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■ ミッドナイトシンドローム

ミッドナイトシンドローム
作者 [ ナツミカン さま ]
ジャンル [ ホラーアドベンチャー ]
容量・圧縮形式 [ 338MB・ZIP,ブラウザゲーム ]
製作ツール [ RPGツクールMV ]
言語 [ 日本語 ]
備考 [ ブラウザでも遊べます(plicy) ]
[ 550円の投げ銭もあり(booth) ]
[ 設定資料集が販売中(ダウンロード版:1,000円、製本版:2,590円) ]
配布元 ダウンロード先

ミッドナイトシンドローム ミッドナイトシンドローム ミッドナイトシンドローム ミッドナイトシンドローム ミッドナイトシンドローム ミッドナイトシンドローム

レビュワーハマリ度グラフィック サウンド合計総合判定
ES 9 /10 10/10 10/10 55/60 A
赤松弥太郎 8 /10 9 /10 9 /10

 《 ES 》  ハマリ度:9 グラフィック:10 サウンド:10

どれが怪異なのか、どこからが間違いなのか、それを痛感する1周目。
それを解明する2周目。

「ミッドナイトシンドローム」…5編以上にも及ぶオムニバスは、章ごとにその毛色も様々です。
典型的な学園鬼ごっこである第1章
(3枚目のスクリーンショットにある)会話選択で神の真実を暴いていく第2章
群を抜いて謎解きが多い第3章
選択した主人公に応じて三者三様の反応と展開が楽しめる、異世界ホラーの第4章
そして、いじめなどの胸糞悪い展開が多い第5章…
ネタバレに触れずに語れるこの5章でも、数多くのバリエーションが存在します。

その展開は、ネタバレであまり語れない6章以降、更に盛り上がりを見せます。
ただ、その中で要注意点が2つほど存在します。
1つは、終盤の追いかけっこ。これがかなり難易度が高く、突然足が重くなったり、急な方向転換を要求されたりと、私はかなりのリトライを積まされました。
かなりの長丁場にもかかわらず、追いかけっこの開始から終了まで一切セーブができない点も、この難易度の高さに拍車をかけています。
ただ、これは私がパッド派であることも原因の1つかもしれません。本作、第1章などの「こっくりさん」の操作(マウスカーソルを常に10円玉の上に合わせる)を見ても分かるように、マウス操作を基準としている面があります。急な分かれ道も、突然遅くなる脚も、「行き先を予約できる」マウス操作で動かせば、突っかかる心配なしに動けます。
ただし、マウス操作はマウス操作で「道の途中に障害物がある」シーンでは途中で止まる、または意図せぬ方向に動くデメリットもあります。本作の追いかけっこは「真ん中に障害物がある」通路も多く、中には「踏んだ瞬間に障害物が発生し、後戻りを強いられる」シーンもあります。そういう場合は、細かく行き先を指定して対応しましょう。

もう一つの要注意点は、ENDの分岐条件です。本作は、意図して最初に見るENDを調整しています。その展開は、人によっては絶望となるでしょう。ネタバレに触れず、なおかつ衝撃への覚悟は持ってほしい私から言える、最低限の言及です。
さんざん苦労してクリアした展開が、あのラストだったという絶望…何処で間違っていたのか全く分からないという絶望…。しかし、本作はその対策もしっかりしています。一度クリアすれば分岐条件と攻略法が分かるおまけ部屋が解放されるのです。その分岐条件を見れば驚くでしょう。「最初に見るENDに導く」意図が、かなりあからさまであることに。
私としても、「あのEND」を最初に見てもらいたいため、その分岐条件に付いては流石に言えません。初見の皆様は「素直に」プレイしてください。それが最も難易度の低い道筋でもあるのです。

ぜひ、あなたご自身の目で、3人の衝撃的な結末、衝撃的な過去、そして、それをどう乗り越えてHAPPY ENDに導くのか…本作「ミッドナイトシンドローム」の隅から隅までを目の当たりにしてください。
プレイ時間は1周で2~3時間程度。周回を重ねる場合は、その周回数分プレイ時間は倍増していきます。
周回を楽にするため、END後のセーブをロードすると、各章の頭出しができるようになっています。☆が付いたこのセーブは絶対に消さないよう、分かりやすい場所に保存しておきましょう。

 《 赤松弥太郎 》  ハマリ度:8 グラフィック:9 サウンド:9

知らないという罪と知りすぎる罠 動けなくなる前に動きだそう

 ここまでホラーアドベンチャーが擦られ続けた昨今、導入だけで他作品と差別化するのはまあまあ無理があります。
 夜中の学校に侵入してこっくりさんやろうぜイェーイ!! で始まるゲームなんて、それこそ枚挙に暇が無いでしょうし。
 ただ、本作の特色、というか異様さは、開始しばらくすると違和感が出てきます。
 主人公たちの紹介や説明が、一切無いのです。

 ボクも最初は大して気に留めてなかったんですよ。
 猫口の猫屋だとか、ぽんずだとか、名前でインパクトを出してキャラを覚えてもらって、紹介や掘り下げは後回しにするつもりかなと。
 ところがゲームを進めていっても、「こいつはこういうヤツ」だと言う以上の、バックボーンが見えてこないのです。
 むしろ情報が増えるほど、「どうしてこうなっちゃったんだ?」と思うことが増えていきます。

 3人の関係性が、なんとも不自然なんですよ。
 高校の人間関係ってほとんどが、同学年か、同じ部活か、どっちかじゃないですか。
 ところがこの3人、猫屋だけが超常現象解明部に所属。他2人は帰宅部で、しかも学年も猫屋の1つ上。
 こっくりさんやるなら、超常現象解明部だけでやれよって思いませんか?

