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■ アリスの娘

アリスの娘
作者 [ Giggle さま ]
ジャンル [ ホラーアドベンチャー ]
容量・圧縮形式 [ 221MB・ZIP (ダウンロード版) ]
製作ツール [ RPGツクールMV ]
言語 [ 日本語 ]
備考 [ セーブデータのバックアップにMobageアカウントが必要・通常プレイでは不要 (Web版) ]
配布元 ダウンロード先

(補足)
2016.11.16:