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■ ツキノヒト

ツキノヒト
作者 [ 鍵虫 さま ]
ジャンル [ SF RPG ]
容量・圧縮形式 [ 220MB・ZIP ]
製作ツール [ RPGツクールVX Ace ]
言語 [ 日本語 ]
配布元 ダウンロード先

(補足)
2020.08.06:現在の最新バージョンは、1.06です。

ツキノヒト ツキノヒト ツキノヒト ツキノヒト ツキノヒト ツキノヒト

レビュワーハマリ度グラフィック サウンド合計総合判定
ES 8 /10 8 /10 9 /10 50/60 B
赤松弥太郎 8 /10 8 /10 9 /10

 《 ES 》  ハマリ度:8 グラフィック:8 サウンド:9

今回のイチオシゲーム「ツキノヒト」は、「基本の戦闘難易度は高め」と謳う程、戦闘バランスの厳しいRPGになっています。
厳しい戦闘バランスの原因も多数備わっており、その対処が楽しい作品になっています。

1. ザコが強い

本作は、ザコがかなり強い設定になっています。というより、主人公側が脆いといった方が正しいでしょうか。
HPだけは戦闘開始時に全回復するお助けシステムが入っていながら、最も耐久力の高いジーマですら、回復・バフなしでは3ターン耐えられません。ましてや、耐久力の低いカグヤにうっかり攻撃が集中すると、1ターンでダウンしかねません。
耐えられるようにするためには、1ターン目は防御力バフを掛けて耐える必要があります。しかも、敵によって有効なバフが異なるのが更に難しさに拍車をかけます。単体攻撃が主の敵に対しては、ジーマの「ウォークライ」でかばい、攻撃を1人に集中させるのが一番です。
ただし、複数攻撃にはかばう効果は発揮されません。複数攻撃を持つ敵に対してはジーマの「防衛指示」・カグヤの「りゅう座の神話」などの全体防御バフで、全員の耐久力を底上げして挑みましょう。
また、RPGツクール作品の例に漏れず、属性耐性は下手な防御力アップよりダメージを下げてくれます。そして、本作で属性耐性を持つ武器は、ボスのドロップ素材が必要などの理由で希少品となっています。ボスを1体倒したら、必ずナナミに話しかけ、装備ラインアップをチェックしましょう。

2. 属性が分かりづらい

「属性耐性が重要」と先述しましたが、本作ではこの「属性」が砕・突・光・音・万能と理解しづらい分け方になっています。

そして、どの敵にどの属性が効くのか、敵の見た目で分かりづらいのも、本作の難しさの要因になっています。「水棲っぽいから光が弱点」「外殻・装甲を持つ敵は砕が弱点・突には抵抗」とは限らないのが困りもの。
各敵の耐性・弱点などは、一定回数闘うと「エネミー図鑑」に記載されます。あまりに消耗が激しい敵の場合、「エネミー図鑑」を見直して作戦を変えるのをお勧めいたします。
また、「エネミー図鑑」であっても、敵が使うスキル(属性・与えるデバフ)についての情報は記載されていません。こちらは「実際に受けて覚える」しかないのが現状です。

3. とにかく経験値稼ぎ

RPGの難易度の高さには様々な方向性があり、「レベルを上げれば対処できるもの」「レベルでは対処できないもの」に分かれています。本作「ツキノヒト」は、「レベルを上げれば対処できるもの」がかなり多いシステムになっています。
その最大たるものが、レベル数だけ貯まるSPを消費して自由にカスタマイズできるスキル。行先にいる敵に有効なスキルを優先して覚えるのが鉄則となります。
そして、このスキルが最も重要になるのは、実は特殊型のイアンなのです。彼の覚える状態異常スキルは、序盤の「感覚インタラプト(敵全員に命中率低下デバフを付与)」からして強力極まりないスキルです。イアンのデバフスキルは、同時にそのデバフへの抵抗力を下げる効果も付与されるものも多いため、繰り返し使えばデバフを与えやすくなるのです。
覚えるスキルが固定化しがちなジーマやカグヤも、話が進めばより強力なスキルを覚えるようになります。
難易度が高いRPGは、戦法を広げて弱点を突ける楽しさもあるRPGです。船長に話しかけてスキルを初期化するのが最適手段となる場面も多々出てきます。使えるスキルは、常に確認しておきましょう。

4. 危なくなったらすぐ脱出!

