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■ 四国志大戦 ~県知事の野望~

四国志大戦
作者 [ 武藤FP さま ]
ジャンル [ ちょっぴり不謹慎な戦略SLG ]
容量・圧縮形式 [ 58MB・ZIP ]
製作ツール [ Unity ]
言語 [ 日本語 ]
備考 [ 現在のバージョンは、1.03 ]
配布元 ダウンロード先

四国志大戦 四国志大戦 四国志大戦

レビュワーハマリ度グラフィック サウンド合計総合判定
ES 8 /10 8 /10 7 /10 47/60 B
赤松弥太郎 8 /10 7 /10 9 /10

 《 ES 》  ハマリ度:8 グラフィック:8 サウンド:7

PEACE FOREVER!

小さく広い日本、住めば都とはいえ、住んでいないところはまさに秘境。それ故に、地理的にも離れた四国は、やれ「香川のうどんのために他県が犠牲になっている」だの「高知は坂本龍馬とカツオでもっている」など、無責任な俗説がネタとしてまかり通っていました。
本作「四国志大戦」は、そんな無責任な俗説を、至極真面目な戦記としてゲームにした作品です。「パトルの軍事博物館」から培われた不謹慎ネタもさることながら、ゲームの内容自体は、コンパクトな戦記シミュレーションとして、驚くほど完成された作品です。

「四国志大戦」では、コンパクトにまとめたが故にオミットされたものが多数あります。その最大なる物が、武将…人的資源の概念。資源は全て土地に帰着されています。そのため、戦略上プラスになる拠点は、四国の狭小な土地でも極わずか。ほとんどの拠点は、税収も兵器製造能力も激ヨワな土地ばかりです。
それならば、育成で何とかなる…と思うでしょうが、本作はコンパクトにまとめただけに、育成に掛けるような時間はまずありません。何しろ、「四国志大戦」には難易度設定がないため、CPUに任された他三県は、全力を傾けて軍備を整えてきます。悠長に構えていると、たった数ターンでCPUの軍備は自国を追い越してしまいます。勢い、こちらも攻めに注力せざるを得ません。
そして、攻めに転じた先に問題になるのは、継続した力となる資金のあまりにもの貧弱さ。最も資金に余裕がある愛媛と香川でも、長期に耐えられるほどの余力はありません。継続戦力の要となる「電力」は、ほとんど徳島に握られているからです。逆に言えば、徳島が「総合的な難易度は最も高い」と言われている所以もこれです。土地に旨みの無い高知に比べれば、圧倒的に狙われやすいためです。

このように、「四国志大戦」で操る四県は、どれもこれも特色が非常に強い…逆に言えば、扱いづらさの多い勢力ばかりになっています。
軍備が強いが故に、最も難易度の低い愛媛であっても、他県も金に任せれば対抗できる軍備は即座に整えられます。
逆に、目下のライバル県が愛媛しかいない香川では、いかに早く豊富なカネで軍備を整えるかがカギとなります。
弱い側の徳島・高知も、他県の弱点をいかに突けるかで、逆転の目があります。
本作で重要となるのは、「いかに有利な土地だけを先に取るか」という点。自国勢力を広げれば広げるほど、支出は確実に増えますが、収入はそれほど増えません。勢力を広げれば広げるほど、ジリ貧感が増していきます。勢い、財政難が軍備に影響を及ぼす前に決着を付けざるを得ません。

本作にしろ、前作「パトル」にしろ、表面的には戦争賛美の不謹慎ゲームと捉われがちですが、実際にプレイすれば、コンセプトは真逆と分かるでしょう。戦争が起こす大規模な経済的損失と、割の合わなさをつくづく味わう仕掛けになっているのです。
各県のクセを掴むため、ある程度のリトライは積む必要がありますが、ワールドマップが小さいだけに、プレイ時間もそれほどかかりません。この手の戦略SLGの入門用としても使える作品です。そして、戦争がいかに迷惑かを学びましょう。

