■ 魔迷城のティモッテ姫
作者 [ 新Goo さま ] ジャンル [ 迷宮探索アクションゲーム ] 容量・圧縮形式 [ 25MB・ZIP ] 言語 [ 日本語 ] 配布元
レビュワー ハマリ度 グラフィック サウンド 合計 総合判定 ES 7 /10 8 /10 8 /10 46/60 赤松弥太郎 7 /10 8 /10 8 /10
トラップひしめく魔迷城は理不尽の塊。姫にとってもプレイヤーにとっても。
今回のイチオシ作品「魔迷城のティモッテ姫」は、俗に「メトロイドヴァニア」と呼ばれる、広大なマップを探索するジャンプアクションです。
行先は広大ですが、展開は完全なステージ制。各ステージを閉ざしている関門を、ボス部屋のカギと新規アクションを集めて突破していく仕様になっています。
操作はジャンプ+四方への攻撃とシンプルですが、求められるスキルは高度かつ多彩です。
初期は敵キャラやトラップのダメージが高く、動きを見て回避しないとなかなか前へ進めません。逆に、パターンを「死んで覚え」れば、数回のリトライ回数で十分に見切れます。
また、新規アクションを会得するアイテムは、倉庫番的なパズルを解く必要があります。
アクション・パズル自体の難易度は「ストレスをあまり感じずに死に覚えられる」ように調整されています。ボス戦や難所では何回か死にますが、各キャラの行動パターン自体は単純なので、タイミングさえ覚えれば、徐々にダメージを抑えられるようになっています。ボス部屋・宝箱部屋の入室時には必ずセーブしてくれるため、リトライ自体も楽になるよう作られています。ただし、本作には1つの難点があります。告知時にも指摘したように、本作のマップには「ミスリード」がたくさん存在し、そのために無駄な探索時間、そして無駄な死が発生しがちになります。
その最もたるものが、告知時に指摘した「青いリング」で開けるボス部屋の場所。我々が最も悩み、最も憤った箇所が、この「青い扉の場所」なのです。
弓兵が矢を乱射する箇所を、数多の屍を積んで乗り越えても行き止まり。水場の上はどうしてもジャンプで越えられない箇所があり、ライフでごり押すのは絶望的。それでなくても、白黒スイッチで入れ替える通り道は「今どこが通れるのか」が混乱しがちになります。
皆様は「青い扉の場所」をノーヒントで見つけられたでしょうか。私は攻略動画を見ないとわかりませんでした。その答えは…
←ここの木箱を横から壊すです。
…この答えを攻略動画で知った時、私の抱いた感情は「怒り」でした。憤怒と言ってもいい。
この単純な一画面の中で、本作のミスリードがいかに攻略に支障をきたしているかがわかります。
(1) 上に置いている銀箱と、それを壊せるアイテム「いけてるポマード」
「いけてるポマード」の存在は、説明書に入っています。銀箱にふさがれた通り道…それ即ち「『いけてるポマード』が手に入るまではスルーすべきルート」と判断するのが典型でしょう。
少なくとも私はそう判断し、ずっとこのルートを通り道の候補から切っていました。
ちなみに、銀箱を壊す方法も「いけてるポマード」だけではありません。モアイ兵などの自爆攻撃でも銀箱を壊せます。これも、「特定のマップでモアイ兵を攻撃」しないと教えてもらえません。事前情報を教えてくれる書置きなど、この魔迷城には存在しないのです。(2) 「木箱・銀箱は重力に従って落ちる」ことを教えてくれる箇所が無い
右図は、開始地点から1つ右に進んだマップ。上攻撃・下攻撃で木箱を壊して進むエリアです。
ここの木箱、明らかに空中に浮かんでいます。それ故に、上図のマップでも「木箱を壊しても銀箱は上に残ったまま」と判断してしまいました。これも、上図のルートを攻略候補から切っていた理由です。
(3) ここ以外にも多数のルートがある上に、「どこが通過済みか」を教えてくれる全体マップが未実装
これが、本作の攻略に手間取った第一要因です。
本作の全体マップは作者様のTwitterにアップされていますが、最初のセーブポイントから四方に大きく広がっているのが分かるでしょう。右側の1面ボス部屋から先の場所、上にある弓兵・水場・針山に囲まれた難所、左の正解ルートにも更に分かれ道が存在します。
