■ 鴉の断音符
作者 [ 飼育係 さま(シナリオ) ]
[ 愛智万博 さま(イラスト) ]ジャンル [ ミステリー ] 容量・圧縮形式 [ 21.8MB・LZH ] 使用ツール [ 吉里吉里 ] ダウンロード
レビュワー ハマリ度 グラフィック サウンド 合計 総合判定 ES 9 /10 8 /10 7 /10 120/150 ckck 8 /10 10/10 9 /10 赤松弥太郎 8 /10 9 /10 6 /10 或野 吟山 8 /10 7 /10 8 /10 銅たぬき 8 /10 8 /10 7 /10
鴉よ、君はどこへ行く。
- ハマリ度:9/10
- 話一つは短いが、そのバリエーションは豊富にある。
時間が無い人も、思い切ってハマれること間違いなしである。- グラフィック:8/10
- シリアスな雰囲気と、独特の情緒を盛り上げるグラフィックは、まさにこのゲームに不可欠である。
- サウンド:7/10
- 可もなく不可もなくといったレベル。決して雰囲気を損ねてはいない。
■ ストーリー
如月雪兎は、ごく一般的な高校生。しいて違うところをあげるとすれば、とんでもないゲームマニアってとこかナー。
そんな雪兎君は、ある日、とんでもないものを見つけてしまう。―――うほっ、いいウサギ―――。
…あっ、カンペ間違えた。(※1)
■ 改めてストーリー
大地の力を受け、あらゆる物を一刀両断する、聖剣「グランセイバー」
所有者の意のままに、その姿を変える、魔剣「アンサラー」
その身を削り、あらゆる穢れを祓う、小さき聖剣「ミューズ」
この3つの剣をめぐる、二人の少女の物語…。…ちょっとぉ!またカンペ違っているじゃないの!(※2)
■ 本当のストーリー
山奥で行われた殺人…。それは誰にも見られてはいない…はずだった。
一羽の鴉、「ヤタ」を除いては…。プレイヤーは、「ヤタ」の目となり、道標となり、この事件の顛末を「覗いて」行くことになります。
本来のメインは、この殺人事件の真相を解き明かすことです。
しかし、真相を解き明かす道のりは、空を飛びまわれるヤタでさえ、決して楽なものではありません。
その真相は、鴉の黒真珠のような瞳でさえ欺かれているのですから…。■ 豊富なサブストーリー
ヤタ、そしてプレイヤーが「覗く」物語は、メインの殺人事件ばかりではありません。その中にあるさまざまな人間模様です。
事件の第一容疑者、烏丸美耶子の真実…。
事件を追う刑事、堂口と丸山、そして桐崎の活躍…。
事件とは一見無関係に思える、病弱な少女・早苗との関わり…。
そして、ヤタたち鴉の住処である裏山の運命…。「鴉の断音符」の物語は、ヤタが「覗く」視線の先に従い、様々な変わりようを見せます。
その顛末は、メインエンドだけでも8つ、細かく変わるシーン、途中のエピソードも含めると、2倍の量を持ちます。
その顛末を決めるために、ヤタが「覗く」先も、1日につき8つ、計48通りもあります。普通のADVの選択肢は、一回あたり3~4個がせいぜいでしょう。そんな中で、一回8つの選択肢は、ともすれば煩雑に映りかねません。
しかし、実際にプレイしてみると、そんな不満は微塵も感じません。
各日時、各場所に起こるイベントは決まっており、登場人物たちはその中で決まった行動を繰り返していきます。
物語をつむぐためには、その8×6個のピースを決まった順番で繋いでいく必要があります。その条件を探す道程は、とても易しいとは言えません。
リードミーにある程度のヒントはあるとはいえ、メインの謎を解く手がかりは、ほとんど手探りで探し出さねばなりません。
■ プレイ感
しかし、それを探し出す長い道程も、このゲームを楽しむ一要素でもあります。
登場人物たちは、ヤタが「覗く」先で、事件の手がかりを追い、ヤタとともに笑い、コンビニのゴミにまぎれこんだりと、様々な行動を繰り広げていきます。
