■ ぶきあつめ ~なんでも武器になるRPG~
作者 [ kagaya さま ] ジャンル [ ローグライクRPG ] 容量・圧縮形式 [ 108MB・ZIP, ブラウザゲーム ] 製作ツール [ RPGツクールMV ] 言語 [ 日本語 ] 備考 [ Steam版が販売中 (\980) ] 配布元
- (補足)
- 2019.07.23:現在の最新バージョンは2.10です。
- 2023.06.28:ゲームアツマールのサービス終了に伴い、リンク先を「ふりーむ!」に変更。
レビュワー ハマリ度 グラフィック サウンド 合計 総合判定 ES 10/10 8 /10 8 /10 52/60 赤松弥太郎 9 /10 9 /10 8 /10
《 ES 》 ハマリ度:10 グラフィック:8 サウンド:8
お~れの武器~を知ってるか~い?
ほうき! 家屋! ミノタウロス!「本編そっちのけで楽しめる」…今回のイチオシ「ぶきあつめ」は、まさにその言葉を体現したRPGです。
そこらのブツを拾い集め、右手に抱え、そこらの動物(友好的NPC含む)に向けてぶん殴り、その動物すら右手に抱える…。その手順を繰り返していれば、自然と道が開ける仕掛けになっています。
ただし、そのループにかまけていられるほどには難易度は低くありません。しっかりとHPを管理していないと、思わぬ所で倒れてしまいます。
デスペナルティは割と厳しめ。以下の3パターンのいずれかを選択する他ありません。
- 薬草5枚でその場復活…最初は10枚しか持てない薬草の半分を支払う
- 村の墓場から復活…貴重なお金が消える
- セーブからやり直し…記録を忘れると地獄
悲劇を防ぐためには、常に細かくHPを見ておく他ありません。逆に言えば、HPを見て適切に薬草さえ使えれば、「道中でいきなり消し炭になる」みたいな悲劇はありません。
本作の脅威は敵対的NPCしかいません。呪いのアイテムやトラップなど「うっかり拾うとペナルティが出るもの」は登場しません。
序盤こそ道中で薬草が尽きて進退窮まる状況もありますが、話を進めれば(フィールドに限り)戦闘をスキップできる「空飛ぶほうき」、薬草のストックを増やせるポーチなどを購入できるため、徐々に楽になっていきます。
※ ただし、ダンジョン最奥のボスはそれなりに強力です。レベルを鍛えていないと、回復の間もなくHPが消し飛ぶ・薬草のストックが尽きても倒しきれない…という事態は発生しかねません。
序盤で不安になる武器の耐久力も、程なくして「メッキ」で耐久力無限大にできるため、武器が壊れる心配もまずありません。
武器強化に使用する「アルマの石」はそれなりに貴重品ですが、イベントやドロップで割と手に入ります。「これは使える!」と思った装備は、気軽にメッキと強化を掛けておきましょう。
攻撃力は強化で埋め合わせられるため、追加効果(魔法の追い打ち・デバフ付与・複数回攻撃)で選ぶのがおススメです。実は本作、「成長して少しずつ世界を広げていく」というRPGとしては至極真っ当な作りになっています。その広げる世界を「あらゆるブツ(静物・動物問わず)を武器にする」「武器の威力をデータベースとして保存する」「武器を増やし、売ることで経験値が得られる」という形で描写しているのです。
特に、「武器を増やし、売ることで経験値が得られる」というのは、本作の大きなポイントです。本作では敵からドロップする経験値・資金は微々たるものです。集めた武器を店頭に並べて販売することで、資金のみならず経験値まで手に入る仕掛けになっているのです。
そのためにも、ぽん美の強化は商品棚・応援(経験値ボーナス)・呼び込み(販売速度アップ)・商売術(売却ボーナス)に注力しましょう。武器庫は無強化でも割と容量があるため、後回しで構いません。
