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■ STARLIKE 第壱話~第陸話

STARLIKE
作者 [ 鉄鋼団 さま ]
ジャンル [ ハムスタア育成シミュレーション ]
容量・圧縮形式 [ 各話55~115MB・ZIP ]
製作ツール [ NScripter ]
言語 [ 日本語 ]
配布元 ダウンロード先

(補足)
2012.09.21:現在ダウンロードできるのは、Ver.3.0x系の第壱話~第陸話です。以前のVer.2.0x系は公開を停止しています。
2012.09.10:本レビューには、Ver.2.0x時点の評価が含まれています。

(注意)
Ver.2.0xとVer.3.0xには、セーブデータの互換性がありません。
Ver.2.0xからVer.3.0xへと移行する場合、古いバージョンのセーブデータ(「save」フォルダの中にある「global.sav」と「save1.dat」などのdatファイル)は必ず消去しましょう。
Ver.2.0xのセーブデータが残った状態でプレイすると、ミニゲームのスピード調整ができないなど、様々な不具合が発生します。

司会 カードバトル 星奮・臨死応戦 屍質肉林之行 火輪猪突之行 入場コール

レビュワーハマリ度グラフィック サウンド合計総合判定
ES 9 /10 9 /10 10/10 57/60 A
赤松弥太郎 9 /10 10/10 10/10

 《 ES 》  ハマリ度:9 グラフィック:9 サウンド:10

闇の街に、輝け、綺羅星。

今回紹介する「STARLIKE」は、トランプを用いたバトルシステムが特徴のシミュレーションゲームです。
Ver.2.0x系での難易度は赤松氏の投稿レビューの通り、逆転技「臨死応戦」のタイミングが勝負を決めるピーキーな代物…となるのは「プロ」以降。
「アマ」「セミプロ」なら、多少ミスしても何とかなります。「アマ」でプレイしたら、第弐話は「臨死応戦」を使う前に勝ってしまいました。
加えて、Ver.3.0x以降のバージョンでは、育成・バトルパートをオミットした「ストーリーモード」が追加され、「お話だけを楽しみたい!」という方にも対応できるようになりました。
しかし、「STARLIKE」は、育成・バトルパートに存分に思い入れを込めた方が楽しめる作品です。そう私は感じています。
前作「Kinoko」シリーズが、「心毒値」を溜められるルートを探すのが醍醐味だったように。

育成パートのミニゲームですが、Ver.3.0x系からスピードの調整ができるようになりました。また、ベストの成績の引き継ぎ+HPボーナスが入る「流し」が第弐話の時点で使えるようになり、毎度毎度ミニゲームをプレイする必要はなくなりました。
ただ、日数が長いことによるダレ、成長ステータスの分かりにくさ、実際の戦闘はステータスよりも「星奮」やカードの使い方が勝負を決める点…などなど、赤松氏が指摘した難点は完全に消えているとは言えません。
「育成の効果が見えにくい」のでは、確かに厳しいと言わざるを得ません。※ 実際にプレイすると、「あれっ!? 少しは効いている!?」ぐらいには感じますが。
ミニゲームによる育成は、決まれば効果が高い分、決まらない時に無駄に日数を費やしてしまいます。(セーブ&ロードで対処できますが。)

お金を稼いで高いエサ・いい得物を購入し、確実な成長を狙うのもまた必要です。幸い、金稼ぎのミニゲームはコツさえ掴めばかなり楽です。
特に「靴磨き」では、カードが持ち上がった順に左から「1>2>3>4>5」と並ぶため、狙い目のペアが何回目に持ち上がったかを記憶しておけば楽勝です。(ただし、絵札のペアがない場合は稼げる金額が下がりますが。)
調査したところ、この攻略方法はVer.3.0x以降でも有効でした。

しかし、「STARLIKE」で一番楽しいところは、イベント満載・緊張感満載のバトルパート、そして、「Kinoko」にも通じる奇妙な人たちが織りなすストーリーにあります。
幸い、Ver.3.0xから「ストーリーだけを楽しむ」モードが追加されたことにより、ゲームパートに引け目を感じている人でも障壁なくプレイできるようになりました。
まずは、「ストーリーだけでも見てみるか」ぐらいの気持ちでプレイしてみてください。奇妙な味付けで中身は熱いストーリーは、そんな物語を自分から生み出す本プレイに踏み込むきっかけとなるでしょう。

