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■ Ib

Ib
作者 [ kouri さま ]
ジャンル [ ホラーアドベンチャー ]
容量・圧縮形式 [ 35MB・ZIP ]
製作ツール [ RPGツクール2000 ]
言語 [ 日本語 ]
配布元 ダウンロード先

(補足)
2012.05.12:現在の最新バージョンは、ver1.05です。

Ib Ib Ib Ib Ib Ib

レビュワーハマリ度グラフィック サウンド合計総合判定
ES 8 /10 9 /10 10/10 194/210 A
DECOすけ野郎 9 /10 10/10 10/10
牛人 9 /10 10/10 10/10
ろっとん 10/10 10/10 10/10
赤松弥太郎 7 /10 8 /10 9 /10
天ノ原 9 /10 9 /10 10/10
アンサンブル 9 /10 10 /10 8 /10

 《 ES 》  ハマリ度:8 グラフィック:9 サウンド:10

初プレイ以後、ギャリー死亡ENDが見れない自分がいる。

本日のイチオシ「Ib」は、現在、数々のキャラクター展開がなされ、フリーゲームと言う枠内では収まりきれない話題性を獲得しています。
キャラ性に注目が集まっていますが、それはゲームが生きているからこそ。キャラから入った人はぜひ本編を遊んで欲しい…そんな作品です。
キャラ展開で注目されているのは、イブ・ギャリー・メアリーといった人型の登場人物ですが、それ以外の絵画たちこそ、ゲームの中では注目していただきたいです。

本作は決してキャラだけのノベル作品ではありません。簡単(メモを取り、周りを隈なく調べれば誰でも解けるレベル)とはいえリドルが多数ありますし、ダメージを与えるお邪魔キャラ、一発死もありうるトラップなど、GAME OVERとなる危険さえ存在します。
そして、最も難しいのはマルチエンドのフラグ立て。読後の味わいも含めバリエーションの多いEDですが、道中の選択肢によってキャラの好感度を高めないと、ベストエンディングにはたどり着けません。
ED集めのモチベーションを高める手段として、最新版では既読フラグを継承した周回プレイ、そして2周目以降の特別ダンジョンが追加されました。

ただ、この周回要素、RPGツクール2000製であることの欠点が浮き彫りになる要素でもあります。
ご存知の通り、RPGツクール2000には既読フラグを保存しておくグローバルセーブがありません。うかつな所にセーブデータを作ると、せっかくの既読フラグが消えてしまう事態になります。
先述の通り、「Ib」はED分岐のフラグ管理が厳しい作品です。RPGツクール2000のセーブシステム(イベント途中でセーブできない、工夫しないとどのマップのセーブかすら分からない)では、ED分岐の要となるシーンがどこなのか分かりづらく、最初からプレイせざるを得ない場面も多くなります。
以前に投稿レビューのあった「7DAYS」と同様、この点はRPGツクール2000の仕様によるもので、ツクールXP以降のように改造できない以上、ユーザの努力ではどうしようもありません。

こんな欠点を乗り越えてでも、RPGツクール2000を選択した理由は何でしょう? 同系統のツクール製ADVである「青鬼」「魔女の家」は、グローバルセーブの使えるツクールXP, VXを利用していますし、EDの分岐自体もそれほど多くありません。
その理由は、グラフィック素材をALL自作にしている点が第一ではないか、そう私は考えています。
ホームページや公式通販サイトにある絵を見ても、kouri さまは高解像度でも充分映えるグラフィックを描ける人です。
ただ、それが細かく動くキャラチップや、隣同士との整合性を考える必要があるマップチップとなると、話は別。ドット打ちは、タブレットで描ける一枚絵とは比べ物にならない労力が掛かります。
アレだけのグラフィック素材をドット絵に落とし込み、生き生きと動かせるようにしたkouriさまの手腕こそ、まさに驚嘆に値します。
先ほど挙げた「青鬼」や「魔女の家」でのキャラチップは、RTPの改造や高解像度でも使いやすい「First Seed Material」などのフリー素材を使用しています。
ツクールXP, VXの解像度でも違和感無く動かせる自作素材を持つゲーム、しかも無料のゲームは、今現在でもなかなか例がありません。

