■ 魔王スライムさまがんばる!
作者 [ 魔王スライムさまプロジェクト さま ] ジャンル [ タワーディフェンス ] 容量・圧縮形式 [ 28.3MB・ZIP ] 製作ツール [ Unity ] 言語 [ 日本語 ] 備考 [ Androidアプリとしてもダウンロード可能 ] 配布元
- (補足)
- 2020.10.21:現在の最新バージョンはv1.15dです。
レビュワー ハマリ度 グラフィック サウンド 合計 総合判定 ES 9 /10 9 /10 9 /10 51/60 赤松弥太郎 8 /10 9 /10 7 /10
魔王様は主人公(ソシャゲ的な意味で)
本作「魔王スライムさまがんばる!」は、スマホゲームを意識した部分が見えるディフェンスゲームです。
一番特徴的なのは「ガチャ」の存在でしょう。ストーリーをクリアするごとに貯まる「ジェム」を消費して、ランダムにユニットを手に入れるシステムです。
ただし、本作はガチャの比重は高くありません。レア度およびステータスの高いユニットは出撃コストも高く、序盤で引いても出現機会は全くありません。
むしろ、本作におけるガチャの役割は、既存のキャラを引いて重ね強化か、銀枠の特徴的なユニットを引くことにあります。
本作のユニットは、バトルでの活躍で上がるレベル・ガチャで稼ぐプラスによってステータスが上がります。タワーディフェンスの例に漏れず、本作も「足止め」は有効な手段になります。大抵の場面では、コストの高いユニット1体を突撃させるよりも、同じコストで複数のユニットを召喚して囲んだ方が遥かに効率的になります。そのためにも、コストの低いユニットに下駄を履かせられる重ね強化は、下手にリセマラで高レアを狙うよりも重要になるのです。
逆に、コストの高いユニットが有効に働く場面もあります。ユニットを置けない穴ぼこが多いステージや、宝物庫・魂縛結界などの地形効果など、ユニットを置ける土地が少ない場合です。ただし、この場合でも、高レアユニット1体だけではエネミーの物量に潰されてしまいます。バックアップ用の後衛・壁役ユニットは事前に準備しておきましょう。
また、「銀枠のユニットが早めに手に入る」というのも、ガチャの長所となります。本来ならばストーリー中盤で手に入る銀枠のユニットを序盤で手に入れることで、戦闘が大幅に変わる場面が出てきます。宝物庫を発動する「ミミック」、強力な回復ユニットの「マミー」、ver.1.10で追加された広範囲遠距離攻撃ユニット「スカルアーチャー」…銀枠ユニットは手ごろなコストの割に、上手く活躍させる場所を設定すれば金枠・ボス枠のユニットに勝るとも劣らない活躍を見せます。このように、本作はカジュアルな見た目ながら、かなり本格的なタワーディフェンスになっています。「(特に序盤で)采配を間違えると、なす術もなく蹂躙される」ほど本格的な難易度なのです。
本作に限っては、(地形などの制限が無い限り)戦力を1箇所に集中させる陣形を目指しましょう。最初の地形が分かれ道だからと言って戦力を分散すると、分散したことで火力が減り、両ルートを押し切られてしまいます。
戦力を1マスに集中させることには、もう1つ大事な理由があります。「マジックミサイル」「イビルアイズ」などの砲台ユニット、「スパイクトラップ」「ポイズントラップ」などの設置罠…敵を一箇所に固めることで攻撃チャンスが増えるユニットの存在です。壁役のユニットで追い込んだり、より長く範囲に収まるよう地形を整えたり、各ユニットの特性を生かした様々な戦法が楽しいゲームです。
陣形を作る際には、もう1つ重要な観点があります。「ユニットの移動範囲」です。「魔物」に分類されるユニットには、攻撃範囲(赤マス)の他に移動範囲(青マス)が設定されています。移動範囲に敵が引っ掛かった場合、ユニットは敵まで歩み寄って攻撃する仕様になっています。
問題は、「敵を1か所に追い込む」ために、この移動範囲まで考えなければいけない点です。移動範囲が広いユニットを入り口近くに置くと、トラップや地形効果の範囲外まで移動してしまいます。下手すれば、「移動範囲の広い主力が孤立して各個撃破される」という敗因にすらなりえます。コスト運用次第で金枠が使えるようになる中盤以降は、全ユニットが1箇所を集中攻撃できる配置から考える…本作はそんなタワーディフェンスの醍醐味をカジュアルな難易度で味わえる作品です。
本作は、1ステージ当たりのプレイ時間も短く、ステージ数も(ver.110d時点で)メインステージが10、オマケステージが3と手ごろな分量になっています。
ただし、本作はまだまだアップデートが続いています。月単位で追加要素が出ている作品なのです。オマケステージも、一部のユニットも、アップデートで追加されたものなのです。
本作がどこまでもアップデートしてくれるよう、ささやかながら私も応援いたします。
