■ TAIGA
作者 [ コロー&デグー さま ] ジャンル [ 動物メインのストーリー重視RPG ] 容量・圧縮形式 [ 500MB・ZIP ] 製作ツール [ WOLF RPGエディター ] 言語 [ 日本語 ] 配布元
レビュワー ハマリ度 グラフィック サウンド 合計 総合判定 ES 8 /10 8 /10 8 /10 48/60 赤松弥太郎 7 /10 9 /10 8 /10
大河は未だ道の途上。
今月のイチオシ作品「TAIGA」は、「正義と正義のぶつかり合い」を執拗に描いた作品です。
主人公・タイガたちN部隊、彼らに敵対するカッチューマ、中盤のライバルとなるB部隊、それ以外にも各都市を守る者たちが、己の正義を信じ、時には敵対し、時には協力し合いながら、自らの正義をぶつけ合っていく、そんなハードな物語です。
そのため、序盤の印象は悪いかもしれません。主人公が自由に正義を謳歌できないためです。
連絡のすれ違いにより、己のやるべき事を見失うN部隊…。
守るべき者たちが為す術もなく倒れ、「いぬあく」にされていく展開…。
そんな最悪の展開を「全てを焼き払う」で解決しようとしたカッチューマ…。
「クエストをクリアした結果が最悪の事態を引き起こす」という、RPGとしてはかなり邪道な展開となっています。しかし、それは以降の展開を語るにあたって無くてはならないものでした。この展開があったからこそ、タイガたち…そしてプレイヤーたる我々は、自らが正義として持っていたもの、そして「正義」を語るあらゆる登場人物を疑うようになりました。
その中で、タイガたちN部隊は「命を救う」という1つの正義を貫くため、ありとあらゆる「正義」に立ち向かっていくようになります。
物語は「第一部完」という半端な形で終了しますが、予定されている次回作でも、タイガたち、もしくは新たな主人公は、「ひとびと」の命を守るために戦い、走っていくでしょう。…しかし、シナリオ面以上に、システム面で本作には課題が多く残っています。
戦闘が厳しめの上、セーブ不可で連戦を強いられる場面が多いこと…これは、むしろ特徴と捉えるべきでしょう。
中盤以降は「機械虫」と言う無限に沸くザコが出てきます。レベルが足りないと思ったら、ここで経験値とアイテム購入費用を稼ぐのも一手です。セーブはこまめに分割しておきましょう。
課題となるのは、戦闘もマップも情報が不足しがちという点。
リアルタイムバトルである戦闘ですが、困ったことにターンの回る順番が非公開情報になっています。そして、ターンの回る順番は素早さによって大きく差が出るため、1vs3の戦闘で敵の連撃を食らって回復する間もなく全滅する場面もありました。
せっかくの「メカニカ」を用いたテクニカルな戦闘も、そのテクニックを生かす情報が不足していては片手落ちです。マップの情報不足は、移動やアイテム獲得に必要となる情報が小さく見づらいという点です。デフォルトで640×480pxの画面の中で、数ドットしかない光と矢印が、アイテムの場所とジャンプ可能な場所を示した重要なサインとなっています。時には、アイテムのある場所に移動するためのジャンプ箇所が、完全秘匿情報となっている場合さえあります。
一応、反応する場所に触れば、タイガの頭上にビックリマークが出るようになっています。が、流石に我々ホモ=サピエンスは、タイガたち獣並みの視力は持っていません。ここは流石に人類(の目)に優しい見た目にしてもらいたいです。
なにしろ、本作はただの回復アイテムさえ貴重な上、他では手に入らない貴重なスフィアまで、この数ドット四方の光を頼りにする他ないのです。ピーキーなバランスだからこそ、手にできるものは余さず手に入れたい、私はそういう貪欲な人間なのです。
本作、グラフィックの質自体は高いのですが、こういう「ゲームに支障があるほど見づらい」箇所が多いため、グラフィックの点数を低めに評価しています。ストーリーもゲーム本編も、「これから」という課題を残した本作、次回作となる完結編はどのような仕上がりになるのでしょうか。真の意味で楽しみにしております。
《 赤松弥太郎 》 ハマリ度:7 グラフィック:9 サウンド:8
あと一歩だけ、前に進もう
壺割り職人の朝は早い。