先述のように、キャラから入った人は、ぜひ本編を遊んで欲しい作品です。イブ・ギャリー・メアリー以外にも、個性の強いキャラクター(ただしほとんど絵画)がそろい踏みです。
逆に、当サイトを見ている方のように「キャラはどうでもいいから、ゲームそのものを楽しみたい」という要望にも充分すぎるボリュームがあります。メモ必須のリドル、触れるたびに驚きやホラーの詰まった仕掛け、多数に分かれたエンディング…と、やりこみに応える作品でもあります。
ただ、それらの要素を何週でも繰り返せるかと言うと…私としては流石に首を傾げざるを得ません。こういう「驚き」が第一要素となるゲームは、周回プレイするたびに「飽きる」と言う最大の欠点があるので。
そういう意味では、ある程度周回プレイして、ギャラリーが集まったら「もういいかな」と思える作品です。
本当に、ベストENDはどうやったら見つかるのだろう。今まで攻略サイト全く見てないからなぁ…。

 《 DECOすけ野郎 》  ハマリ度:9 グラフィック:10 サウンド:10

ギャリーさんのカッコよさを見るためだけでもプレーする価値はあります

【DECOすけ野郎、美術の心に触れる】

美術館。子供の時は、そこそこ親に連れられて行ったのですが退屈で仕方がなかったわけですね。
絵とかどうでもいいから、早く家に帰ってプラレールで遊びてえ!と。

その後、小学校に入ってから子供絵画教室に通わされたんですよ。
自分の意志で行ったわけではないので、やる気ゼロ。
よく怒られることも多かったわけです。
電車の絵が描きたかったのに、花の絵ばっかり描かされるのが何より嫌でした。
花なんかどうせ枯れちまうだろ、描いていて何が楽しいんだコノヤロー、
と思っていたわけです。そのせいで一時期絵というものが嫌いになりまして、随分疎遠になってしまったものです。

自分のことしか書いていないじゃないか!
大事なのはここからなんだよ!

時は過ぎ、大学時代に絵画の歴史に関するクラスを受講してから、絵に対する考え方というものが改まったわけですね。
絵には物語があり、画家の生き様があり時代背景がある、と。
その絵が生まれたのは、何らかの意味がある、と。
何故その題材を描こうと思ったのか、どうしてそのような画風を選んだのか、どうして画風が年数がたつたびに変化していったのか。

今まではあまり興味が沸かなかったのですが、そのものの背景とかを知ると面白いんなあ、と。
絵を観るということは、それを創りだした人物の心に飛び込むようなものなのでは、と思います。

今回、このゲルテナという方は芸術家としてどのような人生を送ってきたのか。
何を思い、絵を描き続け・・・と、そういうわけで「Ib」です。

【ゲームシステム】

メインは謎解きと美術館の探索。
戦闘シーンとかは一切無く、理不尽なゲームバランスではないので、ADVゲーム嫌いの方でも割合やりやすいでしょう。
特定の机を調べることで、セーブが可能です。
イブのライフ代わりとなるバラは、水に活けると回復し(特定の壺は、一度使用すると消えてしまう)、最大5回までダメージを受けることができます。それ以上食らったらゲームオーバー。
初見では結構死ぬと思いますが、慣れれば死亡回数は減ることでしょう。

【エンディングについて】

このゲームは、最新版アップデートに追加された3つのものを加えて全部でエンディングが7つあります。

まずは、ヒントを見ない状態でプレイを進めて行きましょう。
トゥルーエンドに到達することはおそらく無いでしょう。
ビターなエンドに到達することだと思われます。
無理もありません。トゥルーエンドに到達する条件は、結構複雑なのです。

このゲーム、特定のエンドに到達するためには 「ある特定の箇所で特定の行動をする」
「特定の箇所で、ギャリー・メアリーに対する好感度の変化が発生する(好感度の高低によってもED分岐する)」
などのフラグ管理を立てていく必要があります。
つまり、このゲームの真相を知るためには、周回プレイをすることが前提となっているわけですね。

いくら理不尽な即死は少ないとはいえ、細かいフラグ管理が求められるので、考えて進めて行かないとダメです。
それにしても、トゥルーエンドへの条件、結構厳しくないですかね。
特定の箇所でしくじってしまったら、その場所で仕切り直ししないといけないわけですし。