 《 赤松弥太郎 》  ハマリ度:9 グラフィック:10 サウンド:10

涙、ちぎれた僕らの愛 空に宇宙に有り続ける

※前提知識として投稿レビュー冒頭をご覧下さい。

◆Ver.3がやって来た

 前回のレビューでは育成パートに色々ダメを出し、「第2部に期待」と書いたのですが……
 まさか、製品版でここまで改善してくるとは思いませんでした。
 製品版での改善点はほぼ全てVer.3系にフィードバックされています。主だった改善点を以下列記していきます。

・「流し」の仕様大幅変更
 前回のレビューでさんざんに言った部分で、この改善が非常に大きいのは言うまでもありません。
 Ver.2系で使ってはいけないコマンドだった「流し」が大幅にパワーアップ、前回の修行マイナス10の経験値が得られるようになりました。
 具体的に、最大100(=ステータス1アップ分)の経験値が得られる修行で考えます。
 Ver.2系では、ミニゲームを延々とプレイし続け、最大スコアを連続で引き当ててやっと、5日でステータス+5の効果を得ていたわけです。何しろ「流し」がまったく役立たずなので他に選択肢が無く、リロードとミニゲームをひたすら繰り返す、それでは飽きも来るというものです。
 それがVer.3では、一回最高スコアを出してしまえば、あと4日間流すだけでステータス+4とHP上昇効果、という新しい選択肢が生まれたんです。
 Ver.2ではHPを上げる手段が限られていて、オーバーワークで故障させて快復を繰り返す、三途の川反復横跳び法という非人道的なメソッドが猛威を振るっていました。Ver.3でも一応通用するんですが、それ以外の方法として、故障も快復も運次第という不安定さがなく、仕合直前まで調整が続けられる手軽な選択肢ができたという意味でも大きいです。
 頻繁なミニゲームに気を散らすことなく、戦略的な育成計画に集中できるようになったということですね。
・戦績表示、およびイメージトレーニング追加
 「一回きりの対戦では育成の成果が伝わらない」と書いた部分ですな。
 ステータス画面に新しく追加された「戦績」で、対戦相手の名前をクリックすると、今現在のステータスと得物を使って過去の敵と戦うことができます。
 (つまり、以前の話の敵データもちゃんと実装されてるってことです。……容量の増大を予感させますネ。)
 第壱話で大苦戦したあの赤十字も、育成を重ねるごとに互角に、そして互角以上に戦えるようになっていくのは快感ですよ。
 なお、これで鍛えるのはプレイヤーの能力なので、日数も経過しない代わりにステータスも一切変動しません。悪しからず。
・お仕事に疲労回復効果
 「ハムスタアほったらかしで金を稼いで、疲労回復すらないなんて節子さん鬼畜」と文句を書いたら、早速反映されちゃいました。
 まあ微々たるものなので大勢に影響は与えませんが、それでも「どうせ稼ぐなら集中して稼いで、新しい修行での故障率を少しでも下げておこう」という駆け引きは成立します。
 先述の流し大幅強化により、疲労度の意味合いはVer.2とはだいぶ変わりました(流しでは疲労度は上がっても故障しない、疲労度が高くても故障しなければ仕合には影響がない)が、いつまでも流しで済ませることはできませんからね。
・難度設定が3段階に
 「アマ」と「プロ」、どちらを選ぶかと聞かれればプロを選びたくなるのが人の情。そしてかなりの人が本作を投げました。
 これ、本当に勿体なかったと思うんですよ。もし「ノーマル」と「ハード」だったら、大半の人がノーマルを選んだんじゃないですかね。名前が重要なんですよ。男なんてプライドだけで生きてる種族なんですから。
 Ver.3で難度「セミプロ」が追加になりましたが、「セミプロ」が「ノーマル」だと思ってください。比較的ステータスを上げやすくなったことを加味しても、「プロ」モードはVer.2よりさらにキツくなっています。
 一方「アマ」モードはVer2以前よりずっと簡単になってます。さらにコンフィグで難度設定がいつでも変更可能になったので、投げてた人もぜひプレイしなおして欲しいですね。
・機先ブースト及び星札追加
 これは正確に言うとVer.2第陸話で追加された要素ですが、Ver3では第壱話から登場します。
 星札っていうのは先攻ボーナスですね。敵味方それぞれに、先攻に成功した場合の報酬があらかじめ提示されてます。中にはステータスマイナスの札もあって、先攻すればいいというものでもなかったりします。
 そこで、星奮ゲージを使って機先のベース値を上下させることで、星札を狙って取りにいったり、逆にマイナス札の出ている相手に先攻をなすりつけたり、といった駆け引きがでてくるんですね。Ver.2ではただの運任せだった先攻争いに戦略性が生まれました。
 主人公はその特性上、ゲージが供給過剰になりやすいので、どんどん機先ブーストの方に回していきましょう。
 今のところ敵は機先ブーストを使ってきませんが、それは星奮が強力なので、星奮にゲージを使った方がいいと判断しているからです。後々機先ブーストする敵も出てくるかもしれませんネ。
・新キャラ・スター★ダム子さん追加
 「鉄鋼団には豊乳がいない」という声を受けて、急遽追加されたおっぱいです。
 キャラとしての性能は後ほど述べますが、大きさについては間違いなく鉄鋼団史上最大ですのでご安心を。とは言え自然の摂理に反するような大きさではなく、ちゃんと品のある範囲に収まってます。
 念のため言っておきますが、本人に品があるとは一言も言ってませんのでご注意を。

