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■ ROXY TOWN

ROXY TOWN
作者 [ たらの さま ]
ジャンル [ 弟を救うために死後の世界を旅する探索ADV ]
容量・圧縮形式 [ 256~377MB・ZIP, ブラウザゲーム ]
製作ツール [ RPGツクールMZ ]
言語 [ 日本語 ]
備考 [ ブラウザ版はこちら (Plicy)(推奨) ]
[ ダウンロード版はこちら (booth) ]
配布元 ダウンロード先

(補足)
2025.01.20:現在の最新バージョンは1.06。画像ファイル名が修正され、Windowsでも正常にプレイできるようになりました。

ROXY TOWN ROXY TOWN ROXY TOWN ROXY TOWN ROXY TOWN ROXY TOWN

レビュワーハマリ度グラフィック サウンド合計総合判定
ES 8 /10 9 /10 9 /10 51/60 B
赤松弥太郎 8 /10 9 /10 8 /10

 《 ES 》  ハマリ度:8 グラフィック:9 サウンド:9

死後には学校も試験もない。貨幣経済と仕事はある。

「ROXY TOWN」は、本筋こそストーリー中心・謎解きや追いかけっこがあるADVです。しかし、その道中にひしめくのは数多くの寄り道要素。
街で食べ物を買い、ブティックで着替え、また、それらのアイテムをわらしべ式で交換していくサブイベント…本筋は一切進まない数々の要素が豊富に詰まっています。
特に、新バージョンではサブクエストなどの交友を進めた度合い「なかよ死度」が追加され、サブクエストの攻略を助ける指標となっています。
サブクエストなどがあるキャラも、最新版では「…」の吹き出しが付き、分かりやすくなっています。

そうです。本作は「ウォーキングシミュレータ」的側面も強いADVなのです。とは言っても、「ゆめにっき」のようなホラー・シュール要素はほぼ無く(「皆無」とは言えませんが)、「迷宮郷まよろば」のように「舞台美術を楽しみながら移動する」ものとなっています。
ただし、本作は「舞台美術を楽しむウォーキングシミュレータ」にしろ、「『弟を探す』メインシナリオをこなすADV」にしろ、移動距離が長く往復を強いられる仕組みになっています。
下の赤松さんの指摘を受けて初めて自覚したことですが、本作では「次のイベントがある場所・人物」を指し示すヒントがほとんどありません。
住宅街でのイベントがあるダンテ宅をあえて住宅街の最奥に配置した上でヒントは「手当たり次第に聞き込みしよう」のみ。必然的にプレイヤーは全住宅・全住民を回らざるを得ません。
その後の「アイスを買いに行ったローズを探す」クエストも、肝心のローズはアイス店からかなり離れた場所。こちらも公園マップを隈なく回り、増えた人物を探す必要があります。
マップの広大さおよび住民の豊富さは、商店街・学校・森とストーリーを進めるたびに増していきます。いずれもほぼヒントなしで隈なき探索を求められます。

しかし、本作はその「当てもない探索」こそ楽しめるよう、世界観・ビジュアルから考えられています。
様々な表情を見せる(顔グラの無い人物も含めて)個性的なキャラクター、マップに隠れたモグラからもらえるイベントスチル画像、本棚などから得られる裏設定、コスプレ、食レポ、etc…。
プレイヤーの行動に応じて様々な反応が返ってくる、「アドベンチャー」としても「シミュレータ」としてもかなり楽しい造りになっています。
時にはアイテム購入などにお金がかかりますが、本筋に必要なアイテムは極僅か。サブクエストおよびコスプレ・食レポには追加の購入資金が必要ですが、それも簡単なミニゲームで無限に集めることができます。
「隈なく探し回らないとイベントが進まない」仕様も、逆に言えば「寄り道を楽しんでいるうちに、自然とメインストーリーも進んでいる」仕掛けになっています。
ただし、その理屈が通じないのが終盤。森マップは分かれ道・隠し通路が多く、「道なりにいるキャラに話しかける」だけではメインストーリーの「クリスマスチキンの子供集め」すら達成できません。かなり真に迫った「隈なき探索」が求められるステージとなっています。
更に最終盤…流石にネタバレ要素が強いので詳しい言及は避けますが、かなりレベルの高い鬼ごっこが連続で発生します。「鬼」の速度も物量も多く、初見殺しな「突然発生する障害物」も多数出てきます。
END分岐の要となるだけあり、ここはストーリー的にも難易度的にも「本気」が見える場面となっています。セーブはきちんと分けて取るように!