普段はADV(主にサウンドノベル)をプレイすることが多いのですが、読み飛ばしやイベントスキップが出来ないゲームでマルチエンドなのはどうか、というのは人によっては評価が分かれると思います。
そういうのが苦にならない方は気にならないと思いますが。

【Ib最恐ベスト3】

このゲーム、ホラー描写もそれなりにはあります。ですが、キツい描写が少ないので苦手な方でも大丈夫です。 人体破壊とかそういうのを求めている方は

お前くらいしかいねえじゃねえか!
▽てへっ

でも結構怖いですね、このゲーム。
というわけで唐突にランキング。

3位:うごく絵本

環境によってはエラーが出てしまい、進行不可能となるのでスキップされてしまう可能性もある「うごく絵本」。

唐突に始まり、唐突に終わる謎多き残酷なお伽話。最後までひと通り遊んでまず気になったことが
「そもそも、この動く絵本とは何だったのか?」
ということでした。後を引く怖さなんですねー。平和だったはずのお遊戯会が、まさかあんなことになってしまうとは!

2位 絵画サスペンス劇場

「誰が嘘をついたか」というアレです。このギミックを解かないと先に進まないといけないわけなんですが、戻ると・・・
Oh My God!な、なんてことだ!早くこんな場所を出よう!

1位うさこちゃん部屋

うさぎって、こんなに怖いものだったんですね。その後のシーンの切なさが泣かせる。
ふわふわなうさこが・・・ほら、あなたの後ろにも・・・う、うわぁーーーーーーーーッ!

【おわりに】

何でこのゲームがこれほど人の心を惹きつけるのか、ということについて考えてみました。

それは世界観、音楽、ゲーム性の良さ(フラグ立てが面倒な箇所もあるが…)、キャラの魅力だけではなく「安直なエンディングを持って来なかった」ということですね。
何故この世界では3人一緒で出られないのか。
それが初めてわかった時のこの怖さ、物悲しさ。
そういう要素が、やはり魅力をよりいっそう深いものにしているのではないのでしょうか。

あなたのハートには、何が残りましたか?

 《 牛人 》  ハマリ度:9 グラフィック:10 サウンド:10

読んでよギャリー!(魂の叫び)

 2D謎解きホラーアドベンチャーです。
ホラーチックな探索アドベンチャーと銘打っておりますが、完全にホラーです。心臓止まるかと思いました。
マルチエンドで周回プレイするようなんですが、ギミックが一緒なので飽きが来てしまう点はいただけません。

 しかし、完ッ全にハマりました。その魅力がこの作品にはあります。
まず、ゲルテナとして数々の作品を創ってしまった作者のセンスに脱帽。そのすべてがドット絵で表現されている。アニメもあるよ。
そして、ギミックの動きも怖いんです。画面の端にわずかに移る程度のものもあり、細部にわたる作者のこだわりが垣間見えます。
そうした作者のこだわりが生み出す雰囲気がこの作品の肝でしょう。

 作品の雰囲気を作るものは、サウンド、グラフィック、舞台設定だと思っています。
そして、本作から受ける印象は複雑です。
最初に私が感じていたのは、恐ろしくて、陰鬱なものでした。
しかし、そのうち、美しく、洒脱で、遊び心と示唆に富むものを感じるようになり、さらには、静けさ、葛藤、不条理など複雑になっていきました。
最終的な印象としては安らぎが一番近いでしょうか。
この作品の感じ方が多岐にわたるのは、たぶん、それらの印象すべてがゲルテナの作品に込められているからでしょう。
ゲルテナが表現してきたもの、彼が人生で感じたもの、ゲルテナの世界、それが本作の肝を生み出しているということなのでしょうか。
万人に勧められる良作といえるでしょう。

 あと、ギャリーさんかわいいです。完全にヒロインです。

ハマリ度:9/10
エロとか肉々しさとかはないよ。
グラフィック:10/10
ドット絵表現の細かいこと。床に散った花弁といい、絵具の滴りといい。
サウンド:10/10
作業用BGMとしても一級品。使いどころも完璧。

