■ Saga of the Moon Priestess
作者 [ Pixel_Trash さま ] ジャンル [ アクションRPG ] 容量・圧縮形式 [ 182MB・ZIP ] 製作ツール [ GameMaker Studio 2 ] 言語 [ 英語 ] 備考 [ 現在の最新バージョンは、1.1 (2022.12.07) ] 配布元
レビュワー ハマリ度 グラフィック サウンド 合計 総合判定 ES 8 /10 8 /10 8 /10 49/60 赤松弥太郎 9 /10 8 /10 8 /10
何故そこで槍ぃ!!?(真横から殴られながら)
本作「Saga of the Moon Priestess」の事前評価について、私は「『ゼルダ』より全体的に難しめの調整になっています。」と評しました。
通してプレイして、その評価はますます強まりました。「本家『ゼルダ』って、ここまで難しかったっけ!?」と。
それほど、本作は初心者・ヘタッピお断りの調整になっています。「死にやすい」のはもちろん、「死んだ後の復帰もしにくい」仕様になっているのです。
本作では以下のように、GAME OVER後の復活がやりにくい仕様になっています。
- GAME OVER後は最後にセーブした地点から再開
- ただし、再開後のライフは3固定。いくらライフ最大値を増やしても、再開後のライフは増えない。(この仕様はセーブから再開した場合も同様)
- 再開後のマップ状態は、最後にセーブした後の行動、獲得・消費アイテムも含めて引き継がれる
- 引き継がれる状態は、敵の討伐・道中の壺や草の破壊も含まれる
- 「一度倒した敵が復活しないなら楽」と思われるかもしれないが、先述の「再開後のライフは3固定」が足を引っ張る。回復アイテムが手に入らないため、ライフ3でボスまで突っ切らないといけない
- ボス戦など、同じ場所で複数回死ぬと、そのたびにジリ貧になっていく構成
- 壺や草からのアイテムドロップ率も低く、その上で「満タンでも矢や爆弾が出る」仕様のせいでハートが足りなくなる
- ダンジョンの外に出るなど、マップを切り替えれば壺や草は復活するが、同時に敵も復活する。(鍵・スイッチ・キーアイテムなどの謎解きは解答済のまま)
- ゼルダの「妖精ビン」にあたる赤ポーションは、ワールドマップ中心の村でしか手に入らず、一度に1個しか持てないため、道中で使うのはためらわれる
一番つらいのが、「再開後のライフは3固定」という仕様。序盤ならばライフ3でも何とか立て直せる難易度になっていますが、後半の氷の洞窟でついに心が折れました。
ここの敵、何故か攻撃力が高いのです。一発でライフ1.5を持っていく氷スライムとタックル兵はトラウマになりました。ライフ3で行くと2発当たればお陀仏という仕様。
どちらも突進型の敵なので、本家リンクならば「遠距離から剣ビーム」や「引き付けて回転斬り」で楽勝です。しかし、本作では「槍で戦う」という仕様ゆえに突進型の敵の対処がしづらくなっているのです。
- 突き攻撃ゆえに横方向の判定が狭い。主人公から横に1キャラずれていると当たらない
- サブウェポンも弓矢・炎の杖のような直進型、もしくは爆弾や岩のような「動く敵には当てづらい」攻撃ばかり
- メインウェポン強化アイテム「ミスリルの穂先」、防御力を上げる「ヘルメット」まで「サブウェポン=装備しないと意味がないアイテム」扱い
- おまけに、ミスリルの穂先を装備しても伸びるのは威力だけ。(目算だが)特にリーチが長くなる様子はない
- タックル兵はノックバックもしないため、素のメインウェポンや弓矢・炎の杖では押し切られる。体当たりなので、ヘルメットも効果が無い
本作は、こういった様々な意味での難点を含めて「FC版の初代ゼルダ」に準じた仕様になっています。
