■ 夢見の塔
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作者 [ YouChalice さま ] ジャンル [ ノンフィールドローグライクRPG ] 容量・圧縮形式 [ 181MB・ZIP, ブラウザゲーム ] 製作ツール [ RPGツクールMV ] 言語 [ 日本語 ] 配布元 ![]()
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レビュワー ハマリ度 グラフィック サウンド 合計 総合判定 ES 8 /10 10/10 8 /10 51/60 ![]()
赤松弥太郎 7 /10 9 /10 9 /10
《 ES 》 ハマリ度:8 グラフィック:10 サウンド:8
スローライフは夢の後で
本作「夢見の塔」は、私が惚れ込んでイチオシにした作品です。操作方法はマウス一本とシンプル、戦闘難易度自体は易しめ、それでいて依頼・交易・投資と金策要素が豊富にあり、それを駆使しながら己と街を発展させていくスローライフRPG…そう私は解釈してプレイしていました。
まさか、その依頼・交易・投資といった金策要素はただの「やりこみ要素」でしかないとは予想外でした。ストーリー進行自体は、塔内の固定イベントで手に入る「夢のかけら」を集め、その後に塔を30Fまで登ること、それだけです。街の発展度・交易などのNPCとの交流・依頼の達成は、ストーリー進行には一切かかわりません。
「30Fまでの踏破」にはそれなりにレベル上げが必要ですが、レベル15~20ぐらい上げれば十分クリアできます。状態異常も(こちら側がかける場合は)弱く、大抵の敵(強敵も含む)は単純に囲んで通常攻撃で叩く方が楽なバランスです。
「ENDまでの到達」には1~2時間程度で達成できます。それまでの間、数々の「当初は攻略に必要だと思っていた要素」はほぼ達成できていません。
錬金レシピの達成率は50%未満。4属性の結晶、個数1~3の組み合わせ…(4×3)×(4×3)のパターンを踏破するには、2時間程度のプレイでは足りません。錬金の目的である「賢者の石」に必要な素材は半分も作れていません。
依頼なんて、最初に受諾したものがEND後まで残っている有様です。依頼物の回収には、特定の敵を狩るものがほとんどです。目的のアイテムをドロップする敵、それが出やすい地形を探すには「経験」しかありません。本作にはモンスター図鑑が実装されていないため。たとえ実装されていたとしても覚えきれないでしょう。それほど依頼物もモンスターも多彩なのです。
ある程度ドロップアイテムの数が揃ってから、定期的に「依頼」メニューを覗いて即納品可能なものだけを受諾する…それが本来の「依頼」の使い道だったのかもしれません。3つまで受諾できるにしても、手に入れる道筋が「目標のモンスターが出やすい土地を重点的に探索する」という、絞り込むにはあまりにも頼りない方法しかありません。「どこに出てくるどのモンスターのドロップ品」かすら、依頼文には書かれていません。
「依頼」にドロップアイテムが必要となると、道中で手に入れたアイテムは下手に売れなくなります。回避可能な「強敵」からドロップする「つわものの証」、錬金で手に入るアイテム…これらを欲しがる依頼が出るのか出ないのか…確定できないと下手に売却金策ができません。
箱に入っているレアアイテム「遺物」は「鑑定」するまで何のアイテムか分かりません。しかし、「鑑定」後すぐに売却するか聞かれます。これも安易に即売却していいものだったのでしょうか? 剣や首飾りなど装備品っぽいのも手に入りますが、本作には「装備」メニューはありません。これらの装備品っぽいアイテムの使い道は、売却以外に発見できませんでした。
本作、情報は多数あり、それらを説明する箇所も「冒険者手帳」としてまとめられています。しかし、先述の通り、「冒険者手帳」にも書かれていない情報があまりにも多いうえ、「冒険者手帳」メニュー1箇所にまとめられているせいで知らなかった情報も結構出てきます。
実をいうと、私はENDを見るまで突入時の「エレベーター」の使用方法が分かりませんでした。「10階、20階などキリのいい階数を踏破すれば解放されるかな」と思い探索を進めても、0階から動かすことができません。塔内のエレベーターから帰還しても、元いた階に移動することすらできません。
「到達した階まで移動できるが、移動階数×100Zの資金が必要」だと知ったのは、END後に「冒険者手帳」を眺めていた時でした。それは使えないはずだわ! 道中はずっと雇用・投資・食事・預金で財布を空にしてから塔に突入してたので。そんなシステムで見れば余りにもアラが多すぎる本作、それでも私は本作に惚れ込んでイチオシに勧めました。理由は、「巡る世界の独特さ・美しさ」です。
ペン画のモノクロームな舞台、シュールなモンスターデザイン、マトモな人もそうとは見えない人も個性的で好ましいキャラクター…舞台美術は本当に一級品です。
歩むたびに移り変わるシュールな世界観をただただ巡る…それこそが作者の意図したプレイだったのでしょう。
私もそう感じ、本作を「スローライフなRPG」と評しました。ただ、イチオシに決定した当初は、その「スローライフ」ぶりを甘く見ていました。まさか、その「スローライフ」がストーリー進行にすら結びついていないなんて…。
本作は、ストーリークリア後こそ本番。文字通りの「無限ダンジョン」が出現します。無限の塔を登り、ただただ世界観を味わう。それを楽しみたい…のですが、流石に他にもプレイしたいゲームがあるからなぁ…。
《 赤松弥太郎 》 ハマリ度:7 グラフィック:9 サウンド:9