 《 ろっとん 》  ハマリ度:10 グラフィック:10 サウンド:10

美術館での禁止事項:
大声での会話は 禁止
写真の撮影は 禁止
飲食の持ち込みは 禁止
作品に触れることは 禁止
万年筆の使用は 禁止
こ こ か ら 出 る 事 は  禁 止

kouri氏制作のホラーアドベンチャー、Ib。
昨年2012年2月の公開からニコニコ動画やpixiv、TINAMI等のコミュニティで口コミ的に知名度が伸び、
今では同人オンリーイベントが開催されたりアニメイトでグッズが販売されるほどの人気作と化したフリーゲームです。
ガチオタの俺ら激辛レビュー読者の皆様ならおそらく一度は名前を聞いたことはあるんじゃないでしょうか。

このゲームはいわば「見て楽しむ」ゲームです。
主人公が奇妙な部屋を巡り、ゲルテナという不思議な芸術家の作品に触れていきます。その様はまるで本物の美術館を見ていくかのようです。
そして行く先々で読める年代表や評論家の講評、日記らしきものから断片的に描かれるゲルテナという人物に引き込まれます。
ギミックも俗にいう即死などの「ビックリ系」や追跡などの「ハラハラ系」要素は薄く、あくまでおどろおどろしい「ゲルテナの世界観」を堪能できるでしょう。
また作中では生死という概念をボカして描写しているのも特徴的です。
美術館の住人は当然ながら全て美術品のため「壊れる」という描写で生々しさを感じさせませんし、イヴたちの体力も「○色のバラ」というアイテムで表されています。
その分、終盤のとあるイベントの重みが際立っています。

◆ハマり度:10点
1プレイが2~3時間で終わる短編ADVですが分岐や小ネタが多く、何周も遊ぶ余地が作られた作品です。
また謎解きも簡単すぎず難解すぎずというテンポのいい構造になっています。
ギミック自体は頭をひねるものも多いのですが、ステージが「○色の部屋」という区分で視覚的に区切られており
詰まっても無意識のうちに「ヒントは同色の部屋内にあるはず」という誘導を受けます。
これらの点は諸所で見る「初見でもクリアは簡単だがトゥルーEDは困難」という評価が的確ではないでしょうか。
新バージョンであるVer1.04からは周回コンプ要素も追加されています。

◆グラフィック:10点
人物から小物に至るまで、ほぼ全てがkouri氏自身によって描かれています。
画素の荒さや色数の少なさも含めて、ツクール2000の描画能力を活かした作品の数々はプレイヤーの想像力を掻き立てられます。
一見バラバラなテーマで、しかしどこか不気味さと美しさで統一性を感じる作品群は「ゲルテナ」という人物を物語ります。
人物ドットも自作ならではの表現力の高さを活かして、様々なイベントで豪華に動きます。
また公式サイトにはドットを起こす際のラフ画が掲載されているのですが、どれもユーモアあふれるものばかりです。

◆サウンド:10点
本作品はBGM・SEにかなりのこだわりを見せています。
フリー素材だけでなく、本来配布されていない音源を使用許可を得て…と熱の籠った具合です。
イヴはピアノ、ギャリーはクラシックギター、メアリーはオルゴール…とコンセプトを設定して効果的に使用しています。
SEでも同様で、前述のグラフィック・ギミックが最大限に活かされるように編集・使用されています。
コツコツと響く足音や仕掛けの動く音など何気ない音すら段々と精神にクるものへと変わっていく点は演出の妙です。
※公開当初は動画・音声に容量を割きすぎて335MBという大容量ファイルでしたが、現在は見直され35MBまでスリム化しています。

●登場人物:

Ib
・イヴ
イケメン主人公。赤いバラの少女。身なりや所持品から分かる通り、いいとこのお嬢様です。9歳です。ロリロリですよペロペロ。
「難しい字が読めない」「重い物が動かせない」など年齢相応のハンデを持っています。
主人公の宿命か、無口・無反応なクール少女です。…かと思いきや、選択肢次第でパートナーを驚かしたりお茶目な面も。
子供ならではの大胆な行動には目をみはるばかりで、彼女が主人公でなければこの作品は成り立たなかったことでしょう。

プレイヤーからは気丈に見えますが、端々の描写から徐々に精神を追い詰められているということが分かります。
シナリオ中「大丈夫」「平気」といった選択肢が頻出するあたり、普段から両親の前でも健気に振る舞っているのでしょう。
そしてそんな極限状態でも感情を表に出さなかった結果が…

