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■ そろそろ寿司を食べないと死ぬぜ!

そろそろ寿司を食べないと死ぬぜ!
作者 [ ただすめん さま ]
ジャンル [ 寿司を食べまくる3Dアクション ]
容量・圧縮形式 [ 2.82GB・ZIP ]
製作ツール [ Unreal Engine 4 ]
言語 [ 日本語 (一部英語対応) ]
配布元 ダウンロード先

そろそろ寿司を食べないと死ぬぜ! そろそろ寿司を食べないと死ぬぜ! そろそろ寿司を食べないと死ぬぜ! そろそろ寿司を食べないと死ぬぜ! そろそろ寿司を食べないと死ぬぜ! そろそろ寿司を食べないと死ぬぜ!

レビュワーハマリ度グラフィック サウンド合計総合判定
ES 8 /10 9 /10 10/10 52/60 B
赤松弥太郎 8 /10 9 /10 8 /10

 《 ES 》  ハマリ度:8 グラフィック:9 サウンド:10

みんなでワイワイ楽しもう!! さもなくば憤死。

2010年代以降のゲーム文化として外せない「実況プレイ動画」。本作「そろそろ寿司を食べないと死ぬぜ!」の作者・ただすめん氏は、その「実況プレイに『映える』」作品を数多生み出し、そのたびにバズを呼んだゲーム作者です。
私の個人レビューとして取り上げた「インスタに映えし者」を初めとして、「PIEN」「PAON」のシリーズ、そして、最新作の「体育館の天井に挟まったマッチョを助けるゲーム」、開発中のホラー音ゲー「推色」…ただすめん氏の作品はリリースや開発ニュースが出るたびに大きな話題となりました。
小粒な作品がほとんどだった作品の中で、今回の「そろそろ寿司を食べないと死ぬぜ!」は、かなりのボリュームを持つ3Dアクションとなりました。我々「フリーソフト超激辛ゲームレビュー」も、20年以上の禁を破って【BAKA】ジャンルでのイチオシレビューとして取り上げることとなりました。

本作「そろそろ寿司を食べないと死ぬぜ!」の人気の理由であるテンポとテンションは、パッと見のバカらしさ以上には、高品質で綿密に計算されたものになっています。
ここで言葉で語るよりも、作者自らがアップロードした動画を見ていただいた方が、最高のテンションとテンポが伝わることでしょう。
この「映える」ゲーム展開は、人気の高さと話題性の根拠としては充分すぎるものです。

そして、それを自らの手で動かすとなると…。「難しい」では済まない「難点」が数々存在します。
本作は、「数秒しかもたないライフを、広大な箱庭ステージに散らばったアイテムで食いつなぎながらクリアを目指す3Dアクション」。ステージの大まかな内容は、以下の3つに分けられます。

このいずれにも共通した欠点があります。「主人公の視界に無い寿司は一切知覚できない」ことです。ミニマップや矢印など「視界外の寿司」を把握できる仕掛けが存在しないのです。
それを一番痛感するのが、よりによって最初のステージ。ここは、寿司のガイドラインに従うと、桟橋でジャンプしたところで主人公の視界から寿司が消える構成になっています。残り5個程度あるノルマを達成するには、ジャンプ中に桟橋を逆戻りして池の周りの寿司を集める必要があるのです。ここが、本作の死にゲーポイントとなっています。

「寿司が降ってくる特殊なステージを除き、一度取った寿司はリスタートするまで復活しない」という点も、本作の難しさの一因です。
これが最も難点となるのがアスレチック。アスレチックは一本道だけに、一度足を滑らせて逆戻りしてしまうと、寿司が喰いつくされたコースを走らざるを得ません。一応、救済措置用のジャンプ台はチラホラと用意されていますが、大抵は戻ろうとする前に「死んだぜ」となります。

本作、リスタートを含めたテンポの良さから、テンションアゲアゲMAXで楽しむには打ってつけの作品です。その反面、ストレスでテンションが切れると一気に辛くなる作品です。
飛ばせないムービーシーン、見つからない寿司、意外と密度が高くスムーズな走行を阻害する「ぴえん」「毒寿司」などの地雷トラップ…「死んだぜ」を繰り返すたびに、これらのストレス要素が見えない重荷となってプレイヤーの指先と脳みそを縛り付けます。
これらの短所を補う意味でも「実況配信」は強みでした。失敗の連続も、実況配信ならば「撮れ高」となり、視聴者と共に笑いあえるからです。
環境や性格などの理由により「みんなでワイワイ」ができない方は、テンションでストレスを抑えにくいという短所がつらい作品になるかもしれません。
幸いにして、本作はステージごとのオートセーブで、マルチエンドも全ステージクリアによる特典もありません。度重なる「死んだぜ」に辛くなった方は、プレイを中断し、心地いいものを見て目と脳みそを休めましょう。