レベルアップボーナスもHP・運を中心に上げた方がいいでしょう。攻撃力は武器で埋め合わせができますし、上げすぎるとNPCを武器にしにくくなります。
本作では「防御力」が無いため、耐久力はHPのみになります。HPを中心にレベルアップボーナスを注ぎ込んでおきましょう。
メッキさえ掛ければ必要ないと思われる運ですが、メッキを掛ける前の武器の保全・いざという時の回避率に意外に効いてきます。こちらにも強化を掛けておきましょう。楽しい箇所、思考しがいのある箇所、色々な面白さがある本作ですが、欠点が無いわけではありません。
投稿レビュー時にも触れた「大きすぎる武器でモンスターが隠れてしまう」点、そして、その隠れたモンスターを表示するためのShiftキー操作…「方向転換+当たり判定表示」がゲーム内に書かれていない点があります。
Shiftキーがゲーム画面に書かれていない点は、本作がマウス操作を基本として作られたためでしょう。ゲーム画面の表示はあくまで「マウス操作で使用するボタン」であるため、方向転換は組み込めなかったのでしょう。
マウス操作でも「Shiftを押しながらクリック」でその場方向転換は可能です。ローグライクの例にもれず、その場方向転換は「ぶきあつめ」でも重要な操作です。しっかりと使いこなしましょう。「周りのブツ…崖・スコップ・道路・人間…をすべて武器にする」というキワモノ極まりない設定ですが、その実は、地味な作業になりがちな「主人公の成長」を絶え間ない新発見を味わいながら楽しめるRPGになっています。
とりあえずは「空飛ぶほうき」が手に入るまではプレイしてみましょう。「空飛ぶほうき」さえ手に入れば、「薬草が尽きた帰り道を戦々恐々と歩いていく」恐怖から解放されます。
RPGとしての分量は数時間程度ですが、道中のブツを全て集め、その攻撃力を記録するとなると、その数倍の時間はいつの間にか掛かっていることでしょう。
《 赤松弥太郎 》 ハマリ度:9 グラフィック:9 サウンド:8
妄想絶好調! 信じた道のり 進むだけよ
さてさて、とんでもないことになってきましたよ。
ビームを掴み、竜巻を投げ返す勇者について「勇者を信じろ」と書いたのが、ついこの間のことだというのに。
本作の主人公が、さらにその上をいくだなんて、世の中どうなってしまったのでしょうか。
タイトルの通り、本作は「なんでも武器になるRPG」です。
チュートリアルから、そそり立つ崖を引っこ抜いてスライムを潰したくらいで騒いではいけません。
物理的に絶対持つことができない概念ですら、うぇ子は平然と武器にします。
地面に開いた大穴を、ひょいっと拾い、地面から引き剥がし、武器として振り回すのです。
このような無法なふるまいに対して、物理法則は沈黙せざるをえません。
しかし、空想の世界であるならば、うぇ子の能力を観察し、考察することは不可能ではありません。
ひとつ、やってみようではありませんか。
この、あまりにもバカバカしい本作の基本システムを、どれだけ大真面目に考察できるか、挑戦してみます。
以下は完全にネタバレです。必要最小限ですが、エンディングの内容にまで言及します。
ほとんどストーリーらしいストーリーがない本作ではあっても、初見の意外性を大いに損ねる内容なので、未プレイの方は自己責任で。
一応の措置として、画像については、あまりにもインパクトがありすぎるため、上の一例を除いて掲載しない方向としますので、どうかご了承ください。
◆一体何が起きているのか?
うぇ子が武器を拾うタイムは、わずか0.05秒に過ぎない。では、武器拾得プロセスをもう一度見てみよう!