 一ヶ月足らずでここまで大規模な変更を加えてくるとは……鉄鋼団のフットワークの軽さを見せつけられた気分ですねー。すいませんタカをくくってました。
 おかげで前回のレビューは現在だいぶ的はずれになっちゃったんですが、喜ばしいことじゃありませんか。

◆キャラ紹介~セッちゃんときたない大人たち~

 まあ前回のレビューは、速報性重視だったのであと後々イチオシに推薦することも見据えて、ぶっちゃけ100%では書いてなかったんですわ。
 そのせいでESさん含め皆さんに、「うわキッツいわコレ」という印象を与えてしまったのは反省点ですな。
 確かに第一印象として間違ってないし、可哀想だから描写をマイルドにして欲しい旨のメールが来たのも事実なんですが。しかし本作のウリはそっちじゃないよ、と。
 本作のキャッチコピーは「ロックな童話」でして。
 そりゃあ多少血しぶきは飛びますが、冒頭の昭和ノスタルジックな空気は常にそこにあり、決して失われることはありません。
 話の本筋も、少女・節子と主人公ハムスタアの成長の物語で一貫しており、ブレません。
 彼らは戦う宿命を背負ってしまいましたが、しかし過酷な運命の中にあってもそこでまっすぐ前を見て、立ち向かうこと、信じること、強く生きることといった大切なことを学びます。
 そして彼らは、今まで知らなかった自分のことについても少しずつ理解し、確認していくのです。

来宮節子 来宮節子(きのみや せつこ)
 その本作の主人公、ヒロインにしてヒーローを務めるのがセッちゃんです。
 11歳、女子としてはまさに「三日会わざれば刮目して見よ」という年頃です。まったく、小学生は最高だぜ!!
 登場当初はいささかあどけない子でしたが、この半年で、見る間にたくましく成長しました。

 わずか11歳にして、ダメ親父に代わって家計と家事をすべて切り盛りしてきた、超高性能なお子様です。
 そりゃあ憂さんでなくても嫁に欲しくなりますって! ピクニックのために重箱一杯のおかずを用意してくれるとかあり得ないですって!
 ホント、あの親父には出来すぎた娘……なんですが、彼女の根底に流れているのは父親、そして亡くなった母親から受け継いだ「強さ」です。
 親父はさんざん横暴を働いたに違いないのですが、それでも生まれてこの方口答えひとつせず、かといってイジケもしなかった、というのは並の子どもの精神力ではありません。
 こだわりが強く、テコでも動かぬ頑固さと負けん気も胸の内に抱えています。決して倒れない不屈の心、と言いましょうか。
 死に臨んでなお戦い応じる、「臨死応戦」とはまさに彼女の生き方そのものでもあるのです。

 しかし、どんなに強くても、どんなに高性能でも、あくまでひとりの女の子として描かれてることが、この子の魅力なんだと思います。
 この話が始まる前は、彼女は周りから言われている「おとなしくて良く出来た子」という評価のとおりに生きようとしてきたのです。
 それがスタアライクと関わったことで、自分の内側にある激しさ、「戦いたい」という欲求に出会ってしまった……
 その戸惑い、成長することの「痛み」を、本作は丹念に描いていきます。
 あまりに非情な決断を躊躇いなく下してしまう自分におののき、スタアライクと関わってから変わってしまった、と彼女は振り返るのですが、実はそうではないことも、きっとわかっています。
 スタアライクのせいでもなく、父親の血のせいでもなく、彼女自身の中に戦いの意味はあるのですから。

