■ 施薬僧のレタ
作者 [ おばけ さま ] ジャンル [ ADV+お店経営シミュレーション ] 容量・圧縮形式 [ 547MB・ZIP ] 製作ツール [ RPGツクールVX Ace ] 言語 [ 日本語 ] 備考 [ R-18指定! ]
[ R-15版を「ふりーむ!」からダウンロード可能 ]
配布元
- (補足)
- 2020.01.19:現在の最新バージョンはver1.03です。
レビュワー ハマリ度 グラフィック サウンド 合計 総合判定 ES 8 /10 10/10 9 /10 80/90 もす 10/10 10/10 8 /10 赤松弥太郎 8 /10 8 /10 9 /10
《 ES 》 ハマリ度:8 グラフィック:10 サウンド:9
「普通」なんて、ありはしなかった。
本作「施薬僧のレタ」をプレイする前にまず必要なのは、前作「僧房のカンタレラ」のクリアです。
心配せずとも、「僧房のカンタレラ」は2度目のリメイクを経て、クリアしやすい作品になりました。謎解きの方法も、ENDの条件も、全てゲーム内に記載されています。それをなぞれば、「僧房のカンタレラ」の真相、そして「施薬僧のレタ」に繋がるレタとコニリオの基礎知識を習得できるのです。
現バージョンの「僧房のカンタレラ」ならば、コンプリートに1時間もかからないでしょう。TRUE ENDを見るまで4~6時間、全イベントを埋めるつもりならその1.5倍は時間がかかる「施薬僧のレタ」を真に楽しむために、1時間未満の時間を費やすことは、決して時間の無駄ではありません。
そう、本作「施薬僧のレタ」は、前作「僧房のカンタレラ」を完全に踏まえた作品です。レタとコニリオが「施薬僧のレタ」の舞台である村に流れ着いた理由、レタとコニリオの関係性、別方向に暴力的なレタとコニリオ…2人の性格、および本作の「世情」をあらかじめ知っていないと、本作のストーリーに違和感を生じることになります。
本作を初め、おばけ氏の作品は、あえて登場人物のモラル観を現代とはずらしています。「世俗から離れて暮らしていたために、コニリオ以外にはまともに会話もできないレベルのコミュ障」なレタは、現代にもありうる人となりかもしれません。しかし、「学が無いゆえに独占欲が強く、時にレタを暴力でモノにしようとする」コニリオの人となりは、現代基準で見ると完全にDV気質です。主人公に置くには危うすぎる性格です。
しかし、コニリオに学が無い理由も、暴力的な性行為を「愛」と呼ぶ危うさも、全てコニリオの過去に起因しています。「人間だった100年前に身体を売っていた」という過去です。「性行為が仕事で、性行為を乞われるばかりだった」コニリオに、一般的な愛の囁き方など分かるはずもありません。ましてや「愛=性行為を拒否される」なんて、未だかつて経験したことが無いのでしょう。選択肢によっては、自分の劣情を暴走させ、悲劇を巻き起こすルートさえあります。
そんな危ういばかりの本作、全ルートを調べ尽くす難易度自体はそれほど高くはありません。現バージョンの「僧房のカンタレラ」と同様、「施薬僧のレタ」も全イベント・全ENDの発生条件がゲーム内に完全網羅されているのです。それをなぞれば、コンプリートは決して難しくはありません。費やす時間量を除いては。
ゲーム開始当初は「どうやってクリアすればいいのか」と思っていた「2万Gを貯金する」というEND条件も、開始から1か月も経たずに達成可能です。数々のフラグを1日ごとに立てていくTRUE ENDの条件も、1月初頭に達成できました。実は一番難しいENDが「3月10日までEND条件を達成できずに終わる」ENDだったりします。
2万Gを貯金するためにも、TRUE END条件を達成するためにも、エロシーンを見るためにも、まず最初にすべきは「製薬レシピの充実」です。レタを操作する朝・夕のシーンでレシピを買い、コニリオを操作する夜のシーンでココアを買って開拓場所を増やす…最初の一歩の早期完遂が必要です。
特に厳しいのが、レベルの低い薬でも使用する「ラベンダー」が、一番最後に解放される「滝」にしか生えていない点です。「滝」を開放するまでは、1日数枚しか取れない温室に生えるのを祈るほかありません。村の外での採取で手に入れない限り、雑貨屋にも並ばないからです。