 《 赤松弥太郎 》  ハマリ度:8 グラフィック:9 サウンド:8

阿呆になっても……ソーレ! いいじゃないか

 このレビューを読んでいる人の中で、寿司を知らない人はまずいないでしょう。見たことがない人もごく少数のはずです。
 にぎり寿司は19世紀初期に江戸で生まれて以来人気を博し、冷蔵技術の発展に伴い全国に普及した料理です。戦中戦後の危機を乗り越え、ついには日本を代表する料理のひとつに数えられるまでになりました。
 文化にも大きく影響しており、俳句では夏の季語です。「義経千本桜」にも鮓屋の段という、寿司屋を舞台にしたくだりがあります。
 もちろん寿司を題材にしたゲームも、本作に限らず数多くあるのですが、えてして寿司が関連しただけでネタゲー呼ばわりされる傾向があります寿司だけに。なんたることでしょう。

 本作がどれほど真面目に作られているか、プレイすればわかります。

タイトル
 開始早々、「やぁぁぁってやるぜ!」の雄叫びと同時に、大量の寿司に押しつぶされる主人公。

オープニング
 寿司の存在が消滅してしまうという危機的状況に対し「なるほど!」「何っ!」と食い気味に相槌を打つ、人の話を聞いているとは思えない態度の主人公。

ステージ
 「寿司!! 美味すぎる! ふざけやがって!」だの、
 「寿司!! 美味すぎておかしくなりそうだ!」だの、
 時既にお寿司寿司を食う度に大騒ぎする主人公。

イベント
 「寿司は、美味すぎたのだ……」などと嘯きながら、寿司の存在を宇宙から消そうとするラスボス。

 こうしたスクショだけを見て、「ただのギャグゲー」と判断するのは、まったく表面的で浅い見方です。
 寿司であるということだけが異常で、ストーリーラインはごく一般的な魔王勇者ものです。
 そう考えると、本作における寿司は、マクガフィンであると言えるでしょう。ルパン三世における財宝みたいに、作劇上は寿司でなくても話は成立するのです。
 本作の「寿司」を「クリスタル」に置き換えれば、これは立派なファイナルファンタジーじゃありませんか。異論は認める。

 そのことに気付けば、ゲームシステムも既視感のある、オーソドックスかつストイックなものだとわかります。
 本作ははっきりとマリオ64リスペクトです。「寿司」を「コイン」に置き換えれば、本作は敵に攻撃できないマリオ64と言って差し支えありません。
 「寿司を食べまくれ!」は100枚コイン、「ゴールを目指せ!」は通常スター、「貝の寿司を8貫食べろ!」はコインに見事対応します。
 体力ゲージが減り続け、寿司を食べることによって回復する、という本作の特徴的なシステムも、マリオ64の水中コインと同様です。
 そんな見え見えの事実を、あくまでバカゲーであると主張するために覆い隠しているのです、
PIENの館
そのビジュアルによって。

 つまり本作は、バカゲーであると同時に、クラシカルな3Dジャンプアクションとしての側面も持ち合わせています。
 であるからこそ、本作は激辛史上初のバカゲーイチオシに選ばれたのです。
 笑えればクソゲーでも構わない、という評点基準をボクは採っていないので、アクションとしての出来は、それはそれとして考えます。
 その観点で本作をプレイすると、よく考えられていると感心する部分もある一方、割と序盤でジャンプアクションとしての難点は露呈してしまいます。

カートゥーンなシティ
 まず、2番目のステージ「カートゥーンなシティ」でのこと。
 このステージは、最初のステージ「でかぶつのもり」と比べ、さらに見通しが悪くなっています。
 高低差を活かしたステージ構成で、ビルの屋上にも寿司が散らばっていますが、まあ路上からでは見えません。
 末期的寿司中毒に冒された主人公には、目の前の寿司しか見えておらず、ただ突撃を繰り返します。
 そして、自分が既に通った道だと気付かずに、「寿司が無い! 寿司が無い! うおおおお!!」と爆死。ちょっと首を曲げれば寿司はあるというのに。
 そう、本作にはマップもレーダーも無いのです。
 さすがに赤貝集めでは、天高く赤い光の柱がそびえ立ちますし、近づけば(なぜか)法螺貝の音も聞こえるようになってますが、それでも見落とすから笑えません。

 このあたりまでプレイすると、そろそろ主人公のティッシュジャンプに我慢ならなくなってきます。
 空中での軌道変更はできるとはいえ、一度ジャンプするとかなり長い間空中に拘束されます。
 うかつにジャンプ台に乗ってしまい、滞空している間にいのちゲージが消耗、そのまま爆死、というのは、誰もが通る道でしょう。
 しかし、そんなティッシュジャンプに助けられる場面も、ありそうな気がするでしょ?