 この子に萌えとか媚びはいらない、「ここに女の子がいる」感こそが大事なんだ、とボクはNOIEさんに直言したのです。
 言うなればジブリのヒロインが持っているようなあの質量感ですが、敢えて言いたい、その質量感においてはセッちゃんの方がジブリより上である、と。
 そりゃあジブリにはすこぶる高性能だったり、突然覚醒するような女の子はたくさんいますが、しかしそこからさらに一周して、成長していく自分への戸惑いだとか、力を手に入れてしまったことの迷いだとかまでは立ち入って描かれないじゃないですか。そこまで触れなきゃ成長物語ではないですよ。だからあの監督はロリコンだと言われるのです。
 与えられた舞台こそ血塗られていても、演じる役こそ無敵のヒーローであっても、彼女は普通の女の子として、ボクたちと同じように一歩一歩踏みしめながら成長していく……そこに胸打たれるんです。

 彼女にとっての悲劇は、周りに手本になる大人がいない、ということですナ。
 なにせスタアライクという舞台自体が、大人げない大人の吹きだまりみたいなもんでして。セッちゃんも含め、スタアライクに関わる時点で既にどこかマトモじゃないんです。
 お母さんが生きていれば、また違っていたのでしょうが、無い物ねだりをしても仕方ありません。
 せいぜい反面教師として役立ってもらおうじゃありませんか。

来宮正造 来宮正造(きのみや しょうぞう)
 筆頭はやはり、このダメ親父、でしょうなあ。
 セッちゃんをスタアライクに引きずり込んでしまった張本人。娘のハムスタア売って飲み代稼ごうなんて気を起こさなければ、セッちゃんにはもっと真っ当な成長の舞台があったでしょうに……
 そして引き起こされた主人公と赤十字の命を懸けた一戦を見て、その凄まじさに感銘を受け、スタアライクに復帰することを決めました……ってなに他人事なんですか。アンタのせいでしょうがアンタの。
 あまつさえセッちゃんから主人公を取り上げて育てるなんて言いだしたら、そりゃあ観客にブーイング喰らうの当たり前でしょう。その後も懲りずに無断借用しようと目論んでるあたり、もうね、性根が腐ってるっていうかね。
 赤十字戦を見て感銘は受けても、人間としてはまったく成長してない、これが大人の限界ってもんですよ。

 星工(ハムスタアのオーナー)として、かつてはとても名の通った人物だったらしく、セッちゃんも当初は「正造の娘」として紹介されていました。
 柳川も黒藤も彼に因縁を持っているところから考えて、四等や三等級の星を持っていたと見て違いありません。星を育てることについては一切の容赦のなさを見せます。
 ……まあ、スタアライク上の戦績だけではない部分で悪名を轟かせていたという推測も、簡単に成り立つんですが。
 一喝で借金取りを追い返してしまうとか、どう見てもカタギの人間じゃありませんからね。
 妻も亡き今、娘以外に敵はありません。それは威張るところじゃありませんね。
 「娘だから勝てない」という理由じゃなく、ガチでケンカをやってなお勝ち目が薄いのでは仕方ありませんわ。

夜気憂 夜気憂(やき ゆう)
 そしてセッちゃんをスタアライクに突き落としたのが、この憂さん。
 ……「Kinoko」からの鉄鋼団ファンなら、やっきゅんと呼んだ方が通りがいいでしょう。元は一発ネタの野球拳企画で生まれた使い捨てキャラだったのが、「Kinoko3」のプレイヤー投稿企画で発掘され、おまけゲーへの出演を通じキャリアアップ、本作でついにレギュラーになったという、数奇な運命を辿ったキャラであります。
 いつの間にかネコ耳がエルフ耳になってたりしましたが、あぶないキャラは相変わらずです。
 話が進むにつれ、すっかりセッちゃんに姉貴風を吹かせてますが、もともとそういうキャラじゃないからね。猫の肝臓をバラして売った過去が無かったことにはならないからね。