もとい、何が起きているのか、じっくり観察してみましょう。
- うぇ子が「武器である」と判断した対象は、なんでも「武器」にできる。
- うぇ子は「武器」を手に取り、振り回して攻撃できる。
- うぇ子が「武器」を持っている間、その対象はうぇ子に対してあたかも存在しないかのように振る舞う。
- 拾得した「武器」を破損・破棄・売却することで「手放す」と、その対象は元あった場所に復元される。
まず議論の前提として、うぇ子が武器を得る手段は、大別して2つあることを確認します。
1つは、購入する、宝箱から入手する、人から譲ってもらうなどの、常識的な手段による入手方法。
もう1つが、[D]キーによる「武器を拾う」コマンドです。
前者は、一品ものの武器を破損しても復元されることはなく、kazizonで購入する以外では再入手不可、と、他のRPGと比較して特に問題のある挙動はありません。
ここで考察するのはもっぱら「武器を拾う」コマンドについてであり、断りのない限り、「武器にする」「拾得する」などの表現は、これを指します。
つぎに、うぇ子が拾得する武器と、その元になる対象は別の存在であることを確認します。
(上段で示した「常識的な」入手方法の場合は、当然同一存在であることに注意が必要です。)
先程の「巨大な穴」や「道」などの概念を武器にしている以上、疑いの余地はないでしょう。
また「草むら」のように、手に取る前と後で形が変わっている武器も存在します。
基本的に、どんな形や大きさの「草むら」であっても、草むらであれば草むらに違いない、とうぇ子は判断しているようです。
以上から、遊び回る子供を殴っておとなしくさせた上で掴み取り、武器として振り回したあげく、
「あー、やっぱり人間は壊れやすいなぁ」
などと口走る、誘拐殺人犯うぇ子の人物像は、客観的には否定されます。
しかしうぇ子は、武器とその対象を区別しているようには見えないため、彼女の主観としては上の光景そのままが繰り広げられていることに注意が必要です。
◆武器にできる対象は、うぇ子の想像力によって規定される
うぇ子が「武器」にできる対象の範囲について。
うぇ子は「なんでも武器にできる」という強い確信があり、その信念にはまったく陰りがありません。
したがって、うぇ子の主観として、「武器にできる」と判断したものすべてが対象となっているはずです。
しかし、プレイヤーの視点に立つと、うぇ子が武器にしていないものも見えてきます。
例えば「空気」だとか、「霧」だとかは、おそらくうぇ子が武器として認識していない対象です。
「穴」などの目に見える概念には強い一方、「気持ち」などの目に見えない概念は一切武器にしていない点は、注目すべき点です。
また、家の内側から家を取得するなど、自分が現在いる場所を武器にすることもできないようです。
おそらく、本作で「地球」を武器にできない理由がそれでしょう。
……もっとも、武器に出来たらできたで、このゲームそのものを武器にして、現実世界に殴り込みをかけるうぇ子の姿しか見えないので、そうならなくて良かったところです。
人間やモンスターなどを、弱らせないと武器として拾得できない点も、うぇ子の想像力の問題に帰して良いでしょう。
自分に向かって攻撃したり、話しかけたりする相手を「武器」だと認識するのは、至難の業なのは納得できます。
また、「武器」のステータスや追加効果についても、うぇ子の想像力に由来すると解釈するのが自然です。
代表例が、先程触れた「草むら」の例外、「強そうな草むら」です。
あれが他の草むらより攻撃力が高い理由も、他の草むらと差別化される理由さえ、「形が強そうに見えたから」以外ありません。
追加効果の裏付けもおよそ直感的で、「朽ちた岩」など、「触れるとこちらも朽ちてきそうだ」という印象だけで、防御力低下効果が付与されています。
そのために、ベッドで殴られて眠くなるという、物理的には不合理な現象も起きるわけです。
……つまり、生姜焼き定食は、肉が「若干赤い気がする」とうぇ子が判断しただけであって、実際に毒が入っているわけではないだろうと、食堂の営業権にかけて申し上げたい。
どれほど巨大な武器であっても、攻撃範囲は最大3×3マスに限定される理由も、うぇ子の想像力の限界からなのでしょう。
◆うぇ子の能力は、人々にどう認識されているのか
まさに理不尽としか言えない、このうぇ子の能力を、周囲の人々はどのように受け取っているのでしょうか。
調べてみると、大きく3種類に分かれます。
- 認識していない、反応しない
(キャンパー イクパ、物売りの男性 プッサなど)- 消失したと認識し、疑問を感じる、パニックになる
(一家の母 ホクトーマ、釣り人 フィシグロなど)- 現在存在しないことは認識するが、疑問を感じない、合理化する
