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■ Chronicle of Grim Reapers

Chronicle of Grim Reapers
作者 [ TEAM海の藻屑 さま ]
ジャンル [ 探索アドベンチャー(ホラー有) ]
容量・圧縮形式 [ 269MB・ZIP, ブラウザゲーム ]
製作ツール [ RPGツクールMZ ]
言語 [ 日本語 ]
備考 [ 15歳以上推奨(バイオレンス描写含む) ]
配布元 ダウンロード先

(補足)
2025.03.09:現在の最新バージョンはv0.4.8です(正式版)

Chronicle of Grim Reapers Chronicle of Grim Reapers Chronicle of Grim Reapers Chronicle of Grim Reapers Chronicle of Grim Reapers Chronicle of Grim Reapers

レビュワーハマリ度グラフィック サウンド合計総合判定
ES 9 /10 10/10 9 /10 55/60 A
赤松弥太郎 8 /10 10/10 9 /10

 《 ES 》  ハマリ度:9 グラフィック:10 サウンド:9

「死神」が求めた確かな「生」

本作「Chronicle of Grim Reapers」は、別サイト(もぐらゲームス)の紹介記事をご覧の通り、「初見殺しのトラップがてんこ盛りの死にゲー」です。
ただし、「2見以降で死なないような対策」「死ぬ以外の停滞が起こらない対策」もしっかり施されています。
死亡時には「死亡原因の対策となるポイント」が緑色の光で表示されます。通常時も、分かれ道があるマップは「次の行き先」が白い光で表示されます。それらを見れば決して迷うことはないでしょう。

むしろ、死亡箇所などにより表示される回想・実績を集めることこそ、本作の重要要素なのです。
ゲーム本編で描写されるジェイドは「何らかの理由で侵入した暗殺者」、白い子供は「なぜか研究所内にいた、奇妙な能力を持つ子供」「研究所内に点在するキノコと何らかの関係がある」ぐらいです。
「ドアロックを解除させる」という打算的な理由で子供を同行させたジェイドですが、連れ立っていく中で無邪気な子供に情が沸いていく過程…本編の描写でも、「ホラー」のイメージと反する人情噺な部分がうかがえます。
その本編のミッシングリンクを紐解くのが、死亡時に描写される過去なのです。ジェイドは決して「冷血な暗殺者」ではなく、情け深い男であったこと…白い子供の、本名を含めた正体…そして、2人の回想に共通して登場する「所長」の存在…回想でしか描写されないストーリーが数多く存在します。

また、実績の中にはドクロアイコン(死亡シーンで発生)とは別に、扉アイコンがあります。扉アイコンの実績は、本編内のサブイベントをこなすことで解除される実績です。
ただ、サブイベントの解除は難易度が高くなっています。ただでさえ「特定箇所に向かうと後戻りできない」仕様。その上で実績リスト中のヒントも簡素です。
「イベント発生箇所」は実績リストに表示されるため、後戻りできない箇所(2人の別離直前・合流直後)のセーブは分割することが必須。
トラップや謎解きをクリアした後に、サブイベントのヒントがチラッと出てくる場合があるため、それを見逃さない観察眼も求められます。

15歳以上推奨とされるレベルの死亡描写こそ存在しますが、本筋自体は決して残酷で希望を踏みにじるような物語ではありません。
ストーリーを進めて行く中で育まれていくジェイドと白い子供との絆…その更なる真相を解き明かす過去回想…ジェイドのみならず画面の向こうの我々まで癒される、白い子供の無邪気な仕草…。
戦争から始まる悲劇ではありますが、確かな希望も描いた作品です。
皆様も、この物語を隅から隅まで堪能してください。
ただし全てを堪能するためには、ただでさえセーブ欄を全部埋めても足りないほどの分岐を全て網羅した上で、実績リストを全部埋めた上で、後日談の解放条件のために(大抵の場合は)更なるニューゲームを求められる…10時間以上もの付き合いが必要となることは改めて御覚悟を。数日間に分けるか、一気にプレイする場合は丸1日は使い潰すつもりでプレイに臨んでください。