 セッちゃんに良からぬことを吹き込む役を率先して取り組んでる、近所のワルいおっさんです。
 スタアライクで戦うことを吹き込んだのもこの人。ケンカした後家出することを吹き込んだのもこの人。
 家出の宿を提供する見返りに、セッちゃんに自作のゴミ要塞を攻略させるなんて、児童福祉条例が許してもこの俺が許さん!!
 ぶっちゃけ生活不能者で、街に出てきて早々行き倒れになってたところを、よりによって正造に助けられたりしてます。どうせ酒場で食い逃げがバレたんだろうな、と分かってしまうところがイヤです。

 ちなみに、Kinokoシリーズからのカメオ出演で言うと、やっきゅんと後輩は別格として、あと3例ほど見つけました。ドウターは相変わらずカワイイです。
 もちろんあの伝説の超人戦士も顔出ししてます。見た瞬間「もうだめだぁ……おしまいだぁ」気分が味わえるはずです。

黄萓の親方 黄萓(きすげ)の親方
 たぶん本作に登場する大人の中では、一、二を争う好人物だと思われます。
 親父が呑んだくれになってもセッちゃんが生きてこられたのは、ひとえに親方の援助あってのものであり、セッちゃんにとっては命の恩人です。
 新聞配達の中には子どもも少なくはないのでしょう、子どもの扱いはハッキリ正造より慣れてます。
 セッちゃんも当初、「もう一人のお父さん」とさえ言って慕っていたのですが……

 でもコレですよ。賭け事になると←コレですよ。
 武勇伝の数々はセッちゃんも存在は知っていたようですが、スタアライクの舞台に立つということは、自分が賭けの対象になるということで。もう無関係ではいられません。
 「給料全額ツッコんだ」などとしなくていい報告をして、セッちゃんに思わぬプレッシャーを掛けてきます。
 セッちゃんは悩みます。自分のせいで親方に悪影響を与えてるんじゃないかと。違うんですね。この人は元からそういう人です。
 好きだった大人の、イヤ~な部分が見えてくる、これもまた成長です。

中司・メイヤー・千春 中司(なかつかさ)・メイヤー・千春
 で、一、二を争うもう一人が、この人……
 この人、本当に扱いが悪いんですよ。相方のやっきゅんには「パッツンゴリラ」とか言われてるってそのまんまだし。鉄鋼団内部でも、Keithさん曰く「よくあんなキモチワルいの描けるね」という扱いで。
 多少見てくれが悪いからってあんまりじゃないか、とブサイクとしては申し上げたい。そりゃまあ、←のウィンクなんか見るとドキッとしちゃうけどさあ。

 でもプレイヤーとしては、結構好感度高いキャラだと思いますよ。
 正造に主人公を取り上げられそうになったとき、セッちゃんの側に立って仲裁してくれた件もしかり、決めるところでしっかり決める男です。
 なんでも見た目の割に若くて、正造よりはずっと年下みたいなんですよね。それでも臆せず、自分が司会だと誇りを持って対峙したのですから、これもまた職人気質の男と言えそうです。
 そしてクセになる司会の名調子。プレイした人なら「一閃にしてホシを逮捕・拘束・審判・処刑!公太郎税金無駄使いしない!」等の名台詞が思い起こされることでしょう。
 まあ、その名口調で主人公に次々と悪名を付けまくるわけですが……。
 この人はプライベートがまだ明らかになってないので、アラを探される要素が少ない、というのも幸いしてるかもしれません。

 問題は、スタアライク開幕時の曲「Born to die」の台詞部分も、仕合開始の「Let's start "STARLIKE"!」のかけ声も、どちらもKeithさんが担当しているせいで、メイヤーの声はKeithさんの声でしか脳内再生されない、という人がほとんどだと言うことです。
 夏コミでKeithさんと会った人ならおわかりでしょうが、こんなキモチワルい人じゃないですよ。体型は細マッチョだし、ボイスも素顔もイケメンですからね。ホント誤解ないよう。
 こんな誤解が生まれたのはすべて、NOIEさんの策略に違いない。

燕黒と柴様 八房客神(やつふさまれびとがみ)
燕黒(つばくろ)
 続いてはご神体と巫女の漫才コンビ。
 見てくれはただの柴犬ですが、ちゃんと神様です。戦を司る由緒正しい荒神様で、ハムスタアとも人間ともしゃべれます。
 が、所詮はわんこです。荒ぶってるのは主に下半身です。
 いつもは燕黒さんと内緒話をしてますが、ひとたび口を開くと「俺さあ……人間の女……孕ませたんだよね……」と、こんな調子です。しゃべらなければ威厳があるのに、と本犬も思っているんでしょうな。
 しかも件の燕黒さん強姦未遂事件では、わざわざセッちゃんにも聞こえるように襲いかかっていた節があります……セッちゃんの貞操が危ない! 女なら何でもいいのか、そうなのか!?

