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■ 怪異症候群3

怪異症候群3
作者 [ ナオ さま(夕闇の季節) ]
ジャンル [ ホラーアクションアドベンチャー ]
容量・圧縮形式 [ 952MB・自己解凍EXE ]
製作ツール [ RPGツクールVX Ace ]
言語 [ 日本語 ]
配布元 ダウンロード先

怪異症候群3 怪異症候群3 怪異症候群3 怪異症候群3 怪異症候群3

レビュワーハマリ度グラフィック サウンド合計総合判定
ES 9 /10 8 /10 8 /10 50/60 B
赤松弥太郎 8 /10 8 /10 9 /10

 《 ES 》  ハマリ度:9 グラフィック:8 サウンド:8

「症候群」は本当に治まったのだろうか。

「怪異症候群」シリーズは、1作目である「怪異症候群」以来、様々なホラーゲームファン・実況プレイヤーにプレイされ、ブラッシュアップされ続けた作品です。
イラストレータ畑の作者ではないため、RPGツクール2000で作られた「1」「2」では、画像素材はほぼフリー素材でした。しかし、「怪異症候群」シリーズのホラーは、2~3頭身のキャラクターでも必要十分以上に感じられるものでした。初見で殺され、2~3度目でクリアできる絶妙な難易度。「追いかけっこ中にオブジェクトを調べて撃退・回避」という緊張感あふれるゲーム内容。「どのオブジェクトが撃退ポイントとなるか」という覚えゲーでもありました。
主人公が美琴から氷室に変わった「怪異症候群2」では、「銃撃アクション」で能動的に怪異を攻撃できるようになりました。役立つ場面もかなり多く、よりアクション性が高まったのが「2」でした。そして、「1」から「2」に行くにつれ、出現する怪異自体も範囲が広がり、致命的になっていきました。
そして、完結作となる「3」です。由佳、加賀、霧崎、そして、小暮と春子、今までのシリーズでは傍観者もしくは被害者だったキャラクターを主人公としたオムニバス方式となりました。
怪異の撃退方法も主人公によって変わります。ほとんどの人は「追いつかれる前に撃退ポイントに触れる」という美琴と変わりない攻略になりますが、武器を扱える小暮と、透視能力で怪異や謎解きの位置を察知できる春子という新しい操作も加わりました。もちろん、小暮も春子も、うかつな操作をするとGAME OVERとなるのは変わりません。

「1」のリメイク版、そして「3」で製作ツールがRPGツクールVX Aceに変わったことで、アクションの操作性も格段に向上しました。ダッシュの追加、2000時代では連続して効果音を鳴らし続けるとノイズが入るというバグの修正…などなど、数々の点でプレイしやすくなりました。
そして、プレイしやすくなった分、求められるアクション技術も高くなりました。ステルスアクション、敵の飛び道具の回避、最終盤ではほぼシューティングになるほど密度の高い弾幕が飛び交うようになっています。
一発死ではなくライフ制となり、死亡してもノーリスクでコンティニューできるようになりました。アクションが苦手な方向けに、無敵モードが付くステージもあります。アクションシーンでプレイが詰まることの無いように考えられた難易度調整に仕上がっています。

ただ、1, 2, 3と時が移る中で、ジャンルが「ホラー」から「伝奇アクション」になったという側面もあります。自らの主義のために怪異を利用する組織の登場です。
私個人としては少し微妙に感じる要素ですが、よく考えてみると、伝奇アクションに変わったのは1のラストなんですよね。
裏話を見る限り、作者自身はこの路線変更を計画して作っていたようです。「2」の主人公が氷室に変わったことで、怪異との「戦闘」が主になったのも要因でしょう。何より、3作…作中時間でもほぼ1年も続けて「何の対抗手段もないまま逃げ続けなければいけない」一択というのも、確かにおかしな話です。

本作を初めてプレイする方は、1, 2, 3の順でプレイするようにお願いいたします。「3」から先にプレイすると「何故こんな風になったのか」が分からないままストーリーが進んでしまうキャラクターが多いためです。
今となっては古い作品であるため、1と2は「赤の世界」とセットにしてダウンロードする仕様になっています。「3」と比べるとアクションの操作性も救済措置も不十分ですが、細かくセーブを心がけて、クリアを目指しましょう。何度かトライすれば必ずクリアできる…そして、何度もトライしなければクリアできない絶妙な難易度設定は、この頃から健在です。