どの物語も、空振りと言うものはありません。エンディングには関係なく、ただ、ヤタ自身の生活を追うだけと言うのも、このゲームの一つの楽しみ方です。
数々の物語をつむぐ中で、事件の真相を見つけ出す一本の糸が見えるはずです。一つ一つのプレイ時間は短いため、忙しい方(私など)でも、ヤタたちの物語を十二分に堪能できます。
短くなった夏休みにあわてている学生も、夏休みと言う言葉を忘れつつある大人も、ぜひ、この「物語」をつむいでみてください。
<久々のES的蛇足>
- (※1)兎の
輪舞 - 飼育係さまの代表作・その1。(ちなみに、「鴉の断音符」は、代表作・その2あたり。)
(メインは)シリアスなミステリーである「鴉の断音符」に比べ、この「兎の輪舞」は、パロディ上等のコメディーである。
(まあ、「鴉の断音符」にも、コメディーシーンは意外と含まれているのだが。)
(総合の)プレイ時間は、「鴉の断音符」に比べてかなり短いのだが、文章内の濃さは、ある意味、「鴉の断音符」をはるかに凌駕している。
ぜひ、あわせてプレイしてもらいたい。作者・飼育係さまのもう一面が垣間見えることだろう。- (※2)聖剣グランセイバー
- 飼育係さまの代表作・その1.5。
プレイ時間は、代表作その1・2と比べても、さらに短く、手軽にネタを楽しめる小粒な作品である。
ちなみに、消耗しきり、使用に耐えられなくなった聖剣「ミューズ」は、新たな聖剣に融合させて使用するのがヘタレネットサーファー・ES流。
《 ckck 》 ハマリ度:8 グラフィック:10 サウンド:9
生まれて初めて鴉に好感を持ちました
- ハマリ度8/10
- 自由度は高く、ワンプレイは短く、且つ内容の濃い仕上がり。
シリアス路線とコメディが噛み合っていない気もするが。- グラフィック10/10
- 背景の選択もさることながら、キャラの書き分けが滅茶苦茶上手い。これぞ職人技。
個人的には♯1のエンディングを見た後、オープニングで犯人の顔をよく確認して欲しい。- サウンド9/10
- 一部不満は有るが、音質・選曲共に良好。
哀愁を誘うカラスの鳴き声など、ゲームの雰囲気を構成するのに二役は買っている。赤松様の超絶レビューに気圧され、「こりゃ勝てないわ」とネタ志向からの撤退を決意したckckです。しばらくは中継ぎ要員的なレビューで繋ぎますが、生暖かい目で見守ってください。
ゲーム解説
「人知れず行われたはずだった殺人事件。しかし、その一部始終は一羽の鴉によって目撃されていた。貴方はこの鴉と共に、興味本位で事件の真相と顛末を追うことに…」 これがゲームの本筋ですが、別に興味が無ければ関わらなくとも構いません。思うがままに町を飛び、好きなように物語を紡いでください。
人間達から森を守るため、仲間の鴉と共に戦うもよし。鴉らしく毎日をダラダラ過ごすもよし。 十三歳の病弱少女との愛を育むもよし。 そして勿論、殺人事件を追うもよし。貴方の思うがまま、選択するがままに話は展開され、異なったエンディングを迎えます。
個人的には病弱少女とのやり取りの方が本筋なのではと錯覚しているのですが…。 先月のイチオシで、病弱少女萌えについて熱く語った或野吟山様はどうなのでしょうか。
評価ポイント
先に不満をあげてしまいますと、(遊びの部分ですが)一部のコメディ路線が作品の雰囲気と少し合っていないんですよね。個人的な嗜好の問題ですが、アクセントを付ける為にも、笑いを取りに行く専用のBGMが有ってもよかったかと。
逆に、それ以外の部分は文句の無い仕上がり。
選択肢8つが6回、エンディング総数16と言う量が苦にならないほど巧みな文章。ただ美しいだけではなく、伏線にもなっているグラフィック。要所要所でゲームを盛り上げるサウンド等。これらは紙媒体の小説では味わえない面白さと言えるでしょう。まとめ