 とまあ、こんな神様の従者を務めるくらいだから、燕黒さんもタダモノであるはずもなく。
 黒いってーか色々ぶっちゃけ過ぎです。セッちゃんに対してだけなのか違うのかはわかりませんが、ここまで商魂のたくましさをあからさまに見せられたら笑ってしまいます。
 裏表がない、という意味では信用できる人物ですが、柴様に襲われても「あ~れ~」などとノリノリなのは一体どうなんだ、と。いつもあんな調子だと思うと、そりゃあ人を食った性格になるのも無理からぬことかな、と。

松永士文 松永士文(まつなが しもん)
 はい、お待たせしました今月のメガネ萌えのコーナーです。
 本作では見事にメガネは彼だけです。勘違いされがちですが、武器屋店主の天野さんは片眼鏡じゃなくて隻眼ですからね。あの人もなかなかいいものですが。
 いいキャラ揃いの星工たちの中では若干影が薄めの彼に、今回は密着してみましょう。

 スタアライク主催の月紫野活子夫人、評して曰く「噛ませ犬専門の星工で『楽しいやられ役』を作ることに定評がある」「なぜ等星を得ようとするのかわからない」と。
 ……あのね活火山夫人、本人は噛ませ犬専門だなんて思ってないと思うの。
 なぜここまで弱い彼が星工を続けられるのか、彼の星「松風」が八代目まですべて公太郎に殺されているところにカラクリがあります。
 普通に戦っても殺されるだけ、それではファイトマネーはほとんど手に入らないはずです。しかし公太郎の仕合は完全にショー、大口のスポンサーがからんだプロレス興行だったわけですから、彼にも、やられ役としてショーを盛り上げた報酬が支払われていたのではないか、と。
 言っちゃえばヤラセで八百長ですよ。楽しくヤラレてくれなきゃシナリオが成立しないんだから。
 例えば八代目の弩装備なんて、訓練はものすごく大変だったはずですよ。星奮が普通に使えて、しかも弩を四連射なんてタダゴトじゃありませんよ。
 なのに八代目が殺されて二ヶ月もせずに九代目を戦わせているところを見ると、どうも彼の星工房は大規模で、並行して複数のハムスタアを育てていると推察されます。もちろん訓練も並行して……。
 そこまで彼を駆り立てるもの、なんとしても一等星となる資格を得ようとする思いを考えれば、彼がどれほど鬱屈した思いを抱えているか、推し量れるというものです。

 赤十字のやられ役という、クソみたいなシナリオをひっくり返した節子。
 シナリオ通りの勝利に飽き、そんな節子を挑発して勝負に至った鮫島オーランド。
 そしてシナリオ通りの敗北を重ねる裏で、星検儀(ほしあらためのぎ)に何度も挑んでいた彼、松永士文。
 根底に流れていた思いは、みんな一つだったんじゃないでしょうかね。

スター★ダム子 スター★ダム子
 で、問題の新キャラさん。
 まだ本作に登場して一ヶ月も経ってないキャラですが、いやあ、馴染んでますねえ悪い意味で。
 そこら中でテキトーな占いをしてまわり、そこら中で恨みを買いまくっているというのがもう、この作品のダメ人間ベクトルと綺麗に一致しちゃってます。
 やっきゅん曰く、乳の力でたぶらかしている、だそうですが、セッちゃんを出汁にすることで、さらに広い客層をたぶらかし、そして恨まれていくのですね……。

 まだ立ち位置が一定してないキャラですが、将来的には色々とトラブルを巻き起こしていく気がしますねえ。
 なにせやっきゅんが予想外に安定したお姉さんポジに収まっちゃったので、代わって引っかき回していく感じになるのかなあ、と。
 星札の謎は確かにあるんですが、キャラ的に重要ポジションを得にくい感じではあります。

 ん? 期待したほどでかくない? 夢見すぎ。

 ……しっかし、見渡す限りろくな大人がいませんね。
 書くとネタバレするんで書かなかったけど、第壱話から登場してるあの人も、一見紳士ですけど本性ひどいですよ。第陸話を楽しみにしていてください。
 ありゃもう不良なんてもんじゃないわ。裏拳の堂に入りっぷりがヤバい。

