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■ RainyTower

RainyTower
作者 [ 標準誤差StR さま ]
ジャンル [ ケモノが宙飛ぶ短編SFアクションゲーム ]
容量・圧縮形式 [ 52MB・ZIP ]
製作ツール [ WOLF RPGエディター ]
言語 [ 日本語 ]
配布元 ダウンロード先

RainyTower RainyTower RainyTower RainyTower RainyTower

レビュワーハマリ度グラフィック サウンド合計総合判定
ES 8 /10 9 /10 8 /10 155/180 B
牛人 8 /10 10/10 8 /10
DECOすけ野郎 9 /10 9 /10 9 /10
天ノ原 8 /10 9 /10 7 /10
hoikoro 10/10 8 /10 10/10
赤松弥太郎 8 /10 8 /10 9 /10

 《 ES 》  ハマリ度:8 グラフィック:9 サウンド:8

指がっ、指がっ、何で動かないの!?

今回のイチオシ作品、「RainyTower」は、「マウス一本で操作する精密さ重視のアクション」「WOLF RPGエディター製」と言う点において、「モノリスフィア」と似た印象を与えます。
しかし、実際の操作感覚は大違い。「弾き」を基本とした「モノリスフィア」に対し、「RainyTower」はマウスボタン押しっぱなしでブースト点火と、大きく操作感が異なります。
ただ、どちらも「慣れないと見当違いの方向に行ってしまう」と言う点は一緒。初心者泣かせの操作感です。

また、「RainyTower」では「アイテムを持ち越してパワーアップする」と言うシステム上、最初期の操作感を(あえて)やりづらく設定されています。

  1. 押しっぱなしにしていると、勢いが付きすぎてあらぬ方向に行く自機
  2. 着地前にブーストを忘れるだけでダメージを受ける自機
  3. 勢いよく天井にぶつかってもダメージを受ける自機
  4. マウス操作ばかりに集中して、スペースキーでのスロー化を忘れる自分

…と、自分にアクションの才能が無い事を徹頭徹尾叩き込まれます。

しかし、上記の「床や天井にぶつかったときのダメージ」「ブーストの暴走」は、メンテナンス項目で「エネルギーセル」を付けることである程度は解決できます。
…が、(公式チートを利用しない限り)「何をやっても床や天井のダメージを受けない」「下方向のブースト操作は受け付けない」までのパワーアップは無理です。
ゲーム中に繰り返し言われる「小刻みにブーストを点火する」操作を徹底的に指先に叩き込まなくてはいけません。
大きく横に移動する際にも、「小刻みにブーストを点火」して、小刻みに移動する辛抱強さを持たなくてはいけません。横着してワサビの横にマウスカーソルを置くと、ちょっとワサビの高度が下がるだけで画面下にまっしぐらになります。
このゲームの操作が難しいのは、「マウス位置を固定すると、ワサビが移動するたびに移動方向が微妙に変わる」と言う点です。しかも、「移動したい位置にマウスカーソルを置けば、ワサビはそこに向かってくれる」とは真逆の方向に飛ぶため、押しっぱなしにしていると、どんどん予想外の方向に行ってしまいます。
一方、メンテナンスや研究開発で解決できる操作の問題もあります。最初は、公式の動画にあるようなブースト(左クリック)とショット(右クリック)の同時操作をどうすればできるのか…さえ悩みました。話が進むとオートショットが手に入るんですよね。これで攻撃は解決です。

しかし、プレイ中は「なんて難しいんだ」と思う展開でも、「作戦記録」を見るとそれほどでもないと気づかされます。プレイしている最中は「こんな所でこんなにも死ぬなんて、俺はなんて情けないんだ…。」と思っていた最初のステージも、作戦記録を見るとたった10回でクリアできていました。
逆に言えば、現実時間にすればたった数分のプレイが濃密に感じられる作品です。また、各ステージの仕掛けも「スクロールアウトをなくして、まずは操作に慣れる」「強制スクロールが出てくるので、素早い操作を覚える」「敵が出現しだすので、攻撃・ブーストの同時操作を覚えるかオート連射が買えるまで稼ぐ」と言うようにステップアップもしっかりしています。
操作の特殊さでとっつきづらい印象もある上、登場人物も「ケモっこ」と上級者向けですが、実際の難度としても、取られる時間としても、それほど辛い要求を強いられるゲームではありません。
まずは、コーンさんやホー隊長のアドバイスをこなせるようにちょっとずつ頑張っていきましょう。そういった面でも、3人の軽妙な掛け合いは、緊張を強いられるゲーム展開の清涼剤となっています。

 《 牛人 》  ハマリ度:8 グラフィック:10 サウンド:8

チクショー!(謎わからーん!)

