■ 脳筋魔法使いは進学したい
作者 [ なす太郎 さま ] ジャンル [ ノンフィールド型RPG ] 容量・圧縮形式 [ 55MB・ZIP ] 製作ツール [ WOLF RPGエディター ] 言語 [ 日本語 ] 配布元
- (補足)
- 2022.08.18:現在の最新バージョンは、Ver.1.07です。
レビュワー ハマリ度 グラフィック サウンド 合計 総合判定 ES 10/10 8 /10 8 /10 50/60 赤松弥太郎 8 /10 8 /10 8 /10
《 ES 》 ハマリ度:10 グラフィック:8 サウンド:8
魔法使いだったら、拳一つで勝負せんかい!!
本作「脳筋魔法使いは進学したい」は、ゆるいストーリーと拳にこだわる主人公だけはパワープレイですが、ゲーム本体はゴリゴリに計算が求められるロジカルな仕様です。
「乱数が全てを決めるシステムで、ロジカルに行ける部分なんてあるのか?」とお思いでしょうが、バトルの賽の目は魔法で調整が可能です。
…ですが、私はプレイからしばらく経っても、なんならNORMALクリアしてからも、ずっと魔法を軽視していました。「ガチ脳筋」の魅力に取りつかれていたのです。
だって、初期のMPが4ですよ! 初期魔法の「プラスワン」を1回使ったら切れてしまう量です。1回しか使えない魔法よりも、初期レベルでも50%の確率で火力を1増やせる「ガチ脳筋」の方が強いと思ってしまうのも、納得いくのではないでしょうか。
この時は、「スキルの成長によるステータスの上昇」にあまり目が行っていませんでした。MPを決める基礎スキル「基礎魔力」は成長率が高く、Lv2でMP8(2倍!)、Lv3になると15(ほぼ4倍!)まで上昇します。
また、魔法もレベルを上げるたびにMP消費量が減少していきます。初期魔法の「プラスワン」はLv3にすると消費MPが1に減少! 同じMP消費量で3倍も多く使えるのです!
こういうスキルの成長率は、一度ゲーム内で覚えてから「DATA」メニューを見ることで使用経験値・成長項目共に教えてくれるようになります。もし、貴方がクリアできないならば、今まで軽視していたスキルの成長率を確認しましょう。ひょっとしたらステータス成長など「ゲーム内では確認しづらい成長項目」が優秀なスキルなのかもしれません。
そう、本作には、明確に「情報を伝えづらい仕様」が存在します。ステータスの成長など、小さいアイコン1個だけの成長項目が数多く存在するのです。
各アイコンの説明を表示するには、アイコンにマウスカーソルを合わせて右クリックする他ありません。困ったことに、こんな重要な要素であるはずなのに、「大体右クリックで説明されるよ」と簡素なアドバイスのみで済まされています。
厄介な状態異常に抵抗できそうなアイコンを持つクールダウン・柔軟・免疫の効果は、「対応する状態異常に掛かったら、状態異常の判定ダイスが2つ増える」(=ダイスが多くなれば、それに応じて高い目が出る確率も上がる)「スキルレベル数だけ、状態異常に掛かるターン数が減る」とかなり強い効果です。しかし、「状態異常に掛からない」「状態異常によるダメージが弱くなる」わけではないので、しっかりとその効果を熟知しておく必要があります。
逆に、あまりレベル上げの恩恵にあずかれないスキルも存在します。基礎攻撃であるパンチ・キックがその筆頭です。「ダイス数が増える」という恩恵こそあるものの、火力の伸びは今一つ。これで最大レベルまで上げるのに50Expも掛かるのです。50Expというのは、「思いつく」での10Exp消費を含めて、ほとんどのスキルを一発でLv3にできる量です。他の人のプレイ動画を見ても、私のプレイでも、パンチ・キックは大概Lv1のままでクリアしています。このように、「ぱっと見で火力が強い」スキル、「よく見ると強力な効果が付いている」スキルがより取り見取りに揃っている本作ですが、問題は、そのスキルの取得もランダムだということです。
強いスキルが出るまでリセマラという手もありますが、こういう時に途中の戦略をミスって落ちるのも定石。「運を戦略に組み込む」スキルが、プレイヤー本人に求められるゲームなのです。
作者本人が勧める、もしくはほかのプレイヤーも勧めているスキルには、それぞれ利点があります。
①ダメージを抑えられる防御バフスキル。次の行動まで効果があるがバフ量は低い頭・体スキル。攻撃が来るたびにダイスを選択する必要があり、効果が出るダイス目が少ないが、バフ量が高く、魔法でダイス目を調整できるリアクションスキル。どちらも一長一短である。
