■ ローグライクVida
作者 [ エレゾウケイ さま ] ジャンル [ ローグライクカードゲーム ] 容量・圧縮形式 [ ダウンロード不要・ブラウザゲーム専用 ] 言語 [ 日本語 ] 配布元 (フリーゲーム夢現)
(Plicy)
レビュワー ハマリ度 グラフィック サウンド 合計 総合判定 ES 9 /10 10/10 9 /10 53/60 赤松弥太郎 9 /10 8 /10 8 /10
《 ES 》 ハマリ度:9 グラフィック:10 サウンド:9
暗闇の迷宮にて、掴んだものは何か。
本作「ローグライクVida」の特徴は、その名の通り隅々にまで「ローグライク」が行き渡ったゲーム展開にあります。
得手不得手がはっきりしているキャラクターセレクト、宝箱でランダムに手に入る超便利なアイテム、行く先の選択すら朧げなシルエットしか分からず、お助けキャラが来るのを祈って進めるしかない場面も多々あります。
乱数が左右される「ローグライク」に、さらに加わったのが引き運が要求される「カードゲーム」。目当てが引けなかったことで泣きを見る場面、逆に使用すればいつでもカードを補充できるアイテムをやりくりする要素…本作で求められる「知識」も、ローグライク+カードゲームとなったことで激増しています。
そう、本作ではとにかく求められる知識が数多くあります。その最もたるものが、最初に選ぶ主人公の性能。
最も初心者向けと公称されているのが「おじいちゃん」こと「ファイター」。打撃一辺倒・高コストの初期カードに、「右端にいるとコスト半分」という能力で、「とにかく高威力で殴り続けるだけ」という最も分かりやすい使い方になっています。
そのぶん欠点も数多くあります。最もたるものが「手数の少なさ」。「ダメージが常に1となる」人魂シルエットの敵に対しては、「絶対に選ぶな」と攻略でも言われるほどに苦手な相手となっています。
もう一つが「搦め手を使えない」点。本作では、カードによる攻撃のほかに、ダメージソースが多種類あります。
- 召喚獣を[ば](画面中央のターン経過を表すフィールド)に出すスキル。スキル使用直後は効果がないが、特定のスキル使用時に追撃・ターン([ば]を右から左に移動するハートが召喚獣に重なった時)に効果発動など、[ば]の召喚獣が多くなるほど手が付けられなくなるスキル。
- [やけど][どく]などのデバフ。行動が来るたびにダメージが来るため、気づいた時には瀕死となる怖いデバフ。もちろん主人公側にも、ネクロマンサーなどデバフが主能力となるキャラがいる。
これら複雑なダメージスキルは、対策を覚えていないと面白いように蹂躙されます。
召喚獣に対しては「同じ[ば]で召喚スキルを使えば、召喚獣を自身のスキルに上書きできる」という性質があります。相手のアドバンテージの奪取、自分のアドバンテージの促進を同時にできる対策です。しかし、「召喚獣の上書き」が対策レベルで使えるのは、ソーサラー・ネクロマンサーなどの召喚特化のキャラぐらい。ファイターなど即時発動スキルが主体の場合、「[ば]が整う前に速攻」ぐらいしか対策がありません。
私の初死亡も、召喚特化のボスキャラ「ライトニングドール」でした。それまで耐久用に重宝していた「ようせいらんぶ」を「らくらい」「ターゲティング」で打ち消され、そのまま蹂躙されました。より厄介なのがデバフ類。[やけど][どく]などのダメージ以外にも、デバフはどいつもこいつもバトルが成り立たないレベルの不利効果を与えてきます。
特定属性の威力を下げる[ふしょく][だつりょく][ちんもく]
手札がどんどん減っていく[ものわすれ][とうけつ][もうろう]
[くらやみ]に至っては、カード・行き先がほぼ分からなくなります。枠の形が異なるレアスキル・ボスが辛うじて判別できるぐらい。
戦闘終了後も残る=掛けた敵を速攻で倒しても対策にならず、次の戦闘にまで影響が出るデバフへの対策は、対応するバフ・アイテムを身に着けるほかありません。健康ジジイに金を払って[しゅくふく](効果中は全デバフを跳ねのける)を得るのが最も強力かつ手っ取り早い手段ですが、当然バフも時間経過で消失します。バフもデバフも、効果の切れ目には要注意です。