 《 赤松弥太郎 》  ハマリ度:8 グラフィック:10 サウンド:9

謎が解かれる度に 揺れるIdentity隠し 駆けつけるから

 まず前提として、本作はメチャクチャやり直すゲームです。

エントランス

 開始早々、マップをうろつくじゃないですか。

死因1

 死ぬじゃないですか。

回想1

 すると、走馬灯のように主人公の過去の回想が現れ、実績が1つ埋まる。
 この流れを見れば、本作は死因を集めるゲームなんだと理解するはずです。

 実際のところ、この走馬灯は背景の理解に役立ちますが、必ずしも必須ではありません。
 本作のストーリーは、本筋のイベントだけでも十分理解できる内容になっています。
 とはいえ本作は、死因をコンプリートするのが前提のデザインになっていることも間違いありません。
 死ねば死ぬほど、主人公や、盲目の少年が抱えている過去が浮き彫りになり、本筋のストーリーもより一層鮮明になります。
 死にやすいように、きめ細やかなオートセーブを実現しており、リトライ機能も、既読回想のスキップ機能も完備しています。
 それ自体は非常にストレスフリーにできていて、よほど変なことをしない限り、オートセーブでハマることは無いでしょう。

 ただし問題は、本作のストーリーの流れが、実績集めと相性が悪いところです。
 戻れなくなるポイントが大量にあるんですよね、本作。
 区間ごとにセーブを作ろうとしても、用意されたセーブ枠19個 + オートセーブ1個ではまだまだ足りません。
 1回クリアすると実績ヒント機能が解禁されるので、それで表示されるフロア名を参考に……と言っても、フロア名なんて忘れてるのが普通です。
 結局もう一周するかって感じになりますから、皆さんもそのつもりでプレイした方がいいでしょう。
 初見だと4時間かかる長丁場ですが、慣れればもっと短い時間でプレイできますし、一周目で気付かなかったことにも色々と気付くでしょうから。

操作説明 操作説明

 操作説明のところの、この暗号の読み方とか、ね。

 初見で4時間かかる理由のかなりの部分が、謎解きです。
 謎解きの難易度自体は、決して高くありませんし、理不尽さもありません。
 ボクにとっては、ストーリーに集中しつつ楽しめる、ほどよい塩梅の難しさでした。
 したがって、ESさんが何を以て初見バイバイなどと書いたのか、まったく理解できないのですが……
 言えるのは、ろくに探索もしないで、その場にあるヒントだけで正解するのは無理ということです。
 頭を使う難しさというより、注意深さと探究心の方が求められます。
 まあ、だからと言って、戻れなくなるポイントよりも前にヒントがある謎解きは、さすがにどうかと思いましたけど。
 理不尽に感じたのはその「展示室」のヒントだけですし、それも総当たりがそこまで面倒ではない謎解きだったので、全体としては問題には感じませんでした。

シナリオ選択

 それよりもボクにとっては、このシナリオ選択画面の方が問題に感じました。
 本作でこの画面が出てきた時は、どちらか一方のシナリオしかプレイできません。
 そりゃまあ、同時に進行している出来事ですから、プレイヤーが関われるのは一方だけ、というのはポリシーとしては一理ありますが。
 問題は、両方プレイしていないと、ストーリーの本筋が理解できなくなるという点です。
 ストーリーを理解する核心的な部分が、どちらか一方の、あるいは両方のシナリオに含まれていて、結局どちらもプレイするのが前提のストーリーになってます。
 だったら直前セーブくらいさせてくれよ、と強く申し上げたいです。
 2人が別れることがトリガーでシナリオ分岐するので、予兆がある場合がほとんどですが、不意打ちで分岐することもあるのでまったく油断できません。
 当然のようにシナリオ分岐中にしか取れない実績もあるので、実績回収のためにも結局、直前でセーブして両シナリオプレイせざるを得ないのです。