Garry
・ギャリー
メインヒロイン。青いバラの青年。シナリオ中盤で登場する相棒です。
大人の男性です。彼が同行中は難しい字も読めるし、重い障害物も動かせます。
そしてオネエです。母性をふりまく保護者ポジションです。
極め付けがビビリです。間違いなく登場人物で一番のリアクション芸を披露してくれます。
イヴとは母子のような、姉妹のような、女友達のような関係という絶妙なポジションに立っています。
彼の存在がIbの怖さ・不気味さをマイルドにしているといっても過言ではありません。

ゲーム中様々な場面で彼の死亡フラグが立つのですが、たった数フラグ分立ててしまうと彼は助かりません。
しかもイベントの中には1回失敗で2フラグ分立ってしまうイベントも存在します。大半のプレイヤーが彼絡みの失敗でトゥルーEDを逃します。
そして多くの2周目プレイヤーは「どうすれば彼を救えるのか」と考えます。そういう意味で「ヒロイン」という表現はあながち間違いでもなかったり。

Mary ・メアリー
サブヒロイン。黄色いバラの少女。ギャリーと同じく途中参加の相棒2号です。
絵にかいたような美少女です。イヴ・ギャリーに比べ楽観的で、危険を気にせず先へ進んでいきます。
無邪気で天真爛漫元気いっぱいで、慎重派のイヴ達を引っ張っていくさまはとても軽快です。
同年代の友達であるイヴにべったりで、口うるさいギャリーには反発気味。

ある意味、最大の被害者なのではないでしょうか。
彼女が幸せになるルート=彼女以外が不幸になるED、という図式が立っています。悲しい少女です。
当然ながら誰かが幸福になるためには…

Ver1.04追加要素について:
下記はVer1.04追加要素です。発表当時に既プレイの方も、再プレイしてみてはいかがでしょうか?
・追加シナリオ「橙の間」
・追加エンディング2種
・周回要素「真・ゲルテナ展」
・他、演出面強化(例のカギ捜索の位置がランダム化…など

※余談 Ibの美術品の中でもトップクラスの出番と知名度の「無個性」。
首から上(⇒顔⇒個性)が無いオブジェ群なのですが…

どこまでも おいかける

お 前 ら の よ う な 無 個 性 が 居 て た ま る か

※余談中の余談(Ver1.04で賛否両論の点について)
今回の更新で評価すべき一番の点は「同時救済」が不可能な点ではないでしょうか?
多数のファンから「同時救済」が望まれたり、また他方からそれは無粋だと要らぬ心配の声が上がる中、自分のスタイルを崩さずに追加シナリオ・エンディングを書ききった点は称賛に値すると思います。

 《 赤松弥太郎 》  ハマリ度:7 グラフィック:8 サウンド:9

止まったままの時計の針 動くさ きっと

 激辛読者の中に「クローディアの秘密」を読んだ人がどれだけいるのか、ボクには確証は持てませんが。
 しかし、アメリカ児童文学の大家カニグズバーグのデビュー作ですから、知名度はあるでしょう。
 普通の生活に飽き飽きしていた少女クローディアは弟ジェイミーを誘い家出、メトロポリタン美術館に潜伏する。心配で探し回る両親を尻目に、昼間は見学客にちょっかいを出し、夜は警備員の目をかいくぐって心ゆくまで美術品を堪能する日々。やがて二人は、作者不詳の天使像の謎に挑んでいく……という、胸躍る冒険譚です。
 そう、冒険譚なんですよ。
 だから毎度言ってるんですが、それがなぜ、あんなおどろおどろしい「メトロポリタン美術館(ミュージアム)」になってしまったのか、と。
 いや、よく聞くと歌は決して暗くないんですがね。曲調も明るいし、歌詞も一箇所を除いてネガティブなイメージはない。ただ映像が暗くて、コマ撮りアニメなんて妙に生々しい手法を使ってたり、大貫さんの声の透明感が高すぎたりするところで、トラウマなんて言われたりするようになってしまったのかなあ、と。
 ボクは原作が大好きなんで、この歌のせいで誤解されてたらイヤだなあ、と常々思ってるわけです。

