■ ILL FLOS
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作者 [ 戒斗 さま ] ジャンル [ ファンタジー長編RPG ] 容量・圧縮形式 [ 445MB(解凍時)・Steamから直接ダウンロード ] 製作ツール [ RPGツクールVX Ace ] 言語 [ 日本語 ] 備考 [ 要・Steamクライアント ] 配布元 ![]()
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レビュワー ハマリ度 グラフィック サウンド 合計 総合判定 ES 8 /10 8 /10 8 /10 49/60 ![]()
赤松弥太郎 7 /10 8 /10 10/10
混乱は、冒険は、いつ終わるのか。
本日のイチオシ作品「ILL FLOS」は、良くも悪くも王道のファンタジーRPGです。昨今では珍しいほどにメインストーリー一直線に進むRPGとなっています。
サブクエストも存在するものの、その出現頻度はメインストーリーの長さに比べれば低く、また、出現条件もほぼメインストーリーの進捗に掛かっています。
バトル面でも小難しい要素はありません。炎・氷・雷の属性相性は大体見た目通りで通じますし、属性弱点を付与できるスキルも覚えられます。
最初のボス・ハーピー戦の直前で、「タイミングスキル」の説明があります。
- 一度使用すれば、その後定期的に同じ効果を発動する
- 追加発動はターン開始時に自動発動するため、その後改めてコマンド選択できる
- 複数人のタイミングスキルを同時発動するとボーナスあり
…と、強力なスキルではありますが、「必然的に長時間の戦闘が要る」性質上、タイミングスキルが生きるのはボス戦のみ。3ターン前後で終了するザコ戦は、通常スキルで対応しましょう。
ザコ戦もスキルは惜しまず使いましょう。こちら側の消耗も激しいですが、MPは後衛に下げれば自動回復し、HPはディアの「集中治療」で低コストで回復できます。
少なくとも、戦闘面では特に詰まる点はないでしょう。ボスに勝てないならば、ザコ戦を繰り返して、経験値・スキル・アニマを集めていけばいい話です。
スキル習得に使用するspも、アニマの素材である4属性のマナも、戦闘に勝利するたびに手に入ります。定期的なメニューからの実行さえ怠らなければ、戦闘経験はレベルアップ以上にパーティの強さを底上げしてくれます。それ故に、本作はストーリーの長さ以上に「長さ」を感じる作品です。何しろ「アイテムを集めるためにザコ戦を繰り返す」「各ダンジョンもトラップが多く、ボスに真っすぐ向かうならともかく、宝箱を集めるとなるとかなりの地理記憶が必要」という構成になっています。
「ダンジョン内の宝箱コンプリートで手に入る、更なる特典アイテム」も全ダンジョンに実装されているため、序盤から終盤までヤリコミ勢には相当な試練が待っています。
…実をいうと、本作は「やりこまない勢」向けに調整されている部分が節々に見られます。序盤の山場にして最難関ダンジョン「大砂漠」は、たった500Gでスキップ可能。360度の回転移動可能な、ミニマップにも3D画面にもほぼ目印が無い広大なステージ。所々に入口に戻されるトラップまで存在します。まともにクリアするには、目印をミニマップに表示してくれるお助けアイテム(数万G)、もしくはそれをカバーできるほどの地理記憶力が要ります。お助けアイテムを使っても、トラップの表示がかなりボヤけているため、回避はかなりの難関です。コスト面を考えればスキップするのが得策ですが、「お宝」と聞くと立ち向かわざるを得ないのが「ヤリコミ勢」。
ダンジョン内にひしめくランダムエンカウントのシンボルも、密度・移動速度共に回避は楽で、当たっても決定キー押しっぱなしで回避可能です。ただし、ザコ戦は先述の経験値・sp・マナ稼ぎの他、「ダンジョン内のコンプリート条件」でもあり、強力な装備と交換できる素材の入手元でもあります。後の攻略を楽にするためにも適度な戦闘は必要です。また、逃走(「決定キー押しっぱなしでの戦闘回避」も含む)は連続戦闘ボーナス(攻撃力・資金・アイテムドロップ率のいずれかにボーナスが掛かる)がリセットされてしまうデメリットもあります。これも、ヤリコミ勢ほどプレイ時間が伸びていく構造になっています。
本作は、システム面でも「レトロ」な作品になっています。何しろ、製作ツールは「RPGツクールVX Ace」。現在主流のMV, MZより1世代前のツール。それでいて、スクリプト改造から様々な機能を実装しています。
MV, MZでは標準で付いている「Shiftを押さなくてもダッシュするオプション」はもちろんのこと、画面の解像度は3倍以上も伸びています。
特筆すべきは、FF6風の疑似3D操作となる乗り物。序盤の中ほどからお世話になる乗り物ですが、困ったことに最初の「海上船」から疑似3D操作のためか、「岸に合わせて上陸する」のにコツがいるのが困りもの。乗り物操作の不便さは、最終盤まで響いてきます。「大砂漠」のランピーなど、演出面の重さが致命的になる箇所もあるため、オプションで「乗り物品質設定」は「低品質」にしておくと安心です。それぐらい重いのですよ。本作独自のスクリプトで作った疑似3D操作。本作、製作面では独自のシステム・そして全BGMの自作と、かなりの労力と執念が込められた作品です。ただし、ストーリー・戦闘・クエストなど、ユーザーが受け取る面白さにそれらがあまり反映されていない作品でもあります。BGMは素晴らしいものですが、「自作の独自システム」が先述の「重い3D疑似操作で、降車にコツがいる乗り物」を初め、むしろ足枷になっている印象です。
プログラミングやゲーム環境は日進月歩。「開発十数年の労作」は、それだけで「開発している間に時代遅れになる」欠点ともなりえます。以前にレビューした「開発十数年の労作」である「レリクスウォーカー」とともに、本作もその労力が様々な面で重荷となる作品でした。
《 赤松弥太郎 》 ハマリ度:7 グラフィック:8 サウンド:10
争いはまた争いの種を残し 時が経つまま悲しみの実を育てる
本作は、ともかくザコと戦うゲームです。
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鍛冶屋素材屋コンビは、それを加速する大きな要因です。
鍛冶屋の武器は、店売り品より一段高い性能もさりながら、作成した時に解禁される「固有スキル」の価値が代替不能です。
固有スキルとは言いながら、SPを払って習得し、どの装備でも使えるので、他のスキルと使い勝手は何ら変わりません。……「固有」とはいったい……?