そして、当サイトの読者はほとんどがWindowsユーザと思われます。現在、Windows版を動作させるためには「7-zip」「Bandizip」など、UTF-8の全角ファイル名を文字化けせず解凍できるソフトが必要です。
Windows標準のZIP解凍や「+lhaca」などの定番解凍ソフトでは、内部ファイル名が文字化けしてプレイできなくなります。
バージョン1.04までの「フォルダ名末尾にスペースが入っていたせいで、『この項目は見つかりませんでした』エラーが発生して、フォルダ削除すらできなくなる」事態は解消されましたが、2025.01.12現在の最新バージョン1.05でもまだ文字化けするファイルが残っている状態です。

(補足)
2025.01.20:バージョン1.06にて、ファイルの文字化けが修正されました。

当記事で本作に興味を持ったWindowsユーザの皆様は、Plicyからブラウザ版でプレイするか、「7-zip」「Bandizip」を利用して解凍してください。
また、旧バージョンからバージョンアップする際はセーブデータを引き継げません。「save」フォルダを消した上で、もう一度「ニューゲーム」をやり直す必要があります。旧バージョンと画像名が変わっているため、セーブ画面のアイコンをロードできないためです。
どうか、この楽しいROXY TOWNの思い出が、エラーで潰れないように…。

 《 赤松弥太郎 》  ハマリ度:8 グラフィック:9 サウンド:8

忘れないでおくれ あの街の風を

 なにかの手違いで死後の世界に来ちゃいました!
 今ならまだ間に合うけど、早く帰らないと現世に戻れなくなっちゃいます!
 だというのに現世に戻る方法がバラバラに散らばってるし、弟もここに来ているはずなので、両方とも探し出さないといけません!
 そんな切羽詰まった状況下であなたは、まさか道草を食ったりはしないですよねえ?
 まして食べ物を口にするなんてもってのほか。ヨモツヘグイの伝承はご存知でしょう?

 なのになんで本作をプレイしてると、寄り道しまくって食べ歩きしたくなっちゃうんでしょうね?

 本作のプレイ時間は2~3時間程度、そのうちの半分くらいは寄り道に思えます。
 最短距離で突っ切っていくのは、まあ無理なんですよ本作の場合。そういう作りになっていません。
 最初に訪れる住宅街からして、ストーリーを次に進めるフラグはノーヒント、ローラーで探さなきゃいけません。
 終盤で訪れる森は、突破するのに多数のアイテムが必要で、丁寧にサブクエストをクリアしていくか、金稼ぎでアイテムを購入していく必要があります。
 どれだけ寄り道を楽しめるか、その過程にこそ本作の真価があります。

 そして気がつけば、帰りたくなくなるほどにどっぷりと、ロキシータウンのことが好きになるでしょう。

 「またまた闇深要素とかドッキリホラーがあるんじゃないか」と警戒しているあなたも、今回は安心して大丈夫です。いや本当に。
 本作ではほとんど悪意は表に出てきません。コニーをめぐる陰謀が明かされる最終盤まで、まったく闇は感じ取れません。
 そりゃあ死後の世界ですから、未練を残している人も、死因に恨みを持っている人も、生前悪事を働いていた人も、ロキシータウンにはいますよ。
 いるんですけど、それで悪意をもって行動したり、ましてその悪意をアイラたちに向けてくることは、決してありません。諸悪の根源である1人を除いてね。
 当面の「敵」、彼らに生者とバレたらマズいという天使たちも、1人1人にしっかりと人間味があって、まったく憎めません。
 看板に偽りなく、みんな明るく、楽しいロキシータウンなんです。