「この壺はダメだ。ほら、すぐに割れてしまう。」
壺割り職人T氏。彼の壺を見るまなざしは厳しく、鋭い。
刹那、彼が放った足蹴りで、壺は倒れることなく粉々に砕け散った。
壺の痛点を突く、強すぎず弱すぎない足捌きも、長年の鍛錬の成果だと彼は微笑む。
/ガシッ\
/バリン\壺の破片から、彼は素早くアイテムを探し出す。
壺の中に隠されたアイテムや法石が、彼の収入源である。
しかし、熟練した職人でも、壺を割ってアイテムが手に入れられるのは、10個に1個程度だという。
「何個割っても、1つもアイテムが無い時もありますね。
でも、その次の1個には、入っているかも知れないから」
そう語る彼の顔は明るい。
そんなT氏でも、駆け出しの頃は迷い、不安があったという。
「壺の中のアイテムだけ取るつもりで、うっかり割っちゃったんですよ。
それはもう、罪悪感、ですよね。「あー割っちゃった」っていう。
整然とした街の景色の中で、僕の割った壺だけが、こう、目立ってしまって。
頭が真っ白になりましたね」
この戸惑いを、彼はどのように克服していったのだろうか。
「1つだけ割れているから目立つので、全部割ってしまえばいいのではないかと。
「赤信号みんなで渡れば恐くない」、つまりそういうことですよ。
でもねえ、「本当はやっちゃいけないことをやってるんだ」っていう、これを忘れちゃいけないと思うんです。
割った壺は元に戻りません。その罪悪感を背負って、きちんと割る」
「そこにアイテムがあるから壺を割る、それだけじゃあ、まだ一流じゃない」
「壺を蹴ってから、割れるまでの、一瞬の時間。そこで僕は、ああ、生きてるんだなって実感できるんです」
彼の前に割れた壺はない。彼の後ろに割れた壺が出来る。
壺割り職人T氏の旅は、終わらない。
……いやだなあ、ボクのレビューなんかに何を期待してるんですか。
評点参りますよ。
- ハマリ度 : 7 / 10
- 長編の序章として、大風呂敷を大いに広げている。目立った引っかかりをすべて伏線回収できるなら、大いに期待が持てる。
ただし、ゲームとして見ると楽しみに乏しい。マンガ原作なのが原因か、ストーリーのテンポもマンガ的で、台詞回しがやや冗長、お使いイベントが多く、プレイヤーが遊べる要素が少ない。「壺割り」だけが目立っているようでは困る。
戦闘について。CTBを採用したのであれば、敵味方の行動順の情報はある程度公開してほしい。敵が堅く、戦闘時間が長引きがちなのに、戦略・戦術的な楽しみが現状薄い。堅いなりに概ねバランスは取れているが、巨大機械虫だけかなりしんどい。
そしてUI。リングコマンドの選択が→←ではなく↑↓なのは、いささか直感的ではない。今のところ致命的な問題はないものの、かなり引っかかるポイント。- グラフィック : 9 / 10
- マンガ的な良さは映像演出に現れている。必要なところで必要な絵が出る。敵も味方もグラフィックは書き込まれているし、マップも魅力的。マップに応じてキャラの大小が頻繁に切り替わるのは、本作の売りと言える。
ただし、画面揺れは多用しすぎ。画面が派手になるのでついつい使いたくなる気持ちもわかるが、地震だろうと心理的衝撃だろうと使ってしまうと意味が薄れる。それ以外の演出手段も考えるべき。
アイテムを拾う判定がわかりにくくなってしまうのは、作品のテーマからしてやむを得ない面はある。吹き出しでフォローはしているものの、もう少し判定を緩く作れないものか。自キャラが小さい時の感覚で拾おうとすると、自キャラが大きい時はうまく拾えなかったりする。
- サウンド : 8 / 10
- 有名どころからの選曲。目新しさはないが安定感はある。
さて、ひとまず第一部という形で公開し、評判も集まってきた今の時期が、作者さん方にとっては正念場でしょう。
ここから完結に向かっての道のりが、一番苦しいところです。甘く見ていては足下をすくわれます。
しかし、ここまで大風呂敷を広げたのですから、きっちりと畳んでほしい、とボクは願ってます。
さんざんふざけましたが、まだこの程度の、お茶を濁す程度のレビューしか書けない状態なんだと思ってください。
ぜひ完結を。そして、素晴らしいレビューがもらえるような作品になりますように。