(食堂の料理長 フランベル、井戸端のおばさん イルミサとフキヤなど)特に目を引くのが1です。
キャンパー イクパの場合、目の前にある広大な海がなくなるという異常事態に見舞われても、海がそこにあるのが当然のように話をします。
たまたま視野に入っておらず、気付かなかったという理屈では到底説明ができません。
イクパは確かに「ここに海がある」と現在認識しているとしか考えられないのです。
一方で、釣り人 プッサは、目の前の海がなくなるという現象を認識し、そしてパニックに陥っています。
双子のパラドックスのような、観察者によって、認識が異なるという状況が発生しているのです。
もし、大穴を拾得する場面を、他の人に観測させたなら、どのような反応が返ってくるのでしょうか。
大穴を拾得した瞬間から、その場所は通行可能になります。
これはうぇ子だけではありません。モンスターも、かつて穴があった場所を通行して、うぇ子に迫ってきます。
これを他の人に観測させた場合、大穴が突然無くなる理不尽か、うぇ子やモンスターが穴の上を歩いている理不尽か、どちらかを受け入れざるを得ないはずです。
あるいは、まったく何も認識できず、見ているはずなのに見えていない、という状態に陥るかもしれません。
実証が必要でしょう。
また、いずれの場合も、「武器を拾う」というプロセスをうぇ子以外の人が一切認識していない点も指摘します。
弱っていない人間やモンスターを拾おうとすると「振り払われた」と表示されるので、なんらかの所作が行われていることは確かなのですが。
例えばホクトーマの場合、今さっきまで飲んでいた、目の前にあったコーヒーカップが消失しても、うぇ子がそのコーヒーカップを装備していても、うぇ子を疑いもしていません。
そしてこれは、うぇ子以外はうぇ子が何を装備しているのか、認識できていないことを示します。
父親の目の前で息子を拾得し、父親の目の前で装備しようと、父親は息子がどこに行ったか理解できず、戸惑うばかりなのです。
◆拾得対象とされた当人は、どう認識しているのか
拾得対象になった当人が、拾得されている期間をどう認識しているのか。
武器として装備されようと、その当人は以前と変わらぬ反応を示すため、検証が難しいところです。
しかし、これを示唆する現象は存在します。
ヘイワ村を拾得した場合です。
視界からヘイワ村は消え去り、家々もなくなり、かつて村があった場所を平然とモンスターが通過します。
「村」というのもひとつの概念ではありますが、うぇ子にとってはそこに住む人も家々も、すべてあわせて村だと考えているのでしょう。
家々も、村人も、一切が消えて無くなったかに一見見えます。
しかし一方で、うぇ子は同時に、そこに村が存在していると認識しています。
そして、村の入り口であった場所に立てば、今まで通り、村の中に入ることができるのです。
そこには、まったく変化のない生活をしている村人たちや旅人たちがいます。
誰一人として、外部から見て村がなくなっていることに気付いていません。
これは他の、洞窟などを拾得した場合とは異なる挙動であり、うぇ子はその場合、洞窟に入ることができません。
何がその違いを生むのか、考えるに、うぇ子には自分自身も村人であるという自己認識があるためだと思われます。
武器の解説文からも、他の解説文、妹ぽん美の解説文にすら見られない、自己帰属意識と愛情が語られています。
目に見えないものを武器にしない、と先程述べましたが、おそらくうぇ子は、この村に関しては自分自身の愛情と思い出も武器にしているのです。
あの「ヘイワ村」という武器の中には、うぇ子自身が含まれている。
そう考えれば、武器として拾得された他の人たちも、拾得されたことに気付かず、今まで通り存在し続けていると自己認識していると、強く推定されます。
◆むしろ脅威は復元処理にある
前段で、武器として拾得されたと言っても、その対象が完全に消失するわけではないことを確認しました。
仮に一時的に目に見えなくても、他の物質と干渉しなくても、うぇ子が武器を手放すことで復元されるなら、それほど大した問題ではありません。
大穴のパラドックスのような事例もありますが、それが即ち世界を揺るがす脅威にはならないでしょう。
しかしここに、触れなければならない大きな例外が存在します。
そしてこの例外こそが、うぇ子が世界を滅ぼしかねない可能性を示すのです。
そうです。きこりの家のイベントです。
うぇ子がダーガを拾得してウォンマーの家に入ることで、このイベントは進行します。
ここから、ダーガが拾得した場所に、拾得した後も変わらず存在し続けている、という説は破綻します。
うぇ子が何を装備しているのか、他の人は認識できないので、ウォンマーはうぇ子が装備しているダーガを認識できません。