今月イチオシ作品は、文章・グラフィック・サウンドと三拍子そろった高水準ノベルゲームです。
平均9点と高めの評価ですが、十分納得していただける内容だと考えます。ファーストプレイでも三十分前後で終わるので、気軽にプレイしてください。
《 赤松弥太郎 》 ハマリ度 : 8 グラフィック : 9 サウンド : 6
自然がお前を一羽の鴉にしたのを惜しむ。
天使にも、悪魔にも、騎士にも、魔法使いにも、賢者にも、刑事にも、殺人者にも、スパイにも、泥棒にも、ピアニストにも、作家にも、宝石商にも、グルメにも、ロリペドにも、タモリにも、パーマンにも、食材にも、ど根性生物にもなれたものを。・はじまりの証言
ボクはね、1ヶ月前のあの時、「フラット」やってたんだ。
うん、そうなんだ。ボクはあの激辛廃墟の中にいたんだよ。
ボクが、猿みたいに「フラット」をやってたら、突然壊れて。ボクの両親は、その時に。
本当はね、わかってるんだ。ボクももうすぐ、両親の所へ逝くんだよね。
もう、ダメなんだ。「フラット」の影響で、トンデモがないと生きていけない体になっちゃったんだ。
キミが紹介してくれた、この真面目そうなゲームなら、ボクはきっと、幸せに逝けると思う。だから、悲しそうな顔、しないでくれよ。
……どうしてなんだ?
このゲーム、トンデモじゃないか!・推理ゲームとしての本作
このゲームの主人公は、カラスだ。
しかも、なぜか人の言葉を話す、頭のいいカラスなんだ。ボクより、頭いいかも。
このカラスは飼われてないから、どこへでも飛んでいける。
こんな都合のいい話、ないだろ?
トリックも難しくないから、カンと運が良ければ、2日目の自由行動の前に犯人がわかる。
追いつめるのは、ちょっと骨が折れる。ヒントはReadmeにも書いてあるけど、そんなに難しくないから、自力で解いてほしい。
え、難しすぎる? もっとお客さんには丁寧にしろ? ……なんでボクが。
いいか、ボクの言うことをよく聞けよ。
- まず、なんでもいいから、通しでやってみる。
その時、自由行動の前のセーブを、1日1つずつ残しておく。- クリアしたら、取っておいたセーブから、すべての日のすべての選択肢を選ぶ。
だいたいすべてのイベントが見られるから、内容をメモしておく。- メモをざっと見渡すと、どうすればいいか見えてくるはずだ。
このゲーム、推理だけなら簡単だし、特に目新しいところもない。
だけど、このゲームは、ただの推理ゲームじゃないんだ。
・ボクたちは自由の刑に処せられている
このゲームの選択肢は、いつでも8つだ。
その中で、推理に使う選択肢は、だいたい半分くらい。残りは使わない。
無駄、かな。
でも、別に犯人を捜してくれなくてもいいんだ。
好きにしてくれて、いいんだ。
この6日間で、お客さんが本当に大切にしたいものを見つけてほしいんだ。
自由とか、正義とか。それとも、誰か、好きな人……とか。
愛する人のために、誰かを殺してしまうような道も、あるかもしれない。
自分の何かを守るために、全てを犠牲にする道も、あるかもしれない。
お客さんが望むなら、それでもいい。
でもボクは、復讐よりも、大切な人の側にいることの方が、ずっと素敵だと思う。
「大丈夫。僕がずっと、側にいる」
誰かにこう約束できたら、カラスは、その人の「天使」になれるんだ。
……べっ、別に、泣いてないからな。
(そういうしっとりした話だと思い込んで、ボクと同じ、痛い目に遭えばいいんだ。)
これ以上は、ボクの口からは言えないな。
自分の目で、確かめてほしい。
・評点
残念なのは、楽しくなる前にやめちゃう人が多そうってことかな。
いきなり8つも選択肢を出されると、面倒くさくなる人もいるんじゃないか?