 振り返れば、前作Kinokoシリーズはもう、ダメ人間の見本市だったわけで。
 あの伝説の超人戦士だって、開始当初は「ただいまして即おやすみ」という、実にヘドロみたいな生活してたんですからねえ。
 そこで培ってきた経験が、恐らくは本作のキャラクターの人間らしさ……と言うにはあまりに人間くさすぎる何かを醸すことにつながったのでしょう。たぶん。
 本作はどの角度から見てもキャラ萌えの対極に位置します。
 キーワードは質量感。薄っぺらさを感じさせないキャラクター造形を楽しんでもらいたいですね。

◆楽曲紹介

 さて、今回と前回のレビューを合わせて、おおよそ語れる部分は語ってきた気がします。
 本作のグラフィックの良さは言語化しづらいですからね……実際に動いてるのを見ないとね。
 いや、しかしもう一つフォローできてなかった部分がありました。楽曲、これですよこれ。

 もともと鉄鋼団ってゲームサークルでも音楽サークルでもなく、なんとなーく結成された、なんでもアリの仲良しサークルみたいなものらしいんですね。
 鉄鋼団というからにはメタルゥ!!(C.V.立木文彦)なのかと言うと決してそんなことはなく、音楽背景もごちゃ混ぜな感じです。
 ……とは言ってもねえ。南方の正体不明の木の実をかじった勢いで、取り憑かれたかのように「馬っ子! 馬っ子!」と叫び続けるのもどうなんだと。それは音楽ではなくただの近所迷惑ではないのかと。

 そんな経緯を踏まえてるのか踏まえてないのか、とまれ鉄鋼団に新しいサウンド、HENTAIギタリストのKAIさんが加入したわけです。
 かくして三人のバンドメンが揃いました。これでやっと、鉄鋼団でメタルができます!

 NOIEさん: 作曲・シンセ担当 ゲーム音楽をベースになんでも作曲しちゃう人
 KAIさん: 作曲・ギターその他・マスタリング担当 メタル志向でなんでも弾いちゃう人
 Keithさん: 歌詞・ヴォーカル担当 伸びるテノール + つららで人が殺せるカナダの大地で鍛えた実践英語

 ……案の定、出てきた音楽はなんか全然メタルじゃないっていう。手を広げすぎなんですってば。
 今回はそんなKAIさん・Keithさんコンビによる曲2曲、そしてNOIEさんの曲2曲をピックアップして語っていきましょう。

仕合準備画面 ♪Whale wave
 まずはNOIEさんから1曲。戦闘準備画面の曲です。
 本作はとっても和の佇まいを強調してる作品なんですが、意外と和風曲って少ないんです。なんたって育成画面がメリーさんの羊ですし。
 スタアライクが始まれば、まずは「Born to die」がギターでお出迎え、続いてKKコンビの入場曲、そしてWILL'O'WISPとハードナンバーばかり。
 そんな中、仕合の準備をする、このわずかな時間で流れる曲が、とっても和のテイストなんです。
 ……まあ、バックで「イヨォーーーー」と唸ってるだけなんだけどね!

 そんな曲でも、総じて見ると決してコミックミュージックというわけでもなく。
 激しい曲の合間にあって、静かな曲であっても、この曲からにじみ出る緊迫感はなかなかのものです。
 最初は声が気になるかもしれませんが、やがて程よい緊張感を味わいながら、準備作業に集中できていることに気づくはずです。

カラクリ ♪Imitation
 次はKKコンビから、第肆話の入場曲です。
 三味線が小気味よくリズムを刻み、ヴォーカルの合いの手が入り、そしてギターも加わって盛り上がっていく……
 というこの曲、三味線もギターも、楽器はすべて打ち込みなのだそうです。
 紛い物くささを出したかったそうですが、普通気づきません。言われてみれば刻みが正確すぎるよな、という程度。
 わざわざそのためにギターまで生音ではなく打ち込みにするなんて……KAIさんにとってみれば、両腕を縛ったまま戦うようなものでしょう。

 そして後半から加わるKeithさんのラップ。
 と言うよりコレ、完璧にお経じゃありませんか。
 なんでも、鉄鋼団が誇る自家製防音ブース、通称「説教部屋」では、歌詞カードが壁に貼られたまま放置されていることがよくあるそうで。
 暗い・暑い・狭いの三拍子揃った説教部屋で、こんな歌詞カード見つけちゃった日にはチビりますね。ホラーですよ。
 説教部屋が読経部屋になる、という一席でした。