逆に言えば、開拓場所さえ全開放しておけば、後は何一つ攻略に困る点はありません。薬の依頼は1回で数百~1000G得られるお得なものばかり。全てを雑貨屋で揃えるにしても数十G程度の投資ですむため、完全に黒字になります。26日しか買えない「冬蜜蜂の巣」や、「捨てられた塔」内でしか取得できない「黒イモリ」などの素材もありますが、それも、毎日(コニリオの場合は家具を建てるついでに)集めていけば事足ります。本作、ENDを目指すならば、それほど攻略的な障壁は高くありません。しかし、肝心のストーリーがかなり精神的な障壁が高いものになっています。村人からは様々な意味で狙われ、2人の「過去」さえ、その刃を向けてきます。何より、レタとコニリオどうしも、決して安心できる関係ではありません。そんな状況で発生するENDは、ほとんどが悲劇です。
その悲劇に潰されないためにも、楽しいミニゲーム、楽しいサブイベントに積極的に飛び込んでいきましょう。今までのおばけ氏の作風を見る限り、悲劇も喜劇も共にクオリティの高いものを仕上げられる作者です。
《 もす 》 ハマリ度:10 グラフィック:10 サウンド:8
このゲームは、前作「僧房のカンタレラ」の時から、時代背景、登場人物の背景全てが私の嗜好にどんぴしゃりでした。ですが・・・正直私に、このゲームのレビューを書く資格があるのかどうか・・・。
まだ、EDは一つしか回収していませんし(勿論、他エンドを見るまでやりこみますが)そもそも、お金集めたのになんでEDに行ってしまったのか、残念で堪りません。あんなに金の亡者になったのにー!!
・・・と、こういう理不尽さ?金を稼ぐだけではあかんのか・・・といったところも、このゲームの魅力の一つだと思います。
同居人との関係、村に潜む秘密。そう、私は何一つ進展させる事ができませんでしたくやしいw私はEDが幾つかあるようなゲームの場合、真EDを回収すれば満足してしまうという、無料ゲーム大好き人間の風上にも風下にも置けないような人間なのですが、このゲームの場合、ED数が多く(しかし、ゲームの中でED回収ヒントがあるので、決して難しくはない・・・はず)
又、プレイヤー側のED回収欲をいい感じで刺激してくれるので、プレイしていて楽しいです。おばけさんのゲームと言えば、美しいイラストが特徴的ですが、今作でもその点はやはり変わりなく、美しいキャラ絵は健在です。そして何よりマップ!マップ絵が非常に美しい!私は立ち絵、マップ絵の描き込まれているゲームが好きで、キャラ絵が好みでない場合にはゲーム自体プレイしないという我儘な人間ですが、その中でもおばけさんのマップ絵の美しさは群を抜いています。本当に美しい。好き。
最後になりましたが、R18となっていますが、そこまでえげつないエロはなかった(少なくても、私がプレイしているところまでは)です。確かに「僧房のカンタレラ」に比べればエロ要素はありますが、まあ、大人がプレイするゲームならこの程度は・・・程度だと思います。(私がry
とにかく、ゲームの入れ込み度もさることながら、美しいキャラ絵、マップ絵だけでも一見の価値あり!!お薦めゲームです。
《 赤松弥太郎 》 ハマリ度:8 グラフィック:8 サウンド:9
唇ふさいで 何も言わせない
全国801億のBL愛好者のみなさん、こんにちは、赤松弥太郎です。
みなさんは当然、「あらしのよるに」シリーズを履修済みかと思います。
肉欲や組織のしがらみとの間で揺れ動く友情の物語は、確かに耽美です。王道であるが故に、我々を涙させる尊さがあります。
しかし、しかし、それでもボクは申し上げたい。
「あらしのよるに」はその第一作こそが至高であり、第一作で終わらせるつもりだったという当初の作者の構想は正しいものであった、と。
「あらしのよるに」の真髄は、不安定な二匹の関係性、その先の見えない緊迫感にあります。それを最大限に描いたのが第一作です。
いつか相手の正体に気付いてしまうのではないか、もし二匹が再会したらどうなってしまうのか、読者の不安と期待と妄想を煽りに煽って、そのまま終わります。
悪く言えば読者に投げっぱなしで、続きを読ませてほしいと願うのも、読者とすれば当然でした。
しかし続編を書くということは、未来を確定させるということ。当初書きたかったこの緊迫感は薄れていき、変質するしかなかったのです。
結果として我々は良質なBLを手にすることができましたが、そこにはもはや新しい驚きはありません。
でもそれも、我々の望んだ結末です。
第一作からはずいぶんとかけ離れたところへ来てしまったものだ、とボクがため息をつくのは、あまりにも保守的でナイーブなのでしょう。
さて、「僧房のカンタレラ」は、それはもう良質なBLでした。
「性別は明記されていなかったはずでは……?」などと無粋なことを言う人は、もうこんな文章など読んでおりますまい!