奥が深いんだけど、きっかけが掴みにくいって言うか。まるでこの店みたい……ううん、何も言ってないぞ。
え、ボクか? ……サブエンドも全部コンプリートしたけど。
べっ、別に、暇だっただけだ。キミに勧められたからじゃないからな。
何? そんなにやりこんだなら、点数つけろ? ……なんでボクが。
わかったよ。適当書くけど、文句言うなよ。
- ハマリ度 : 8 / 10
- 「自由」と「不親切」は紙一重。いろいろ工夫の跡は見えるが、気軽にちょっとずつ、というより、4時間くらいで集中して、みたいな遊び方になってしまうのは、私が凝り性だからか。
次第に埋まってくるエンディングリストは、やりこみ心を刺激する。タイトル画面が変わったりもするが、直前のエンディングしか反映されないのは不満。特にあとがきを出すタイミングは、もっと工夫してほしい。中途半端なところでのネタバレなしのあとがきより、トゥルーエンドの後でネタバレありのあとがきが読みたい。- グラフィック : 9 / 10
- 油彩調の画風は本作の全体的な雰囲気と見事に調和している。
「狩人」のシルエットがあったら、満点出してもいいくらいの出来。- サウンド : 6 / 10
- 音楽の音質にはこだわっているのに、「鴉の鳴き声」「悲鳴」といった重要なSEに違和感があり、大きくマイナス。
サウンドノベルでの「サウンド」は、ほんの少しのズレから大きくゲームの印象を変えてしまう。特にこの2つのSEは、本作の根幹を成すSEだっただけに、もう少し慎重に吟味してほしかった。キャッチコピーは、「やりこむと、別の世界が見えてくる」なんてどうかな? 語呂もいいし。
……ボク少女口調、結構楽しいな。ハマるかも……
ううん、こっちの話だ。
来月も、読んでくれよな。
《 或野 吟山 》 ハマリ度:8 グラフィック:7 サウンド:8
烏丸善治にカー3回
ネタがハイブラウ過ぎてすみません・・・
ゲームは自由だー!! NETA is FREEDOM!!(by犬○ヒ□シ)
夏は出不精で、仕方なくクーラーの効いた部屋で、ドラえもん(のぶ代、わさび両ver)から江田島平八まで声帯模写の練習をしている或野吟山です(その成果は聞かないで下さい)。 この年になって、レビュワーの皆さんにノベルゲームのレビューという形で読書感想文(※1)を強いた男です! ともかく、レビューに参りましょう。
ハマリ度について
このゲームの主人公は「ヤタ」という名の鴉です。ええ、人ならぬ禽獣です。 いくら人語を解し喋る事すらできるといっても、所詮は鴉、自由なもので、人間界の殺人事件など他人事です。 現場に居合わせ真っ先に考えるのは、死肉漁り。 呑気なもんですね。(もっとも鴉だからこそ、堂々と殺人・死体遺棄の現場に立ち会っても、命を奪われないのです。ただし、別に死亡フラグあり)
こんなヤタだからこそ、外部者として人間社会を冷静に見つめることが出来るわけで、容疑者の少女・美耶子を見張るもよし、慌しく行動する刑事を追うもよし、殺人のことを忘れ商店街で残飯を漁るもよし、メインヒロインの美耶子を差し置いて「俺のヒロインは早苗ちゃんだ!」とばかり市立病院に通いつめるもよしです。勿論、死肉漁りも。
とりあえず、冒頭の殺人のシーンを見て、この作品を「変り種の探偵もの」だと思ったのなら、その考えは直ちに改めましょう。 事件を追うだけでは、プレーヤーはこのゲームの面白さの半分も理解できません。 このゲームのテーマは、殺人事件を発端として始まる「ヤタの人間観察」です。 そう、殺人事件など動機に過ぎません。
あなたがいくら文学に疎くても、夏目漱石の「吾輩は猫である」(※2)ぐらいは知っているでしょう? または漫画で言えば、はるき悦也「じゃりん子チエ」(※3)とか小林まこと「What's Micheal?」(※4)とか、猫ばっかになってしまいましたが、メディアを問わず動物が人間を観察するという手のユーモア・風刺作品はよくあります。 そして、この「鴉の断音符」も、そういった系列の作品と捉えるのが適切なのです。
