■ SIBLINGS
作者 [ 九乃頭虫 さま ]ジャンル [ ターン制アクションゲーム ] 容量・圧縮形式 [ 322MB・ZIP ] 製作ツール [ WOLF RPGエディター ] 言語 [ 日本語 ] 備考 [ 現在の最新バージョンは1.0.12 ] 配布元
レビュワー ハマリ度 グラフィック サウンド 合計 総合判定 ES 8 /10 8 /10 8 /10 50/60 赤松弥太郎 7 /10 9 /10 10/10
刹那すぎる肉体言語
本日のイチオシ作品「SIBLINGS」は、語る人によっては「フロムゲー」に例えられる…特に、1対1の剣戟を主とし、戦意(体幹)ゲージを削ることでトドメを刺せる点など、「SEKIRO」を参考にしている部分が多くみられるアクションです。
ただし、そのシステムは、3人称視点、2D画面、そして個人製作ということで、かなりの簡略がなされています。そして、簡略化されたが故の戦法の狭さが、本作の難易度を底上げしている部分が多々見られます。本作のジャンルは、公称で「高難易度対話型アクションゲーム」。「高難度」と「アクションゲーム」は聞き覚えがある、そして本作を適切に表した語句ですが、「対話型」とは一体何なのでしょう。
それは、「敵の行動に対し適切なレスポンスを、瞬時に見切って返す」という意味です。それ故に、本作は反射神経と正確な動きが何より求められます。…そう、私が最も、そして生まれつき苦手とする分野です。
攻撃前動作を見て、大振り一撃か、回避できる連続攻撃か、回避など到底不可能・ガードしないといけない高速ラッシュなのか、それを見切るのが大前提。
!の出る特殊攻撃ともなると、うっかり違うボタンを押した瞬間、大ダメージが確定します。おそらくは、その試合は捨てゲーせざるを得ないほどに。
各動作を見切るためには、数多の死が要求されます。
それでも、本作の死の要因は!の出る特殊攻撃ではなく、予兆の目立たない通常ラッシュです。1つ1つはダメージが低いといえ、1パターン丸々喰らうと体力の半分近くが削れ、反応がコンマ秒遅れただけでダメージ、それほど厳しいバランスになっています。
私含めて反射神経に才能と経験値を振っていない人間は、2面ボスすら救済措置の「縋る者のお守り」が無ければ倒せないでしょう。…と言うか、私の場合、10回ぐらい死んだ経験を加えて、「縋る者のお守り」を使用した状態でもギリギリでした。しかし、本作の難易度の高さは、作者が意図した以上になっています。3人称視点、2D画面、そして個人製作であるが故に。
例えに出した「SEKIRO」では、確かに攻撃一辺倒で防御を疎かにしていては勝てません。しかし、決して刹那の反応を求められるとは言えません。
構えている間に回り込む、回避に役立つスキルを使う、最悪、距離を離してからアイテムで回復・強化する手段すらあります。
しかし、「SIBLINGS」では、方向キー押しっぱなしでは回避は無効となります。攻撃が来た瞬間にチョン押しするしかないのです。!の出る特殊攻撃の中には、特定の方向(消える攻撃なら上、突きは横、横薙ぎは下)に入れないと回避無効となる物まで存在します。
押しっぱなしで対応できるガードは、逆に!の出る特殊攻撃は素通し。
「攻撃が当たる瞬間にガード」で発動する「弾き」なんて、今までプレイした1か月間、一度も成功したことがありません…と言うか、成功するとどのような表示が出るのでしょうか? 成功するとあの超高速ラッシュを1撃目で止められるのでしょうか? 成功のエフェクトが簡素すぎて私が自覚できていないだけなのでしょうか? それすら分かりません。そう、「行動が成功したか分かりにくい」というのが、本作の高難易度の最大要因、そして本作最大の難点となっています。
「SEKIRO」では、攻撃には大きなエフェクトや残像が付き、体に当たっているか外れているかが見た目で判別しやすくなっています。対して、「SIBLINGS」の攻撃エフェクトは細い線。2D・3人称視点ゆえに距離感が分からず、「どこで動けば回避できるのか」が非常にわかりづらくなっています。タイミング自体も先述の通りシビアなので、見切りづらさは余計に加速します。
「ダメージエフェクトが簡素すぎる」という点も、本作で死にやすい要因です。攻撃を回避・ガードできたのか、失敗して喰らってしまったのか、その差は(特殊演出が再生される掴み攻撃以外)効果音とゲージの増減以外ではほぼ判別できません。喰らったときに血しぶきなどの戦闘アニメーションも、「DAMAGED」などの表示も、一目で分かりやすいインジケータは何一つ表示されません。
この難点は作者様にも伝えました。そこでの回答は「次のバージョンでエフェクトを設定する機能を追加予定」とのこと。ただし、2023.10.08現在、その次バージョンは発表されていません。
本作、オープニングから最後まで「未熟者を振るい落とす要素」が満載されています。そもそもの操作方法すら
メニュー→道具→色褪せた手記→基本動作 or 戦い方→その下の白文字
という分かりづらさ。「知らないとゲームが成り立たない」レベルの情報を取得する方法が、上記手順しかないということすら、同梱のテキストファイルには記載されていません。
「初見ではエフェクトにしか見えない」光った線が実はアドバイスメッセージということも、同梱テキストや唯一の会話相手・エルデからは教えてもらえません。光った線の上でZキーを押すか、「色褪せた手記」を見るか、どちらかを完全ノーヒントで探り出す他ないのです。
「語らないことが本作の特色」とはいえ、「『色褪せた手記』だけが知っていて、プレイヤーは何一つ知らない」重要事物・基本要綱があまりにも多すぎます。
「積極性のない者、考察を楽しめない者、才能のない者は振り落とす」というバランスは、導入にコストを要求しないフリーゲームでしかなしえないものです。最大の不幸は、私自身には「2面ボスに何十回も殺され、『縋る者のお守り』を使ってでもクリアしたいと思う」積極性、「クリアのためにメニューやメッセージの隅から隅までを探しつくす」考察力はありましたが、「弾きや回避を成功できる」才能は一切なかった点。悲しきnot for meでした。
《 赤松弥太郎 》 ハマリ度:7 グラフィック:9 サウンド:10
チャンチャンバラ チャンバラ チャンバラバラ チャンバラ
「対話型ターン制アクション」って結局なんなのよ? という話ですが。
未プレイの方にもわかるよう、一言でゲーム性を表せば、LD版のドラゴンズレアが一番近いです。
歴史に名を残す名作であると同時に、一部から忌み嫌われている作品の名を出すのは気が引けますが、事実です。
もちろん、あのゲームの理不尽なポイント、操作性の悪さとか一撃死だとかは継承してませんよ!