 どうしてこんなイメージのギャップができちゃったんでしょうね?
 「クローディアの秘密」に限らず、「ナイトミュージアム」でも構いませんが、アメリカ的には美術館は冒険の舞台なんだろうなと思うんです。で、ボクもそっちの感性の方に共感できるんですね。
 だって、古くて広い建物って、それだけで冒険したくなるじゃないですか。その上、人だかりでじっくり見られない展示品も、誰もいなければ一人占めできるんですよ? 誰もいない国立美術館とか、国立科学博物館とか、かくれんぼできたらどんなに素晴らしいだろうって思いますよね。ね?
 そんなボクとしては、FF5の古代図書館とかすごく行ってみたい場所の一つでして。こういう舞台をダンジョンにする開発者の慧眼を讃えたいです。
 でも実際のゲームだと、暗くてよく見えないし、本に取り憑いた悪霊が襲いかかってくるし、レベル5デスで全滅するし、とろくな思い出がないですよね。
 まあ、作品保護のために薄暗くなっているのは仕方ないのですが……
 おそらく物心論的・アニミズム的な被創造物に対する視線が、日本人の美術観に特に暗いイメージをもたらしてるんではないでしょうか。
 「創作家が魂を削って作った作品自体に魂が宿る」っていう、あの考え方です。

 で。本作は、そういう美術館のおどろおどろしさを凝集した、純然たるホラー作品です。
 ホラーを好んでプレイする人間ではないボクですが、それでも本作が非常に丁寧にホラーを扱っていることは伝わりました。
 唐突に大きな音を出したり、グロテスクな画像を表示するといった下品な怖がらせ方が、本作ではほぼ皆無なんです。
 生理的嫌悪感を煽るような描写も少なく、ドット絵で描かれた障害キャラは、ともすれば愛くるしさすら感じられます。
 それでもしっかり怖がらせてくるのは、細かな演出の積み重ねがあってこそのもの。
 「次はこうなるんじゃないか」と期待させる伏線の張り方、「まさかこうはならないだろう」という安心の裏切り方を、本作は安直な方法に頼らず実践しています。
 ホラー演出の真髄を理解し、体現する。ホラーの教科書とすら言えるかもしれません。

 キャラクターは少ないですが、配置が実に絶妙です。
 ひとえにギャリーの設定の妙ですね。
 少女に対置されるパートナー、少女では解決不可能なギミックを盛り込むゲーム的な要請、そしてプレイヤーに代わって驚き動揺する緩衝材としての働き、
 すべてを一身に背負うキャラとして、中性的というよりトランスジェンダー的な彼がいます。
 イヴにとっては行きずりの間柄でしかないのですが、言ってしまえばプレイヤーにとっては最初、作中人物なんて誰でも行きずりの間柄でしかないわけで。
 わずかな時間で、それでも守りたいと思わせる、死んだときに後味が悪くなるキャラを立てるのはとても難しいものです。
 トランスジェンダーであるからと言って、その理由を探るというのも、それはそれで差別的だと思うのですよ。
 存在全てをひっくるめて、本作のヒロインを務められるのはギャリーしかいなかった、そういうことです。

 有名作品であるからこそ自分の目で確かめようと思い、特に何も期待せずにプレイしたボクですが、やはり有名になるだけの理由はある作品だと感じました。
 プレイしたのがバージョン1.03以前であれば、ハマリ度の評価も1~2点は高かっただろうと思います。

 いやね、周回要素の内容が気に入らないのではないですよ。
 既存プレイヤーが今まで培ってきた世界観を壊さず育む、これ以上ない内容の追加要素です。
 なのですが。
 これはもう、本作がツクール2000で制作されたが故の不幸としか言いようがない。

 本作がツクール2000で制作されたことも、それ単独では批判の対象にはなりえません。
 また本作のきめ細かい分岐、好感度やフラグによって大きく7通りあるエンディングも、それ単独では評価こそされても、不満は多くはないでしょう。
 ですが、この3つが組み合わさってしまうと、とても残念な問題が噴出してしまうのです。

 共通セーブの考え方があるXP以降のツクールや、WOLF RPG Editorであればこんな問題はなかっただろうに、と残念でならないところですが、
 1時間以内にクリアできる作品とはいえ、苦痛に感じることの多かったこの周回要素を高く評価することはできないのですよ。
 RPG等と異なり、クリア後データを使った方が楽になる要素がない本作だと、このクリア後データ引き継ぎは煩雑さばかりが鼻についてしまいます。