 かといって3人が大の仲良しかというと……微妙な緊張が見えるんですよね。
 ストーリーを進めていくと、藤田はつい最近、この神舞町に引っ越してきたばかりだとわかります。
 長年の親友かのようにふるまってる霧下ですが、実はお互いのことを、ほとんど何も知りません。
 なんか距離感バグってるんですよ、3人とも。
 猫屋は、まあいい。空気が読めない、距離感が異常に近いヤツと繰り返し描かれてますから。
 でも霧下や藤田、特に猫屋と相性も良くなく、つまるところ「友だちの友だち」でしかない藤田が、付き合ってわざわざ深夜の学校に忍び込む必要なんて無いでしょう?

 もちろん、この違和感は計算されたものです。
 どうしてこの3人が出会い、そして今友だちでいるのか、という種明かしは、本作の根幹に関わる部分です。
 そして、本作のプレイを進めていく上で、プレイヤーの原動力になる疑問でもあります。
 ぜひ楽しみにプレイを進めてください。いつか必ず、真相は解き明かされますから。

 ……しかし一方で、こうも思うのです。
 「友であることに理由なんて必要か?」と。

 そりゃ、プレイヤー視点としては疑問ですよ。危険な目に遭ったり遭わせたりしてる関係ですし。
 友だち選んだ方がいいんじゃないかとか、友だちなら全力で止めろよとか思いますよ。だって、わからないから。
 でも、自分のことを振り返って、本当に友だちのことを理解してるのか? と考えてみると……全部が全部知ってるわけじゃないでしょう。
 相手が話してくれたことしか知らないし、自分にとって興味のあることしか覚えてません。
 出会いとか、過去のいきさつとかよりも、今、友だちであることの方が、よほど重要じゃないですか。
 友だちだから付き合う、助け合う。本作の3人も結局はそれだけです。
 ……部外者であるプレイヤーから見たときに、ついていけないっていうだけで。

 本作もまた、2周前提の作品です。
 よほど注意深く意地の悪いプレイをしない限り、1周目ではTrueルートに行くように調整されており、ボクからもそれを強く推奨します。
 Trueルートに誘導されて、プレイヤーは1周目で本作のすべての情報を知ることになります。もう1つのルートで新規開示される情報は、ほぼゼロです。
 なので1周目、Trueエンドを見たところでプレイを止めるのも、選択肢としてアリだとボクは思います。それもひとつの立派なエンディングです。
 もう1つのルートがどういうルートなのか、Trueエンドを見た時点でわかるでしょうし、その予想通りです。驚く展開はありません。
 2周しなきゃならないと思わず、もう1周するかどうかは、1回クリアしてから考えてもいいんじゃないでしょうか。
 ……まあ実際のところ、そこまでプレイしたらほとんどの人は2周するだろうと思ってますが。

 ただ、2周すると、色々本作の弱い所も見えてきちゃうんですよね。

ハマリ度 : 8 / 10
 マウス操作のミニゲームはアクセントとして機能している。マウス使用前のインターバルもあり、不親切さや不便さは感じなかった。
 猫屋の調査パートも、そうしたリズムを作るためのものだが、校舎マップが広すぎるのが面倒くさい。常時ダッシュオプションも無いし、ダッシュしてなお広い。教室の扉が出入りで上下逆向きになるのも混乱する。コンパクトにしようとする努力は見られるものの、もっと簡潔にできないか。
 台詞ウィンドウの発言者欄がちょくちょく間違っている。本作の場合そこが間違っていると、全体的な雰囲気で誰の発言か同定するしかないし、できない場合もある。

(管理人補足)本作のオプションはタイトルメニューのみ存在します。タイトルメニューのオプションでは「常時ダッシュ」と「BGM音量調整」のみできます。
ゲーム中のメニュー(Xキー)にオプションが無いこと、決定キー押しっぱなしでの早送りを「あえて」無効にしている点については、私も気になった箇所ではありますが。
グラフィック : 9 / 10
 描き下ろしの立ち絵や一枚絵は素晴らしい。反面、キャラチップは全体的に没個性的で、特に霧下は主人公とわかりにくい。制服の弱みでもある。
 ドット調の明朝フォントを採用しているが、これは「ホラーっぽい感じ」という以上の働きはなさそう。
サウンド : 9 / 10
 BGMはごくごく絞った場面でのみ使用、きちんと印象が残る。SEにも違和感は無し。
 一箇所イヤホン・ヘッドホン必須のギミックがあるので、スピーカーでプレイしている人は注意。

 Ctrlのイベントスキップがあるとはいえ、2周目やろうとすると中盤からやり直しになるので、そこはやっぱりしんどかった感じです。
 ただ、モチベーションはしっかりしてるし、自分で選んだ道という納得感はあるので、その点は良かったです。
 こういう2周目ももっと増えればいいなと思うんですが、読者さんにそれを説明するとモロのネタバレになっちゃうんでね、プレイしてもらうしか無いんですよ。残念だなあ。

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