《 赤松弥太郎 》 ハマリ度:8 グラフィック:9 サウンド:7
危ないときもそりゃあるけれど かわいい娘には旅だよね
こちらの、自分を魔王だと思いこんでいるスライムが本作の主人公です。
どうもストーリーを見てると、彼女、本当に魔王らしいんですね。
魔物を召喚し、ダンジョンを設営する能力は魔王固有のものだとかなんだとか。
しかしながらプレイヤー視点で見れば、魔物召喚も、ダンジョン改造も、指示しているのは魔王さまが呼ぶところの「従者」、すなわちプレイヤーです。
本当に魔王さまが召喚しているのか、疑問に感じるのも無理はありません。
HP1防御力1とまったく戦力にならないばかりか、行く先々で冒険者どもに狙われる、疫病神体質の持ち主でさえある、この魔王さま。
それでいながら、常に鷹揚で、胆力は十分すぎるほどあります。
冒険者が増えた原因だと疑われた時に、「なら私をダンジョンから叩き出せ」と啖呵を切るのは、なかなかに侠気溢れるシーンです。
これって、自分が弱いことを客観的に理解した上で、それを卑下せず、ありのまま受け止めているからこそできる言動ですからね。
魔王相応のカリスマは備えているわけです。
そんな地下アイドル・魔王スライムさまに、追っかけよろしく群がる冒険者たちをなぎ払う。
テーマパークに来たみたいだぜ、テンション上がるなぁ~
と思うかどうかはさておき、本作はタワーディフェンス系に分類されるゲームです。
あまたの派生が存在する中で、本作が採用しているルールは以下の通り。
- Wave毎にセットアップフェーズ・防衛フェーズが明確に別れており、防衛フェーズ中はユニットや通路の操作はできない。
- ゲームオーバー条件である「魔王スライムさま」は、入口から通路で接続できる範囲なら、どこにでも自由に設置可能。
- ユニットは、設置場所から動かない「罠」と、索敵範囲内で敵を探して動く「魔物」に分けられ、それぞれ使う資源も異なる。
- 設置は1マス1ユニットだが、魔物が防衛フェーズ中に動いた結果として、1マスに複数ユニットが重なって存在できる。
中でも独特なのは最後のものですね。
伝統的なタワーディフェンスは、敵軍の物量 vs 自軍の弾幕という図式が成立するのですが、本作の場合、弾幕を張れるユニットが存在しません。
その代わりとして、物量と物量をぶつけて戦線を維持するという図式を用意している、ということです。
その意味では、フェアだ、と言えるでしょう。
また本作は、ユニットの他、壁の設置・撤去も自由に行える、いわゆる自由配置型に分類されます。
しかし自由配置型の難点は、一度配置パターンが決まってしまうと、あとはどのステージでも同じことを繰り返してしまい、ワンパターンになりがち、という点。
パターンが決まらないように本作が取っている対策は、
- ダンジョン作成範囲が、ステージ毎に決められたWaveで拡大する。
- ステージ特定の地形「穴」は埋めることができない。遠距離ユニットや飛行ユニットを考えて、通路を設計する必要がある。
- 他、採れる資材がブーストされる「魂縛結界」「宝物庫」などの地形効果も存在。
- 状態異常や射程、特殊能力など、バリエーション豊かなユニットが存在。
- 3属性による相性があり、敵の編成に応じて味方ユニットの配置を考える必要がある。万能ユニットは存在しない。
などなど。
魔物は17種、罠は11種、それぞれにとても個性的です。
たとえ最弱のグリーンスライムであっても、レベル20で習得する「防御力低下」は唯一無二の効果です。使ってみる価値はあります。
逆に、たとえボスランクのユニットであっても、相性の悪い敵に囲まれれば、あっという間に落ちてしまいます。
セットアップフェーズでしっかりと、敵編成に応じて、苦手な敵をフォローできる陣形を構築する必要があります。
「とは言っても、グリーンスライムのレベルを上げるのは大変では……?」
そう思ったあなたに、ボクが本作で一番ユニークだと思った、レベルアップシステムについてお話しします。
- ユニットは敵を倒すことによってレベルアップ。上げたレベルは、召還時の初期レベルとしてゲーム全体で引き継がれる。
ゲームオーバーになっても、その間上げたレベルは引き継がれる。これは本当に強烈。
敵が一体でも倒せさえすれば、クリアできなくても、経験値稼ぎができる、ということです。
終盤ステージ、グリーンスライムの索敵範囲と重なるように、防御力の高いユニットを配置しておくと、みるみるレベルが上がっていきます。
もしかしたら、これが魔王の力だというのでしょうか。
魔王さますごいですね憧れちゃうなー
- 防衛フェーズ中は魔王スライムさまの魔法攻撃のみ介入可能。
強力だが、これで敵を倒すと資材が回収できないため、とどめの一撃は魔物たちに任せること。
なお、ステージクリア後のダメージランキングでは、このダメージは魔王さまのものとしてカウントされない。……あれ?