②先述した状態異常抵抗スキル(クールダウン・柔軟・免疫)。対応する状態異常に強力な効果を発揮するだけでなく、スキル成長コストも低いため、イベント判定もやりやすくなる。
③純粋に手数が増やせる攻撃スキル。特に、最大火力が5以上のスキルは時期に関わらず優先して獲得しておくこと。
④裏拳・ローキックなど「出目が低いほど効果の高い」攻撃。事故防止に取っておきたい(魔法を使いにくい「ガチ脳筋」プレイでは特に)スキルだが、ダイス目を下げられる魔法(極化・リバース)と併用する手もある。
この中でどれが当たるかは運次第。イベントではスキル部位まで指定できるものの、「思いつく」ではスキル部位すらランダムです。
「まずは最初に『思いつく』」これを合言葉にプレイしていきましょう。その後の「セオリー」は、本作のプレイを進めるうちに、または他の方のプレイを眺めるうちに、自ずと身につくはずです。
《 赤松弥太郎 》 ハマリ度:8 グラフィック:8 サウンド:8
TheoryとMuscle バランスだ
ESさんが「頭スキルに頭突きは無いのか」なんてヘンなこと言うから、確かめちゃったじゃないですか。
結論、ありません。
というか、頭スキルって一番最初、何もバフが乗ってない状態で使うんだから、ダメージスキルは攻撃力バフスキルの純粋劣化になります。要らないでしょ。
大量のMPを犠牲に攻撃力を上げる「ガチ脳筋」とかがあるから、それで十分としましょうよ。
えー、ということで、魔法使いというより魔法戦士、むしろ魔法も使える格闘家といった風情のトティさんですが。
プレイヤーは脳筋ではクリアできません。
難度NORMALでは、ローグライクらしい運要素も大きいとはいえ、プレイヤーが的確に選択すればまずクリアできるように調整されています。
逆に、戦略にミスがある場合、運だけで巻き返すのは、とても厳しいです。
自分の思ったとおりにいかないからって、「運ゲー」とレッテルを貼って思考停止した時点で、あなたの負けです。
大きな考え方は、同梱の「攻略のヒント」の通りです。きちんと読んで実践すれば、難度NORMALはクリアできるでしょう。
ここから書くのは、「攻略のヒント」を読んでもクリアできない方や、既にNORMALをクリアして、さらに高難度に挑もうとする方向けの、さらに詳細な攻略情報です。
当然のように初見プレイの楽しみを削ぐ内容ですので、ご了解の上読み進めてください。
◆成長戦略
まず、本作の敵がどのように強化されていくのか、大まかな流れをまとめます。
- 攻撃力1、状態異常も毒3程度の敵からスタート
- 攻撃力2になる敵が出始める。仲間呼びする敵も出現、倒す順序に工夫が必要になる
- 防御力持ちの敵が出現、麻痺を使って自分の手数を増やしてくる
- 状態異常が高い敵が出現、一度状態異常になると回復が困難に。バフ持ちも出現
- 攻撃力高く、状態異常も強く、仲間呼びも完備したラスボス
対するこちらの成長戦略も、相手に対応した方向で伸ばさないといけません。
青写真を描くとすると、
- まずは防御力を伸ばし、敵の攻撃を防ぐ
- スキルの数を増やし、手数で沈める
- 高火力スキルを成長させて、敵の防御力を突破する
- HPを伸ばしてダメージを凌ぐ、魔法や体スキルで状態異常を最低限で切り抜ける
- HPを犠牲にしつつ高火力でなんとか倒す
これが、基本的な成長戦略になります。
もちろんこれは理想論で、実際こううまくはいかないのですが、それでも行動指針としては間違いのないものです。
最初は経験値を「思いつく」につぎ込み、序盤のうちにスキルの数を揃えよう、というのは、ここに根拠があります。
中盤以降は既存のスキルの成長を進め、HPの成長は最後に回した方が良い、というのも、これが理由です。
進行度が大きいほど、「思いつく」でレアスキルが出る確率が上がるので、初心者はついつい経験値を温存したくなりますが。
生ぬるいと言わざるを得ません。
たしかにレアスキルは強力なものばかりで、他のスキルの完全上位互換だったり、他に類の無い使いやすさがあったりしますが、終盤に手に入れても成長が間に合わない、というケースも多いです。
レアスキルが無くてもクリアはできるんですから、まずは序盤を生き抜くことから考えましょう。
◆序盤のスキル選択
狙ったものは出ません。これは事実です。