 《 赤松弥太郎 》  ハマリ度:8 グラフィック:7 サウンド:9

ここまできたら戦いだ

 この四国志大戦をプレイすれば、なぜ四国はひとつになれないのか、身をもって実感できるでしょう。無理だコレ。
 自分のところで精一杯で、となりの県に関心を持つ余裕が無いんだもの。
 対立が取りざたされる地域は様々ありますが、四国はちょっと事情が違いそうです。対立よりもタチが悪いのは無関心、とはよく言ったもの。
 巨大な山脈により分断された各県は、県ごとに気候も、経済圏も、言葉すら大きく異なっていて、同じ四国島というアイデンティティーを持ちようがなかったのです。……しかし。
 Wikipediaによれば、最近は事情が変わっているらしいですよ。

かつては、「徳島は近畿(阪・神)を向き、高松は岡山を向き、松山は広島を向き、そして高知は太平洋(または東京)を向いている」と言われ、「四国は一つ一つ」などと風刺されることもあった。しかし、20世紀末から高速道路網の整備によって四国内の相互交流が深まり、21世紀初頭にはそれまで盛んだった本州の都市を凌駕するに至った。
 無理解と無関心と、莫大な財政赤字を乗り越えて、四国に覇を唱える機は熟しつつあるということです、皆さん!!

 どの県で統一を目指すべきか。
 愛媛が楽、とよく言われますが、ボクに言わせれば徳島以外は全部同じです。
 徳島以外の3県であれば、必勝法と言える戦略があるからです。
 どうしても理解できない人のために書きますが、スポイラーですので隠しておきますね。

  1. 東予を制するものが四国を制する

     東予は四国最大の工業地域です。その工業力は群を抜いており、第2位の西讃と比べて倍以上。占領すれば軍備に差が付き、広がっていきます。
     加えて、電力も自給自足できるのが大きい。人口も多いので増税の効果も高い……と至れり尽くせり。本作の最重要地点で間違いありません。
     愛媛プレイなら、絶対死守するべき地点です。香川・高知ならば、まず電撃戦で奪取を目指しましょう。歩兵30もあれば十分です。
     最初の2ヶ月くらいはCOMは攻めてこないようです。高知は高知中央以外は捨て置いて構いません。香川は、徳島対策に高射砲を生産しておけば間違いないでしょう。

  2. 電力は四国の生命線

    発電所分布  余っていてもうま味が無いけど、不足すると猛烈に困るのがこの電力。
     4月初めの決算で電力自給率が100%未満だった場合、ペナルティとして結束値と税収が低下します。県全体の発電量が0だった場合、結束が強制的に0に下がります。
     これはすなわち、軍の解体を意味しています。どんな大軍隊を率いていようと、歩兵1部隊にさえ尻尾を巻いて逃げ出す始末。攻め込めば確実に勝てる、滅ぼせる。神社に祈祷したところでどうにもなりません。
     つまり、発電施設を全部押さえればゲームクリア、ということですね。
     本作の発電施設を右図に示しました。これらの拠点を4月前に占領することを目標としましょう。
     見ての通り、分布が非常に偏っています。東予を拠点として軍拡を進め、順々に隣接する発電施設を占領する、という方針でOKです。
     伊方原発が稼働していたら、特に香川にとっては厳しい戦いになったでしょうね。
     徳島南部のみ飛び地で攻めにくいのですが、占領が難しければ徳島に取らせておきましょう。所詮徳島ですので、落ち着いてゆっくり攻略しても間に合います。

 残る徳島県、これが問題です。
 上の攻略法は徳島にはどう足掻いても不可能だからです。
 これは電撃戦で東予を落とすのが前提の攻略ですが、徳島にはどうしてもそれができません。高射砲で一網打尽にされるのがオチです。
 初期兵力がヘリコプターのみというのが最大の問題です。攻め込みづらく、守りにくい。
 かといって県内の工業力も低く、立てこもって軍備を立て直そうにも、ジリ貧で戦力差が開いていくのが明白です。
 日和見しているうちに、気がつけば四面楚歌、ということになりかねません。