ともかく、この物語の進め方は全くの自由なので、事件を追うばかりでなく、気になった場所があれば時間を置かずしつこく訪れてみて下さい。 後を追ってみたい人物がいれば、(何度かプレイして、フローチャートを組み立てるなどして)何とか追ってみるもの良いでしょう。 その結果、思わぬ方向に話が進むかもしれません。 (というか、ゲームに偶然性がない以上、うまくやれば確実に進みます。) その内容たるや、ファンタジーあり、お涙頂戴ものあり、ブラックユーモアすらありと、バラエティーに富んでおります。 とりあえず、私のお奨めとしては、商店街のコンビニ中心に巡ってみて、白昼堂々と起きてしまう「奇跡」を目撃して欲しい! その成り行きの詳細については何も言いません。しかしこの結果、あなたのこの作品に対する評価が180度変わってしまうこともあり得ます。いや、120度までは確実に変わることでしょう(弱気)。 うっしっし。この方向の読めなさが、フリーゲームの醍醐味というものでしょう!
最後に一つだけ批判を。誤字がちょっと目立ちます。 気付き次第直してもらえるとありがたいのですが・・・(なお、タイトル画面の"CLAW"は誤植ではありません)。
グラフィックについて
雰囲気あるキャラクターイラストについては特に批判はありません。ここでは、背景について言及するとします。
この作品に使われている背景は、デジタルカメラで撮った実写写真を加工して使っています。これは、いつかも言及したようなうっかりミス(※5)にさえ気をつければ、経費削減・省力化のため極めて有効な方法なのですが、
既視感を覚え過ぎるのはちょっと・・・(まあ許容範囲)。
サウンドについて
BGMは、サウンドノベルらしく、よく選ばれていると思います。ただ個人的に、ゲーム開始時などに聞ける「カー」というカラスの鳴き声の方が、雰囲気作りに大きな役目を果たしていると思いました。
思うのですが、この作品は内容から言って、主役を鴉に据えるのは必然でした。 だって、クリックの度に「ピーピー」とか「ポッポッポ」とか、「ツクツクホーシ」とか「テッペンハゲタカ」とか聞こえたらたまらんでしょう? あの無責任そうで興味の赴くまま行動していることを誇示するような「カー」という鳴き声以外、自由をテーマとするこの作品にはあり得なかったのです。
全体について(総括)
繰り返しますが、このゲームは探偵ものではありません。 市原悦子演じる家政婦・石崎秋子よろしく覗き見根性を発揮し、登場人物の言動(時に奇態)に立会い、「私、見たんです」を楽しむ、そういう手のゲームです。 そして、あらゆる変なエンディングを見ようと、いろいろ変わったことを試してみて、結果的にとんでもない結末に唖然としてしまうことこそが、この作品を楽しむコツです。
初めは「どうせ真面目っぽいゲームなんだろう・・・」などと言っていた人が、様々なエンディングを見て、半日ぐらいして「何だこの変なゲームは!!!」と言って下さるようになることこそ、推薦者である私の一番の望みなのです。
注釈
- 「読書感想文」
- 本読みの間では有名な、斉藤美奈子「文章読本さん江」。 玉石混交の文章論本界に光を当てたレビューで有名な本です。 論者(私)のような「物書きなんて人の書いた文から我流で学んでやるわい、文章論なんか文法と句読点の打ち方さえ知ってれば屁ップー」な人間には、同意できる点の多い本なので、未読の方は是非御一読を。 もっとも、フリーソフトの作者の中には、取説やヘルプの文章をまともに書かない人をたまに見受けるのですが・・・。 どうか、国語を小学校レベルからやり直してください。ソフトが使えません。
さて、その本の中に、日本ぐらいにしかない学校教育における「読書感想文」について、その実態・背景等を解説・批判した部分があります。 詳細についてはこの本を読んでもらうものとして、個人的には、好きな本や、面白い映画、そして何より楽しかったゲームがあれば、人に勧めたくなって、勝手に感想文なりレビューなりを書いてしまうものだと考えたいところ。 ちょうど、今私が書いてるこの文章みたいにね。
そもそも、先公に命じられて嫌々読んだ本の「読書感想文」が、きちんと書けるわけねェだろッ!!!