 おそらく当初、本作は周回プレイなんて全く想定していなかったに違いありません。ホラーゲームは初回プレイが命ですから。
 やり込むにしてもトゥルーエンドが見られれば満足だろう、という程度で考えていたと思います。
 想定外の反響、そして全エンディングをコンプしようという想定外の遊び方を受けて、この周回要素が追加されたのですが、
 やはりどこかに無理があったのではないか、というのが、今回周回要素付きのバージョンでプレイしたボクの感想です。

ハマリ度 : 7 / 10
 初回プレイ時、白の絵の具玉の部屋から脱出後、階段を昇る時に切り換えイベントが発生せず、なぜかメアリーだけと合流するという不具合に遭遇。メニュー画面から戻ろうとしたところでフリーズした。タイムリミット直前に部屋を脱出すると発生する不具合らしく、tool-assistedでようやく再現に成功。まず普通は発生しない不具合で運が良いのやら悪いのやら。
 返す返すも周回プレイの仕様が悔やまれる。せめてバッドエンド確定後はセーブできないようにしてもらいたい。
グラフィック : 8 / 10
 画面が暗いのは演出上やむを得ないが、パスワード入力でカーソルを見失うのには参った。緑の部屋のアリなどは、画面が見えるかどうかテストされている気分にすらなる。
 イラストもドット絵も高品質。設定画などを見ると、いかにイメージに忠実にドットが打たれているかがわかる。
サウンド : 9 / 10
 こだわりの選曲。出自はバラバラながら統一されたテーマで構築されており、曲が切り替わっても全く違和感を感じない。
 効果音も要所でこだわりを感じさせるものの、かえってツクールデフォルトのままの音がチープに聞こえる結果に。

 作者の主張通り、やはりゲームはプレイしてこそのものである、と強く感じさせる作品でした。
 プレイしないとわからない随所のこだわり、体験しないのはもったいない話ですよ。

 《 天ノ原 》  ハマリ度:9 グラフィック:9 サウンド:10

抽象的ってどういう意味ですかギャリーさん

私がIbで評価したいのは、フリーのホラーゲームとしては異色とも言える「とっつき易さ」です。

まず、段階が少なく可視のライフ制である点。作中のダメージポイントも、ごく一部を除きダメージは1で固定になっています。この仕様だと「何回までダメージを受けても大丈夫か」が非常に把握し易いのです。
探索系ホラーゲームによく使われる手法として、「ライフを敢えて具体的に表示しない」「そもそもライフの概念が無く、失敗即ゲームオーバー」というものがあります。プレイヤーの恐怖や不安を煽る手法として有効なのは確かなのですが、不親切という印象がつきまとうのも事実でして‥‥。かと言ってIbの探索に不安要素が無いかというとそうでもなく、ライフの最大数が少なく、回復ポイントが固定&使い捨て(一部無制限回復有り)というシステムをとっています。これによりプレイヤーに軽挙を慎ませ、回復・探索に計画性を持たせる事に成功しています。探索の緊張感とインターフェースをうまく両立した、優れたゲームデザインです。

また、前述のシステムをプレイヤーに覚えさせる手法も巧みです。
オープニング後とばされる通称「青の間」。ここにイヴのライフゲージとなる薔薇が花瓶に差してあるのですが‥‥ここで発生する現象と最低限のテキストで、「薔薇がライフゲージ」「消耗した薔薇は花瓶で回復する」「花瓶は一回使い捨て」の要素を自然にプレイヤーに覚えさせる事ができてしまっているのですね。今作のシステム自体が単純明快という事もありますが、チュートリアルというメタなパートに頼らずゲームルールを覚えさせるというのは、プレイヤーを誘導させるセンスというのがうまくないとできない事なのですよ。オープニングでパンフレットが説明書になっちゃってますけど。
以降の仕掛けや謎解きも、問題を突きつけつつ誘導する流れが非常に丁寧で、かつ部屋単位でコンパクトに纏められているため、プレイヤーに無駄な移動を強いる場面が殆どありません。今作は「ゆめにっき」と芸術的異世界探索ADVという共通項でよく比較対象になりますが、広大なマップに放り出され、探索が完全に手探りであるゆめにっきとは真逆のベクトルだと私は思います。

