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■ GOLD RUSH

GOLD RUSH
作者 [ 堀井大介 さま(土塊) ]
ジャンル [ RPG ]
容量・圧縮形式 [ 253MB・ZIP ]
製作ツール [ RPGツクールMV ]
言語 [ 日本語 ]
備考 [ ふりーむとRPGアツマールにて、ブラウザ上でプレイ可能 ]
配布元 ダウンロード先

GOLD RUSH GOLD RUSH GOLD RUSH GOLD RUSH GOLD RUSH

レビュワーハマリ度グラフィック サウンド合計総合判定
ES 8 /10 9 /10 7 /10 46/60 B
赤松弥太郎 7 /10 8 /10 7 /10

 《 ES 》  ハマリ度:8 グラフィック:9 サウンド:7

少女たちの冒険は、始まったばかり。

本作の作者である「土塊」は、10年以上前から活動しているサークルです。
シェアウェアシューティング「S.T.G.」から始まり、「死の霊園」などのホラーノベル作品で人気を得たサークルです。
私が「土塊」の名を知ったのも、「死の霊園」シリーズをスマホでプレイしてからです。その頃からグラフィックには定評があり、その流れは現行作品「GOLD RUSH」シリーズにも受け継がれています。
それ故に、私は「GOLD RUSH」をイチオシに推薦しました。寄り道を少々残したプレイでも8~9時間かかる中編でしたが、最後までプレイしました。
しかし、プレイした読後感は、8~9時間のプレイにケリをつけた達成感以外、あまり印象に残りませんでした。
元々、続編の「PARADISE RUSH」に繋げる作品であったのも一因でしょう。今まで「土塊」が作り上げたことが無い長丁場のシナリオだったのも一因かもしれません。
あまりにオーソドックス過ぎるうえ、「ソツ」となる細かい不満は多数見受けられる作品でした。

本作のゲームシステムにはスクリプト改造がほとんどなく、ほぼツクールMVの仕様そのままに仕上がっています。
下での赤松氏のレビューにもありますが、
・世界が広いわりに、テレポートも飛行船も無いため、宝箱探しに無駄に時間がかかる
・世界の広さゆえに、見逃しがちな強化イベントが各所に点在する
・確定で睡眠+魔法防御大幅減少の「ナイトメア」が他の技に比べて強力すぎる
…などなど、細かいアラがオーソドックスな作り故に目立ち、ストレスとなっています。

プレイを進めるとひしひしと感じるんですよ。作者がRPGツクールに「慣れていない」ということが。
・「○○は状態異常に抵抗」という意味で「○○の行動は失敗した」と逆の意味になる
・「防御力強化バフの効果時間が切れた」という意味で「防御力が解除された」と、まるで防御力弱化デバフがかかったようなセリフになる
などなど、あまりに違和感のあるセリフが、戦闘を進めるたびに流れてきます。
「流石に続編では…」と思ってプレイした「PARADISE RUSH」でも、「○○の行動は失敗した」のままでした。
ホラーノベルだけで10作、そのほとんどにリメイク作「零」があるほど文章作りに慣れているはずの「土塊」とは思えない雑さです。
ツクールMVの体験版でざっと見た感じでも、抵抗の文章はデフォルトでは「○○には効かなかった」です。わざわざ「○○の行動は失敗した」とする理由が分かりません。

ストーリーもゲーム難易度も難所は皆無です。8~9時間のスキマ時間さえ確保できれば誰でもクリアできます。ストーリーにも分岐はありません。考えずにプレイできる作品だけに、余計に上記のアラが目立ってしまいます。
現在、GOLD RUSHシリーズは本作のほか、外伝の「Tiny GOLD RUSH」と続編の「PARADISE RUSH」が公開済、そのまた続編の「GOLD RUSH ALONE」が開発中という段階です。
せめて、続編では、ぱっと見で分かる程度のストーリーやシステムの矛盾は見直してほしい所です。この壮大なサーガがちっぽけなヒビで瓦解するのは、「死の霊園」シリーズからのファンである私が望まざる悲劇です。

 《 赤松弥太郎 》  ハマリ度:7 グラフィック:8 サウンド:7

 後に爆発的なムーブメントになったシリーズでも、第一作は今見るとビミョーという例を、時々見かけます。
 あの第一作から、よくここまで来たものだという感慨がありますね。
 それでも商業作品なら、第一作がある程度は当たっていないと続きが出ません。同人の場合、話は別です。
 当時あまり受け入れられなかった作品でも、続編やリメイクを出し続けて、広く認められることもあります。
 すべては作者の思い入れ、どれだけ作品を大切に扱えるかに掛かっているのです。

 何が言いたいのかというと。
 本作、これ単品ではビミョーと言わざるを得ない出来なんですよ。
 大きくこれといった不満があるわけではありません。細かい不満はちょこちょこあるのですが。