吸血鬼と聖職者の二人が、閉ざされた修道院の中で織りなす逃避行の物語は、その名の通り、どこまでも甘美で、そして耽美です。
プレイしていない方は、ネタバレを避ける意味でもプレイしてきてください。さあ今すぐに。
吸血とエロは紙一重。続編が18禁で出ると聞いた時から、期待で胸躍らせた方も多かったのではないですか?
では本作、「施薬僧のレタ」は、その期待に応えられるか、と言うと。
オープニングをしばらくプレイしていると、聖職者レタは女であることが、まったく何の気なく明かされます。
これから人が食べようとしている唐揚げに、マヨネーズをぶっかけるような、この暴挙。
映画版でメイをメスにした、あの過ちを、人類はまた繰り返すのか!
ひどい。なんて展開だ。
女だったなんて。
これの作者は全然分かってない。
―「Ruina 廃都の物語」より テレージャ
残念ですが、しかしこれはありふれたことです。諦めることにも慣れてしまいました。
本当の地獄はここからです。
レタは女だと明かす前に、コニリオは女でも男でも相手ができるという台詞が、赤字で強調されています。
行き場を失った我々の純情は、ショックから立ち直ることもできず、その設定に縋ってしまうのです。それこそが罠だと気付かぬ内に。
コニリオ君の男同士の濡れ場は、たしかに有ります。
相手は婚期を過ぎた、むさ苦しい猟師のおっさんですが。しかもフルボイス。
金で身体を買った関係ですから、情感も何もありはしません。
そういう趣味の方もいらっしゃるでしょうが、前作で我々を楽しませ、そして今作で我々が求めたのは、耽美です。
まったくニーズとは対極にあるこの代物で、どうやって満足しろと言うのでしょう。
大佐! 裏切ったな!? と叫んだところで、どうしようもない。
だってこれを作ったのは、あの「コメット☆キャンディ」の作者、おばけさんなんですから。
あの誰得性癖をナチュラルに開陳する作者ですから、それと気付かずに誰得のエロシーンを書いてしまうのも仕方ない!
よって本レビューは解散します! 万歳三唱!
……果たして、それだけでしょうか?
本作は当然、前作と同様耽美なBLを目指すべきだという、我々の理解が誤っていたとは、考えられないでしょうか。
前作の2人の関係性は、とても特殊な状況でのみ成立する、一瞬の煌めきではなかったか。
本作をプレイし、考えるほど、続編でこの2人の関係性を維持することには無理があると、痛感せざるを得ないのです。
まず、前作のおさらいを、リメイク版基準でまとめます。
吸血鬼と出会ってすぐ、聖職者は、血が余る体質である自分の血を吸わせる代わりに、自分を修道院から脱出させろ、という取引を持ちかけます。
目覚めたばかりで弱っていた吸血鬼は、今すぐにも血が必要で、そして周囲に他の人がいなかったので、この条件を快諾します。
一見フェアに見えるこの取引、実はボルジーア家の罠。
聖職者の血には毒が仕込まれており、吸い続ければ吸血鬼でも死ぬことになるからです。
見る間に体力が減っていく吸血鬼が餓死しないように、中毒死しない程度の血液を与えて探索しよう、という駆け引きが、前作のメインでした。
そう。修道院から解放された時点で、この取引の前提が崩壊しています。
外には人間なんていくらでもいるのだから、毒入りで薬臭いレタの血液を飲む必要はありません。
レタとしても、今まで通り瀉血した上で焼却すれば良いのだから、血を吸ってもらう必要はないわけで。
毒のせいで、通常なら成立するwin-winの関係が成立しません。
そのため、地図にない村を見つけたので血を吸いまくりフィーバー! とならないように、コニリオは血が無くとも、人間同様の食生活で生きていけるようになりました。