 ロキシータウンに来た最初の頃、お金が無いからと門前払いする店もあって、「地獄の沙汰も金次第か、世知辛いなあ」と思っていた時期もあったんですが。
 実は本作、こまめに人のお願いを聞いて、サブクエストをクリアしていけば、クリアに必要な金品はすべて揃うようになっています。稼ぎは必要ないんです。
 それでもお金が稼ぎたくなるのは、よりロキシータウンを楽しみたいからに他なりません。
 たとえば、お店や自動販売機で売っている食べ物。使用すると味について一言コメントがあり、場合によっては仲間たちも絡んできますが、それだけ。
 たとえば、ブティックで売っている衣装。使用すると顔グラや歩行グラが変わって、着た人が一言コメントしますが、それだけ。
 ゲーム上の効果はなく、図鑑やバッジ、コンプリート特典等も一切ありません。圧がとても弱いのです。
 お金も単純なミニゲームで何回でももらえますから、自分が欲しいだけ稼いで、楽しみたいだけ楽しめばいい、というスタンスが一定しています。

 おそらく本作が影響を受けているだろう「MOTHER」も、そうした遊びに満ちたゲームでした。
 性能の面ではたいして変わり映えのしない、場合によっては性能が劣るアイテムであっても、その町を特徴付ける「土産品」としての価値を持っていました。
 買う必要は全くないけれど、それでも買うのは、なりきり遊びとしての楽しみがあったからです。
 まして本作は純粋なアドベンチャー、アイテムを自ら使う意味はほぼ皆無です。なりきり遊びに振り切っていると言えます。

 やり込み要素や、隠し要素と言うほどのものはありません。強いて言えばアイラの部屋にある、あの衣装くらい? ロキシータウンに持って行けないし、これもあまり意味は無いですが。
 最終盤の鬼ごっこが苦手な人は苦手かも、くらいで、クリアまで何一つ難しい場面はありません。
 ただ、この小さな町の住人と話し、語らう、それだけで2時間が瞬く間に過ぎていきます。
 ただそれだけの、そんな作品です。

ハマリ度 : 8 / 10
 亀が右から左へ移動している最中に屋内に入ると、もう二度と亀に話しかけることができなくなる、といった細かい不具合はまだありそうだが、見つけられたのはそれくらい。それよりも、リソースフォークの削除やパス文字の機種依存などについて、Windows標準機能で解凍できるようZIPファイルを修正し、プレイヤーを増やすのが先決だろう。
 ボリュームは小さいながらもきちんとまとまっている。コレクション要素等、やり込み圧力を高めなかったのは、本作については好判断。「もうちょっと遊びたい」くらいがちょうど良い。
グラフィック : 9 / 10
 大昔の16色時代を連想させる色使いと、輪郭線をハッキリ描く昔ながらのドット絵。交互打ちなどの伝統的なテクニックも多用した全身絵に見惚れる。
 キャラチップは、正面・背面の歩き絵に堅さがあるのが気になる。いまいち歩いている感じが薄い。せっかくなら写真もドット絵で見たかった、というのはさすがに贅沢か。
サウンド : 8 / 10
 8ビット・16ビット調の印象は強いが、実際は特にこだわりなく幅広い取りそろえ。あまり統一感や流れは感じなかったが、全体として「明るく楽しいロキシータウン」を印象づけている。

 エンディング、「寂しくなったらまたいつでも」のメッセージ。
 これはもちろん、いつでも再プレイして欲しいって意味だとは思いますけど、それだけじゃ無いと思うんですよね。
 だって、どんなに寂しく孤独な時でも、隣にああいう優しい死後の世界があると思えたら、それだけで生きていこうと思えるじゃないですか。
 そんな素敵なメッセージを、きっとこの作品は持っていると思うのです。

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