 マウス操作のアクションゲームです。シューティングの要素もあります。
操作性は「モノリスフィア」と似ていますが、カスタマイズにより大幅に変わります。
難易度はそれほど高くなく、また短編であるため、遊びやすい作品です。

 ゲーム性についてですが、カスタマイズにより操作が格段に楽になるため、ゲームが進むほど操作性が良くなります。
しかし、それに伴い、ステージの難易度が上がっていくため、いい塩梅になっています。
 アクションゲームの面白さは、熟練による操作の洗練と思っています。
さらに言えば、その洗練された操作でギリギリの場面を切り抜ける事と言えます。
その洗練をてっとり早く得られる加速装置は良いです。
しかし、より精密な動きができるよう、加速装置のアップグレードは単純な時間延長ではなく、時間の止まり方も強化されて欲しかったです。
そうすれば、ラストももっと難易度を上げられ、それを潜り抜ける爽快感も増すのではないでしょうか。

 物語部分についてですが、ブリーフィング画面でキャラクター同士の雑談が見られます。
これがゲームの盛り上げに大きく貢献しております。
また、ラストの難易度調整にもなっているのは妙と言えるでしょう。

ケモナーの方はもちろん、そうでない人もケモナーになる威力がこの作品にはあります。おっさん好きにはホー隊長はおりますぞ。

惜しいことに、エロ要素はない。あと、絶対はいてない。

ハマリ度:8/10
面白い
グラフィック:10/10
コーンさんレロレロ
サウンド:8/10
場面に合っている

 《 DECOすけ野郎 》  ハマリ度:9 グラフィック:9 サウンド:9

獣(アイドル)となり、ステージのトップを目指せ!

イチオシ、放置していたらほぼ1年ぶりにもなりました。(挨拶)

今回のレビューは諸事情につき、短めです。あと、別にアイドル・コーンちゃんは操作キャラではないので、煽り文はちょっと誇張入っています。

【習うより慣れろ】

このゲーム、バンバン死にます。それが前提のゲームバランスになっています。
ブースターの噴射を続けると、Booster Tempratureゲージがオーバーヒートしてしまうため、適度に回復するまで休む必要があります。
また、勢い良く着地するとHealth Barゲージが減るため、着地時には、常に小刻みクリックを押し続けながら減速をする必要があります。
この2つを覚えるまで結構時間がかかります。慣れればお手のものかもしれないですが。

「適当に飛ばせばいいだろ(カチカチ)」→ゲージが減る→「どっか適当なところに着地、あ穴が」→ひゅうー→死

ということが想定されるので、最初は牛歩の歩みだと思ってちょこちょこ進めていくのが良いでしょう。
最初のステージはせかされないし、死んでもいくらでもクローン(残機)はあるので、何度もトライするのも、乙なものなのではないのでしょうか。

その他

それほど気にならないかもしれないけれど、感じた不満点もちょっとあったので、書きますね。
・ボス戦が面倒
・メインメニュー操作について
この2つは「もうちょっと底上げできたと思うわー」という不満があります。
まず、ボス戦は、戦略性というよりかは所詮ゴリ押しでどうにかいけてしまうので、次回作がある場合、もしくはアップデートで、そこをもうちょっと詰めて欲しいかなー。
あと、メインメニュー操作もマウスでやるのは億劫に感じました。
個人的に、メインメニューの操作は十字キーでやるのに慣れきっていたのでそこは個人的には・・・。

このゲームはより辛抱強い、キャラクターとの雑談が好きな人に向けたゲームでしょう。

追記:
このゲームの正式名称がRainyTowerなので、スペースありの状態で検索したらHPに当たらなかったんですよね。
だから何だ、という話なんですが。

 《 天ノ原 》  ハマリ度:8 グラフィック:9 サウンド:7

水火の攻むるよりも速やかに、のがれがたき無常

ありゃ…!? メチルアルコールって、飲めねえのか…(挨拶)