どうぶつタワー
 はい、みんな大嫌いなアスレチック面です。
 傍で見てる分には笑えるでしょうが、プレイするとほんとにイラつくんですよこれ。
 まず通常のTPS視点、手前から奥に向かってのジャンプで距離を把握することは、極めて困難です。
 滞空長めのジャンプで位置を調整してね、ということなんでしょうが、強めの慣性が働く本作のジャンプでは、跳んでしまうと着地点の微調整なんてまず無理です。
 そして一度転落してしまうと、ルート上の寿司を食べてしまうため、リカバリできないことがほとんどです。
 トドメに本作、崖際の踏みとどまりも、よじ登りも無いというのがひどい。
 それでいて、重力はきちんと仕事していて、傾いてる足場には見た目通り滑落の危険性があるんです。
 せっかくビジュアルで笑わせようとしているのに、プレイヤーが寿司と足場を注視するばかりでは、その楽しみも半減ですよ。

 3Dアクション黎明期の傑作、マリオ64と比較しても、本作の不足は明らかです。
 マリオ64にすら、よじ登りはありました。DS版ではマップも追加されています。
 あと、マリオの等身が低かった点も大きいです。
 全力でダッシュしても、そこまでスピードが出ないから、周りを見回す余裕があるんですね。ジャンプの制御もしやすいです。
 一方本作の主人公は、寿司を目がけてまっしぐら、フルスピードですから、そりゃあ周りも見えないわけですよ……。

 よって、本作をアクションゲームとしてのみ見た場合、操作性に難があるタイプの死にゲーとなります。
 死にゲーにも納得感を期待するボクの考え方からすると、納得のいかない死を繰り返し味わわされる本作は、やはりストレスフルです。
 では、レーダーやよじ登りを搭載すれば、本作はもっと素晴らしい作品になるのか?
 ……どうなんですかね。
 ここまで計算して「笑い」を追求している本作で、ここに挙げた程度の問題点は絶対に気付いてるハズです。
 だって、「寿司はマクガフィン」というプレイヤーのツッコミを察して、それを逆手に取った展開を終盤に用意してくる作品ですよ?

 言っちゃえば、バカゲーというのは笑っちゃったら負けなんです。
 デカデカと表示される「死んだぜ」の字幕、その死因も「寿司を食わないと死ぬって言ったのに、寿司を食わなかったから」という、本作以外ではお目に掛からない理由。
 死に続けること自体を天丼ギャグにしている死にゲーにおいて、このシュールさはやっぱり強いです。
 笑えるから、プレイヤー自身の些細なミスのせいで死んでしまうことも、多少は許そうと思えるわけです。

 逆に言えば、笑えているうちが華ですからね!
 死に続けている内にだんだん笑えなくなり、ひとまずストーリーにオチを付けたいという気持ちも薄れてきたら、一旦離れるか、ゴミ箱にシュートするか、考えた方がいいです。
 幸い、クリアに必要なスシソウルは16個と多くはありません。必須のミッションは最初の「大自然の中で食べる寿司」とラストバトルくらいで、他はできそうなものを選択すればいいのです。
 ボリューム設計は非常に的確です。飽き足らなければ、40ソウルコンプを目指してもいいんですから。

 導入のスムーズさや見た目のわかりやすさなど、触れたい点は他にもあるのですが。
 グラフィックとサウンドについて触れて評点としましょう。

グラフィック : 9 / 10
 単にアセット素材を並べるだけでは生まれ得ない、計算された演出が勉強になる。PIENの館でかかるホラー調のフィルターも、動作が重くなる難点はあるが、やはり必要な演出。
 やはりプレイヤーに見回す余裕が無いのが残念。動画映えはすることでしょう。
サウンド : 8 / 10
 最大の不満は寿司を食べた時の音。本作で最も重要な音だが、かなり高く、食べたという手応えが薄い。その点でも「コイーン」から「チリン」に変えたマリオ64のバランス感覚はすごい。
 音声は、ラスボスの声がだいぶ聞き取りづらい。ただラストバトル、主人公の雄叫びがうるさすぎるのは意図した演出だろう。
 選曲は文句なし、主題歌の使い方もよくハマっている。そろそろバンバード Piano Versionは過労死しないか心配。

 2000年代後半から死にゲーが大流行した背景には、動画サイトで気軽に共有できるようになったことが大きいわけですが。
 本作も、いわゆる「映え」を強く意識した作品です。
 まあボクは孤独のゲーマーですので、「映え」にはあまり価値を感じていないのですが、それでも感心するところは多々ありました。
 でも、やっぱり、ゲームはプレイしてナンボです。
 主人公の珍道中、ぜひご自身の手と目でお確かめあれ。

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