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作者 [ InTheBox さま(開発) ]
[ Jungle Game Lab さま(パブリッシャー) ]
ジャンル [ 魔法陣作成 ]
容量・圧縮形式 [ 2.26GB(解凍時)・Steamクライアントからダウンロード ]
製作ツール [ Unity ]
言語 [ 韓国語・英語・日本語 ]
備考 [ 要・Steamアカウント ]
配布元 ダウンロード先

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レビュワーハマリ度グラフィック サウンド合計総合判定
ES 8 /10 9 /10 8 /10 50/60 B
赤松弥太郎 8 /10 9 /10 8 /10

 《 ES 》  ハマリ度:8 グラフィック:9 サウンド:8

まずは基礎から。魔法を知れば全てが分かる。

今回のイチオシ「ENSCROLL」のゲームルールは、「4つの図形を組み合わせ、『お題』に合わせた魔法陣の作成」。このルールの達成に必要な知識は4つあります。
1つは「依頼の解析」。フクロウが毎日4通前後届けてくれる依頼書は、依頼人の身の上・周りの状況説明・世間話と、ノイズ情報が多くなっています。依頼に必要な「欲しい魔法」「発動期間」の情報が埋もれがちなのです。
大抵の依頼書は「欲しい魔法」「発動期間」が赤文字で表示されているため、そこをピックアップすれば大丈夫です。しかし、中にはその強調処理が無い依頼書も。それも、よりによってメインストーリーに関わる依頼書ほどその傾向が高くなります。メインストーリーに関わるだけにノイズ情報も大量にあり、解析するだけで一苦労です。

2つ目は「魔法陣の解析」。三角(火)菱形(風)正方形(土)丸(水)の4つの図形を組み合わせ、様々な魔法を作っていきます。
基本のキとなるLevel1…2つの図形からなる魔法陣だけでも、10種類とかなり豊富。しかも、4×4=16種類の組み合わせからその10個の魔法陣を見つけ出さなくてはいけません。
Level2以降になると「下位レベルの魔法陣を複数重ねる」ことが必要です。その「下位レベルの魔法陣」が、「魔法陣1つ+図形」なのか「魔法陣2つ」なのかと考えるだけで、限りないパターンを考慮しなくてはなりません。
しかし、その多数の魔法陣も、一度作成(巻物に記載した後、下の名称をクリックして確定)すれば、魔法図鑑に記録されます。あとは、その魔法図鑑を参考に、依頼書に適う魔法を作成すればいいのです。
基本的に魔法図鑑は「羽ペンの本数が増え、レベルが解放され次第、開放されたレベルの魔法を全て魔法図鑑に記録する」ようにしましょう。
依頼の時間制限はありませんし、ベッドをクリックしない限り日数は進みません。依頼とは異なる魔法陣を作成しても、左下のコップをクリックすれば完全消去できます。書いては消してを繰り返し、魔法図鑑は早いうちにコンプリートしておきましょう。
魔法陣が高レベルになるほど候補の下位魔法陣も増えるため、作成に必要なトライ数は指数関数的に増えていきます。説明文のヒントでは絞り切れない場合は、虫メガネの付箋をクリックしましょう。回数制限こそあるものの、下部にある2つの材料のうち1つを教えてくれます。回数制限も日を跨げば回復するため、積極的に使っていきましょう。
魔法図鑑には、実は逆引き機能もあります。材料となる下位魔法陣の作り方を忘れた場合でも、材料欄をクリックすればその下位魔法陣のレシピまで一瞬で移動できます。矢印の付箋でブラウザバックも可能なので、一度魔法図鑑に登録した際の作業効率は思った以上に上昇します。
隙間時間を利用した学習が、後の仕事を楽にする…その意味では本作は「技術職シミュレーションゲーム」としてかなりの再現度を誇ります。

そして3つ目は「各魔法陣が持つ3つの効果」。同じ1つの魔法陣でも、「魔法強化」「魔法弱化」を掛けることで3種類の効果が表れます。「どこまで強化を掛ければ依頼書通りの効果が出るか」は、「魔法強化」「魔法弱化」を掛けて、下の魔法名を参照するほかありません。
本作の魔法陣は、「属性名に似合わぬ意外な効果」を持つものが結構存在します。「浸透」が実は「鍵開けの魔法」だったり、「変化」に強化を掛けると対象が色→形→性質と変わったり、モノによっては、求める効果がどの魔法陣にあるのか分かりにくい依頼があります。
私の初回プレイでも、「求める魔法が分からず失敗してしまった依頼」が1つだけありました。攻略を見て「えっ、それだったの!?」と思うほど意外な物でした。何なんでしょうね、「ウェストマーク」って。

最後の4つ目は「図形・魔法陣は右ドラッグで回転できる」点。…いや、ゲーム的に意味が無いから忘れがちな要素ですが、この仕様は後半に重要になってきます。「手紙に添付された魔法陣を復元する」依頼が後半に2~3回ほど来るのです。
問題となるのが、本作では四角形が菱形(風)正方形(土)の2種類あること。
私の初見プレイでは、依頼書に添付された魔法陣がどうしても再現できなかったため、プレイを中断したことがありました。「あれは風の図形じゃなくて、45度回転した土の図形だったのか!?」と気付いたのは、プレイ中断から数時間後のことでした。