本作は、マウスドラッグを使ったアクションという事で「モノリスフィア」とよく比較されます。また、激辛チャットで気付かされた点ですが、半任意強制スクロールかつスクロールに置いていかれるとアウトという点で「片道勇者」とも通じるものがあります。
「マウスのボタンを離した瞬間、ドラッグ距離に比例した加速が発生する」モノリスフィアと違い、本作は「ボタンを押している間加速し続け、ドラッグで方向を調整する」という方式をとっております。アクロバティックなマウス操作を要求される前者と、どちらかというと精密さが要求される後者と言ったところでしょうか。障害物や敵を排除する自弾の攻撃判定が非常に小さいという点も、精密さを要求する要素と言えるでしょう。

スクロール方向が上方に限定されているというデザインは、上述の操作性とマッチしていたんじゃないかと思います。マウスカーソルを画面下方から余り大きく動かす必要がありませんからね。
まぁ、主人公ワサビ君の位置だけでなく、マウスカーソルの位置、リアルのマウスの位置、と気を遣うべき箇所が分散しているという悩みはモノリスフィアと共通ですが、マウス+アクションだと不可避の要素でしょうか…。マウスカーソルのはみ出し抑制機能はありますが、私としてはConfig.exeでフルスクリーンに設定しておく事を推奨します。画面が大きいほうがマウスも動かし易くなりますし。

ちなみに、最終ステージはノーマル・トゥルールート共360度縦横にせわしなく加速させられる、それ以前とは一線を画した内容となっております。From the Fourth Wallのここ以外での使い道がわからん

ステージ1はチュートリアル面という事で強制スクロールがありませんが、それでも画面下が即死エリアである点は変わらず、若干突き放された感があります。ワサビの初期装備も弱く、最初はチュートリアルにもかかわらず何度も落下死するハメに。そしてシナリオ上、その記憶を引き継いだまま作戦継続を強いられる彼。死ぬというのはどんな気分だ?

とっつきが良いとは言えませんが、「残機が時間で回復する」「落下死時、スクロールが一旦止まる」といった細やかな配慮のお陰で、ミスからの復帰がさほど苦にならない作りになっております。半端なプレイでもスクラップ(資材)が確実に蓄積されるので、ステージを突破できるまで何度でもミス→集まった素材で装備を強化…の流れを繰り返しましょう。
強化されたブースターの高加速を、マインドアクセラレーターのスロー効果を駆使してさばく…その操作が板についた頃には、チュートリアル面を初期装備で鼻歌交じりにこなせるようになっているでしょう。そういったアクションならではの醍醐味を体験できるのは、本作の優れたデザインゆえですな。

音方面について。効果音の殆どが差の少ないビープ音という点で減点。終始高い緊張を強いられる本作の性質上、音は聴いた瞬間に判別できる位の差異が必要ですわ。
後、BGM素材の選択に若干不統一性を感じたかな…特に1面は練習用に何度も訪れる場所なので、どうも他のステージとの差異が気になってしまいます。

マウスアクションとして秀逸な本作。シナリオ面でも、倫理観が場外乱闘したSF設定をうまい具合に扱っている内容なので、やるならばトゥルーエンドまで頑張ってかっ飛ぶ事をオススメ致します。
とりあえず、ワサビ歩けとか言わない。

 《 hoikoro 》  ハマリ度:10 グラフィック:8 サウンド:10

マインドアクセラレーター、僕も使いたい

RainyTower】今回レビューさせていただきました

アクションであり、タワー…じゃあパズルなのかな?と思ってプレイしましたが、いやまったくそんなことはない
アクション中のアクションでした、王道の
飛び跳ねて上を目指す、という第一目標を目の前に掲げつつ、謎の多い漂流星について調べていくわけです

このゲームの特徴として、どこをとっても一癖二癖ありながらも、しっかりと纏まっていることです
主人公が初期装備、そして進んですぐに手に入るアイテムからして一般的なものとはかなりズレています
筆頭は、どこかで聞いたドラえもんのどこでもドアの構造のような主人公のコンティニューシステムでしょう

強制スクロールに飲み込まれて失敗した際、一定の場所から再スタートできるんですが
その時の主人公は、ワープとかテレポートとかそういうチャチなもんじゃ断じて無く、死にます
死んで、記憶だけクローンに移し替える、そうすれば元通り

…ってオイ!!死んでんじゃん!!ダメだろ!!