なので、ぜひとも全種類作成したいところです、が、ザコを見つけ次第倒してもビミョーに素材が足りない程度に調整されてまして。
かといってミャーから素材を買おうとすると、これまた払えなくはない程度の絶妙なぼったくり価格をふっかけられます。
それだけの貯金があるなら繰り越して、次の街に到着次第装備を買いそろえた方が効果が高いのです。
鍛冶に必要な素材をドロップで揃えられるあたりが、ボスをストレスなく倒せる目安にもなってます。
だったら回復ポイントを拠点に、欲しい素材が出るまでのんびり戦えばいい……という目論見は、システムに妨害されます。
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それがこの、ボーナスゲージです。
3種類のボーナスが切り替えられますが、鍛冶屋武器の収集を目指す以上、ドロップ率ボーナスで固定されることでしょう。
戦闘勝利ごとに少しずつゲージが上昇、最大Lv3に達すればドロップ率が4倍になり、ようやく素材集めがはかどります。
しかし、1回でも逃走するとパアです。
そればかりか、シンボル消去、回復ポイントでの回復、ダンジョンからの脱出、そのすべてでボーナスゲージがリセットされます。
主人公のパッシブスキルで逃走後のボーナスリセットを無効化できますが、必要なSPが多すぎ、習得するとして中盤以降になるはずです。
つまり、一度ダンジョンに入ったら、素材を集めきるまで戦い続けるよう誘導されるのです。
しかし、そんなことが可能なのか?
補給無しで延々と、ザコ敵と戦い続けることができるのか?
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それを可能にするのが、4人目の仲間・ディアのスキル「集中治療」です。
戦闘以外でのみ、MP8消費で味方全体をほぼ全快できる、異常な性能を誇ります。
その有用度はクリアまで一切落ちません。
消費MP8は登場時点でも軽すぎる程で、終盤になれば無視できる消費。控えに1ターン下げれば、MAXの5%分MPが回復するので、使い放題と言って良いでしょう。
もちろん、ディア加入以降、ザコ戦はこれ前提のバランスになります。
ディア加入直後のダンジョン「凍て朽ちた洞穴」で、プレイヤーはまずその洗礼を受けます。
狭い地形と滑る床でエンカウントしやすく、さらに落とし穴を1つずつ確認しては元の階に戻るダンジョンの構造上、シンボルが何度も復活します。
出てくる敵も物理攻撃に耐性を持っていたり、攻撃力が高かったりでMPの消費を強要してきます。
加えて本作は、謎解きの難度も高めなんですよ。足を止めてじっくり考えたいのに、次々とエンカウントしてしまう。
MP上限がまだ低く、控えでのMP回復量が少ないこと、まだ5人パーティで、控えに2人しか入れられないこともあって、このダンジョンは相当な消耗戦を強いられます。
その後、レベルが上がり、パーティが6人揃うことで、パーティのリソースが削られることはなくなっていきます。
削られるのは、プレイヤーのやる気です。
中盤以降、ザコ敵は状態異常のバラマキで遅延してきます。
生成アニマで回避できる状態異常は、1枠あたり1つだけ。コストも高くてそうそう生成できないし、できれば優秀な天然アニマに枠を割きたいです。
さらには終盤で敵のHPがインフレし始め、即死攻撃まで狙ってきます。
即死攻撃は、回避手段がものすごく希少な上に、回復技能はリオナしか持ってないんですよね……
戦闘終了すれば回復しますが、経験値入らないのと二択を迫られます。
こまめにセーブを取ってちまちま進め、30時間かけて全実績解放したボクから見て、クリア実績取得率20%は高すぎるように思えます。
長編RPGを遊び慣れている人にリーチしている、ということかもしれません。
ストーリーに対する期待値も、多少はあると思います。
しかし結局、このエンディングはそれだけの期待に応えられているかというと、ボクとしては……
細かい不満点が、かなり多いです。
- ハマリ度 : 7 / 10
- ラスボス戦、触手再生のターン数表示がバグり、一切再生されないという不具合に遭遇。そのままクリアしてしまったが不完全燃焼感が拭えない。再現条件は不明。タイミングスキルは本作戦闘のキーポイントであるだけに、そこにバグがあるのは勿体ない。