第陸話 ♪I'm on fire
 続いてNOIEさんの曲、第伍話ですっかりポンコツになってしまった主人公が第陸話で復活したときの曲です。
 ポンコツ時の曲「Autumn crocus」がまた鬱々とした曲なもので、とても勇ましいこの曲は非常に印象深いです。
 でも、よく聴いてると……第伍話のトラウマ曲「Toysoldiers like a star」のメロディを借用してるんですよね。

 巷の感想を聞いてると、第陸話の復活劇はアツいとか、燃えるとか言われてるようです。
 でも、ボクに言わせれば、燃え残ってる、くすぶり続けてるものが沢山あるハズなんですよね。
 きっと主人公は、第伍話のことを完全に振り切ってはいないんです。振り切れるわけがない。
 しかし、どんなに悲しくても、どんなに虚しくても、それでも時が来れば前に歩まねばならないわけで。
 結局、背負って生きていくしかないんです。せめてその背負ったものを糧にして、力強く前に進むだけなのです。

 音楽って、時にシナリオよりも雄弁に語るときがあります。
 この演出は、やはりNOIEさんが自らシナリオも作曲も手がけているからこそできることです。

第陸話入場 ♪King of the King
 最後は第陸話の入場曲。
 実はこの曲と上の「I'm on fire」は今年4月、NOIEさん宅にお邪魔したときに試作品を聴かせてもらったのですが、中でもこの曲は、初めて聴いたとき感動のあまりしばらく口がきけなくなるという醜態をさらしてしまいました。
 もともとはKeithさんの「Dies Irae風のメタル」というムチャ振りから生まれた曲だったそうですが、なかなかどうして、美しい曲じゃありませんか。

 そして完成品を聴いたとき、二度ビックリしましたね。
 まさか男女混声にしてくるなんて……。
 歌詞もまた、相手が抱える王者の孤独を切々と歌い上げる、という内容で、それにふさわしい貫禄の漂う傑作です。

 しかし、コイツを乗り越えた今、主人公たちも同じ孤独の中に立ってるんだよなあ……
 思えば遠くに来たものですよ、本当に。

 確かに、各話ごとに1曲以上の歌を書き下ろすなんて、フリゲとして前代未聞の事態ではあります。
 でも、だからイコールスゴイって、それだけではないんですよ。作品の不可欠な要素になっているから、そこに意味があるんです。

 思えばKinoko3、KAIさんの初参戦曲「アトミック・ボーン」は正直、浮いてました。
 曲単品で聴けば素晴らしいし、使用シーンも的確だったのに、Kinoko3全体の雰囲気と馴染んでなかったんです。
 Kinoko3はNOIEさんがほぼ一人で作り上げた作品ですから、当たり前なんですけどね。二人は音作りの段階でまったく違うんですから、本来混じり合うはずがないんです。

 本作でも別に、混じり合ってるわけじゃありません。むしろぶつかり合ってます。
 しかし、お互いに個性のハッキリした曲だからこそ、お互いが互いにインスピレーションを受ける関係が築けたんじゃないかと思うのですよ。
 KAIさんが使用シーンに合わせるように曲を作れば、NOIEさんが曲に合わせて使用シーンを作り替える、そしてKeithさんも2人に合わせて歌を作っていく……
 このゲームにはこの曲が欠かせない、というだけじゃないんですよ。この曲には、この歌には、このゲームが欠かせない、そんな不可分の関係になってるんです。
 とっても贅沢で、羨ましい関係じゃありませんか、ねえ?

 さて、評点ですが。
 もうホント、ボクには文句の付けようのない作品です。
 ……ただ一点、完結してないという点を除けば。
 NOIEさんは「20周年の2019年に間に合うかどうか」なんて書いてましたが、この作品の結末が見届けられるなら、いつまでかかったって構いやしませんよボクは。
 どうか末永く、鉄鋼団が本作の制作を続けていけることを願ってますので。

◆製品版紹介

 フリーでも出し惜しみしないのが鉄鋼団です。製品版でもフリー連載版とほとんど差がありません。
 製品版を買うなら、記念プレミア品とか、寄付とか、そんな感覚の方がハッピーだと思われます。

 よりSTARLIKEを楽しみたい人のための「STARLIKE皇星編 製品版」、近々ダウンロード販売開始です。

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