■ お怒り信長
作者 [ ポルゼンヌ小林 さま ] ジャンル [ RPG ] 容量・圧縮形式 [ 18MB・ZIP ] 製作ツール [ WOLF RPGエディター ] 言語 [ 日本語 ] 備考 [ 現在のバージョンは、1.07 ] 配布元
レビュワー ハマリ度 グラフィック サウンド 合計 総合判定 ES 8 /10 8 /10 8 /10 75/90 シュン 9 /10 7 /10 8 /10 赤松弥太郎 9 /10 9 /10 9 /10
よく死ぬ方のノッブ
本作、「お怒り信長」は、前作「新入り魔王」と似通った箇所、異なる箇所が多数あります。
似通った箇所は、「稼ぎ」を主としたやり込み要素の多さ。初めに強大な敵を多数目の前に置き、それを乗り越えるために数々の成長要素を獲得していく…その基本手順は変わりません。
しかし、ループ物の「新入り魔王」と比べ、一本道ストーリーの「お怒り信長」では、その成長要素も小出しになっています。
初めに提示されるのは「周りの草木などを集めて金稼ぎ」「戦闘でスキルをレベルアップ」ですが、このうち「資金」の使いどころはかなり後に展開されます。
最初のボスである巨大ウルフは、ステータスは初期のまま、成長要素はスキルしかない状態で挑まざるを得ません。資金を使ってステータスを成長できるのは、最初のダンジョンをクリアした後になります。
とは言っても、本作では中々ステータス強化による強さは見出しにくい作りになっています。それというのも、本作は信長の強化よりもプレイヤーの操作面の強化の方が重要になる戦闘システムになっています。
本作の戦闘は、作者様自らが「ロックマンエグゼ」に例えるマス目アクションバトル。前中後・上中下に位置取る敵の動きを見極め、こちらの攻撃を当て、相手の攻撃を回避していきます。
特に、「攻撃の回避」は何より重要です。最弱の雑魚でも、最大HPの1/4を1発でもっていくほどのダメージ。しっかりと回避しないと面白いように死んでいきます。
デスペナルティはユルめですが、それでも、OPにいた場所に強制帰還+持っていた資金は死んだ場所に置きっぱなし…という面倒くさい仕様になっています。
余計な所で足踏みしないためにも、敵の攻撃を見切ることをまず身につけましょう。本作「お怒り信長」は、手軽に楽しめるストーリーと、スキルを要する戦闘が特徴の作品ですが、難点が無いわけではありません。
その中でも最大と言えるのが、先ほども言った「成長要素の小出し」。このタイミングがあまりにも遅い点です。
先ほども言ったように、資金を使ってステータスを成長できるのは、最初のダンジョンをクリアした後。それまでの間は、1000ゴールド「しか」入らないお財布でやりくりしなくてはなりません。
1000ゴールドは、普通に草木を集めていると、あっという間に満杯になってしまう量。右も左もわからない状態、攻撃力しか上がらない戦闘、アイテムを買おうにも、店の在庫も信長のアイテム袋も容量が少ない有様です。
そんな状態にストレスを溜め、途中にいた巨人にぶちのめされて、死ぬ思いで巨大ウルフを撃退し、やっと資金が成長に使える街にたどり着くのです。
その後に不満になるのは、これまでの戦闘で集まったスキル。「槍」と「矢」だけで1ページが埋まるスキル画面で、どれが最強・最適のスキルか探し出すのが第2のストレスとなります。
不要なスキルを処分できる「ガチャ」が解放されるのは、そこからずっと後の街。そこまでは、弱いスキルがズラッと並ぶ見づらいスキル画面と付き合う他ありません。 全体的にノリの軽い本作のコンセプトからして、作者の想定では、そんなことにストレスを感じる前にステージを越していると考えているのでしょう。しかし、あいにくながら私は
アクションが下手!!
分かれ道は隅から隅まで探さないと気が済まない!!
シンボルエンカウントは全殺が基本!!!な性格のため、最初のダンジョンを超す時点で財布もスキルウインドウもダダあふれになってしまいました。
この点に関しては、最初から成長項目が全開放され、好きなタイミングでつまみ食いできる「新入り魔王」の方が好みでした。また、この点は難点とは言いがたいのですが、本作を操作するのは、キーボード、もしくはセガサターンタイプの6ボタンパッドが最適です。
3ボタンで攻撃を行う「お怒り信長」では、XBoxコントローラなどの4ボタンパッドでは、3ボタンだけ指が届きにくいため、3つのスキルをフル活用しにくくなります。
スキルの中でも強力な「魔法」では、発動直後のチャージ中に特定のコマンドを入力することで、威力を強化できる仕組みがあります。これを活用するのにも、キーボードを使うのがオススメです。そういう、プレイしずらさも含めたやり込み要素を乗り越えるためにも、ステータスの成長はきっちり行い、NPCの話はしっかり聞きましょう。成長項目も、NPCの忠告通り、財布の容量と周りの草木の価格を中心に上げていくのがオススメです。
本作の信長は、逸話以上に気難しくワガママな性格ですが、プレイヤーたる我々まで信長に追従する道理はありません。危なくなったら回復に戻り、十分な資金が集まったら成長に注ぎ込み、慎重に慎重に進めていきましょう。
《 シュン 》 ハマリ度:9 グラフィック:7 サウンド:8
理不尽な運命・・・プレイヤーも怒りたくなりますよ!