「ツキノヒト」の難易度はCasual, Venture, Lunaticの3種類。このうち、Casual, Ventureはザコ戦で負けても中継地点に戻るだけでGAME OVERにはなりません。ただし、そのまま探索を再開するのは愚の骨頂です。
「ツキノヒト」の戦闘は、終了するたびにHPは回復しますが、MPは回復しません。全滅するほどの激しいバトルならば、当然、MPも枯渇しているはずです。おとなしく拠点に帰ってMPを全回復しておきましょう。「ツキノヒト」では、「拠点に帰還した瞬間に無料で全回復」「戦闘時以外ならいつでも脱出可能」と、立て直しがしやすいバランスになっています。これは最高難易度のLunaticでも変わりません。
先述の通り、ザコ戦でもMP消費なしでは戦えないバランスになっています。特にカグヤのMPは枯渇しがちです。「次の戦闘に耐えられるほどのMPが残っていない」と判断したら、潔く撤退しましょう。
心配せずとも、帰還までに溜めた経験値と資金で更なる強化ができるはずです。本作は1つの強化でかなり難易度が変わります。前回は全滅するほど強かった敵も、今回なら勝てる…そんな高難易度RPGならではの醍醐味を、常に味わえるゲームなのです。

「ツキノヒト」は、進めれば進めるほど、戦法のみならずストーリーも広がりを見せる作品です。ただ、そのストーリーを読むのにかなりの牛歩戦術を強いられる高難易度のRPGでもあります。
ボス戦など、戦法を計算しないと勝てないバトルに関しては、「★ツキノヒト_プレイングマニュアル.pdf」の終盤に簡単な攻略法が記載されています。攻略法を参考にあらかじめ体制を整えておけば、プレイ時間を節約できるでしょう。
色々な作戦を考え、効率化と安定性を図る、本作「ツキノヒト」は、忙しい人にもお勧めなRPGとなっています。

 《 赤松弥太郎 》  ハマリ度:8 グラフィック:8 サウンド:9

世界を変える気骨あるなら まず自分自身を変えろ

 Readmeの公式一行紹介は色々書いてますが、本作は王道どストレートなボーイミーツガールです。
 だって、男女の関係ってそれだけで夢と希望に満ちてるし、そもそも拗れてるものじゃありませんか。「呪い」と言うほど大層なものじゃありませんよ。

 失われた文明の遺跡から目覚めた、記憶喪失の少女と!
 戦争に疲れた兵隊上がりの発掘者が!
 出会って早々険悪な雰囲気になりながら、共に手を携えて遺跡から脱出する!

 この出だしだけで、期待は否応なく高まります。

運命みたいなの感じちゃうだろ?
 応ともよ。

 そして、王道なボーイミーツガールだからこそ、すんなりとはいかないわけです。
 オープニングからも垣間見えますとおり、カグヤははっきりと面倒くさい女です。
 傲岸不遜でサディスティック、自分が「美少女」であることを鼻にかけて、お高くとまっているくせに愛情に餓えている、という、実に鼻持ちならない性格の持ち主です。
 そりゃあ記憶喪失にさせられたのも、シナリオの進行上やむを得ない措置と納得するしかありません。
 ボクのような古参フリーゲーマーだと、同様の事情で序盤記憶喪失になり、エンディングで「記憶喪失だった頃が一番マシだった」と述懐された某メンヘラ女を思い出すところです。
 「養父」というキーワードが一致するのは、偶然なのかどうか。

 いやいや、さすがにこちらの「養父」は、アレと比較すれば真っ当な人間ですよ。あんなものは1人で十二分です。
 色々と至らないところのある人間でしたし、カグヤが彼のことも見下していたのも事実です。間違っても敬ってなどいません。
 それでも、カグヤもカグヤなりに、グルームレイクを父親として愛していたのは確かでした。