「思いつく」のガチャで出る3つのスキルは、ノーマルスキル全32種(+レア排出率があればレア8種)から、修得していないものすべてが出ます。この数字、狙いが絞れるほど少なくはないです。
出たもので勝負するしかないという原則は、理解してください。
まったく死んでるスキルは存在せず、どのスキルにも活躍の機会はある、とはいえ。
それでも、使い勝手の良し悪し、上の戦略からの判断として、優先すべきスキルは存在します。
まず、「腹筋固め」「アームブロック」「サイドステップ」等の防御スキルが優先です。これの有無で序盤の安定感が大きく変わります。
チュートリアルの印象で、「リアクションスキルはなんか面倒くさい」「常時発動の頭・体スキルの方が強いんでしょ?」と思ってる方は、ぜひ認識を改めてください。
リアクションスキルには、魔法が使えるんです。
逆に頭・体スキルは、エクストラダイス以外にフォローの方法がありません。この差がものすごく大きい。
発動すれば強いけど、不発になりやすい頭・体スキルと、レベルも上げやすく、狙って発動できるリアクションスキル、という棲み分けができてます。
それと並んで、序盤優先するべきは、手脚の2つ目の攻撃スキルです。内容は問いません。
手脚のダイスは、初期状態で2個あります。2つ目のスキルがあれば、純粋に攻撃機会が2倍になります。
もちろん、「裏拳」や「ローキック」のような、低い目の方が効果が高いスキルは使い勝手がいいですよ。序盤は特に助かります。
でも、自分のスタイルにこだわってえり好みするより、さっさと攻撃スキルを揃えた方が、生存率は高まります。
「平手打ち」は、初見ではどう使えばわからないかも知れませんが、とても成長させやすく、Lv3では最低攻撃力2が保証されるので、むしろ序盤向きです。
「カポエイラ」や「アームハンマー」のように範囲が狭いスキルだと、序盤は苦労しますが、中盤以降、魔法が育ってくれば主力になるはずです。
◆スキル伸ばしの判断
魔法、そしてアイテムは、いずれも強力な効果があります。
MPは戦闘終了時に全快するので、魔法はためらわずに使っていくべき、なのですが。
魔法にしろアイテムにしろ、入手方法がイベントのみなので、スキル以上に運に左右されます。「プラスワン」だけで攻略するハメになることもありえます。
どんな状況でも通じる、スキル伸ばしの必勝パターンは存在しないので、状況判断が重要です。
運良く、魔法が序盤に手に入れば、「基礎魔力」やMP回復の頭スキルを伸ばし、どんどん出目操作を仕掛けていくべきです。
逆に、魔法入手イベントが来ないようなら、基礎魔力はLv2までにとどめて、プラスワンをLv3まで伸ばすことを優先すべきかもしれません。
いずれにせよ、プラスワンはレベルを上げて損は無いはずです。
Lv2になれば使用回数は3回に増え、Lv3ともなれば消費がLv1の1/3にまで減ります。使い勝手もとても良く、MPが調達できればどんどん使っていけます。
魔法Lvによってアイテムのキャパシティが決まるので、魔法Lvは最低限、装備したいアイテムの分は確保しましょう。
敵に防御力がつく前に攻撃スキルのレベルを上げておくのは、どんな状況であっても必須と言っていいでしょう。
逆に、成長を遅らせてもいいのは「基礎体力」。
序盤のうちにHPが減ってしまう場合、HPが足りないという以前に、防御力・攻撃力の不足が懸念されます。
それと、手脚の初期スキル「パンチ」と「キック」も、成長を見送った方が良さそうです。
ダイスが1個増えるのは、スキルが揃っている場合は大きな強化と言えますし、経験値の消費が大きいのは納得できます。
ただ、魔法主体のスタイルだったり、スキルごとの有効な目をばらけさせている場合、ダイスを増やす必要性は薄いんですよね。
成長させても火力がほとんど伸びないのも問題点で、それよりも火力の確保が優先されるべきでしょう。
◆状態異常への対応
状態異常は、本作最大の脅威です。
特に毒は、どれほど出目が良く、スキルや魔法を揃え強化したところで、毎ターン最低1ダメージは避けられません。
防御が堅ければ、ほぼシャットアウトできる直接攻撃に比べ、確実にHPを削られる毒は、HPが少ない本作でははるかに厳しいです。
貴重なMPを削っていく混乱、敵の行動回数が増えてしまう麻痺も、ふとした油断で深刻な事態を引き起こします。
運良く、状態異常判定にも使える魔法が手に入ったら、それを使って出目を確保するべきです。
状態異常耐性の体スキルがあれば、サイコロの数も増えるし、持続時間も短くできます。
運悪く、どちらもない場合はどうするか?