むしろ、血を飲むごとに吸血鬼本来の本能が覚醒して、人間をエサとしか思わなくなってしまいます。
プレイヤーとしては、前作ではタイムリミットだった吸血行為が、本作では純粋なバッドエンド分岐となり、プレイが気軽になったと言えます。
しかし、ここで問題にしたいのは、コニリオ本人の動機です。
再び「あらしのよるに」を例に出しましょうか。
ガブが、メイを食い殺すことを我慢する動機は、どこまでも内的です。
彼は本来、ヤギが大好物で、メイに何の抵抗もさせぬまま食い殺すだけの力を持っています。
それなのに彼は、メイ以外のヤギですら、メイの友達であるという、それだけの理由でやせ我慢を押し通してしまいます。だからこそ苦しむのです。
そこにはメイとの友情だけではなく、仁義や信念といった、彼自身の生き方の問題が明らかに関わっています。
しかしコニリオ君には、そうした葛藤がまるで見えません。
彼は明らかに享楽主義者ですし、内的葛藤を抱えるほど内面が成熟していません。
さすがに理由も無く人を殺すことには躊躇がありますし、我慢しろと言われれば、血を吸うことを我慢できるだけの理性はあります。
しかしそれは、レタに嫌われたくないという、外的な動機付けに過ぎないのです。
だいいち彼は、蘇った時に欠損していた左足が生えたことを喜んでおり、吸血鬼になったことを神に感謝しています。
吸血鬼になってもレタがそばにいてくれるなら、彼はその道をためらいなく選ぶでしょう。
「あらしのよるに」と「僧房のカンタレラ」に共通する、捕食者と被食者の構図。
その前提として、捕食者が弱みを握られているという条件があります。惚れた弱みとか、そういうのですね。
弱みがあるからこそ、普通なら一方的に蹂躙されるだけの被食者が、捕食者と対等な関係、下手をすると被食者の方が優位な関係を築くことができます。
いつもの力が出せれば勝てる相手に、くやしいでもビクンビクンしてしまう、まさに王道です。
しかし本作では、前作で成立していたレタ側の優位性が、ほとんど潰されています。
血液の問題は先程触れたとおり。血中の毒という隠し札もオープンしているので、レタはどう足掻いてもコニリオを殺せません。
せめて生活面くらいは優位に立たなければならないのですが、それすらできません。
サーカスで育ったコニリオは、とても生活力が高く、鍛えられています。日曜大工が得意で家事にも隙は無く、コミュ力も高く、猟で食い扶持にも不自由しません。
唯一、文字が読めないという弱点はありますが、この村で暮らしていくだけなら、レタがいなくても、まったく困らないのです。
一方のレタの生活力は、正直、一人では生きていけないレベルと判断せざるを得ません。
薬の調合という一芸はあるし、裁縫もできますが、逆に言うと、できるのはそれだけ。
中でも、人と話すのが苦手なのと、料理ができないのが致命的です。おまけに朝に弱く、自力では起きられないほどです。
それもこれも、猛毒のせい。そして貴族に囲われた暗殺者として、一人では生きていけないように育てられたからなのですが。
ボルジーア家という後ろ盾を失ったレタは、自分の毒に耐えられるという都合上、どうしたってコニリオに頼って生きていくしかないのです。
その悲しい事実は、システムによっても補強されます。
依存度というステータスが、レタにだけ設定されている、その意図は明らかです。
そしてその数値は、増える一方で、減ることがありません。
コニリオが他の女や男と寝れば、レタの親密度は下がっていきますが、依存度はそのまま。
最終的に親密度が0になるとバッドエンドになりますが……その内容をよく見てください。
コニリオを軽蔑しながらも、レタは、それでもなおコニリオに依存しているのです!!