 隅々までプレイして理解してほしい、という設計思想と、謎解きをすべて覚えていてなお一周が長いボリューム。
 この2つが、時々喧嘩する感じです。
 おそらく、こまめにセーブを分けて、できることをやり尽くすようなプレイスタイルを、本作は想定しているのだろうと思います。
 だとしたら、セーブ枠が19個しかないのは、やっぱりちょっと少なすぎます。
 せめてあと2倍くらいセーブ枠があれば、と惜しまれます。

 本作は、その手間に見合うだけのストーリーを用意しているからです。

 館の中に逃げ込んだら閉じ込められて、という、ありがちなホラーゲーのテンプレートから始まる第一印象とは、またひと味異なる真相が、次第に明らかになっていきます。
 主人公・ジェイドの人生によって切り取られた作中世界が、大河ドラマと言っていい奥行きを見せて広がります。
 ジェイドの人生は、傍からはまったく救いのない、地獄のような生き様に見えるかもしれません。
 初見ではもしかしたら、エンディングの展開もまた救いのない、もの悲しいものに思えるかもしれません。
 しかし間違いなく彼は、そこに安らぎを見いだしたのです。
 そう考えればあのエンディングも、後日譚無しでも、もっと違う印象で受け入れられるだろうと、ボクは思うのです。

 現時点のバージョンは0.4.8となっていますが、ストーリーは過不足なく完結しています。
 今後はおそらく、プレイアビリティの向上がメインとなることでしょう。
 まずは是非、回想モードの実装をお願いしたいです。
 せっかく死亡実績が走馬灯の時系列順に並んでいるのに、現状、走馬灯をまとめて見返す手段が無いんです。たった一行の説明文では忘れてしまいます。
 回想スキップをOFFにして再度死なせたところで、今度は走馬灯と死亡実績の対応関係がわからなくなっている、という有様なので、ぜひ最優先で実装をお願いします。

 今からでも改善できるだろう点を中心に、評点をまとめていきます。
 いくつかの引っかかりを直せば、本作は必ずもっと伸びるはずです。

ハマリ度 : 8 / 10
 15歳以上推奨にもかかわらず、丁寧に実装されたふりがな機能は個人的には非常に好み。並々ならぬこだわりが感じられる。
 本文中で指摘した文法誤りの他、実績ヒントはクリア後タイトル画面に戻った時に表示されるのに、エンディング中に確認させてもまだ表示されていない点や、某所でhelpの綴りがhlpeになっている点、冷凍庫から着地地点に戻ってしまうとタイミングによっては詰みオートセーブができる点、等々細かな問題はまだありそうだが、バグらしいバグには遭遇しなかった。品質は高い体感がある。
 ボクが一番理不尽に思ったのは謎解きではなく、視力検査。後日譚を見るのに必須のミニゲームだが、100回ランドルト環を見て対応する文字の選択肢を選ぶ現在の仕様は、軽度の左右盲がある自分にとってまったくの苦行。クリアできない・クリアする気になれない人も多くいるはずだ。矢印キー入力なりフリック入力なりに是非とも対応してもらいたい。
 全死亡実績解放後のアレは、まあ予想通りであって、走馬灯を見ること自体にストーリー的な裏付けがあるかというと微妙だったのは、少しばかり期待外れに思った。
グラフィック : 10 / 10
 ドットアニメーションが非常に繊細で緻密。かと思えば終盤、一枚絵の威力も存分に魅せてくれる。見づらさによる引っかかりもほとんど感じず、ボクには文句のつけようがない。
サウンド : 9 / 10
 数々の素材曲の組み合わせは特定のテーマに偏らず、バランスが取れ、調和している。しっかりと作中世界を構成している。

 最後の隠し要素のパスワードって、ヒントありましたっけ。ボクはノーヒント、当てずっぽうで突破してしまったんですけど。
 でもまあ、特に目新しい情報はありません。作中から読み取れた情報の、答え合わせという位置づけかと思います。
 音楽モードと実績リセット以外の機能が無い「楽屋」といい、本作は見せるべき情報とそうではない情報をきちんと分別し、制御しているように見えて、とても好印象です。
 本作が与えてくれるものだけ受け取れば、きっと鳥たちは満足して空を舞うことでしょう。

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