(ちょうどこのレビューが掲載される頃の、小中高生の気持ちを代弁)- 「夏目漱石の『吾輩は猫である』」
- 大学の先生の家に転がり込んで名前も付けられずに居座ってしまった猫が、この一家や変人揃いの来客を批判することによって、暗に人間社会を批判するというユーモア小説です・・・なんて説明、今さら不要ですよね。 私が中学3年のとき使っていた国語教科書(光村図書刊)には、冒頭部が掲載されていました。 大抵の日本人には、感想はどうあれ読んだ記憶があることでしょう。
私は今読んでも面白い作品だと思うのですが、いかんせん活字なのが、デジタル世代の我々ゲーマーには難。 そこで、「名作サウンドノベルシリーズ」のsilflu様にお願いなのですが(こんなとこお読みで無いでしょうけど)、この作品もデジタルノベルにしては頂けませんでしょうか? 無論、主人公の猫は可愛らしい猫耳少年(半ズボン・生意気属性)にアレンジして・・・。- 「はるき悦也『じゃりん子チエ』」
- 大阪の下町で住民たちが繰り広げる無茶苦茶極まる珍騒動。 全国の非関西人に大阪ソウルを叩き込み、更には萌え属性の一つとして大阪弁を押し上げてしまった(はずの)、記念碑的作品です。 多角的に大阪の濃さについて知りたいんやったら、とりあえずABC朝日放送「探偵! ナイトスクープ」とこれは抑えとかなあきまへんで!
この漫画、アニメ化もされ、その声優陣に吉本興業の有名芸人が惜しげもなく起用されているのも有名(やろか?)。 ネイティブオーサカンによる大阪弁教材として、要チェックやッ!!!- 「小林まこと『What's Micheal?』」
- 可愛らしい絵柄で縞猫ブームを巻き起こした漫画として有名ですが、その実ネタは大人向けで危なっかしく(小林作品の特徴)、子どもに見せたくない話が多数あるのもよく知られたこと。 何せ、第1話からマイケルが転落死しちゃいますしね・・・。
タイトルにもある主役の猫「マイケル」の名が、小林先生が当時マイケル・ジャクソンのCDを聞いていたことから付いたのも有名で、このことがまた、否応なくあの時代を思わせてくれます。 マイケル、素晴らしかった君の時代は過ぎ去ったんだ。もうステージから身を引いたらどうだい? こんな思い出("FLASH"→"マイケルクエスト"等)に浸りながらさ・・・。- 「いつかも言及したようなうっかりミス」
- 私の「あやかし」レビュー参照のこと。 なお、この項目自体にはネタはありません。
終わりに
私はこの作品のレビュー中、敢えて烏丸善治殺人事件の解決に関連したことについて、全く言及しませんでした。多分、他のレビュワー陣も概ねそうなっているのではと予想します。
しかし、この事件を解決する流れも、それらしい感動的なものが用意されておりますのでご安心を。こうした真っ当な筋がよいからこそ、変なサブエンディングも堂々と異彩を放ちまくれるというものです。作者である飼育係様の芸風の広さに、感謝。
《 銅たぬき 》 ハマリ度:8 グラフィック:8 サウンド:7
都会の片隅で起きたファンタジー
- ハマリ度8/10
- エンディング数がメイン8、サブ8と膨大。 ちゃんとヒントもあるのでコンプのために何度もプレイしてしまう。
1週が30分以内で終わるのも、週回数を重ねる一因になっている。
- グラフィック8/10
- ストーリーの雰囲気に合っている丁寧な絵に好印象。このストーリーで萌え萌えな絵だったら逆に嫌です。