エクストラダイスを使う以外ないでしょうね。
状態異常への対抗手段が無い時は、エクストラダイスは全部状態異常判定にツッコんでもいいと思ってますよボクは。
特に毒。深刻度が最低でも、運悪く1を振ったら、3ダメージにもなるんですよ?
こんな判定、ダイス1個だけで毎ターンやってられないでしょ?
まあ、「状態異常攻撃される前に倒せ」「なっちゃったら、ともかくさっさと倒せ」というのが、この上ない正義ではあるんですが。
火力、足りてますか?
と、ここまで、本作の構造を見ながら、自分なりの攻略法をお伝えしたのですが。
何というか、「攻略のヒント」と似たり寄ったりの内容になってしまいました。
本作、たしかに自由度は高いんだけど、攻略法の幅は見た目ほど広くないんですよねー……
評点いきます。
- ハマリ度 : 8 / 10
- ストーリーについて、オープニングは初回強制、エンディングは任意のタイミングで見られる設計だが、かなり好みの分かれる芸風であり、しかもその後のプレイヤーの経験とはほとんど関わりがない。エンディングも「ハッピーエンドです(ネタバレ)」と明記されているので、ストーリーに期待する動機が薄すぎる。オープニングだけであっても、漫才なんかいいから、さっさとプレイさせてくれ、と思う人もいるのではないか。
自分の思ったとおりにならなくても、置かれた状況に適応して最善を尽くす、という、ローグライクらしさが十分に味わえるのは良い。1プレイ30分強という、ギリギリセーブデータが必要ない範囲に収まっているのも好判断。とはいえ、気軽に遊びたいというニーズから考えると、オートセーブは欲しかった。
また、キーボードの操作感覚が特殊で、一般的な上下左右による操作方法と対応していないのも気になる。キーの入れ替えはできるが、それでは解消しないレベル。結局ほぼマウスだけでプレイした。
結局決まった攻略法に落ち着いてしまうのは、このボリュームでは致し方ないところがある。特にイベントがほとんど「やる」か「やめる」かの二択で、あまり新鮮味がないのは気になった。- グラフィック : 8 / 10
- ほぼ全自作。作画カロリーの低そうな敵グラに惑わされるが、キャラグラは目パチも完備、表情差分も十分。普段三白眼気味だし、UI画面でデフォルメ化されたトティに見慣れてると、イベント絵できちんと美少女してるトティさんに驚く。
背景ももちろん自作。ただ、オープニング・エンディングのチップスの部屋が暗すぎてよくわからない感じになってるのは残念。- サウンド : 8 / 10
- これも10曲+サウンドモード専用の1曲、全曲書き下ろし。生録音のピアノ以外は音源が弱いが、雰囲気は明るく、特に探索画面の曲に中毒性がある。
初見でも気軽にクリアできる、という難易度ではありませんが、1口サイズのローグライクとして、すんなり入っていける作品です。
中断セーブができないことだけ気をつけて、まずは1時間、ちょっと触ってみよう、というつもりで始めるのがオススメです。