コニリオにも、初期状態で、前作エンディングと同じだけの好感度はあります。
しかしそれは、たった一夜で築かれた絆でしかありません。
なのにレタは、それに甘えており、あまりにも自分の無力さと、相手との関係性の変化に無防備でした。
乱暴で、上から目線な態度を無自覚に続けており、改めるつもりがありません。
未熟な自我に、強すぎる力の誘惑、そしてレタの存在。
コニリオがその天性を発揮し、DV野郎として覚醒するのも、時間の問題だったのでしょう。
レタが少しでも他の男と親しいそぶりを見せると、「お前を愛せるのは、僕しかいないんだよ」などと脅しはじめます。
一方でコニリオの方は、平然と他の女や男相手に売春し、それを咎めるレタを手込めにしてしまう、この不平等。
いざレタがコニリオを拒絶すると、途端におどおどと動揺しはじめ、花を贈ったりするあたり、実に天性のものを感じさせます。
レタにはもう、コニリオを制御することはできません。コニリオを信じるしかありません。
そのためにはまず、自分の身の安全を図ることから始めましょう。
なにせコニリオは、レタのこととなると何をしでかすかわからないのですから……。
オープニングで示唆された、この村の秘密なんかより、コニリオの方がよほどレタにとっての脅威です。吸血鬼すぐ殺すです。
プレイヤーは、レタにとっての悲劇を回避すべく、二人をくっつけるのがミッションとなります。
しかし、それまでに積み重ねてきたバッドエンドを振り返ると、トゥルーエンド後、二人がいつまでも幸せに暮らすビジョンが見えないのですよボクには。
根本的な問題は、何一つ解消していません。
コニリオはレタに、操を立てて生きていけるのでしょうか?
誰の血も吸わず、吸血鬼の力を抑え続けることができるのでしょうか?
不安や嫉妬に狂い、レタを眷属にしようとはしないでしょうか?
レタが寿命を迎えようとしている時、レタを吸血鬼にしようと生き埋めにして、100年ほったらかしにせずにいられるでしょうか?
あまりにも一発ゲームオーバーな不安要素が多すぎて、「きっとうまくいく」なんて無責任なこと、とても言えません……。
何よりも悲しいことは、本作の2人の関係の変化は、前作から見てまったく合理的だということです。
合理的に考えれば、前作での一見双方向的な関係は崩れ、一方的な関係になってしまうのが避けられません。
そうなることがわかっていながら、なぜ本作を作ったのか。
そんなハードコアな背景にもかかわらず、なぜ本作はほのぼのスローライフゲームの体裁を取っているのか。
ボクには、本作は色々とアンバランスなゲームに思えます。
- ハマリ度 : 8 / 10
- トゥルーエンドの条件を見る限り、レタとコニリオの関係を深めること、この村の謎を解明すること、この2つが本作の目的である。
豚の貯金箱は完全なフェイクで、バッドエンド分岐以上の意味が無い。狩りもポーカーもレース編みもイベントフラグに過ぎず、薬売りはやり過ぎると信頼度の調整が面倒になるし、釣りに至ってはやらなくてもイベントコンプ可能。
完全な脇道にもかかわらず、下手をするとそちらの方がストーリー本筋よりも作り込まれていて、楽しめる。明らかに労力のかけ方がおかしい。焦点がぶれている。一番苦労するエンドがトゥルーエンドではなく、日数経過エンドだというのも何かおかしい。
依頼リストやイベントリスト等の作り込みはしっかりしているが、セーブスロットが40しかなく、イベント回想もエンディング回想もない、という作りは、エロゲーとしては不足がある。- グラフィック : 8 / 10
- 544×416という解像度のせいもあるのか、ドット絵アニメーションが主、一枚絵は副という使い方。
ボクの経験から言うと、本作のような心理的描写を主とする絡みでは、ドット絵アニメーションは視覚的にうるさく、あまり実用的でない。低解像度でも構わないから、一枚絵をしっかり見せてほしかったところ。
仮に少ない数であっても、一枚絵のギャラリーモードがないのは、エロゲーとしてはダメ。- サウンド : 9 / 10
- 村の曲は、朝・夕・夜それぞれに数曲用意されていて、ランダムで決まる作り。個人的には固定が好みなので、オプションで選べるとなお良かった。
選曲自体にはムラが無く、安定している。声優の演技も(猟師も含めて)とても実用的、あとは趣味の問題。しかし、そのアンバランスさこそが、本作の魅力でもあります。
今時は、だいたいみんなゲーム作りが上手くなっていて、最も効率のよい力のかけ方できちんとまとまった、焦点を絞ったゲームを作ってきます。
でも、そればかりではちょっと味気ない。
ボクがフリーゲームをプレイし始めた頃によくあった、思いついたものを全部作って、あとは勢いで押し切るという、その系譜に本作は連なっています。
アイディアの源泉掛け流し。これもゲームの醍醐味です。性癖だって、垂れ流しちゃっていいのよ?