戦国武将のキャラを使ってはいるものの、それより注目すべきはこの制作ツールではあまり見かけないバトルの内容。
このようなアクションが苦手でもある程度はフォローがあるのでご安心ください。
本能寺の変。明智光秀に裏切られた織田信長。そして彼は死後の世界で目覚めます。
早速光秀を発見して勝負を挑むも返り討ちにあってしまいます。
現れた冥土案内人によると、死に方によって死後の世界での強さが決まり、それが原因で光秀は最強に、信長は最弱になったとか。
努力すれば力の差は覆せると聞き、信長はこの世界で強くなって復讐を果たそうと決意するのでした。
まず、この作品最大の特徴であるバトルについて少し説明します。
3×3のフィールドを自由に動きながら技を繰り出して敵を攻撃します。技にはそれぞれゲージがあり、溜まったら技を使うことが出来ます。
技には属性が設定されており、それぞれに特徴があります。技としては弱いがゲージがMAXなもの、強力だがゲージの溜まりが遅いもの・・・など。
詳しいことは作中で教えてくれるのでそちらを見るのが早いでしょうか。
アクションが苦手でもドーピングでHPを強化でき、強化アイテムも手に入るのである程度はフォローが効きます。
他にもパネルによる強化やパズル要素、古びたメダル集めなどがあります。
話については・・・あの死後の世界、色々と信長に不利な要素ばかりです。
よりによってあの死に方が最弱とは・・・悪意すら感じるほどです。あの死に方より下って・・・。
それでもめげずに自分の道を進んでいく信長。その心に変化は訪れるでしょうか。
第一の目的である光秀討伐後も是非進めてみてください。何かありそうですよ・・・!
《 赤松弥太郎 》 ハマリ度:9 グラフィック:9 サウンド:9
ロジカルな匍匐前進より 無茶でも突っ走る勇気
プレイヤーにどんなことを言われようと小林さんは、ストレスも無ければ面白味も無い、何も残るものが無い作品を作ることは決してあり得ない方とお見受けしました。イチオシレビュー「新入り魔王」
だからボクはもっと、小林さんの作った作品が見てみたいと思うのです。
ひとつの軸さえ決めれば、どれだけてんこ盛りにしてもバランスを取る方法はきっとあります。
あー、相変わらず生意気言ってるヤツがいますねー……。
前作で、あれほど客観的かつ的確に自作品の反省文を書いていた作者さんが、自分の軸を見つけ出せばどうなるか。今ボクは目の当たりにしています。
エグゼっぽい戦闘、パネル式の強化システム、そしてBusitterの実装と、開発経過を見ながら「どこへ行こうというのかね???」と訝しむこともありましたが、大丈夫。結果としては何の問題も無かったのです。
小林さんはおそらく気付いたのでしょう。ポルゼンヌ作品の楽しみの真髄、それは
草刈りであると!!
まあ、異論はあるでしょうけどね。戦闘こそ本作のメインだと思う人は多いでしょう。
ですが本作の戦闘は、よく練られていてテンポ良く楽しめる反面、目まぐるしくて神経を使う側面があるのも事実です。
特に慣れていない序盤、光秀の猛攻を前に「無理だ……ラストまで来たってこんなのに勝てるわけが無い……」と終了したくなった人、いませんか?
そんなプレイヤーであっても、草刈りは誰でも平等に楽しめる遊びなのです。アクションが苦手なプレイヤーにも、草刈りで稼いだ金でHPを上げてごり押しという道が用意されています。
素振りが必要だった過去作と違い、体当たりで草が刈れるので、さらにストレスフリー。そしてマップが非常に魅力的。ジャンプしながらマップを巡っているだけでも楽しい。
没頭している内に復活時間が来るので、また前のマップに戻って草刈り……草刈り……草刈り……あぁ楽しいなぁ。ぼかぁ草を刈るために生まれてきたんだなぁ。
もう無能な部下だらけの城に行く必要も、本願寺の一向一揆に苦しむことも無いんだな……ぼかぁ草刈りだから……
ん? 光秀? 誰だっけ?
などと現実逃避をしたところで、草刈りだけでは光秀は倒せません。いつかは戦わねばならぬのです、しかし。
本作、レベルデザインも非常によくできています。
初見の壁になるのは、やはり砂漠でしょう。
敵の強さは、それ以前のダンジョンとは段違い。敵を避けるのも難しい、やや狭いマップです。普通に進めていれば、最初のエリアボスと戦う場所でもあります。
しかしそこは同時に、パネルシステムが開放され、カスタマイズの幅が大きく広がるポイントでもあるのです。
また寄り道要素で、北の廃墟というダンジョンがあります。謎解き要素の強い場所なのですが、敵の強さは砂漠より一段下がります。
そしてそこをクリアすると、砂漠のエリアボスをスキップできるアイテムが手に入るんですよ! これはおトク!
