定する」「それまでに溜まっているポイントで、各スフィアのレベルを伸ばす」だけで、かなりの戦力アップとなります。最初のチュートリアルでは「最初のスフィアは全て無属性で、シンクロ効果が一切ない状態」というのが分かりづらくなっています。マニュアルに同梱されている「ステータスシミュレータ」を活用し、好みに合った属性を設定しておきましょう。
序盤のうちは「相反する属性(火⇔水、風⇔土)さえ隣り合わせなければ大丈夫」ぐらいにしておきましょう。また、序盤に手に入るアクセサリ「タイガーマフラー」が火属性強化なので、序盤は火・風で固めて「先に叩く」組み合わせが有効です。アンダーグラウンドに着く辺りになると、防御力に回すスフィアも重要になってくるため、相反する土・水のスフィアをどう配置するか考える必要も出てきます。
また、「属性の変更」にも、若干ながらスフィアポイントを使用する点も忘れずに。レベル上げで使いつくして属性変更に回す分がなくなることもあり得ます。
戦闘は「その場振り向きができない」「穴の開いた狭い場所でも当然のように敵が出る」など、ダメージを避けられません。しかし、回復アイテムも頻繁にドロップするため、ある程度ならゴリ押しも可能です。むしろ、アイテムのストック数は各9個「しか」なく、まとめて複数回使うにも制限があるため、手に入れたそばから使いまくるプレイスタイルが推奨されています。

「基本的な説明」だけで紙面を使いつくしてしまいましたが、本作「レリクスウォーカー」はそれだけ「難しい所」が多く、その分だけ「工夫しがいのある箇所」も多く存在する、「工夫が楽しい」ゲームです。
皆様も、ぜひ、本作で「工夫する楽しさ」を味わってください。一部、どうしても「あまりにも複雑すぎてメモすら難しい」箇所もありますが、より分かりやすい攻略動画が第三者によって公開されています。ストーリー的なネタバレは無いため、こちらも参考にしながら、「真紅の令嬢」の生きざま、貴方の目でご覧ください。

 《 赤松弥太郎 》  ハマリ度:8 グラフィック:10 サウンド:9

嵐のような時代も 端から見りゃただのクロニクル

 2003年、あなたは何をしていましたか?
 まだ生まれてすらいないという読者も、いらっしゃるかもしれません。
 本作の製作開始は、それくらい昔の話です。

 ボクは当時からフリーゲームをプレイしていたので、なんとなくその時代の空気を知っているのですが。
 仮に本作が2003年にリリースされていたら、まさに神としか言いようが無かったと思います。
 おそらくは2008年頃であっても、傑作の評価は揺らがなかったでしょう。
 あの頃夢見た最高のアクションRPGが、まさにここにあります。

 それが、今の時代から見てどの程度通用するのか、というのが気になる点ですが。
 正直言って、「あの頃はこれが普通だったけど、20年近く経った今見ると、これはちょっと問題だよな」と思うところは、多々あります。
 解像度は、まったく問題だと思いません。ツールの古さも、まあいいでしょう。
 それよりも、この20年で一番大きい変化は、プレイアビリティの進化だったんだな、と実感せずにはおれません。

操作可能になった直後  本作最大の難点は、最初のとっつきの悪さでしょう。
 今時のゲームであれば大抵は、オープニングで主人公の動機が示されたり、動線に従って動けば自ずと目的がわかったり、メニューを開けばミッションが表示されてたりするじゃないですか。
 本作は、最初にまず何をすればいいのかわからないんですよ。
 オープニングでは、世界観の説明や、当面接点の無い人物の過去シーンに尺を使っているのに、肝腎の主人公の目的については、何も触れません。
 汽車から降りてどこへ行けばいいのか、目印になるものは何もなく、道案内もありません。ついでにセーブの仕方もわかりません。
 なのに街から出ようとしても、「もう少し街で情報を集めなきゃ……」と押し戻されてしまいます。だから何の?

 酒場のマスターに話せば話が先に進むとか、セーブポイントは女神像とか、初見プレイヤーが一目見ただけでわかると考えるのは無理があります。
 街の人をローラーするしか無いんですよね、結局。
 「かくれんぼしてるんだ! お約束とか言うんじゃないぞ!!」などと、メタい上に面白くも無いことを言われても、めげずに話しかけ続けるのが基本です。

LinkStyle1設定  そして、やっと街の外に出られて、いよいよ剣が振れる、というタイミングで立ちはだかる問題が、さらにプレイヤーをふるいに掛けてきます。
 デフォルトのキー設定が、早々に詰むレベルで扱いづらいのです。
 なんですか[Shift]で剣振りって。固定キー機能を暴発させたいんですか。
 街中と違い、[X]を2回押さないとメニューが開けないのも、なかなかの初見殺しです。いざ回復しようと思った時にメニューが開けない、なんてことになりかねません。