QTEみたいなボタン表示こそありませんが、画面から必要な操作ははっきりわかるし、操作説明もあります。見逃すと地獄ですが。
最初のボスの攻撃を6~7回ノーガードで受け止められるHPがありますし、ゲームを進めればさらにHPは上昇していきます。
決まった映像しか流れないLDゲームとは違い、操作へのレスポンスは良好で、どのタイミングでボタンを押せばいいのか、グラフィックで十分に判断できます。
問題は、そのタイミングが速い上にシビアだということです。
敵の攻撃タイミングに合わせて防御する、「弾き」を8割以上成功できるようにならなければ、2人目のボスでふるい落とされます。
本作は本質的に弾きゲーです。防御は失敗と言い切っていいほどペナルティが大きい。
プレイヤーのターンは基本的に敵の攻撃までのインターバルに過ぎず、敵の攻撃を弾いて弾いて弾いて弾いて避けて弾いて避けて弾いて、なんとか敵の体勢を崩し「渾身」の一撃を叩き込む、これが本作のバトルです。
それが楽しいのか?
相手の行動に対応するばかりで、自発的な行動がほとんど取れず、戦略も戦術もないようなゲームが楽しいのか?
ボクは、少なからず楽しめました。上達している手応えがあるからです。
敵の準備モーションを見切り、準備モーションと攻撃の対応を記憶し、指に覚え込ませたタイミングで敵の攻撃を避け、弾く。
この流れがきちんと決まると、それはもうとっても爽快なんです。
今までの苦労を忘れられるくらいに、ね。
その楽しみをプレイヤーに伝えるためにも、どこかのタイミングで、なんとなくでは絶対に勝てない壁ボスを配置する必要がありました。
2人目のボス、徒人狩りはその役割を実に良く果たしています。
覚えるべきモーションが多く、攻撃も速い、2形態で攻撃パターンがまったく変わる、ラスボス以上の強敵とすら言える相手をここに配置するか、とは思いましたけど!
しかしその分、本作の楽しみを凝縮したバトルが味わえました。
ただ、捉えようによっては楽しいとはいえ、厳しい戦いには違いないわけで。
その苦難を乗り越えるだけのモチベーションを本作が与えてくれるかというと……ビミョーなところです。
匂わせる程度のストーリーが、この難敵をなんとしても下して先に進みたい、とまで思わせる原動力に繋がるか、ボクは疑問です。
こだわりぬいた映像演出は見どころであり、プレイヤーを魅了する力も持っていますが、それだけを目当てにゲームをプレイするわけじゃないしなあ……。
切り口が少ないゲームなので、負けて「悔しい! もう1回!」と思えない人をふるい落としていっちゃうのです。
戦闘と演出の完成度は高いのですが、特にわかりやすさの面でかなりの問題があります。
- ハマリ度 : 7 / 10
- メニュー画面はウディタデフォルトをほぼそのまま使用しており、そのため道具画面が非常に見づらい、わかりにくい。赤字が大項目、緑字が小項目のセパレータだが、2段組で上から詰めて表示するため、右に行ったり左に行ったりする。そもそも「道具」というメニューでキーカスタマイズからストーリーまで網羅するUI設計には無理がある。
一番大切な持ち物は「色褪せた手記」、すなわち説明書だが、そこまでたどり着けない懸念がある。読むにしてもかなりの分量がある。地面の光っている部分を調べれば、今必要な最低限の説明が読めるが、「色褪せた手記」までたどり着けない人がその発想に行き着くとは到底思えない。ルールを知る機会を失った人は、このゲームの何が面白いのかを知ることなく脱落する。メタ的な説明を控えるスタイルは結構だが、それに必要なフォローが欠けている。- グラフィック : 9 / 10
- マップ画面、地面が光っている部分が文字であるとわかりづらいのは大問題だが、それ以外の最低限の機能は備わっている。
無機的なグラフィックは作画の手間を減らす効果もあるし、本作の雰囲気を決定づける要素でもある。ドラマチックでは無いのは確かで、せめてラスボスステージは花や草を思わせる何かがマップ画面にも欲しかったところ。- サウンド : 10 / 10
- 聞き慣れた効果音ラボのSEだが、フィードバックとして良好、爽快感をもたらす。弾いた時などタイミングがはまる気持ちよさがある。
書き下ろしのBGMはマップ画面から戦闘へシームレスに切り替わる、これまたとても心地よい。全4ステージの一本道、周回要素ありとはいえ控えめなボリュームですが、初見殺しの面が大きいゲーム性としては、良くまとまっていると評価できるポイントでしょう。
目に付く難点は複数あれど、それでも演出と爽快感でウディコン1位入選を勝ち取った作品です。酔いしれましょう。