っていうか、オープニングの周囲を見回す美耶子嬢の目が怖すぎるんですが。
- サウンド7/10
- 場面転換時に効果音としてカラスの鳴き声を入れたのは雰囲気作りに一役買っていてGood。
このような細かい心遣いがにくい。今回レビュー初挑戦ということで、色々と至らぬ点があるかもしれませんが、ご容赦いただきたい。とあらかじめ言い訳しておきます。
本作の最大の魅力はやはり6日間、8箇所の計48エピソードから6エピソードを選んでストーリーを構築できる自由度の高さでしょう。
冒頭で起きる殺人事件の犯人を追うもよし、入院している彼女(?)に面会に行くもよし、はたまた、愚かなる人間どもに反旗を翻すもよしです。
ただし、エンディング8のループを抜けて特定のエンディングにたどり着くにはそれなりにポリシーをもって行動しなくてはなりません。
3、4週もすればどこでなにが起きるか見えてくるので「これとこれとこれを見れば、このエンディングに行きそう」と考えながら自分でストーリーを組み上げられるのが実に面白い。
エンディングも全部で16と豊富にあるのでぜひ、コンプリートしていただきたい。
以上からわかるようにこのゲーム、何度もプレイすることが前提となっております。
わたしですか?30週ほどしておりますですよ。
はいそこ、暇人とか言わない!
それゆえに個別エピソードに入る前の事件経緯を語る共通部分がだんだんとうっとおしく感じてしまうのです。「選択肢までスキップ」で飛ばせるんですが、できれば見る、見ないが選択できるとよりユーザーフレンドリーだったなぁと感じました。 オープニングも同様に見る、見ないが選べると良かったです。
それと、選択肢によっては1日目にして真犯人がわかってしまうというのはどうかと。
また、凶器は主人公が回収したはずなのに、真犯人の部屋で決定的な証拠として再登場するのは明らかにつじつまが合っていません。 ミステリーであるならばこのあたりはしっかり矛盾ないようにしてほしかったと思います。
- (補足)
- 2011.08.11:この点については、作者のページで捕捉されています。「鴉の断音符」のページ→「Q&A」をご覧ください。ネタバレを含むため、クリア後の閲覧をお勧めします。
(yon さま、情報ありがとうございます。)
- 総評1
- ひとつひとつのエピソードはカラスのくせに人間臭く、それでいて食い意地張っている主人公ヤタくんがいい味出してなかなかに楽しめました。特にエンディング#1,2,3は同じシーンながら、受ける印象・後味・結末が変わるように書かれており非常に面白かったです。
ミステリーとしてはやさしいので物足りないかもしれませんが、人語を話すカラスをめぐるファンタジーとして十分に楽しめる佳作だと感じました。個人的には人語を解するならともかく話すのはどうかと…。その意味でもファンタジーとさせていただきました。
えーちなみにわたしのお気に入りのエンディングは#6[咎人の遁走曲]。 作者様のHPでのエンディング人気投票では12位(得票数3票。ただし1票はわたし)(8/5時点) わたしの感覚は世間一般とは大幅に違うようです……。- 総評2
- 今回、このHPの趣旨と外れた硬めのレビューを送ってしまったことをここにお詫びします。(謝る振りだけ)
次回はネタとキャラに焦点を合わせたHPの趣旨に合うレビューをお送りしたいと思います。(気概だけ)