どれもこれもが屍を積む難所である上に、死んだらセーブポイントから。戻る頃には、どこを踏破済みでどこが外れだったのかさっぱり思い出せなくなっています。ずっと外れルートばかりを彷徨い、無駄にプレイ時間が嵩み、「もう攻略動画に頼る他ない」と苦渋の決断をした後のあの答え…私の怒りは、「ヘタッピのジェラシー」と切って捨てるには余りにも煮詰まりすぎていました。この最大の難所を越した後、それどころか越す前にも、「白黒スイッチの切り替え」という難所が待っています。マップ各所に点在するスイッチを切り替え、道をふさぐブロックを切り替える仕掛けです。
これが、「行きたい場所を開ける白黒スイッチの場所が10マップ単位で離れている」なんてのがザラにあり、それを記録しておけるのが「自分の脳内」か「手製のメモ」のみ。ただでさえ指先と画面に全神経を集中させないといけないアクションで、さらに記憶にまで容量を割かねばいけないと、相当に脳負担の大きいゲームとなっています。本編であるティモッテ編ですら、難所ばかりのこのゲーム。追加要素である「勇者編」は、作者自ら「ティモッテ編をベースとしたマップだが、より迷いやすい構成。マッピング必須」と述べるほどの高難易度になっています。
攻略自体にある程度のアクション適性が必要な上に、往年のWizardry並のマッピングも必須と、見た目・難易度だけでなく、面倒くささまで「レトロ」な本作、心と時間に余裕を持たせてプレイしてください。
《 赤松弥太郎 》 ハマリ度:7 グラフィック:8 サウンド:8
迷わないハズもない それでも明日を探せ
みなさん、方眼紙の準備はできましたか?
ああ、紙じゃなくて、Excelとか、Google SpreadSheetとかのデジタルの方がいいですよ。
では、始めましょうか。
「ガリウスの迷宮」はMSXを代表する傑作と名高く、定期的にリスペクトしたゲームが登場します。
言わずと知れた「LA-MULANA」がまさにそれですし、「迷宮城ハイドラ」も当サイトで取り上げました。
本作はそんなガリウスリスペクトの中でも、メトロイド的な、探索範囲をアイテムで広げていく要素を追加し、フィーチャーした作品です。
そうなんです、ガリウスの迷宮って、初期状態で城内どこにでもアクセスできたんですよ。死さえ恐れなければ。
アイテム縛り等のヤリコミの自由度が高いとも言える反面、初心者はよくわからず高難度エリアに突っ込んで無駄死にする、と迷宮城ハイドラのレビューでも書きました。
そんな初心者にとっては、アイテムで探索範囲を絞ってくれた方がありがたいんです。
最初行けなかった場所に行けるようになる、というのは、それだけでモチベーションに繋がりますからね。
しかし本作が、ライトな初心者向けの楽しみを提供してるか、というとまったくそんなことは無いのでご注意を。
本作は、本家ガリウスの迷宮でも採用されていた、ある非常に有用なシステムを、おそらくは意図的に省略しています。
マップですよマップ。本作はあらゆる種類のマップシステムを搭載していません。
ガリウス以上に、より純然たる迷路ゲームとしての趣が強く出ています。
本作をマップ無しで遊ぼうとすると、どうなるか。
さすがにガリウスほどの広さは無いものの、本作のマップは広大で、しかも城とワールドに別れていたガリウス以上に迷いやすい構造です。
100画面以上に及ぶマップは複雑に入り組んでおり、スイッチによるブロック切り替えが多数登場、一方通行の場所も複数ある上、左右にループします。
背景色が青で統一され、変化が乏しいせいで、ゾーニングが非常にわかりにくく、ぱっと見の印象だけでマップを把握することは、まず不可能です。
結果、行動範囲を広げるパワーアップアイテムを拾ったところで、どこで使えばいいのかわからない。
初期状態の時点で広大すぎるマップを覚えきれず、通行できなかった場所の位置やらそこに辿り着く道なんてまるで思い出せない、といった事態が多発することでしょう。