何よりイベント後、ダーガが、うぇ子にウォンマーの家まで連れて行ってもらったと認識しているのがネックです。
やはりこれは、うぇ子が武器拾得状態を解除して、ダーガを意識的にウォンマーの家に出現させたと考えるのが妥当です。
うぇ子はウォンマーから、ダーガがかつてはこの家に住んでいたことを聞いています。
普段は無意識的に、拾得した場所に復元させているが、他の場所でももとあった場所だと意識することによって、そこに復元することが可能なのだ、という仮説が成立します。
しかしそれを認めると、うぇ子は拾得した対象に物理的に介入可能だ、という事実が導かれます。
他の人から見て、ダーガの動きはどのように見えるのでしょうか。
うぇ子がダーガを手放した瞬間に、元あった場所から消え、ワープしているように見えるかもしれません。
また、ダーガ本人がどう認識しているのかも気になるところです。
うぇ子に拾得されてから、ウォンマーの家に復元されるまでの間、ダーガの意識はどうなっているのでしょうか。
あるいは、「殴られて腹が立ったので、うぇ子を追いかけていたら、知らず知らずのうちにウォンマーの家に入っていた」のような合理化が行われる可能性もあります。
上の任意による復元方法を応用して、うぇ子が地球を滅亡させる手順を示します。
この手順はおそらく、現時点のうぇ子でも十分実行可能な範疇です。
- 月を見上げて、「今日の月は一段と大きいなあ。なんだか手に届きそうだなあ」と意識することで、月を拾得する。
- 「そう言えば聞いたことがある。月は元々地球の一部だったんだって」と意識することで、月を地球の位置に復元する。
- 地球滅亡
◆だが世界には、もっとすごい奴らがいた!!
上の手順に対して、反論もあるかもしれません。
開始当初のうぇ子は、海や村、ダンジョンなど、規模の大きなものは武器にできなかったではないか、と。
確かにそうです。しかし、その時表示されていたテキストを思いだしてください。
「不思議な力で守られていて拾えない」
より上位の力によって抑制されていただけで、本人のポテンシャルとしては、開始時点から海をも拾得できたはずです。
しかし、一体誰が、こんな無法な能力を制限しているのでしょうか。
ダンジョンでギミックを拾得しようとした時、最初は同様のメッセージが出て拾えませんが、ボスを倒すと拾得可能になります。
しかし、各ダンジョンの、とても上級知能を持っているようには見えないボスたちが、能力を封じているとは信じられません。
かろうじて魔王は可能性があるかに思えますが、「なんで武器屋がここにいるの?」と、うぇ子の能力に気付いている様子さえありません。
そう。対策しているということは、うぇ子の能力を知っているということです。
うぇ子が能力に目覚めたのは、おそらくオープニングのスライム戦でしょう。うぇ子が目覚めてから対策を取ったのでは遅すぎます。
つまり、うぇ子以前に同様の能力が存在していたことを示唆するのです……。
同様の無法な能力者が、少なくとも過去に一人いたというだけで、震えが来るじゃありませんか。
エンディングを見た方なら、それに該当する能力者、そして唯一うぇ子を封じられうる存在に心当たりがあるでしょう。
ラスボスですね。
エンディング4で、うぇ子が彼女の跡を継いだ経緯を見れば、彼女とうぇ子が同質の存在であることも窺い知れます。
ラストバトルでこそ、うぇ子が常識的手段で入手するような、ごく普通の武器を用いて対抗していた彼女。
しかし彼女のポテンシャルは、当然のようにうぇ子を上回っている、と想定されます。
もしかしたら地球さえ武器にできるかも知れませんが、話のわかる大人なので、そんなことはしないだけです。よかったよかった。
しかし。
彼女の他にもう一人、ヤバそうな奴に心当たりはありませんか?
うぇ子が能力に目覚めた直後に、うぇ子に伝説の武器の話題を振って、冒険を唆した、アイツ。
か弱い妹の皮を被ったバケモノ、ぽん美ですよ。
彼女のヤバさは、武器販売能力にあります。
武器販売は、うぇ子の視点で言えば、棚に武器を置いておき、売却できたことを確認した時点で武器を喪失したと認識、復元処理を行う、という、普段通りのプロセスです。
つまり、うぇ子は武器屋の棚に置いた時点では、まだ自分の所持品だと認識しています。
しかし、繰り返しますが、うぇ子以外の人は、うぇ子が何を装備しているのか認識できません。
棚の上に人間が並び、値札が付いている様子はどう見ても人身売買ですが、家族や自分で身代金を払っているようにも見えません。
あんな得体の知れない数々の物品を、正体が掴めないような状態で、しかも武器として購入しているのは、いったい誰なんでしょう?