───初期プレイ時に感じたこの時の“倫理観”というものについて作中でしっかりと語っているのも面白かったです

その他にも主人公に脳内麻薬を投与させてらくらくプレイ…副作用は絶対にないよ!!(クルー談)
いやはや、僕は何言ってんだこの黄色狐の畜生は、と思いました、ええ、プレイ後はとっても大好きですが
絶対コイツが黒幕だろうと、作るアイテムひとつひとつが超優秀でしかもやたらブラックチック
警戒してなかなか使わない、なかなか死なないように心がけたのは恐らく自分だけではないでしょう

そういう方針で自分から自分を縛るように持っていく難易度の上げかたは凄まじく斬新だと思いました
これの他にも、とても難しいアクションでありつつも救済措置がとられまくっています
しかしそれらのどれも使いたくないという気持ちにさせられるものばかり、特にチート…
自縄自縛という言葉がありますが、うおー!コレ使わずにクリアすれば真エンドとかあるんじゃねーの!!?
と思ったのは決して僕だけではないと信じております

もしかしてあるんですか?ないんですか?それともクイズに正解すれば出てくるんですか!?

閑話休題

キャラクターはわずかにしか出てこないものの、全員が愛着を超えて本当に好きになる人間たちです
主人公のワサビも、無茶すぎるミッションでも全く凹まずポジティブに進んでくれる好感の持てる青年?ですし
上記したとおり超絶優秀なコーンちゃんはこのゲームの万能キャラ…に見せかけて弱点もわりとあるという所がかわいい
天才というより博識で、現場主義のホーさんと反りがあっているんだろうということが会話の流れでとても良くわかります

ストーリーの展開は最近ではよくあるクリアすることで別のエンディングを迎えられるタイプのものでした
有耶無耶にされていた、諦めていたものを、主人公が努力で勝ち取ることで円満にまとめるものです、大好きです
そして、自分にとって、このゲームの最高の盛り上がりは最後の最後ステージです、当然といえば当然ですが
怒涛の勢いで死なないように必至に進みながらもどうしても眼が向いてしまう会話
少し悲しいけれど後腐れはなくワサビが報われる、そんなシナリオでした、疑ってごめんねコーンさんホーさん

このゲームは最初は掛け値なしにゲキムズです、はっきり言ってゲームになんねーぞコレ!!と思ったほどです
ですが、それをしっかりと込みにして進んでくれる丁寧さがあり、強化システムがあり、徐々に慣れていく自分があります
15ステージくらい欲しかった、とても楽しく、終わりが惜しいゲームだと言えるでしょう

・ハマリ度:10/10

このゲームは一度触れると、自分が満足行くまでは辞めたくないという思いに駆られます
そして恐らく、満足が行くのはクリア直前でしょう
高難易度のくせに面倒臭さがないという高いアクション性、深く、かつ伏線を張っていくストーリー
絶対に触って5分で飽きてもらいたくない、最低でも15分は遊んで欲しいゲームです

・グラフィック:8/10

テンポの早いゲームでありながらも、背景やブロックを見逃したりすることのないデザイン
このタイプのゲームで主人公を見失うと高確率で酔ってしまうのですが、分かりやすいわさびくんに限って、そういうこともありませんでした
コーンさんやホーさん、それに後の二人も特徴を捉えられていて、どれも可愛らしいです。
ひとつ言うことがあるならば一枚絵が少ないことですね、わがままなのですが表情だけでなくもっと動きのある皆が見たかったです

・サウンド:10/10

音量調整システムもきっちり整っており、場面にあった音楽チョイスも的確
泣けるシーン、燃えるシーンでの違和感を感じることは一切なかったです
頭を打つたびにガンガン響くのも個人的にはかなりグッドでした、もしくは意図的に足首骨折させたくもなります

余談ですが僕は謎は解けなかったです、鳥頭なので
同じ鳥頭でもホーさんならサクサク解けそうですが、それはさておき

二度書きですが、やはり気になったのがボリューム不足でしょうか
ゲームの質とは関係がないので点数には反映させません、とてもいいED、まとまりかたでしたので
ですがわがままを言うならば、こんなにも面白いアクション性と成長要素
もっと引っ張ってもいい多くの設定、ゆっくりゆっくりと引き出しても構わないほどの魅力を誇っていました
加えて、もう少し長い間、他のクルーや樹の主に対する猜疑心を与えても良かったかも?と感じました
まぁ、ああ、コイツらいい奴らだわ、とすぐにバレてしまうのは性格の良さと言えますが

これホントに無死無脳内麻薬だと何かあるんだろうか…!教えてコーンさん!