階層が進むほど、デバフは掛かる頻度もそれによる悪影響も重くなります。使用キャラにとって最も「痛い」デバフを、それまでの道中で対策を手に入れるか、使う敵に出会わないよう道筋を考えるか、相当な経験と知識が要求されます。本作は、相当に頭を使うゲームです。ソーサラーやプリーストなど、真価を発揮するまでに時間がかかるキャラを使う場合は、集中力まで大きく削れてきます。
だからこそ、本作は刺激的で充実したゲームでもあるのです。戦闘を繰り返すたびに得られる知識、思わぬところで出会う強力アイテムや面白キャラ、そして、最奥で分かる[しょうじょのきばこ]の真相…迷宮は、常に新しい刺激を冒険者たる[あなた]に与えてくれるでしょう。
《 赤松弥太郎 》 ハマリ度:9 グラフィック:8 サウンド:8
風に捲られたカード 占うように笑う
かつて、Vidaというゲームがあったらしいです。
伝聞形なのはつまり、ボクがプレイする前に公開終了していたからでして。
ボクが知っているのはわずかに、ラスボス戦の曲と、独特なCTBを採用していたらしい、という噂だけ……
そんなボクには、本作と前作の関係性や、ストーリーのつながり等を語ることはできません。
前作とは違い、1プレイ1時間程度のボリュームですから、ぜひ真エンドまで辿り着いて、その目で確かめて頂きたい。
……と、言うのは簡単なんですが。
本作は、初見でのクリアが極めて困難です。
ボクのようなぼんくらだと、何十回プレイしても真エンドに辿り着けないことでしょう。
本作の1プレイから得られる経験が、真エンド攻略という目的に対して少ないのが、その原因の1つです。
ローグライクとしては、道中拾えるアイテムの種類が多いのは歓迎すべきことです。アイテムを拾う機会が多く、リロール数も多いのに、何回もプレイしても出てこないアイテムもあり、新しい発見があります。
問題は、アイテム欄の狭さ。
本作のアイテム欄は、全キャラ共通で4枠しかありません。真エンドを目指す場合、1つは[しょうじょのきばこ]で潰れるので、残りはたったの3枠。
もちろん枠が少ない分、本作のアイテムは強力な効果を持つものが多く、3枠で十二分に戦えます。適切なアイテムさえ選べれば。
初見では、取捨選択が本当にムリなんです。
アイテム欄の狭さ故に、ローグライクの生命線であるトライ & エラーがしづらくなってるんですよね。
気になるアイテムを見つけて、とりあえず使用感を確認しようと数回戦うか戦わないかのタイミングで、だいたい新しい宝箱を見つけてしまいます。
今のデッキでも戦えてるという状況で、強力そうだけど立ち回りが変わるアイテムを引いたとき、あなたは使い慣れたアイテムを捨てられますか?
で、捨てちゃったときに限って、後々その捨てたアイテムとシナジーのあるアイテムを拾う、なんてことも、あるあるですね。
拾ったアイテムによって立ち回りが大きく変わる、というのが厄介なポイントです。
再び同じアイテムを拾えるかは完全に運なので、プレイヤー経験がなかなか貯まらないのです。
まあ、アイテム同士のシナジーを狙うのは、ぶっちゃけ愚策です。
特定のアイテムを拾う偶然の上に、さらにそれと相性の良い特定のアイテムを拾う偶然なんて、狙うべきじゃありません。
基本は最初に選んだキャラ……カードゲームで言えば「構築済みデッキ」……を中心に、それと相性の良いアイテムを狙っていくべきです。
最初のキャラ選択は非常に重要です。紹介文にも明記されていますが、本作は最初に選ぶキャラによって、難易度に大きな開きがあります。
しかし初心者が、14(+1)人もいる初期キャラの中で誰が一番真エンド攻略に近いか、初見でわかるものなのでしょうか?
ええ、嘘は言ってません。ファイターは初心者にも扱いやすいキャラです。
真エンド攻略が容易であるとはどこにも書いてない。
ボクはまるでやり込んでないので確たることは言えないんですが。これ以上に厳しいキャラもいくらでもいるとは言え、それにしても真ん中か、若干下くらいじゃないかな?