完璧なChapter アイデアは無尽蔵
残念ながら本作、プレイ体験という点では難点が色々と目立ちます。
- 1対1のバトルシステムは簡素で味が薄い。基本的にレベルを上げて物理で殴るだけの設計。
- そのため、ステータスは攻撃力の比重が高い。特に序盤、キャラメイクで攻撃力を確保していないとしんどくなるがノーヒント。
- 味方キャラはレベルのある装備品扱い。上述のレベル設計のため、キャラ選びが戦略・戦術に与える影響が乏しく、味方キャラが記号化する。レベルがあるので気軽に着脱もできず、やがて意識が向かなくなる。
- クエストがほとんど機能していない。多様な敵が落とすドロップアイテムを、狙って揃えるのは困難。たまたま依頼品が揃っている時以外受注することがない。
- 同様に交易品イベントも機能していない。遭遇率も高くはなく、多種多様な交易品の中で所持している交易品を買い取ってくれる相手が出てくる確率は低い。買い揃えるほど損をする。
- レシピが多すぎ複雑すぎる錬金術も、やり方を知らない限りクリア前に賢者の石に辿り着くことはないだろう。クリア後要素と考えていい。
- エレベーターは1フロア100Zかかり、金が足りない階は到達にかかわらず選択できない仕様。金額設定が高すぎて、1階から攻略した方がレベルやアイテムが稼げる分安全。
- キーボードは原則非対応、PCだとマウス操作が必須。半端にキーボードでも操作ができる場面があるが、むしろ一覧画面でカーソルが横に移動できない、キャンセルキーを押した時に2番目の選択肢が選ばれる場面がある等の罠要素。
- 扉を開けた先が同じ地形だと扉が表示され続けるなど、細かいバグがまだ残っている。
1つ1つは小さな違和感とはいえ、プレイするほど「あれ?」と小首をかしげる場面も増えてきます。
では、本作の魅力は一体どこにあるのか。
グラフィックとデザインにある、と断言していいのではないかとボクは思います。
オープニング、高くそびえる夢見の塔に圧倒された直後の、このシーン。
悩ましげな彼女の瞳に見つめられたその時にはもう、本作のデザインコンセプトがはっきりと伝わっているはずです。
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看板娘3姉妹が運営するギルド「野いちご」に温かく迎えられ、プレイヤーは塔を目指します。
見ての通り作者さんは単眼フェチであり、tumblrには3姉妹以外にもさまざまな単眼娘たちが描かれてるんですが、本作では3人だけです。
本当はもっと増やしたかっただろうに、痛みに耐えてよく頑張った!
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じゃないと、本作が単眼ゲーだと誤解されかねませんからね。
塔に入ってチュートリアルが始まって、なんだ本作にも2つ眼の人がいるじゃないか、と安心するでしょ。
で、敵が出てきてナンジャコリャ、となるわけです。
進めれば進めるほどに、まるで夢の中のような本作の雰囲気……というか、作者さんの作風にどっぷりと浸かっていきます。
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半分に縮小したスクショでも、手描きペン画のぬくもりが伝わってきますよね。
ピアノを主軸にしたサウンドも相まって、いつまでも漂っていたいと思える空気感を見事に作り出しています。
単調で緊迫感が薄いと言ってきたバトルも、ストレスを感じさせないという面では意味があります。
ただボクの中で、本作の目指す「漂う心地よさ」とノンフィールドRPGというジャンルが噛み合わない気がしてます。
ノンフィールドRPGってミッションの塊じゃないですか。何階まで辿り着けばクリアとか、ボスを倒せばクリアとか、明確な目標があり、その報酬としてストーリーが用意されていることがほとんどです。
その目標がはっきりしないと、前に進む原動力にならないし、「変わり映えがしない」って感想になっちゃうんですよ。
本作はプレイヤーに漂ってもらいたいから、ミッションを明瞭にしたくない。よって最上階が何階か示さないし、そこに何が待ってるのか、なぜプレイヤーが塔に上るのか、ハッキリさせません。
その点が、プレイヤーにとっては手応えの薄さに繋がっているとボクは感じました。
上でクエストとか交易品について「短期的な見返りが少なく牽引力に乏しい」と評しましたが、目指すものがズレてるからだとすると納得がいきます。
本作にもイベントがあり、物語がありますが、ストーリー性を前面に出しているわけでもありません。
ランダムで発生するそれぞれのイベントはオムニバス風で、1つのテーマに則して語られてはいるものの、ひとつながりになって大きな物語を編み出すものではありません。
メインストーリーもとても薄口で、ラスボス戦でのイベントは王道っちゃ王道ですが、取って付けた感は否めません。
無くても別にいいんじゃないかな、とか、3姉妹とイチャイチャできれば十分だったのにな、とか思っちゃうんですよね。
そういうものだ、と了解すれば、少しずつ楽しくなってきます。
しかしやはり、世界観を味わいたいなら、ゆめにっきライクの形式が強いです。なにせ、自分で好きなように歩ける。
ノンフィールドで、しかもローグライクとなると、世界観を楽しむには自分の思うようにいかないことが多くて……それ以外の楽しみがねえ……。
目的も何もなく、流されるままただ漂いたい、というニーズには応えられる作品ではあります。
もし、クリアしてなおプレイし続けたいほど本作が好きなら、賢者の石生成を目指して頑張るってのはどうでしょうか?
すごーく長い時間がかかると思いますが、達成したらきっと充足感が得られますよ!