 本作の豊富な技能を使い尽くすためにも、キーカスタマイズは必須です。
 Readmeには作者のキー設定が書いてあるので、それを参考に……なぜこれをデフォルトにしないのか。
 キーボード操作でも、基本的な考え方は変わりません。1~4のどれかにジャンプとLinkStyle1を設定、5~0に投擲武器を適当にセットしましょう。
 LinkStyle1を連打しつつ、投擲武器を混ぜ込んでいけば、中盤以降、お手軽にどんどんコンボが繋がる快感が味わえるはずです。

 [X]二度押しも、慣れれば暴発防止として納得できるし、キーカスタマイズ前提の調整だって、プレイヤー自身に理解してもらうという意味では悪くはありません。
 ただただ説明が足りてないのです。

問題の道しるべ  LinkStyleやキー設定の説明は、チャートリアルにあたるグリーンビルの遺跡で説明されていることではあります。
 しかしこの遺跡、チュートリアルなのに、たどり着くまでが初見殺しとは、どういうことですか。
 寄り道が必要なのは、まあ理解できますよ。西にあるって酒場のマスターも言ってましたし、道しるべもあります。
 でも、この道しるべを見たって、まさか川を泳がなきゃたどり着けないなんて、最初は思わないじゃありませんか。
 遺跡の中には、チュートリアルと思しき「思い切って飛び込んだら泳げたりしないかな」なんて台詞があったりして、なんだかとてもチグハグです。

 この、動線の弱さというか、「不親切」と「手応え」を取り違えたような設計は、特に序盤、プレイヤーを苦しめます。
 次の次、マリアンヌ平原のボス戦は、なんの誘導もない、ただの行き止まりで突然始まります。事前のセーブポイントもありません。
 不意討ちというシチュエーションを表現したいのは、理解できますよ?
 しかし、第2ステージにして既に、だだっ広い上に入り組んだ構造になってるこの平原の、なんでもない行き止まりに、誘導もなしにいつ辿り着くのかは、プレイヤーの運次第としか言えません。
 だいたいは、消耗しきった状態でエリアに入ってしまい、まだ戦いに慣れていないプレイヤーは大苦戦必至です。ゲームオーバーすら見えます。
 「確実に主人公を始末したい」という彼らの動機から考えても、わざわざ行き止まりに辿り着くまで誘導もせず、追い込むこともせず、ただ指をくわえて眺めてるって、明らかにおかしいじゃありませんか。

ディープブルー  クリアしてから振り返っても、本作の最難関ダンジョンは序盤のディープブルーだったと思います。
 なぜ、一面水場で素早く移動できないダンジョンと、マップを完全に把握することを要求する謎解きを組み合わせてしまったのでしょうか。
 マッピングしようと行き来するだけでストレスが溜まりますし、深い水辺では攻撃が一切できない仕様のせいで、一切反撃できずダメージがかさむのもストレスです。
 投げ出す前にぜひ、ReadmeのTIPSに書いてあるマップを有効活用してください。
 2003年当時であれば、公式の攻略掲示板でAAを駆使して伝えていたことが、YouTubeの動画になったところに、隔世の感がありますね。

 でも、ボクが一番詰まったポイントは、実はそうしたダンジョンではありません。
 中盤、ダンジョン攻略のために、ある人物の助力を得るイベントがあります。
 なんとこのイベント、その人物に直接話しかけても進行しません。ほとんど無反応です。
 なにせ本作、ミッション確認ができず、ヒントも台詞の中にちょっとしかないので、もしかして読み間違えたかと思い、他の街も全部回りましたが空振り。
 正解は、近くの宿屋のカウンターに話しかけ、「泊まる」「泊まらない」の選択肢の下、「話をする」を選ぶことで進行します。これはわからん。
 「話をする」という選択肢はこの宿屋にしか存在しない上、これ以外のイベントでは、宿屋では「話しかける」を選ばなくても自動的に進行するものだから、選択肢の存在自体に気付かない人も多いんじゃないでしょうか。
 作者からするとたいしたことない、そんな些細なところでつまづくのが、プレイヤーってものなんですよ。

 総じて、細かい引っかかりが多い、ちょっとの改善で印象が良くなりそうな点も散見される作品です。
 このせいで、面白くなる前に投げてしまった人も多いのではないかと思うと、とてももったいない。
 本作が面白くなってくるのは中盤以降、プレイ時間が10時間を超えたあたりからなんです。

 何が変わるかというと、まずコンボが劇的に爽快になります。
 操作に慣れ、サブウェポンの種類も増え、MAX APも増えたことで、LinkStyleキーを叩きながら、サブウェポンをばらまくだけでコンボが増えるループが回り始めます。
 火炎瓶やブーメランを、複数の敵にまとめてヒットさせれば、20コンボ、30コンボとつながります。敵がドロップするAPも増えて、継戦力はさらに増します。
 APが簡単に尽き、射程の狭い剣をダメージ覚悟で振り続けるしかない序盤と比べると、まったく違うゲームです。