どちらのルートを選んでも、この頃には戦闘回数も増えてきて、スキルの収集やレベルアップも進み、強くなってきた実感が出てきます。
そして、砂漠を抜ければ、待ち構えるのが武田信玄。
船のお値段は非常に良心的ですし、お使いイベントの難易度も大したもんじゃありません。
しかし、あの甲斐の虎が、直々にプレイヤーに喧嘩を売ってるんですよ? 受けて立たずにどうする!
結局ボクは、せっかくエリアボスをスキップしたのに、信玄を倒すために強化に励むハメになったのでした。
本作は、倒す必要の無い難敵もたくさんいます。いわゆる寄り道要素というものですね。
はい、ボクは倒しました、光秀親衛隊。迂回するのが正ルートですが、かなり苦労すれば、倒すことも不可能ではありません。
強敵と戦っている内に、初見は無理に思えた光秀の攻撃さえも、悠々と見切れるようになっているのは、感動する場面でした。
最初の光秀戦で倒すのは、さすがに無理難題だと思うけど……でもあれも、ダメージは通ってるからいつかは倒せるんだよな……。
もちろん、倒さなくても良いのです。
光秀を、草刈りして鍛えたHPの壁で押しつぶしてもいいし、プレイヤーが鍛えた刹那の見切りに賭けてもいい。
俺tueeeeプレイも、オワタ式も、どちらでも十分に楽しめる懐の深さを、本作は持っています。
つまり、初見では目を引くタイトルとストーリーは、刺身のツマに過ぎないということです。
前作でストーリーに振り回されすぎたという作者さん自身の反省があって、今回はシステムメイン、ストーリーはひかえめに、という狙いだそうですよ。
ひかえめにしてアレかよ!? というツッコミは、みなさんすると思いますが。
信長を主人公にしたものの、別段歴史には詳しくないという作者さん。おそらくは「部下に下克上された魔王」というシチュエーションが欲しかっただけなのでしょう。
歴史的なツッコミを回避するためなのか、本作の戦国武将たちはキャラをぶっ壊すような言動をします。
信長の口癖が「ファッキンシット」、他の武将も揃いも揃ってチャラチャラと現代言葉をしゃべりまくり……遺憾なく素晴らしいテキストセンスを見せつけてくれます。
いつものポルゼンヌゲーと違うの? と聞かれると、ほとんどまったく変わってないと答えざるをえません。
いや、いいんですよ! それでいいんです。
ボクが前のレビューで書いた、「独創性は、やりたいことをとことん突き詰めた結果として、おのずと付いてくる」というのは、こういうことを言ってるんですから。
ボクは、ポルゼンヌ作品恒例になってる、このモンスター図鑑の文章が大好きなんですよ。
こういう短い文章にこそ、作者の感性とセンスが現れる。
決して誰も真似できない、オリジナリティーがあるんです。
それなのに、本作はモンスター図鑑を読み直すのが、ちょっと面倒なんだよなあ……。
評点いってみましょう。
- ハマリ度 : 9 / 10
- ボクがプレイした中で、いただけない点は2つ。1つに、バージョンアップでセーブに互換性が無くなること。たとえプレイ時間が短めであっても、せっかくのランダムエンチャントを手放すのがあまりに惜しい。
もう1点は、図鑑システム。ステータスが初回戦闘でしか表示されず、読み返すためにはあるダンジョンの割と深いところまで潜らなければならない。ボス敵はそこにも収録されず、読み返すことができないのが非常にもったいない。- グラフィック : 9 / 10
- 安定のFSM + ねくらマップチップ。しかしそれを使って見やすく、探究心をかき立てられるマップに仕上げたのは作者の力。
戦闘画面は、激しい動きをする分視界は狭くなりがちだが、本当に必要な情報はキャラ周辺に集約されている。目で追いきれない情報は効果音でカバーすることが徹底しており、見やすく仕上がっている。
最初のダンジョンからマップ画面に出たばかりのところで、マップの継ぎ目になっているのか、雲が不自然な流れをするのが不満点。出てすぐのところ、というのがまずい。- サウンド : 9 / 10
- 相変わらずのポルゼンヌ印。過去作の流用も多いが、使い方が一貫しているせいで、プレイした過去作がフラッシュバックする効果もある。
効果音が賑やかで初見だとやや混乱するが、上で書いたとおり情報がぎっしり詰まっており、きわめて重要。特に重要なのはゲージの満タン音と敵の攻撃予告音。埋もれがちだがしっかり聞き分けたい。たとえ一発ネタな出だしであっても、最後にはきっちりと、綺麗にオトしてくる。小林さんのストーリーのキレは相変わらずです。
ぜひみなさんも、オチまで含めて楽しんでほしいですね。今回のオチも二段構えですよ!