 絶対的な必勝法は、徳島については多分存在しません。
 言い方を変えれば、本作の醍醐味は徳島にあるということです。
 生産にしろ、侵攻にしろ、2手3手先を読むことが要求される徳島。
 その攻略には、戦略シミュレーション本来の楽しみが詰まっています。
 ボクが徳島で四国統一した時のセーブデータを振り返りながら、どんな様子かまとめてみましょう。

2017年5月
徳島初期配置

 何度見ても厳しい徳島の初期配置。どこを攻めてどこを守るか、ですが。
 電撃戦で工業地帯を確保したいところですが、東予は無理です。
 というか、そもそも中央部への進出が厳しい。他3県の袋叩きにあうのが目に見えています。
 色々考えたんですが、初手は東讃速攻しか無い気がするんですよネ。
 戦線拡大せずに人口58万・工業力9が確保できれば上出来でしょう。財政も優良です。

 東讃の初期戦力は歩兵20。攻め落とすにはヘリだと35くらい欲しいところです。
 どこかを見捨てないと集約できない戦力ですが……決まってますね。徳島西部は見捨てます。
 人口・工業の中心地である東部、四国有数の給電地帯である南部は、徳島の生命線です。どちらを落としても死。
 とはいえ、南部は安芸としか面しておらず、ヘリ5部隊もあればしばらくしのげるでしょう。
 内政では、県南で食料生産を増強しています。食料生産はどの地域でも目に見えて効果がある振興策です。食料購入回数が減るほど、燃料に回せる資金が増やせます。

2017年10月
開戦5ヶ月後

 6月に東讃を占領。9月には狙いどおり、香川に徳島西を占領してもらいました。急ぎ徳島北に10部隊を引き返して、守りを固めます。
 これで愛媛との間に緩衝地帯ができて、ひとつ落ち着きました。軍拡のチャンスです。
 ボクはここで、徳島東で砲兵、東讃で歩兵を生産してます。どちらも歩兵の方が良かったかもしれません。
 本作の歩兵はとても優秀です。生産しやすく、防御力も高め、さらに燃料が他の兵科の半分ですみます。
 まあ、砲兵も防衛向けユニットとして、決して悪い選択ではないですが。
 本作の戦闘システムは「戦いは数だよ兄貴!」を地でいく点、とてもリアルです。侵攻ばかりを繰り返せば兵力は消耗し、他県の餌食になりかねません。ここで時間をかけても頭数を整えておきたいところです。

 準備がととのい次第、西讃を落とし、さらなる生産増強と香川の無力化を狙います。
 その頃には決算期が近づきつつあるので、地域振興で東讃の税収を上げていきます。戦力次第では、生産を一時的に民生品に切り替えてもいいでしょう。

2018年4月
開戦11ヶ月後

 12月に西讃を占領。4月まで防衛し、香川を無力化しました。
 いよいよ強国・愛媛との緒戦です。が、まだ東予を攻めるには兵力不足です。今は防衛だけで手一杯です。
 徳島西の香川を攻めればそのまま落とせることはわかっていますが、愛媛との戦線が伸びてしまうので、これも後回し。
 なので次に目指すのは高知中央。ここに拠点を構えて、東予の挟み撃ちを狙う形です。
 香川対策に歩兵1部隊を徳島東に残し、西讃の防衛戦力以外をすべて高知に注ぎ込みます。
 高知はそもそも人口が少なく、すぐに兵力上限に達してしまいます。消耗した兵力を補充することもままならないのです。十分な兵力を割いて圧倒していきましょう。

 本作のCOMは、侵攻するかどうかを兵力だけで判断しているようです。
 香川は完全な死に体なのですが、残存兵力だけは多いので、愛媛はなかなか攻めてきません。時間稼ぎに有効活用させてもらいます。
 なお本作は、県内ならどこでも1ターンで移動できます。生産した兵力はどんどん前線に送り込みましょう。