 《 赤松弥太郎 》  ハマリ度:8 グラフィック:8 サウンド:9

青空が手招きしてる Alright そろそろ行こうか

 本作のバックグラウンドは割と骨太なSFです。かわいい見た目に騙されてると、結構えぐいことをやってます。
 メインストーリーを楽しむためにも、ぜひ雑談は逃さず回収してほしいですね。一貫したテーマに沿ってストーリーが描かれていることがわかると、ボクのようなアクションが得意でない人でも、クリアまでじっくり楽しめるはずです。
 ただ、若干専門用語が多いところもあり、聞き逃すとよくわからなくなる、という懸念もあるので、ボクの独断と偏見による解説を付けた用語集を付けておきました。
 ある人のレビュースタイルを真似したわけではありません! 本当です、信じてください!
 プレイ前のみなさんにも、参考になれば幸いです。

母艦
母艦  ワサビたちが乗ってきた宇宙船。
 未踏宙域探索のため出発したが、ワープの際事故を起こし、通信機能と航行機能が故障。惑星に不時着した。
 探索用のため、外見上目立った兵装は見当たらないが、長期滞在に対応したプラントを完備、短距離の転送装置も備えている。
 高度にオートメーション化されているため、3人で操縦可能。とはいえ、操作は十分に複雑そうだし、今回のような事故発生時には幅広い知識が必要なため、コーンのような優秀な人員がいない限りは、より大人数で運用するものなのだろう。
惑星
 ワサビたちが不時着した惑星。
 大気の組成や気温が奇跡的にワサビたちの母星と同一だったため、選択の余地無く不時着した。
 しかし絶え間なく降り注ぐ雨はアルカリ性で、ワサビたちにとっては猛毒、母艦を少しずつ浸食している。太陽発電も見込めない。
 そのくせ、土壌はアルカリ以外の金属をほとんど含んでおらず、母艦の修理に必要な資源も確保できなかった。
 不時着地点は、なだらかな山が続く地形。どこかに海があるものと思われるが、上記事情から母艦周辺しか探索できていない模様。
 不時着地点の近くにそびえる巨大な樹木。本作の舞台。
 これほどの雨にもかかわらず、地面には草しか生えておらず、他に木が見当たらないこの地帯で、2000mを超える高さはかなり目立つ。
 梢は雲の上へと伸びており、地上から目視することはできない。なにやら花のようなものがあるらしく、その調査と回収が「オペレーション・レイニータワー」の目標である。
 幹の中には空洞が広がっているが、根元から雨と同じ成分のアルカリ性毒液を分泌している上、未知の防衛システムもあるらしく、「雨宿り」には不適当。
E.A.D.
 Emergent Avoid Device(緊急回避装置)の略。本作のバックボーンの中核となるシステム。
 危機的状況に陥ると肉体を瞬時にテレポートさせる……のでは無く、記憶をコピーしたクローンを送り込む、という動作原理。あらかじめクローンを用意しておけば、即時復帰して作戦を継続することも可能。
 元の肉体はクローン起動後に安全に処理される。多分資源として有効活用されるのだろう。
 必要なのは船員の生体サンプル、そして記憶情報。記憶情報は電子化するためバックアップ可能だが、生体サンプルは本人のものを決められた手順で用意する必要があり、なんでも良いというわけにはいかない。
 この装置の確立により、戦争は大きく様変わりしたらしい。

 船員の生命維持装置と言える中核システムで、500年前から探索船に標準搭載されている。
 だが、安定運用できるようになったのは50年くらい前のことらしい。それ以前の旧型装置には様々な問題があった。
 あらゆる船内装置の中で最優先で維持するため、単独での動力確保と資源収集が可能なのだが、過酷な環境では暴走してしまう不具合があり、惑星破壊兵器(デス・スターみたいなの)が出動するハメになった。
 他にも、後継クローンが起動する前に前の肉体が処理されてしまい、復帰に失敗したりする不具合も初期型にはあったらしい。
有機物還元システム
 ワサビたち生存の要。有機物であればなんでも生成できる、夢のプラント。
 応用範囲は食材に限らず、紙や服の修繕まで多岐にわたる。おそらくEADのクローニングも、装置は別駆動だろうが原理としては同じだろう。
 応用範囲が広すぎるため操作が難しいようで、パラメータを間違えると、ニンジンを作るつもりがマンドラゴラになったりするのが難点。
 効率が非常に良いらしく、今のまま引きこもっていても、ワサビたち3人がつましく生きていくには十分な資源が存在しているらしい。