  1. 初期のDQ同様のカギシステムを採用しているのに、ルーラも乗り物も無いため、新しいカギを手に入れる度に歩いて戻る必要がある。
  2. 銀のカギ入手後、最初の村に戻されるイベントが発生するのは、おそらくはそれに対するフォローかと思われる。
    しかしRPG慣れしたプレイヤーの場合、イベントを進行させる前に、今開ける扉は全て開いておくのがセオリーなので、2往復(うち片道一回はイベント移動なので、徒歩で1往復半)するハメになる。
    ストーリーとしても、急いで助けたい人がいる場面なので、悠長にカギを開けているのも違和感が残る。
  3. 他に、店長のダンジョンが2つあるのも情報が後出しで、知っているのと知らないのとでは差が出てしまう。
  4. バトルの進行スピードがあまり早くなく、エンカウント率もマップの広さに対して高めなので、テンポが悪い。
    テンポが劇的に改善するオートモードを多用すると、MPをふんだんに使うルーチンなので、ボス前にガス欠することもある。
  5. 状態異常を防げる装備が存在せず、ほとんどの状態異常が操作不能系なのでストレスが溜まる。

 などなど。
 しかし、こうした細かい不満や不快感をひとつひとつ取り除いても、本作最大の問題点は改善しません。
 本作でなければ味わえない体験が、ほとんど無いという点です。

 RPGに期待する要素と言えば、一般的には以下のような点に集約されるでしょう。

  1. やる気を刺激するシステム
  2. 緊張感と爽快感の味わえる戦闘
  3. 探索して楽しいマップ
  4. その作品ならではのストーリー
  5. プレイヤーとキャラクターの一体感
  6. エロ(年齢制限のあるゲームの場合)

 まあ、中にはそうした期待値を逆手に取ったギミックを仕掛ける作品もありますが。
 当サイトでイチオシされるRPGは、ボクがプレイし確認した限り、これらの要素のどこか1点には、必ず光る点がありました。
 中には大きな問題点を抱えた作品もありますが、それでも紹介したいと思わせる輝きがあるから、イチオシになったはずです。
 ……というよりも、どこかに光るところがないと、「別にこのゲームをプレイしなくてもいいよね」と捨てられてしまう、フリーゲームならではの事情があるのです。

 本作の場合、ゴールドという資源の管理が、システムの目玉となっています。
 しかし、これがプレイして楽しいかというと、不快ではないというレベルに留まります。
 ゴールドは大きさごとにまったく別個のものとして管理されており、小さいゴールドをまとめて大きくすることも、逆もできません。
 要求されたゴールドを、大きさまで揃えて納品しないといけないのです。
 種類が少ない序盤は、なんとなくでやりくりできますが、中盤以降、特定の種類のゴールドが不足する事態が頻発します。
 そして型落ちした装備を売って手に入るのは、ゴールドでは無く、通貨です。
 ゴールドでしか手に入らないアイテムもありますが、そこまで有利になるものではなく、終盤になれば「やっぱり通貨取引の方が安心できるじゃないか」という方向に落ち着いていくだろうと思います。
 これで本作が、複雑なバトルシステムを採用していて装備品の幅を広くする必要があるとか、コンプリートに向けての圧力が強い作りだったら、このシステムはただしんどいだけだったでしょう。

 と言っても、RPGではシステムだけが魅力的という例は、ほとんど無いのですが。
 RPGでシステムを新規開発するのは、ハイリスクローリターンなので、あまりオススメできません。
 新鮮味のあるシステムを導入したい気持ちはわかりますが、長らく先人たちが努力してきたジャンルで無理に独創性を発揮するのは、失敗する確率が高いし、失敗した時のダメージが大きすぎます。
 システムは従来のセオリーに従って作り、ストーリーやキャラクターに注力するのが堅実です。
 ストーリーやキャラクターは、よほど丸パクリしない限り、どこかに必ず独自性は生まれるはずですからね。

 本作の主人公たちには、光る可能性があると見ています。
 役割分担が明確で、ブレが少ない点は評価したいところです。

 オリンは、熱意があるがビジョンを持っていない。
 ピックは、情に厚いが熱意に欠ける。
 パラリンは、ビジョンは明確だが情が薄い。
 という3すくみのバランスを維持できています。