区間毎のプレイ継続率を紐解くと、先述の「凍て朽ちた洞穴」、そして救済アイテム・秘密の双眼鏡を購入してなおつらい、嫌がらせとしか思えない「大砂漠」で継続率が80%切り。その後はおよそ90%台で安定し、ラスト手前で90%を切ってくる、という経過で、ボクの経験とも合致する。ストーリーへの期待が一番高まるラスト手前で継続率が落ちてるのは、ザコのHPが増えすぎて面倒、というのが大きいだろう。
赤宝箱は店売り品ばかりでコンシリアのボーナス以外の拾う動機に乏しい、サブクエストを受けないと寄り道が一切できない、先述のとおりアニマ生成の有効活用がしづらい、スキル習得順も中盤まで上位スキルのために下位スキルを伸ばす作業になりリセットもできない、等々、見た目ほどの自由度がなく面白味に欠ける。チュートリアルを一切復習できない、魔物図鑑は宿屋か回復ポイントでしか見られない、見ても弱点と耐性は載っていない、ラスダンの敵は登録すらされない、といった点は不必要に不親切に感じる。
UIについて、スキル使用とスキル習得、アイテム使用とアニマ生成がなぜかサブメニューになっている点は確かに使いづらいし、際立ってアクセス頻度の高い集中治療に専用アクセスパスが欲しいという意見には同意。FF6風の乗物画面も、海岸に直角に接岸しないと降船できない、水平移動ができないせいで狙った地点への着陸が難しい、高度調整は拡大率が変化しないのでまったく無意味、なのに地上と空中で統一感の無い操作体系だけを元ネタから引き継いでいる、とただの好みでは片付けられない問題だらけ。
また戦闘中の並び替えと逃走が並んでいる点も、控えとの交代頻度が高い、逃走のペナルティが大きいという本作の特徴のせいで、非常に悪いUXを生んでいる。後述のFPS低下が重なる時は、慎重に操作しないと押し間違う。
ストーリーについては、序盤は特に縦軸に動きがなく盛り上がりに欠け、淡々と先に進む印象が強い。中盤以降は盛り上がりもあるが、最終的にそれが回収できたのか、ボクには疑問。決定的な利害相反が中盤の緊張感を生んでいるのに、相互理解とは形ばかりで歩み寄らず、結果なし崩し的にシャールが主張を押し通しただけでカタルシスがない。ただのお使いと、目の前の敵を倒すことしかしていないプレイヤー経験から、シャールの主張に同意する心情にも至りにくい。ラスボスに「それでも生きたいと言え」というのはまったく綺麗事ではないのに、ここまでのシャールが非情さや覚悟を見せる行動をしていないのだから、青臭い理想論と思われても仕方ない。せめてラスボス前のイベントだけはどうにかならなかったか。なんの理屈も無く異空間に彼らがこぞってやって来てしまうせいで、仲間たちが世界を守ってくれるというシャールの主張にもノイズが生まれるし、いい点が見つからない。雑に勢いでごまかせる限度を超えている。
- グラフィック : 8 / 10
- タイトル画以外は有名素材を使用。FF6風の乗物画面が本作ならではのこだわりになるだろう。
しかし、描画が重い。32ビット・シングルスレッド・DirectX9というツクールVXAce環境は完全に時代遅れで、グラボの恩恵をまったく受けられない。1コアあたりのCPU性能という、現代では無視されがちなスペックで動作が決まる。
乗物画面は設定で軽量化できるが、中盤以降の戦闘が大問題。ビューポートに色調補正をかけると戦闘中に大きな負荷がかかるという、RGSSの古典的な問題に対して、本作は一切対策を取っていない。中盤以降のダンジョンはほとんどそれに引っかかり、一世代前のCPUを使っているプレイヤーは、強烈なFPS低下に悩まされるだろう。あまりにも古典的な問題なので、今すぐにでも改善を求めたい。解決方法はネットに転がってるし、最悪戦闘突入前に色調補正を切ればいい話だ。視認性も悪い。- サウンド : 10 / 10
- 全曲書き下ろし、59曲。さすがに粒が揃っている。場面から曲を作っていくスタイルなので、文句なくテーマとマッチしている。歌入りメインテーマだけがMusicモードで聞けないのが不満。
本作ならではの味はたしかにありましたし、作品としてやりたいことはやった結果ではあろうと思います。
10年にわたる開発中、立ち止まったり、迷ったりしたことも多かっただろうと思いますが、形にして世に問うことができたのは、とても素晴らしいことです。
しかし残念ながら、認めたくはありませんが、本作はAM4では不十分だった、と同志諸君に伝えて終わります。