 ……が、ちょっと待ってほしい。
 「還元システム」と言うからには、還元する元の素材が必要なわけで。
 不時着地点周辺には草が生えているようだが、母艦は岩肌の崖の上に固定されている。
 つまり、引きこもっている限り、素材として使えるのは母艦の備蓄分以外には、ワサビたちの廃棄物、紙ごみや生ごみ、抜け毛等の老廃物、そのほかくらいであろう。
 鎖国期の日本を連想させる、高度なリサイクルシステムが完成していると思われる。
 完全に余談だが、水木しげるは幼少期、ボール紙を馬糞紙と呼んでいた時代に、いつか自分も人間の(自粛)を使って紙を作り、世界の人々から尊敬されたいと思っていたらしい。
W.G.P.
 Wasabi Ganbareru Pointの略。
 母艦の高性能コンピュータが独自のアルゴリズムで算出している、らしい。ダメージを受ける毎に減っていき、枯渇すると耐衝撃システムから溢れ出したエネルギーが暴走して、全身の骨がゼリー状に溶ける、らしい。士気に関わるためワサビには非公開にしている、らしい。
 直後にコーン・ホーの冗談だとわかるのだが、忘れた頃に、雑談の1つがWGPを解放条件にしていることに気づき、「あれ? WGPって何?」と困惑するプレイヤーが多い。
 ぶっちゃけると、Healthの別名。HPのこと。
 おそらく、EAD起動時にHealthが全快しないことの言い訳としてWGPという名前を付けたが、わかりにくくなってしまったので止めた、という経緯だろうと推測。だとすれば好判断である。
マインド・アクセラレータ
 ゾーンに入ることができるオクスリ。コーンの試作品。
 動作原理からしてアレで、「使いすぎてもバッドエンドにはならない」と説明されても「ホントかぁ!?」とメタを疑ってしまう人はボクだけではないと思う。
 が、実際無害であり、むしろ使用が推奨されている。意地を張らずにどんどん使おう。
 多分未使用だからって何も起きない……はず。
チェス
 ホーが得意とする、二人零和有限確定完全情報ゲームの代表例。おそらく我々の知っているチェスと同じもの。
 SFとチェスと言えば、やはり「2001年宇宙の旅」でHAL9000がクルーとチェスをしていたシーンの印象が強烈。HALは相手を見ながら「手抜き」をして、五分五分の勝負を演じていたという設定がある。現在のコンピュータチェスはグランドマスターに完勝するレベルに到達したが、まだそこまで高度な技術は手にしていない。
 他にも、宇宙戦艦ヤマトで古代進が将棋盤をひっくり返すシーンなど、典型的な退屈しのぎとしてスペースオペラで登場する。
 ワサビたちはまったく退屈はしていないのだが、おそらくそうしたシーンのオマージュであろう。
不老化技術
 1000年以上前に確立した技術。これにより、ワサビたちは成年に達して以降、老衰することが無い。
 導入当初は様々な反対意見もあったが、ワープ技術確立前の宇宙開発で使用が始まり、瞬く間に民間に広がった。
 その代償として、極端な人口抑制政策が採られており、高額納付者か宝くじに当たった者だけが子どもを残せる。
 現在も宗教的・思想的理由から不老化を拒否するナチュラリスト団体は複数ある、とのこと。
ワサビ・カムボーン
ワサビ  銀河辺境探検隊の探索官。生まれてまだ100年の若輩。
 アカデミーを卒業したばかりのニューフェイス。研修が終わって最初の本格的任務でとんでもないことになってしまった。

 両親ともに銀河辺境探検隊に所属していたが、彼が物心つく前に行方不明となった。
 しかし、彼が銀河探検隊を志望したのは、両親に対するノスタルジーというよりは、彼自身の宇宙に対する好奇心の方が強い。
 自分が宇宙が大好きなように、両親も好きだったのだと思うと、とても恨む気にはなれない、という。
 探検を続けているうちに、もしかしたら広い宇宙のどこかで、ひょっこり会えるかもしれない、とのんきに構えている。