 しかしこれ、3人そろって初めて機能する仕掛けで、3人そろってやっと一人前、とも言えます。
 3人そろう前の最序盤、3人の第一印象はかなり悪いのです。

 オリンが一攫千金を夢見て村を飛び出す、それは結構なことだと思います。
 しかし、自分にとって便利だからという理由だけで、嫌がるピックを執拗に勧誘し、村長やピックの母親にまで駄々をこねるのは、とても見苦しいものです。
 自分のやりたいことくらい、まず自分でやってみろ、と言いたくもなります。
 かといって、怖いの、危ないのと言って逃げ回るピックにプレイヤーが共感できるか、といえばそんなことはありません。
 どうせピックが仲間になることは、プレイヤーには最初からわかっているからです。
 オリンが村を出て早々に、「やれやれ」みたいに仲間になってもらっても、だったら最初から仲間になれよ、としか思えないのです。
 そしてパラリンは、「私の試練を乗り越えられたら仲間になってやろう、私は別にお前たちで無くともいいのだからな」という、実に尊大な態度で2人を遇します。
 2人はただ村長からパラリンの評判を聞いただけで、2人にとってもパラリンでないといけない理由は特にありません。「だったら別の人を探すから」でおしまいの話のはずです。
 そうならないのは、橋の番人が「パラリンを連れてこないと通さない」と言っているからで、プレイヤーが仕方なく仲間にするに過ぎません。
 パラリンが仲間になった直後、「仲間になったから、パラリンちゃんの願いはみんなの願い!!」と言い始めるオリンとプレイヤーの間には、温度差がはっきり出てしまっています。

 ネーミングセンスがあまりにも投げやりで、初見では使い捨てのキャラにしか思えないのも大きなマイナスポイントです。
 キャラクターの魅力を伝えるべき導入の段階で、キャラクターの短所ばかりが目立ちます。

 さすがに、3人ともダメダメなままというわけではありません。
 中盤に、3人の成長を示す重要なイベントがあります。
 そのイベントだけを切り取ってみると、問題の設定もしっかり考えられているし、3人が出した答えも、その経過とあわせて彼女たちらしさが出ている、とても良いイベントだと思います。
 問題は、積み重ねが無いという一点です。
 イベントのメインになるのが、それまで伏線がない、ぽっと出のキャラです。
 3人がそれまで対処してきたのは、敵を倒すとか、アイテムを取ってくるとかの単純なお使いばかりで、3人の内面の成長を促すようなものはほとんどありませんでした。
 急に面識もない人が、藪から棒に3人の冒険の意味を問い直してきて、3人はその場のノリだけで、たまたま的確な答えを出してしまったように見えます。
 取って付けた感が強くて、シナリオの都合でキャラが動いているように感じられるのですよ。

 しかし、こうした難点は、長くキャラクターと付き合っていれば克服されていくものだと信じています。
 既に続編や番外編が公開されているようですし、2の構想もあると聞きました。
 キャラクターも、プレイヤーや作者と共に経験を積んで成長していくものです。
 後のシリーズをプレイして、第一作に興味を持って本作をプレイした時、「え? こんなビミョーなゲームだったの?」と驚かれるなら、それは嬉しいことではありませんか。
 もちろん、リメイクして捲土重来を目指すのも良いと思います。

 他の色々なことは、評点で触れていきましょう。

ハマリ度 : 7 / 10
 以上は、キャラクターを描きたいのだろうという前提の話。
 なんだかんだで戦闘がRPGに占める割合は大きくて、ここが変わると装備の使いこなしやアイテムの取捨選択の駆け引きが出てくるし、キャラクターへの愛着も増してくる。ただし、戦闘だけで楽しませようとすれば、システムはよりストレスが少なく、ヤリコミ甲斐のあるものを作り込む必要が出てくる。
 エロ要素を加えれば、よほどストレスの多い要素が無ければプレイヤーは勝手にやり込むが、それをやりたいわけでも無いでしょうし。
グラフィック : 8 / 10
 かつてのスマホアプリから流用している絵も多いらしく、モンスターの画風は拍動する演出もあわせて、どことなくスマホゲーっぽさがある。
 それをPCの画面でプレイしている弊害なのか、画面がややうるさすぎる。タイトル画面で顕著。
 一言発する度に、いちいちキャラクターが表示されては消えるため、目が忙しい。PCの大画面では、顔と表情差分だけの方が一目で見渡せるので伝わりやすい。
サウンド : 7 / 10
 音楽はMVの付属素材のみ。特に選曲センスで卓抜しているわけではない。
 DQ1のように階層でテンポを変えるような細工をしているが、容量が限られていたからこその演出だったDQ1と比べ、本作からは明確な演出意図が読み取れなかった。
 むしろテンポを変えただけの曲が頭から再生し直しになるのは違和感が残る。

 本作と関連作品の公開日時と開発期間を見ると、最初から多方面展開をすること前提で製作されていたように見えます。
 決してそのためにおざなりになったわけでは無いでしょうが、出し惜しみはするなと申し上げたい。
 多方面展開の核になるのは、おそらくキャラクターでしょうから、そこは大切に育ててもらいたいと願っています。

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