2018年10月
開戦1年5ヶ月後

 8月に高知中央の占領に成功。翌9月に香川が愛媛によって滅ぼされました。ついに決戦の時です。
 愛媛が目指すは徳島東。西讃の防衛戦力の半分を回し、首都防衛に当たります。
 徳島が目指すは東予。東讃で生産した兵力を高知中央に集め、来る侵攻に備えます。
 戦線は膠着し、消耗戦の様相を呈します。どちらにとっても負ければ滅亡、総力を挙げた戦いが続きます。

 現時点での兵力では愛媛に分があります。まったく油断はできません。
 しかし全体で見ると、すでに戦局は徳島有利に傾いています。
 生産力の合計では既に徳島が上回っていること、そして愛媛の戦線は形が悪いことがその理由です。
 高知も座して死を待ってはいません。特に中予は重要拠点であり、愛媛はそちらにも兵力を割かざるをえません。
 一方徳島は、東予侵攻のための高知中央が、高知に対する防波堤にもなっているわけです。これだけの兵力を揃えておけば、高知もわざわざ徳島側を攻め立てることはありません。

 さらに言えば、徳島東の兵力を、西讃と比べわざと薄くしておくことで、愛媛軍を誘い出し、うま味の少ない徳島西に足止めする効果も狙っています。
 ここまで進めれば、ヘリ以外の兵力も十分に育ちつつあるでしょう。生産は歩兵と砲兵中心で、地域振興は食料生産から税収に重点を移しながら続けています。

開戦1年11ヶ月後  そして2019年2月、中予が高知に落とされ、翌3月に徳島の東予攻略がなりました。愛媛はついに滅びたのです。
 高知の残存勢力も、東予さえも陥れた強大な兵力と、高い結束度を誇る徳島の敵ではありません。
 2019年5月、足かけ2年に及ぶ四国統一事業は、ついに成し遂げられたのでした。

 今回はたまたまこれでうまくいきましたが、これはあくまでひとつのパターンです。
 もし徳島西を落としたのが香川以外の県で、香川が東讃で守りを固めてしまった場合は、まったく違う戦略が必要になります。おそらく攻略は今回より長引いたことでしょう。
 振り返ってみると、危ない橋を数々渡っていて、運に頼っている部分も多いですね……。
 皆さんならきっと、もっと手早く、確実に攻略できるだろうと期待しています。

ハマリ度 : 8 / 10
 あの武藤FP氏の新作となれば、ミリオタ特有の不謹慎ジョークに期待も高まるが、今回は少なめ。露骨なのは開幕の挨拶と「税収対策」くらいか。
 イベントは皆無、キャラクターも四国太郎だけ。シンプルなだけに素材そのものの味が楽しめる。戦略シミュレーション入門編としても適切。
 ただ、税収が赤字であっても資金が手に入る(影響するのは士気だけ)等、直感的でない部分を近況報告のヒントや一行ヘルプで補うのはやや厳しい。兵科の詳細についても説明がほとんど無い。きっとおっぱいぷるんぷるんの有償版では、そこも含めてテコ入れが入るのだろう。
グラフィック : 7 / 10
 写真素材は、自ら現地を取材して集めてもいる様子。生産画面の写真はいかにも各地の特徴を切り抜いている。
 見やすくわかりやすい点は評価できるものの、絵面が地味で変化に乏しいのはいかんともしがたい。その点も、有償版では以下略。
サウンド : 9 / 10
 ジャジーな楽曲は全曲書き下ろし、そしてこだわりの効果音。
 切り替えが多く、作中ではじっくり聞く機会が少ないのが難点。サントラは過去に資金援助者向けの特典として配布された模様。

 本当に恐ろしいのは、本作の絶望的な財政その他の数値が、ゲーム用に調整された上での数値だということですよね……。
 戦争って本当にしょーもないものだ、と身を以てわからせてくれるのが武藤FPさんの作品のいいところです。
 戦争はゲームでやろう。

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