ま、まあ、「魔王さま実は魔王じゃないんじゃないか疑惑」は冗談としても。
薄味のストーリーながら、10ステージ目にもなると、だんだんと核心らしいものが見えてきます。
なぜモンスター達が地下に追いやられているのか?
ダンジョンに魔王さまが現れると、冒険者が急に増え始めるのはなぜか?
魔王さまはなぜ魔王になったのか?
「先代の魔王」たちは、今まで何をしてきたのか?
疑問がだんだん膨らんできたところで表示される、
え?
続けるんですか?
少なくとも今のままのシステムじゃありませんよね?
だって、魔物たちの最終スキルはレベル30習得なのに、ラストステージの敵レベルは40ですから。
これ以上続けても、あとはインフレを続けるばかりじゃありませんか?
今現状の10ステージは、レベルデザインとしてはとても良くまとまっているいい塩梅です。
しかしユニットの種類は、それを上回って豊富すぎます。
先程お伝えした合計28種のユニットの内、罠1種はステージ限定です。
最初から使えるのは魔物2種、罠1種。
そして、ステージクリアで開放されるユニットは、魔物7種、罠4種の11種です。
では、残りの魔物8種、罠5種はどうやって手に入れるのか。
ガチャです。
しかも、重複は排除されず、手持ちのユニットが少しだけ強化されるおまけ付き。ストーリーで入手できるユニットもガチャに含まれます。
排出率1%のボス枠に3種のユニットがひしめいており、狙った1種を引く確率は0.3%。
200回引いて当たるかどうか半々、といったところです。
課金システムを備えていない現状、そもそもガチャを引く機会自体が少ないんです。
回数を増やす方法は2つ、ステージクリアボーナスか、実績解放ボーナスだけです。
ステージクリアボーナスは、ステージ1を2回クリアして1回分、ラストステージを数十分かけてクリアして2.5回分、といった具合。
実績の方はさすがに高めですが、エンディングまでの初回クリアボーナスを合計しても50回分にしかなりません。
あとは、好感度(研究度)という、ステージクリアのダメージランキングでしか上がらない数値の実績がずらりと並びます。が、まず到達困難。
魔王スライムさまの好感度を100まで上げるには、ステージ1を34回クリアするのが最速という結論が出ました。
やりますか?
ガチャを1回も引かなくとも、ストーリーで開放されるユニットだけでもクリアはできるはずです。
ただ、ガチャ限定のユニットはどれも強力なんだよなあ……ラストステージの主力だったし……。
ストーリーといい、ユニットといい、出し惜しむスタンスはまさにソシャゲのそれなのが、フリーゲームとして評価する時のつらさです。
これで、ステージ10 + おまけ3ステージの現状の範囲内で、ちゃんとまとまっていれば、ボクとしては好感触だったのですが。
グラフィックとサウンドについても触れておきましょう。
- グラフィック : 9 / 10
- ドット絵は文句なしにカワイイ。ごちゃごちゃになるのが宿命のタワーディフェンスではあるが、死亡アニメーションが最優先で表示される配慮もしっかりしている。
マップオブジェクトのタップポイントが微妙にわかりづらい点でマイナス。背の高い魔物の奥に床トラップがある時などは特にわかりづらい。- サウンド : 7 / 10
- いつもの魔王魂。ただし、魔王魂の強みは何にでも合うあっさりとした味付けにあり、中毒性は低い。
なんだかんだで長くなるプレイ時間を、メインBGM2つだけで回す、という本作の姿勢とはマッチしていない。現状の範囲内でも十分に楽しめますから、タワーディフェンスを繰り返しプレイする方々にとっては、排出率が低くともいつかは届く、のかもしれません。
ストーリーを最大の牽引力としているボクには、ちょっと苦行が過ぎます。
ラストステージの思わせぶりな展開が解決しそうになったら、またプレイするかも知れませんネ。