 時期を同じくして、ストーリーも、キャラクターも本格的に動き始めます。
 序盤から名前だけ出ていたものの、なかなか接点がなかったロレンですが、いざ動き始めるとアリエルよりずっと主人公らしいムーブをしてくれるので、安定感があります。
 オープニングで主人公を差し置いて、過去をクローズアップされるだけのことはあります。
 レオンも、レシールも、第一印象はかーなりアレな人達ですが、ストーリーを回し始めると大活躍で、ちゃんとカッコイイところを見せてくれます。
 ネームドキャラ1人1人が、それぞれの役割をきちんと果たしていて、とても見応えがあります。
 今までのキャラクターの丁寧な積み重ねがあるからこそ、急転直下の終盤を迎えても、気持ちが置き去りになることはなく、期待を持って進められるのです。

シンクロスフィア画面  なので、みなさんにも中盤までプレイしてもらいたいのですが……そこに辿り着くまでが、ちょっとした苦労ですからね。
 まずは、本作特有の成長システム、シンクロスフィアを使いこなすところから始めましょう。
 自由度が高そうに見えて、ちょっと尻込みしてしまうかも知れませんが、もちろん成長しなければ強敵には勝てません。

 ただし一方で、適当にやってもなんとかなる、というほど自由度は高くないんですよ。属性編成による当たり外れがかなり激しいです。
 しかも、属性変更にもコストが掛かるから、試行錯誤しづらいんだよなあ……
 そこを緩和するべく、ReadMeにもシミュレータがあったり、色々と作者のオススメが書いてあったりします。

 ・なるべく多くのスフィアをシンクロさせる( = 隣に相反属性を置かない)のが基本
 ・防御力(≒水属性)が重要
 ・魔法力(≒土属性)は重視しなくていい

 ということで、つまりだいたい水と風をシンクロさせろと言ってるようなものですね。
 ボクもだいたい同意です。
 頑張れば3属性まで混ぜても全シンクロは可能ですが、あまり有効な組み合わせは見つかりませんでした。素直に2属性までに絞った方が良いでしょう。

ステータス画面
ハマリ度 : 8 / 10
 中盤以降の骨太なストーリー、コンボによる戦闘の爽快感こそが、本作最大の牽引力。スロースターターなのが惜しまれる。
 ストーリーでの難点を挙げるとすれば、(名目上の)ラストダンジョン出現のくだり、特にそこからの脱出方法は、伏線がほとんど見えず、ご都合主義としか思えなかった。とはいえ、おおよその風呂敷は既にたたみ終わり、物語を着地させる局面に入っているので、そこまで気にならないかも知れない。
グラフィック : 10 / 10
 キャラドット、特にアリエルのモーションは、動かしてまったく違和感がない。描き下ろしのネームドキャラのドットは、REFMAPを初めとしたマップ素材にもよく馴染んでいる。
 個人的にはステータス画面、アリエルの全身画が好き。もと一国の王女とは思えない、どこか垢抜けない雰囲気は、なんだかんだ言って根は純朴な人なんだろうな、という親近感が湧く。
 他のキャラの全身絵も、ReadMeで見ることができる。ゼロ年代への郷愁を誘う塗りがとても良い。
サウンド : 9 / 10
 hatibaito氏の書き下ろし楽曲は、意図的に「ざらつき」のようなものを残している感じがある。そこが遅れてやって来た作品という、本作のブランディングにはとてもマッチしている。
 ただ全体で見ると、oo39のオサレ素材なども使っていて、楽曲でゼロ年代の雰囲気を出そうというこだわりはなさそう。年代も広く、手広く幅広くという印象だが、若干イメージが散らかっているか。

 本作終盤は、かなりのハイスピードで伏線を回収していきます。ひとつひとつのイベントも、長尺のものが多くなってきます。
 なんとしても完結させたいという、作者の強い意志が、画面の向こうからにじみ出てくるようにボクは感じました。
 高々20時間程度ではあっても、本作のキャラクターたちと共に過ごしたボクとしては、展開が性急すぎる、という片付け方は、もうできませんでしたね。

 ツクール2003の新作は今後いくらでも出てくるでしょうし、「ツクール200X界最後のアクションRPG」という煽り文句は、おそらく当たらないだろうと思います。
 ただ、「2003年当時から構想を温めた作品」という限定で言えば、もしかしたらこれが最後かも知れません。
 どれだけの年月が掛かろうと、どれほど難点があろうと、作品が完成し、公開されたという一点に勝る価値はありません。
 公開されたからこそ、プレイすることができる。完成したからこそ、そこから感じ取れるものがある。
 それは本作に限ったことではありません。
 やり抜くということの大切さが、本作のエンディングで、一仕事成し遂げた主人公たちへの感慨と共に、みなさんにも伝わってくることでしょう。

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