オープニング戦闘
 だって、ほら、泣いてるじゃありませんか。
 この顔グラ、他の場面では一切使用されていないのです。1回限りの使用だからこそ、その破壊力は凄まじい。
 あのカグヤがここまで動揺するシーンは、エンディングまで1回もありません。非常にまれな表情ではあるのです。
 でも、プレイヤーは知っている。
 自他とも認める天才美少女、皮肉屋で小生意気な彼女にも、17歳相応の面があると知っているから、プレイヤーは彼女に感情移入できるし、応援するのです。
 ストーリー上果たした役割の意味でも、アレとは正反対だと言えましょう。

 そんな彼女の側面を知っていたところで、カグヤが面倒くさいことは揺るがない事実です。
 恋人として以前に、人間として付き合っていくだけでも、相当な度量がないと難しいでしょう。
 しかし、対するジーマの方は……彼も彼で面倒くさい奴なんだよなぁ。
 表向きはがさつでぶっきらぼう、そのくせ妙に偽悪的で神経が細いところがあり、多数の地雷が埋まっている……事故物件度合いで言えば、カグヤとそう変わりません。
 せめてどちらかが妥協しない限り、「なかよくけんかしな」な距離感から一歩も近づけそうもありません。記憶喪失という状況を利用してもなおこれです。
 その上、2人とも妙に意地っ張りで、妥協のできない性質だから、前途多難もいいところなんですよ。

 となれば、おのずと注目されるのは、第3の男、イアンです。

オープニング
 初登場の時点で、お前絶対ジーマとデキてるだろ、とツッコまずにはいられない、あまりに微妙な距離感。
 ピアスや香水に綺麗な顔立ち、女性にまったく物怖じしない、というか、あれほど親しいタマキとの間柄でもラブの臭いがまったくしない、等々、疑惑は募るばかりです。
 普段のおちゃらけた態度も、何か裏があるんじゃないかと、変に勘ぐらせる原因になってしまいます。

オープニング
 何より怖ろしいのが、ジーマと組んでいる理由がいまいち不明瞭、という点。
 ガンブレードなんて趣味武器を振り回すジーマ一人では、遠距離攻撃に対応できない、という戦術的な意味で、ジーマ側にはイアンと組む理由があります。
 言ってしまえば、ジーマにとってはガンナーであれば誰でも良いのであって、そこでイアンが手を挙げる理由が見当たらないのです。ジーマは本当に面倒くさい奴なのに。
 これがエンディング後までプレイしてもわからない。謎です。やっぱりホモなんですかね。

第1エリアボス
 そんなイアンが、果たしてカグヤとジーマの間を取り持つような、一般的な友人役に収まるのでしょうか?
 持ち前のコミュ力で、早々にカグヤと打ち解けたイアン。
 しかし急速になかよくけんかしている2人を見て、思うところも大いにあった様子です。
 間違いなくイアンは、2人の慕情に当人達より先に気付いていました。一番最初とは言い切れないけど。
 そして、早々に知世ちゃんポジションに落ち着いちゃうのです。
 ……これがなァ~。
 さすがの嗅覚・バランス感覚と感心する一方、実に損な性格だと思いますよね。見事に貧乏クジを引きました。

オープニング
 色々思わせぶりではあっても、実はまったく裏表が無いことは、だんだんとプレイヤーにもわかってきます。
 引くべきところは引いてくれる、友人・仲間としては誠に得がたい人間です。
 とは言っても、月くんだりまで来る人間ですから、重い過去とか事情とかは標準装備ですけど。
 そんな過去もひっくるめて、カグヤとジーマを応援してくれる点に嘘偽りは無いのですから、2人は良い縁を得ました。