 《 赤松弥太郎 》  ハマリ度:8 グラフィック:8 サウンド:9

せめて生きてる間ぐらいは 一緒にいてくれよ

 既に前作・怪異症候群と怪異症候群2をプレイしているなら、本作は四の五の言わずにプレイすべき作品です。
 本作だけでも1と2を足し合わせた程度のボリュームがあり、シリーズ全てをプレイし終えた充足感は、長編小説を読み終えた時のそれと同じです。
 第1作公開から7年半経った今、本作を公開したことを踏まえてプレイすれば、201×年間が終わる前に本シリーズをどうしても完結させたいという、作者の強い気持ちも伝わるかと思います。

 では、前作をプレイしていない人に対しては、どうか。
 おそらく、1・2をプレイしていなければ、本作の感動は半分以下になってしまうでしょうね。
 続き物としては当然の話ですが、本作の感動は、ほとんど1・2をプレイした人だからこそ伝わるものになっています。
 それ以外にも様々な理由があり、ボクとしてはまず、1・2をプレイすることをオススメしたいです。

 まず、本作が取り扱う題材について。
 本シリーズの怪異のほとんどは、いわゆる「洒落怖」をはじめとした旧2ちゃんねるオカルト板の記事から換骨奪胎しています。
 これらは比較的新しい怪談なのですが、作中では「ネットで広まるずっと前から一部では知られていた」とフォローされており、つまり本シリーズの怪異は元ネタと同等の存在と位置づけられています。
 なにせネットの怪談ですから、タイトルで検索をかければ、すぐに元ネタを読むことが可能です。
 知らなければ知らないで新鮮に楽しめるでしょうし、読んでからプレイすれば、何をどう変えたのか、作者の狙いを考えながら進めることができます。
 しかし、もともとオカルト板を愛好する人に対しては、どうか。
 怪異は概ねオカルト板の原典どおりですが、本シリーズの世界観や物語は独立のもので、怪異もそれに沿うように改変が行われています。
 見ようによっては、人の褌を借りていると感じるかも知れません。
 対策は、本シリーズの文法に慣れること。
 「まず、慣れる」という姿勢が、3をプレイする前に備わっていれば、互いに不幸な衝突は防げるはずです。

 本作の世界観もまた、「慣れ」が必要そうです。
 本シリーズは、純ホラーではありません。
 ホラーというのは、そう簡単に対抗できない、倒せない相手だという前提があって、そこから逃げ惑う恐怖があるわけです。
 しかし本シリーズの場合、その前提は崩れています。第1作の最終盤、前作のレビューでESさんが触れた「驚愕のオチ」により、ジャンルが反転してしまったからです。
 その後を受けた2の主人公は、怪異専門の警察官であり、対怪異用の銃を携行しています。ジャンルもADVというよりACTです。
 結果、怪異は倒すべきもの、処理が必要な問題というランクに落ちてしまいました。
 3では、主人公の変更によってまた印象が変わりましたが、一般人が跳び蹴りで怪物をひるませる描写などもあり、やはり純ホラーとは言いがたい作品です。
 しかしだからこそ、ホラーADVブームがとうに一周した現在でも、目新しさのある作品に仕上がっているのです。

 さらに言えば、2の最終盤で明かされたバックグラウンドにもまた、慣れておく必要があります。
 なにしろ3は、その広げた大風呂敷をいかに畳むかという点が、話のメインになるからです。
 一応典拠はオカルト板ですが、良くも悪くも中二的な原典の雰囲気をよく引き継いでいます。
 個人的に、オカルト板の怪談の怖さは、バックグラウンドが読めないところにあると思っています。文化的に混淆した現代社会という闇鍋から生まれた、キメラじみた気持ちの悪さというか。
 そこにバックグラウンドを導入するのは、混沌に目鼻をつけるような話にも思えるのです。
 しかし、このバックグラウンドが無ければ、3の感動もまた無かったのもたしかです。
 3の感動は、今までのストーリーの厚みに根ざしているからです。