本作の醍醐味は、そんな苦心を重ねることで、プレイヤー・その分身たる魔法職人のみならず、依頼人たちの成長と物語を追える点です。
対決する両者から来た依頼をどのように叶えるか…本作に多数存在する「メインストーリー」はプレイヤーの行動に応じて進行していきます。実績を見る限り「わざと間違う」ルート分岐はそれほどありません。「依頼をしっかりと叶える」…これこそが本道であり、ENDが最も豪華になるルートなのです。

 《 赤松弥太郎 》  ハマリ度:8 グラフィック:9 サウンド:8

冒険の旅つづけていく術は 勇気という名の地図広げればいい

フクロウ便

 さあ、仕事の時間だ。

 学資ローンの返済という、実に世知辛い理由で働き始めた主人公。
 返済できなきゃ財産差し押さえの上炭鉱労働が待っています。
 しかしそんなこと言われても、プレイヤーとしてはモチベーションが上がりません。

 そんな主人公とプレイヤーの心の支えになるのが、フクロウ便で送られてくる依頼人の手紙と、そこから垣間見える物語です。
 中でもメインとなる、4人の依頼人の物語でしょう。

エイレネ
 旅に憧れる薬草店の娘・エイレネ。

エクスビュルンとナラックス
 気の良いドワーフのスルムハルド・エクスビュルンと従者のトロル・ナラックス。

マイオスタル
 宮廷詩人志望の吟遊詩人・マイオスタル。

黒い森にて
 領地での怪現象に悩んでいるウェストマーク伯爵・オットー。

 彼らは繰り返し、何度も主人公を頼り、どのような旅をしてきたか、子細をその都度依頼に書き送ってくれます。
 主人公にしてみれば、彼らは他の客と比べて報酬が良い上に、失敗しても何回も依頼を出してくれる上得意様です。
 邪険にする理由はまったくありません。
 というより、彼らの依頼を全て失敗した場合炭鉱送りが確定するので、きちんと巻物を届けなきゃいけません。

帝国西部地図

 彼らの旅路は、時にもつれ合い、時に影響を及ぼし合いながら進んでいきます。
 壁に貼られた古びた地図には、彼らの足取りと、その時主人公が何を助けたかが記されていきます。
 依頼をこなすためにはほとんど必要の無い地図ですが、これを眺めると確かな実感が湧くのです。
 彼らの役に立てたという喜びと、彼らの旅の登場人物になれたという誇らしさです。

 まあ実際のところ、彼らはとてもたくましいので、必ずしも主人公の巻物の助けが必須では無かったりします。
 間違った巻物を渡してもなんとかしちゃうことがほとんどで、場合によっては正解なのにスッキリしない結果になることも。
 しかしそれでも、同じ旅なら、より楽しい旅がいいじゃありませんか。

 パズルの仕組みは単純ですが、しっかり頭を使う難易度です。
 手紙の指示はときに細かかったり、ぼやけていたり、もって回った言い回しをするせいでわかりにくかったり(お前のことだよマイオスタル)します。
 事前に報酬はわかりませんから、「もう十分稼いでるし、面倒くさい依頼は適当に済ますか」みたいな駆け引きは成立しません。
 一つ一つの依頼に、誠心誠意取り組むのみです。

ハマリ度 : 8 / 10
 以前、同パブリッシャーの翻訳作品を取り上げた時は、翻訳の質についていろいろと問題があった。本作では一部こなれないところも見受けられたが、ゲーム進行の妨げになるものは一切無かった。そこは大きな改善点。
 メイン画面、狭い机に自由に本やハンコを並べ、使いやすい環境を整えていくUI等、Papers, Pleaseへのリスペクトが色濃い。ただし本作には制限時間が無いこともあり、記憶より魔法図鑑に頼る率が高い。机が狭く本の置き場所に困るという設計は、本作においてはそこまで有効に働いていない。
 プレイによってストーリーが大きく変化することは無いため、繰り返しプレイする魅力にはどうしても欠ける。ゲームが用意している回答の幅は狭く、「別解」のようなものも存在しない。1回のプレイを完璧にしていくプレイスタイルに適合している。
グラフィック : 9 / 10
 イベントはAI絵だが、銅版画風で統一感があるため、しっかりと没入感がある。
 UI上わかりにくいところが複数ある。魔法図鑑右上の⤺が「前見たページに戻る」だと気付けるのか、スクロールの「効果時間」にマウスを当てるとその意味が出てくると気付けるのか。なぜ最初から「1日」「1週間」「1ヶ月」と書いてくれないのか。そういう手探り感はなくしてほしかった。
サウンド : 8 / 10
 聞き飽きこそ少ないものの、主に聞くのはタイトルとメイン画面の曲くらいで、BGMの種類は非常に少ない。なぜか就寝時のBGMだけ数種類あるが、使い分けは不明、短い時間しか聞かないのでほとんど気付かない。

 時間に追われず、じっくりと、窓の向こうから送られてくる物語に思いを馳せる。
 そんな3~4時間もまた、味わい深いものですよ。

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