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■ Ascent DX

Ascent DX
作者 [ Johan Peitz さま (Apskeppet) ]
ジャンル [ レトロ風メトロイドヴァニア ]
容量・圧縮形式 [ 12.8MB(解凍後)・Steamからダウンロード ]
言語 [ 英語 ]
備考 [ Steamクライアントが必須 ]
配布元 ダウンロード先

Ascent DX Ascent DX Ascent DX Ascent DX Ascent DX Ascent DX

レビュワーハマリ度グラフィック サウンド合計総合判定
ES 8 /10 8 /10 9 /10 48/60 B
赤松弥太郎 8 /10 7 /10 8 /10

 《 ES 》  ハマリ度:8 グラフィック:8 サウンド:9

そして男は星になる

「Ascent DX」は、短編のメトロイドヴァニアです。プレイ時間は初見でも1時間弱。操作系統もシンプル。初期は方向キーとジャンプのみ(のちにダッシュボタンが追加)。「とりあえず動かす」ためのスキルはさほど必要ありません。
スキルを要求されるのは、能力を手に入れるたびに複雑になっていく操作感、その集大成となる最終盤、それに加えて迷わないための記憶力となります。

そう、本作は(意図の有無は不明ながら)迷いやすいマップデザインになっています。その第一の原因が「マップの解禁が遅い」点。中盤から後半に差し掛かるあたり…Power cellを4~5個集めた場面でやっと解放されるのです。
それまでの探索は、本当に己の記憶しか頼りになりません。マップが解放されるPower cellのある場所に行くためには、あらかじめある程度の操作ギミックを手に入れておく必要があります。
マップが解放されても、その時点では既達の通路が見えるのみ。未達の通路を表示できるようになるのは、本気の最終盤。その時には、最終の最難関マップ以外はほぼ既達となっている可能性もあります。

そして「能力を手に入れるたびに複雑になっていく操作感」も厄介者です。特に操作感で戸惑うのが、序盤に手に入れる急降下(空中でジャンプボタン)。
「高所からの落下ダメージを無効化」「キノコのジャンプ台を起動」と重要な役割を担った操作ですが、とにかく暴発しがちなのが困りもの。空中でジャンプボタンを押すと否応なく発動するため、ジャンプボタンを2回認識されたり、ダッシュボタンと間違えることで思わぬ場所で急降下…大抵はやり直し、最悪針床に落ちてリスポーンとなります。

本作は「能力を手に入れるごとに行ける場所が広がる」メトロイドヴァニアらしさにのっとって作られていますが、その妨げとなるのが先述のマップの解放の遅さ。マップが手に入る場所は多数の能力を駆使しないと行けない場所。能力によって道が広がるアクションの楽しみである「この能力であそこを越せる!!」という快感より、「どこで使える奴だっけ!?」と迷うストレスの方が上回ってしまいます。
そう、本作は迷いやすい上に「迷う」ことが楽しみとなりづらいのが何よりの問題点なのです。
セーブは1か所のみ。「一度落ちると戻るまでトラップ満載の道を遠回り」というルートもあり、それを越すためにかなりの屍を積む必要があります。「越せる能力がないのに後戻り不可」という詰みルートは流石に存在しませんが、「一度ミスるとそれまでに越した数マップを全てやり直し」なデストラップ満載ルートがほぼ全てを占めます。

そんなこんなで、うっかりミスで死に、越せる能力が分からなくて死に、数フレームの操作ズレで死に…やっとたどり着いた結末で感じたのは、正負混ぜこぜの疲労感でした。
何しろ、ストーリーはAll Englishであるため、ほぼ理解していません。「母星に残してきた主人公の家族」「幸せだった母星の暮らしがほの見える通信内容」「白い光が語るこの星の歴史」などフレーバーは数多いですが…正直、それらはフレーバーに過ぎないのでしょう。当の主人公自身が、ストーリー最終盤になると「記憶が薄れていく…」と言っていますし。
結末を見ても、本作はストーリーはあくまでフレーバーです。コンパクトなメトロイドヴァニア・低解像度ドット絵が描くSFサバイバルに注力した作品であることが分かります。
私が本作に最も衝撃を受けたのは、END後に「Time played:0:44」と出た瞬間でした。最終盤の細かいアクションの連続ですっかり疲弊し、かなり時間を長く感じていた私…。その疲労を味わった時間は、やり直しや休憩を含めても1時間にも満たない…。そして、その下に書かれていた「Resurrection(復活=死亡回数):69」という数値が、確かに本作で味わった苦労と疲弊を物語っていました。
皆様は、本作でどのようなプレイスタイルを求めるでしょうか。とりあえずのクリアまで? より効率的かつ早いプレイ? 皆様の趣味に合うかは流石に保証できませんが、「ちょっと触ってみよう」という要求には確かに応えるアクションです。