 3は、ごく頻繁にプレイヤーキャラが交代する作品です。
 前作までの主人公・姫野美琴と氷室等の影に隠れた、いわばサブキャラたちの物語が、本作のメインとなります。
 この個性豊かな登場人物たちの操作感は、それぞれに個性溢れたものであり、2つとして同じものではありません。
 怪異の立ち位置もまた、キャラクターによって大きく変わり、なんとしても避けるべき脅威から、倒さねばならぬ障害にまで変化します。
 1の頃から本シリーズの原動力だった、バリエーションの幅広さ、プレイヤーを飽きさせない工夫の結実が、このシステムなのでしょう。
 それと同時に、1からプレイしてきたプレイヤーにとっては、今まで主人公になれなかった彼らを操作できるという感慨もあります。
 プレイして感じるのは、彼らがそれぞれ自分の人生を、自分が主人公として生きているんだという実感です。
 そして、美琴も、氷室も、彼らが懸命に生きてきたからこそ、ヒーローであることができたのだと、言葉にせずともそう思えるのです。
 これもまた、1からプレイしてきたからこそ感じられる感動です。

 問題は、1も2も、今からプレイするには古すぎるという点です。
 1はホラーADVブームの時期に公開された作品ですが、総当たり探索という悪弊を引き継いでしまっています。
 マップも無駄に広く、プレイヤーへの誘導も弱いことから、プレイ時間のほとんどが歩き回ることに費やされます。
 また誘導の弱さから、謎解きも一回詰まってしまうと、何をすればいいのかわからなくなることが良くあります。
 3では「ヒント」という形でミッションが明示されますが、この頃と比べると大きな進歩と言えるでしょう。
 2ではさらに、アクションが覚えゲーであり、パターン構築が苦手な人は何回コンティニューしてもクリアできない、という問題が加わります。
 これも3では無敵モードが導入されて解消されました。
 やや強引な解決策かもしれませんが、無策であるよりはよほどマシです。

 こうした数々の問題点を解消したリメイク版、怪異症候群Rもあるのですが……
 公開されているのは、1の第一章だけ。体験版にしかなりません。
 過去作のリメイクに時間を割くよりは、新作に注力したい、というのが作者としては自然な気持ちでしょう。それを責める気にはなれません。
 しかしボク自身、イチオシという機会で無ければ、この際1からプレイしようと思えたかどうか。
 3にもまだまだ問題は残っています。評点しましょう。

ハマリ度 : 8 / 10
 オープニングで表示される前作のあらすじが(ボクが指摘するレベルで)悪文なので、まず改善を求めたい。時制の不一致や不明瞭な主語があまりに多く、プレイして初めて目にする文章としてはあんまりだ。
 三人称文章が表示されることも多いが、「きさらぎ駅は、架空の駅である」と表示したところで、恐怖演出としてはマイナスにしかならない。ツッコミどころを持たせ、怪異を認めない立場の文章とプレイヤーの目の前で起きている怪異の間で摩擦を起こさないと、演出としての意味が無いだろう。
 マップ移動画面はスクリーンショットにも選ばれており、おそらくは力を入れたかったシステムなのだろうが、その立ち位置はとても不安定。なんの役割も無い場所や、人っ子一人いない場所もあり、菊川市の過疎化を憂えさせる。探索というよりも話を進行させるためのトリガーでしかなく、特に最後のマップ移動は、プレイヤーと関係の無いところで話が進んでしまう点も大いに不満。
 メニュー画面を開く時のモタリ、マップ移動地点で↑を押さないと反応がない点、同梱テキストに書かれているバグ、マップで通行不能そうな場所に入り込めてしまう等、荒い部分もまだ目立つ。
 しかし、そうした難点を複数抱えていてもなお、やりきったという満足感が残る。シリーズ集大成として見事に振り抜いた、気持ちの良さがある。
グラフィック : 8 / 10
 自作マップチップ、キャラ立ち絵、それぞれ大きな問題は無い。明るさの調整もこまめに行われており、演出上暗い場所でも、アクションの時は明るくなるよう配慮されている。
 最大の問題は、マップの作りにある。どこが次のマップに進めるポイントで、どこがそうでは無いか、特に第三章は目で見てもわかりづらい。
サウンド : 9 / 10
 純ホラーゲームとは一線を画する選曲で、おなじみの名曲の数々が各場面をわかりやすく盛り上げてくれる。効果音の違和感も特になかった。

 バグった状態で配信しないでくれとお願いする心情はよくわかります。もちろん、根本的にはバグを直す以外の解決策が無いことも、作者さんはよくわかっているでしょう。
 本作もまた、半永久的に残る作品です。残るべき作品です。直すべきは直し、自信を持てる状態になることを願っています。

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