でもそれ以上の理由があって、ボクはこのキャラを初心者にはオススメしません。
ファイターの魅力は、なんといってもそのわかりやすさです。
初期カードが[きほんこうげき]以外全て打撃、高コスト高火力のカードで占められています。
右端で打撃カードのコストを半減するパッシブ[きんにくのかまえ]と初期カードのシナジーは、とにかく強烈の一語。
右端で高火力打撃→左端まで出せるだけカードを出して〆の打撃→左端から高コストカードで右端を目指す、というパターンが確立してます。
打撃に集中した構築のため、[ふしょく]や[ちんもく]等の状態異常にかかっても問題ない、というのもメリットです。
裏を返せば、柔軟性に極めて乏しいとも言えます。
初期構築が[きんにくのかまえ]に依存しすぎなのが大問題。初期カードではターン終わりに右端に復帰できなくなる中盤以降、そこに手当てをしないと大きく弱体化します。
初期カードのコストが全て重いため、[きんにくのかまえ]込みでも、手数は全キャラ中最少です。ダメージを1に抑える精霊系の敵は天敵です。
さらに本作は、行動回数の少なさが状態異常の治りにくさに直結します。中盤以降は体勢を立て直すのも一苦労。
全キャラ最大のHPといっても、敵が一撃で倒せなくなる中盤からはダメージがかさむ一方で……
中盤以降、様々な局面で初期デッキの穴が露呈するので、アイテムで補わなきゃいけない箇所が多いんですよ。
いっそ1ターンキルに賭けたアイテム構成にした方が勝率は上がるかもしれませんが、狙ってできるわけじゃありません。
初期カードが偏りすぎてるせいで、シナジーのあるアイテムが限られるのも痛いところです。
斬撃や刺突、魔法と比べ、打撃強化のアイテムはバリエーションが少なく、魅力的な効果も少ない傾向にあります。
素の火力が高いので、何回かプレイすればノーマルエンドには辿り着くでしょう。しかし、ノーマルエンドと真エンドの間には深い溝があります。
そして何より、単調なデッキ回しになりがちで、上達している実感に乏しいのがオススメしない理由です。
真エンドを目指して繰り返しプレイしても、なかなか結果が出ないし飽きちゃうんですよね。
つまり、ファイターで慣らし運転をしたらとっとと乗り換えるのが正解ですが、それを初見で理解できるか、というと……
ボクのような固執しがちなタイプは、ノーマルエンドも見られたし真エンドも、と欲をかいてしまうんですねー。
ここも、見ず知らずのキャラに飛び込んでいくことの不安が、心理的な壁になっています。
今まで色々言ってきたことって結局、攻略サイトを読め、で解決する話ではあります。
本作は何より、プレイヤーの知識量によって難易度が激変します。
総合評価の高いソードマンやムシャを選べば、動かして楽しんでるうちに真エンドが見られるはずなんですよ。
ネタバレを嫌う人がいるのはわかってますよ。そういう人はそもそもこのサイトをプレイ前に見ないだろうとも思いますが。
それでもボクは断言しますが、本作は攻略知識があった方がずっと楽しめます。知識がある方がアイテム取捨選択の時、より深く悩めるからです。
手探りで試行錯誤する楽しみを否定するわけじゃないけど、本作はとにかくプレイ回数が嵩むんです。
それもこれも、全貌の把握に時間が掛かるローグライクと、デッキの回し方の把握に時間が掛かるカードゲームをストレートに掛け合わせてるからなのです。
ローグライクとしては、繰り返しプレイしても上達する実感に乏しい、と見られる。
カードゲームとしては、デッキ編成が運任せで自由度が低い、と見られる。
本作は、この微妙な狭間の位置に立っています。
この配合のバランスを変えれば、まったく違うプレイ感になっていました。
周回引き継ぎ要素を充実させて、たとえば過去に一回引いたアイテムは初期装備にできるとか、デッキ編成が自由にできる等のシステムだったら、カードゲームとしての満足度は上がったでしょう。
でも本作は、周回引き継ぎ要素を非常に限定しました。プレイ回数によらず、同じ条件で始められることを目指したのです。
やっぱり本作のスタンスは、第一にローグライクRPGなのだと思います。
ルールは本当に明快で、面白くできてるんですよ。
初めての人でも、直感的になんとなく触って楽しめます。
熟練者なら、様々なキャラを触りながら、時に手札が事故ったり、アイテムの引きが悪かったりすることもひっくるめて楽しめるでしょう。
その間の橋渡し、初心者から熟練者への道筋を作中でどう付ければ良かったのか、悩みながらの評点です。
- ハマリ度 : 9 / 10
- 処理が重い環境でプレイすると、ラスボス戦が非常にきつくなるので注意。バトル軽量化が入ったとは言え、スムーズにプレイできる環境でプレイするのが基本。
[べいじゅのころも] + [かわりのあかご]の連鎖で、1行動中に3枚以上カードを出すと挙動がおかしくなるバグをたまたま踏んでしまった。1.2.005で確認。3枚出しが強力すぎるので制限した方がいいのかも。- グラフィック : 8 / 10
- とり夫氏のJavardry用素材がメイン、当然チップチューンとの相性は良好。
メイン画面としては見やすいが、ややクリックポイントがわかりづらい。ステータス異常のパーセンテージや敵のデッキ確認等、クリックポイントが重なっているときに顕著。初見で画面を見て、クリックできるか判断できるUIがより望ましい。- サウンド : 8 / 10
- しーでんでん氏のチップチューン中心、エンディングでピアノ曲をプラスする安定の構成。ラスボス戦の「揺るがぬ想い」はやはり名曲。
ストーリーについても、語りたくなる魅力のある作品なんです。
ラスボスが前作と同一人物なのかはわかりませんが、そりゃあ15年も経ったんですから、色々思うところも変わったでしょうよ。
この世界のためにも、どうか木箱を最深部まで届けてください。色々試して、楽しみつつ、ね。