 《 赤松弥太郎 》  ハマリ度:8 グラフィック:7 サウンド:8

やるぞ今こそ いのちがけ

 記録は塗り替えるもの、ではありますが、この記録を今さら更新するなんてねえ……。
 本作の解像度は64×64。イチオシ史上最低解像度、なんと17年ぶりに更新です。

 64×64というのは、本当に冗談では済まない低解像度です。
 前記録保持者ですら、レビューでは「綺麗とは言えない、目に悪い」「素晴らしいが本末転倒」「釣り」と、解像度を下げる意義が問われていたのです。
 それのさらに1/5という激烈低解像度では、

スタート画面
 ふと主人公を見失うことだって、ざらにあります。

 実際自分で動かせば見失わない、という言い訳が通るか怪しいレベルで見づらいです。
 攻略を進めると、諸事情で主人公がだんだん緑色になっていくため、ますます背景に溶け込みやすくなっていきます。

 こんな解像度を採用する理由は、いまどき技術的制約などであるはずもなく。
 ただの趣味か、この解像度でなければできない表現の追求か、どちらかまたは両方のはずです。
 本作は、まずこの解像度ありきですべてが設計されています。

赤スライム
 本作に登場する敵は、この赤スライムただ一種類です。
 行動パターンも、ただ天井と床を往復するだけ。近寄ってきたりはしません。
 主人公以外の動くキャラクターを、できるだけ減らしているのです。訳がわからなくなるから。
 一方で主人公側も、弾を撃ったりはできません。
 終盤でダッシュを修得することで、やっとスライムをひき殺せるようになります。

死亡 復活
 そんな平和な惑星なので、主人公の死因は、プレイヤーの操作ミスによる落下がほとんどです。
 難易度自体は決して高くないんですが、操作がシビアな難所もあり、初見で一発クリアできるほどヌルくはありません。
 リカバリは簡単で、チェックポイントである青い灯火から即再開、ペナルティも何も無いのですが……
 主人公が「何が起こった!?」「ありえない」「気分が悪い」と非常にネガティブな反応をするので、心情的にはあまり死にたくないですね。

最終形態
 だって、主人公がお労しすぎるじゃありませんか。
 この星の「何者か」に引き寄せられて宇宙船が難破、というスタートだと、なんとか元の場所に戻るのがゴールだと思うじゃないですか。
 ところが、探索のために強化を進めるほど、主人公は人間の域を超えていってしまい、最終的にハルクもびっくりな緑色になってしまうのです。
 まあ、元ネタのサムスも、モーフボールは明らかに人間業じゃないと見なされ、そこから鳥人族のDNA云々の設定が生えてきたので、リスペクトと言えなくもないですが。
 なっちゃったからにはもうネ、帰れないのですよ。

 おそらくはこの変化こそが、低解像度の狙いが最もよくわかる場面でしょう。
 全身モザイクみたいなグラフィックだから、とても見せられないような状態なんだろうと想像するのです。
 たしかに、高解像度のグラフィックでは表現できない効果があります。

 がしかし、ここまで解像度を下げなくても表現できたのではないか、という疑問はやはりつきまといます。
 「低解像度のメトロイドヴァニア」という一言以上の魅力が本作にあるのか、というと……

ハマリ度 : 8 / 10
 電池を取るたびにスタート地点に戻らなければならない作りが、かなり鬱陶しい。ファーストトラベルなどなく、地道に戻らなければならない。
 マップはさほど広くないが、マップ機能が解放されるのが2個目の電池を取った時で、初見プレイだと先行き不安が長引く。電池の場所は難しくはないが、見落としてしまうとなかなか2個揃わず探索が進んでしまうことがよくある。
 「本作ならでは」と言える特徴は低解像度に集中していて、本作固有の経験は良くも悪くもあまり無い。ストーリーのオチの付け方も、好みは分かれるだろう。
グラフィック : 7 / 10
 いかに素晴らしいドットだったとしても、結局見づらいという時点でゲームのグラフィックとして評価が厳しい。
 非英語話者にとっては、文字の読みづらさもだいぶきつい。文字数圧縮のため端的な物言いになってるので、少し読み落とすとストーリーがわからなくなる。
サウンド : 8 / 10
 わずか数曲だが、丁寧なFMサウンド。安定感はあるが、探索が長引くほど聞き飽きも出てくる。

 手軽に遊べるメトロイドヴァニアとして、良くも悪くもストレートな作りです。
 主人公が心折られていく過程が好きという方も、どうぞストーリーをお楽しみ下さい。

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