 生来まじめで前向き、のんびりとした性格なのだが、チームの2人の言動にはさすがに振り回されっぱなし。だが若いが故に順応性は高く、割と本人も楽しんでいる。
 好きな食べ物はニンジン。趣味は読書と釣り。
 学生時代は高飛びが得意で、「高飛びのワサビ」と呼ばれていた……なんかヤな渾名である。
ホー・クロー
ホー  ワサビたちの隊長。
 150年ほど前に入隊し、つい最近まで自衛部門の前線で戦っていた。
 開拓団の護衛や災害救助、バイオハザードの鎮圧等々でずいぶん鳴らしていたようだ。
 が、ジョブローテーションにより、本人の希望にかかわらず探検隊隊長に。

 自衛部門時代から鍛え上げた肉体派で、指揮能力も高い。判断も的確かつ素早く、責任感も強い。
 探検隊隊長としても適任……なのだが、豪放磊落というか、いいかげんな性質のため、書類作成などのデスクワーク・ルーチンワークにめっぽう弱い。
 そのくせ責任感の強さから一人で背負い込むところがあり、抱えきれなくなって爆発する、という残念な人。
 好きな台詞は「極限状態ではユーモアを無くした者から死んでいく」。そのせいか、本作では空気を読まない悪ふざけも目立つ。
 100年前に、とある人物から教わった言葉らしい。

 腕に羽が生えているが、伊達では無く、飛べる。
 体を使うことが何より好きで、趣味はモトクロスや雪山登山など、アウトドア中心。
 おそらくコーンよりも年下だが、コーン以上に年寄りじみた言行が目立つ。
コーン・シッポスキー
コーン  この隊の技師。御年1000歳。
 不老化技術実用当初の話を、まるで見てきたかのように語っており、実用化付近の生まれと推察される。

 あまりに長く生きてきたため、カバー領域はきわめて多岐にわたる。
 機械工学、情報工学、材料工学、生物学、医学、薬学、精神医学、あらゆる分野で活動していて、料理も1人で切り盛りしている。この人がいなければ、3人で探検隊は組織できなかっただろう。
 隊長のホーもまったく頭が上がらない、陰の実力者になっているのも頷ける。
 もちろん、本人の不断の努力あってのものであり、少しずつできることを増やしていった結果だと言う。

 ホーと組んだのは最近のことだが、非常に息の合ったコンビネーションを見せる。
 ……おそらく、彼女並みの有能なサポートがないと、爆発するのが目に見えていたからこその人事なのだろう。
 コーンとしても、あまり上下関係を気にしないホーだからこそ、のびのびとできる部分もあるのではないか。
 基本まじめな性格ではあるが、ほんのりマッドなのはご愛敬。

ハマリ度 : 8 / 10
 救済アイテムが多数用意されており、各人に合わせた難度でプレイできるのが良い。わざわざチートをせずとも、狐業と緊急回復装置を開発しEADレベルを上げれば、だいたいの人は何とかなるだろう。より高難度で挑戦したいならマインド・アクセラレータでも封印すれば良い。
 問題は、開発のための資材稼ぎに魅力があまり無く、繰り返しプレイが作業的になるところにある。システムの土台はしっかりしているので、もう少しバリエーションを付けられればボリュームを増やすことも可能だろう。せっかく木をモチーフにしたのに、枝分かれがないのは寂しく感じる。
 せっかくだから、各エリア毎のハイスコアは何らかの形で付けてほしい。アイテムによる強化が少ないほど点が上がるようなシステムにしておけば、繰り返しプレイも楽しめるのではないか。ゲームオーバーのヒントにももう少しバリエーションがほしい。
グラフィック : 8 / 10
 簡潔な絵柄で、誤解の余地が無い。探索画面はやや寂しい印象もあるが、立ち絵は表情豊かで飽きさせない。
サウンド : 9 / 10
 会話のポポポがとても良い味を出していて、実にレトロな雰囲気。選曲も的確。

本作の印象を一言で言うと?
 第一印象は、「モノリスフィア + 片道勇者 + ケモ成分かあ、あざといなあ」というものでした。
 しかし、さすがにウディコン優勝作品。プレイすることで、細かな調整を積み重ねストレスを無くし、アイディアをストレートにプレイヤーに伝えるよう、腐心していることが感じ取れました。
 惜しむらくは、そのスケールの大きなバックボーンに対して、コンパクトにまとまってしまっていること。
 なので今、一言で本作を言うならば、こうです。
 「さらなる可能性を秘めた、大樹の結実」と。

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