- セレクトボタン(Shiftキー)で開く全体マップと首っ引きにならないと「どこに何があるのか」すら分からない構成
- マップ攻略順すら決まっておらず、南東の森林クリア後は、北東の砂漠 or 南西の山地→北の墓場の2つのコースがある
- 北東の砂漠で手に入る「爆弾」は、南西の山地・北の墓場では使用せずともクリアできる。北西の氷の洞窟で初めて「ひびの入った壁を崩す」必要が出てくる
- ヘルメットや魔法の指輪と言った説明書にあるレベルの装備が、隠し通路を通らないと発見できない
- サブウェポンを駆使しないと倒せないボス。ただし、有効なサブウェポンはボスの行動・マップ内のギミック・ダンジョン内で手に入れたサブウェポンを考えれば大体分かるように作られている
「Saga of the Moon Priestess」は、「手さぐりにちゃんと答えてくれる」という快感を味わえるよう丹念に考え抜かれています。「ゼルダ」へのリスペクトを表面だけでなく芯からなぞった作品です。
それ故に、サブウェポンが揃いきった後の急な難易度上昇には参りました。「一発1.5ゲージ持っていく=2発喰らえば死ぬザコ」への対処が「当たらなければどうと言うことはない」だけなんて…。
「避ける」ですら、移動速度が遅めの主人公ではかなり難しい動作です。これ、本当に「避ける」か「ライフを上げてゴリ押す(それでもゴリ押しきれない)」しか無いのでしょうか…。
《 赤松弥太郎 》 ハマリ度:9 グラフィック:8 サウンド:8
月の光 世界照らすように 本当のあなたへと導きたい
「ゼルダの伝説」は数多くのフォロワーを生み出してきましたが、本作の理解度は、その中でも特に高いものです。
ゼルダの良い点をきちんと引き継ぎ、丁寧に解釈し直して再構築しています。
まあ、いかにもゼルダという見た目からプレイを始めると、最初は、操作感の違いに戸惑うことでしょう。
得物が槍に変わっただけで、リンクのように突っ込んでいって敵を蹴散らすスタイルは通用しなくなります。
まずは本作の立ち回りに慣れましょう。
槍による攻撃は、前方には見た目以上に広い攻撃判定を持っています。
うまく当てれば2x2のマスを一気に草刈りできます。
反面、横の判定は弱く、そして作中全編通して、自分の背後は攻撃できません。
なので、一番の問題は、敵に囲まれた時の対処です。
リンクだったら、とりあえず回転切りでなぎ払うところじゃないですか。サリサさんにはそれができません。
まずは前を攻撃して安全を確保し、包囲からなんとか逃げ出すしかないのですが。
そこでもう1つの問題点、足の遅さが立ちはだかります。
サリサさんは、かろうじて敵を上回る程度のスピードしか出せません。ペガサスの靴? そんなものは無い。
振り切るだけでも大変で、まして向き直って攻撃するには、相当な距離をかせぐ必要があります。
もうこれは、敵に包囲されない立ち回りを徹底するしかありません。
本家のように堅い敵は出てこないので、大抵の敵は立ち回りさえしっかりしていれば怖くありません。
これこそが、本作独自の魅力なのです。
安全な足場を固めながら、正面から迫る敵は叩き、側面から迫る敵はかわし、なんとか自分の正面に持ってくる。
守りを固めるべき所で固め、逃げるべき所で逃げる、という体験は、ボス戦にも繋がるプレイヤーの経験値になります。
慣れれば、この足の遅さも、本作の面白さから計算されたものだと理解できるはずです。
さて、しかしプレイヤーがゼルダに求めてることは、純粋なハクスラのみでは無いはずです。
ザコ戦や、手に汗握るボス戦以上に、むしろ謎解きを支持する人が多いんじゃないでしょうか。
本作の謎解きは本当によくできていて、ゼルダらしさを色濃く受け継いでいます。
もちろんそれは、単なるゼルダの模倣なんかではありません。