勇者は、武器屋の店先には来ていますが、中に入ったことがありません。武器屋の中に客がいたことは一度も無いのです。
にも関わらず、こんな幼女が、あんなやる気の無い呼び込みをしている妖しい店に、金を流し込んでいる何者かが存在するのです。
ぽん美のサポートの内容も、いちいち人知を越えています。
RPG定番の不思議道具、アイテム袋の拡張は、言うに及ばず、といったところでしょうか。
うぇ子視点ではただの長机である販売棚も、どれほど巨大な武器でもちゃんと載せられるという異常性があります。
そして、「妹のプレゼント」と称した物品販売。
どこから入手したのかわからない物品ですが、どれも異常な性質があります。
特に「ムシとりアミ」。
これは拾得で手に入る武器ではなく、一般手段での入手ですから、人やモンスターを武器として拾得しやすくなるのはもともとの性質です。
そんな作用を持つ武器を作れるのは、一体誰か?
心当たりは一人しかいません。
ぽん美とラスボスの関連を示す、決定的な手がかりは、店内に存在する電話です。
鍛冶屋kajizon。人間等も含む、うぇ子が装備するすべての武器を製作できる鍛冶屋です。
しかも、世界に一つしか無い武器は、一つしか作れないという、謎の制約が存在します。ただの模造品を作っているわけではありません。
この性質といい、武器のチョイスといい、既視感に溢れていますよね。
この鍛冶屋の正体も、島に一つしか存在しないハイテク機器・電話を設置した人物も、たった一人しか思いつかないのですよ。
ぽん美とラスボスが電話で繋がっていたなら、あの絶妙なタイミングでの唆しも納得がいきます。
さらに言えば、エンド3。
ここでぽん美は、再びうぇ子を唆し、擬似的にエンド4と同等の展開になります。
エンド4がラスボスの大願成就だとすれば、エンド3はそこには至らないまでも、妥協できた実現案だった、と見ることができるのです。
ある日無自覚に、地球を滅ぼしうる、神にも迫る能力に目覚めてしまった、うぇ子。
産まれてしまったバケモノを、ぽん美とラスボス2人がかりで、なんとか首輪をつけ、手綱を握ろうとする、
本作は、そんなストーリーだったのかもしれません。
え? どこが真面目な考察だって?
やだなぁボクのレビューに何を期待しているんですか。
あ、評点ですね。
- ハマリ度 : 9 / 10
- 「NOW ROADING」は誰もツッコまないのだろうか。
ローグライクとしては、最初から強力な武器がガンガン手に入る上、成長によって破損率を0%にできるのが大きな特徴。
その代わりに、回復手段が制限されており、戦闘中は薬草とザ・ミラクル斬りの2種類しかない。防御手段もレベルアップによるHP上昇のみ。そのため、いかに攻撃を食らわずに立ち回るかが重視される。
だが最終盤、妖精王が使う各種魔法などはまず避けられないし、ラスボスが大火力全画面攻撃で焼き尽くしてくるため、薬草の束で殴る作業に落ち着いてしまうのが残念。
ボリューム感は、エンド1を見るまでなら適切で、飽きの来ない範囲に収まっている。ただ、公称の2時間だとやや無理があるとは思う。
エンド4を目指すと、上のラスボス戦や魔王城を2回クリアする必要があり、なかなか面倒。
解説文の素晴らしさがまた良い。「ヤバそうなキノコ」を個人的ベストとしたい。
- グラフィック : 9 / 10
- 基本はデフォ素材、一枚絵と立ち絵に描き下ろし。
この描き下ろし絵が、それだけで世界観を表していてとても良い。また、勇者の立ち絵素材の使い方はズルいの一言。- サウンド : 8 / 10
- 聞き覚えのある素材曲、そしてデフォSE。
特筆する点もさほど無いが、違和感のない仕上がりである。今まで散々アツマレナイなどと陰口をたたいていたアツマールですが、しばらくぶりに見たらいや、なかなか良い場所になってきているではありませんか。
まあ印象が変わったのも、マシンを買い換えてスペックが高くなった影響なのでしょうが。
「フリーズする」という声も多数ありますし、スマホからではやはりキツイのかもなあ、と思うのですが、いつかハードウェアスペックが追いつく日が来ると、ボクは信じてます。
それまで続くといいですね、アツマールも。