つまり、人力でマッピングするしかないんですよ。
なんでシステムで用意してくれないんだ、サポートしてくれないんだと文句を言いたい気持ちは、とてもよくわかる。
でも無いものは無いんだから、やるしかないんです。
ちまちまとポーズを掛けながら、時々マス目を数え間違えたり現在位置を勘違いしたりしながら、マップを作っていく……
もう踏破した場所と到達できていない場所を、自分の手と目で確認していくこの作業は、実際楽しいところでもあります。
地図の空白に辿り着こうと、アイテムやスイッチ、そして自分の知恵を駆使して迫っていく、その過程こそ本作の楽しみです。
ただし、今の時代に、そうした手間隙をどれほどの人が楽しめるか、という問題はありますが。
……さすがに、マップどころか現在座標が確認できるアイテムすら無い、というのは、ちょっとボクは弁護できない気がしています。楽しみに気付かせる導線が無いんです。
悠長にマッピングできるほどヌルくはない、というのも、もう1つの壁です。
本作の敵は、ボスも含め、パターン行動しか取りません。攻撃が激しい場面も少なめではあります。
ただし、一撃が重い。ヒットバックもめちゃくちゃ大きい。
敵を倒してもハートを落とすことが少なく、回復量も少ないため、必然ミスしない立ち回りが求められます。
セーブポイントの数も道中の長さに対して少なく、長いスパンで集中を持続するプレッシャーがあります。
このあたりのバランス感覚はまさに、往年の硬派なアクションゲームの雰囲気です。
「あんしんパンツ」「へっちゃらブラ」「すてきなペンダント」の3セットがあれば、ミスしてもハートで回復できる程度のカジュアルなバランスになりますが、この3つはくまなくマップを探した結果得られる、とても見つけにくいアイテムなので……
「こういうゲームを楽しんでいた時代があった」という経験が無い人にとって、どう感じるでしょうか。
- ハマリ度 : 7 / 10
- 他の減点要因は、宝箱を取る時の倉庫番パズル。ゲームウォッチ時代の作りで操作性がとても悪く、十字キーを押しても反応しないことがままある。
普通の倉庫番パズルなら、誤操作の可能性を考えてわざと反応を悪くしている、という言い訳もあり得るだろうが、攻撃キーを押さないと物が押せない本作の場合、そういう弁解の余地が無く、ただストレス。
「昔のゲームってこうだったよなー」というのはただの懐古でしか無く、プレイアビリティとしてはまったく評価できない。
そもそも、アクションである本作に倉庫番パズルを入れる必要があったのかも議論の余地が大いにある。パターンさえ読めれば苦労しないボス戦と相まって、カタルシスを得にくく感じる。- グラフィック : 8 / 10
- 色数を極端に抑え、アニメーションパターンも2つだけ、という、「MSXらしさ」を前面に押し出した作り。とはいえ視認性は良く、判定もしっかり作り込んでいて、違和感はない。
上述の、エリアの個性がまるで無い点がとても厳しい。登場する敵にも、エリア毎の個性はまるで無く、世界観も統一されていない。- サウンド : 8 / 10
- 安定のPANICPUMPKIN、最近イチオシでの登板回数が多いですね。
曲の数を非常に抑えており、表面クリア時点で使用曲は4つだけ。基本的に探索画面の曲を長く聞くことになる。ポーズしても鳴り続けるのはちょっと厳しい。ウィンドウ切り替えで止められる。総じて、間口の狭い楽しみを提供している本作ですが、そういうものだと了解の上で遊べば、十分に楽しめる作品です。
その楽しさは、何もリアルタイムでMSXを体験した世代の懐古だけには留まらないハズです。
ティモッテ姫でクリアすれば勇者モードが解禁。強化アイテムが取得できない代わりに完成されており、高火力の代わりにリーチが狭い、というもの。
月下のリヒターモードとか、白夜のマクシームモードみたいなアレです。
ボクはまだ裏ボスを倒せてません(そもそも倒せるの?)が、姫を救出した時点で衝撃の事実が明かされますから、どうせならそこまで楽しんでください。お前、子持ちだったのか……