もっとも重要なエッセンス、気づきの快感を味わわせてくれるのです。
ゼルダの謎解きに、複雑な論理パズルや、何十手も掛かるような思考の組み立てを求めている人は、まずいないはずです。
言語によるヒントが無くても、見てわかる明瞭さとか、
ひらめいた時、すっと腑に落ちる納得感とか、
手順さえ見えれば、あとは工夫次第で手が届く程度の易しさとか、
そういう、ひらめけば解ける楽しさを求めていると思います。
そうでもない謎解きも過去に何回もありましたが、やっぱり好評ではありませんよね。
その点本作は、まず誘導が巧みです。
最初のダンジョンでグローブを手に入れたら、まず使ってみたくなるじゃありませんか。
そう言えば道中に、道を塞いでるいかにも邪魔な岩があったよな、と思い出すわけです。
あるいは、いかにも退かしてくださいと言わんばかりに岩だらけの部屋があったよな、という点も、引っかかるはずです。
そして辿り着いた、次の仕掛け部屋。
2体の敵を倒さないと外に出られないようですが、この敵、槍による攻撃が効きません。
槍で攻撃しても、一定時間経つと復活してしまいます。
じゃあ、どうすればいいのか。
持っているグローブ、そしてこの敵の見た目……
何か、ひらめきますよね?
これは別に、最初のダンジョンだから丁寧にやってる、というわけではありません。
5つあるダンジョン、それのどれもが、こうした気づきにあふれた仕掛けになっています。
そして、ほとんどの謎解きは言語によるヒントがなく、見ればわかるようになっています。
1つ1つはゼルダや、あるいはゼルダ以外で既視感のある謎解きかもしれませんが、それでもいいんです。自分で気付くことが快感なんです。
そしてそれは、ボス戦でも同じです。
最初はまったく対処の仕方も、ダメージの入れ方もわからないボスから、攻略法を学びとっていく悦びがあります。
難度は決して高くありません。隠しのHP上昇を取っていれば、あるいは初見でも倒せるかもしれません。
それでも、難敵を倒したという結果よりも、自分で発想できたという過程の方に、ボクはより悦びを感じるのです。
まあ、不満や疑問も、無いわけではありませんが。
「アイテムは かならず そうびしてください!」というシステムは、まあ本家でも使えるサブウェポンは1つだけだったりするよな、と思うのですが。
でもさすがに、サブウェポン装備中は使用不可、わざわざ装備しないと使えないマスターソードって、あまりにも使いづらすぎますよね。
その他、評点で触れていきましょう。
- ハマリ度 : 9 / 10
- 非常に惜しまれるのが、Swap Chainのバグ。Swap Chainを使用して掴むまでの間にノックバックし、画面外に追い出されると、謎空間に飛ばされ復帰不能になる、というもの。ギミックとしてSwap Chainを使用するラスボス戦での発生率が高く、心を折りにくる。これ以外には目立ったバグがないだけに勿体ない。
仕掛けや隠し部屋など、探究心のくすぐり方が実にうまく、ついつい乗ってしまう魅力がある。- グラフィック : 8 / 10
- スーパーゲームボーイのような見た目だが、色が落ち着いていて良い。画面構成はわかりやすいし、食らい判定も違和感なく仕上がっている。
反面、立ち絵や顔絵のクオリティは高くなく、とりわけサリサの表情があまりかわいくないのが残念。- サウンド : 8 / 10
- SFCを意識した音作り。謎解き音は本家のもじりだが、他は全て書き下ろし。
メロディーに華が無いところはあるが、雰囲気はとてもよく出ている。プレイを邪魔しない点でも好感触。現在DX版の制作中とのことで、現状やや少なく感じられたボリュームも、大幅に改善されるはずです。
フィードバックの少なさを嘆いているようですので、今のうちに気になっているところや良かったところをコメントしておくと良いでしょう。