 でもね。
 エンディング後、「二人は、きっと大丈夫だよ」などと、新婦の母親みたいな顔してるイアンさん。
 アンタはやっぱり必要ですよ、今後とも。
 ヒーラーがいないと探索が危ういとか、そういう実用的な意味ではなくてね。
 ジーマもカグヤも、2人が共にいれば互いの危なっかしいところも補い合うでしょうが、そこにイアンはいなくていいという理由にはなりません。
 友の幸せを願い、祝うなら、その友の幸せに自分も含まれていることは、くれぐれも忘れないでよね。
 そこが危なっかしいのですよイアンは。ちゃんとジーマ離れしなさい。

 ということで、本作のストーリーに絞って書いてきました。
 だいたい本作の評価は、バトルが先、ストーリーが後、という順番になっていることが多いのですが。
 しかし作者さんは、あくまで書きたいストーリーが先にある、ということも明言していますし、ボクもそれを本作から強く感じます。
 なので、ボクは是非、難易度に迷ったらCasualをオススメします。
 VentureだろうがLunaticだろうが、選んでもご褒美は一切ありません。
 そう忠告したところで、バトルが好きな人は勝手に初見Lunaticに挑むんですから、問題は無いのです。

 問題は、Casualにしても十分キツイというところなんですけどね。
 初見Lunaticにしたボクの評点です。

ハマリ度 : 8 / 10
 本作の難度はまったく理不尽ではない。Lunaticにしろ、ザコバトル1回1回全力で考えることを前提に調整されているだけだ。純粋に戦闘を楽しむプレイヤーからの好評もうなづける。
 しかし、ストーリーを主として楽しみたいプレイヤーにとっては、その戦闘も単なる障害でしかない。ほとんどの戦闘がストーリーとリンクしておらず、カグヤ達も戦闘のその先しか見ていないのに、プレイヤーが敵に愛着を持つのは無理がある。ザコ戦も、素材はほとんど前のエリアや店売りで集められるし、コレクション要素も乏しいので、その階層の敵と戦う動機が少ない。Casualにすると、かえってボスのために稼ぎが必要になる局面が増えたりする。
 あるいは当初の予定通り、カグヤ1人が月を探索するゲームだったら、探索そのものが動機たり得たかもしれない。
 バランスについて。戦闘毎にHPが全回復するが、MPは回復しない、というロマサガ的なシステムを採用したので、MP管理が最重要となる。次のポータルに辿り着くまで、いかに全滅リスクを避けつつMPを温存するか、という駆け引きは、特に序盤楽しめる。
 しかし終盤、MP回復アクセサリが登場すると状況が一変。歩いているだけでMPが回復できるので、ほぼノーリスクでザコに全力が出せるようになり、リソース管理の必要が無くなる。一方でザコ自体の相対的な強さは大きく変動しないため、ザコ戦が作業になってしまう。せめて歩行中のMP回復は避けられなかったか。
 ディノリーパーは、ポータルからすぐに戦える、というボス同様の条件なのに、同階層のボスよりもやや劣る性能であれば、ボーナスキャラと認識されてもやむを得ない。FF5のギルガメ並みのしぶとさや報酬があれば、評価は変わったかもしれない。
グラフィック : 8 / 10
 主人公たちの顔グラ・キャラグラが描き下ろし、かな? ポイントを絞った描き下ろしは良い仕事をしている。
 いくら加工してDS敵グラと雰囲気を揃えても、RドはどうしてもRド。本作の雰囲気から見るとマッチしているとは言いづらい。戦闘時間が長い本作だからこそ気になる点。
サウンド : 9 / 10
 「バックグラウンド」ではなく、前面で作品を押し立てる曲群。硬軟有名どころ取り混ぜて、幅広く選曲している。
 ポップでキャッチーなタイトル曲は全体的な雰囲気からは浮いているが、本作全体を通して振り返ると、これがベストマッチだったと感じる。
 Abyss-DiverのSEは今なお健在。ツクラーの大いなる遺産だ。

 本当はタマキさんとかオコノギさんとかナナミちゃんとか船長とか船長とか船長とか、少ないながらも味わい深い面々に触れていきたかったけれど、時間切れなのでここまで。
 特に船長とか色々言いたいことあるけどね、何を触れてもネタバレになっちゃうし、仕方ないですよね。

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