その上で、気になる点が2つ。

1つは、序盤で木のさかな(頭)を入手するかくれんぼイベント及びギャリー脱出イベントで発生するブルートフォースアタック(総当り)です。
レビュアー始めた頃はそれほどでもありませんでしたが、いくつかの探索ADVをプレイしてきた中で段々気になってきた事です。頭脳戦の要素が薄く、探索時間を無駄に延長させられるこの手法はどうなんだと。Ver1.04~1.05で2箇所の正解がランダムになった事で、余計気になるようになりました。ただ今作に関しては、探索範囲が小さくハズレの部分に関しても凝った演出がなされるので、気になるけど減点対象にするほどでは無いというところです。2つ目のイベントはシナリオ分岐に関わるため、かなりギリギリですが‥‥。

もう1つ、ここがハマリ度減点理由なのですが、シナリオ分岐に「特定箇所で同じ人物に何度も話しかける」というのがある事です。合図となる演出が皆無のため、フラグが立ったか否か以前にフラグ箇所である事自体が分かりにくく、分かったら分かったで作業感が非常に大きいのですよ。一応、非常に豊富な会話パターンはありますが、順序が完全ランダムである以上、同じ会話を2度3度聞く事もままある訳で‥‥このフラグ立てはもう少し考えようがあったんじゃないかと思いますね。

仕様方面でつらつら書きましたが、多彩なギミック、不気味に様相を変える美術館、個性的なキャラクター等々の魅力は、最早私が語るまでも無いでしょう。個人的には○○○○焼失とエンディング「忘れられた○○」(今更感漂うけど伏せ字)が、そこはかとない虚しさと哀しさで非常に印象深いです。

グラフィックは、kouri氏独特の素朴さが特徴の自作。各イベントで見られるドット絵が中々味わい深いですね。腰を抜かしたギャリーかわいいです。また、あれだけの数の美術品を書き分ける労力は純粋にすごいと思います。ただ、公式絵の上達具合を見るにつけ、まだ伸びしろはあるよなというのが正直なところ。

私からはこんなところで。ゲルテナオリジン・kouri氏の今後に期待です。

 《 アンサンブル 》  ハマリ度:9 グラフィック:10 サウンド:8

簡易紹介
登場人物全員が一度に救われる事は無い探索型アドベンチャー

内容紹介&攻略?
絵の中に入ってしまった。なんとか元の世界に戻らなくては
体験型美術品アトラクションとはこれまた新しい
薔薇を枯らしてはならない。食べさせるなんて論外
迷っても右往左往(あっちいったりこっちいったり)でなんとかなる
絵は頭が悪いのか壁に頭をこすり付けること多々(誘導可能)
成金じゃあるまいし全指結婚指輪なんてしなくていい。薬指だけで十分
絵画の世界です。マッチ一本火事の元
薔薇が枯れてきてる?水に浸せば元通り(水筒持参最強説)
セーブはこまめに、マルチエンドのため、全てをみるのに何週もするのは大変
美術品を粗末に扱うもの達に死を

主要人物紹介?

イブ
親に連れられてゲルテナ展に来たけれど楽しむのは親ばかり
つまらないから見て回ってたら「おいでよイヴ」

しっかりとしているがやはり女の子である

ギャリー

お姉言葉を使う男(オカマではないと思いたい)
ふざけて見えるが考えはいたって真面目な男である

男であって漢に感じることがなぜかできない(紫の髪のせいか?)

メアリー

まるで絵に描いたかのような美少女
イブと仲良くしたい遊びたい色々知りたい女の子

壁に耳有り障子にメアリーと言ったらきっとお友達になれる

はまり度 9
難易度はそこまで高くなく先を知りたいと思わせる
が、詰まったときに時間と探索でストレスを感じる場合があるので9

グラフィック 10
欲を言えばもっと高解像度で遊んでみたいと思わせる程

音楽 8
悪くは無い、悪くは無いのだが音消しで遊んでいても雰囲気と気分は変わらなかったため8

感想
このゲームを遊んでいた時にホーンテッドミュージアム1(タイトー製ガンゲー)が浮かんでしまった
探索アドベンチャーの楽しさは探索中にあると私は考えています
例えば、ゴミ箱に弾丸、女子トイレに入って無線、本を読めば官能小説
この作品も一つ一つにアクションがあり、飽きることなく楽しむことができます
多くの人に進めることができる探索ゲームの一つです

最後に絵に入る時の雰囲気を出したくホーンテッドミュージアム1での台詞をもって終わりとさせていただきます
「すいこまれるぅぅぅぅ~~~~」

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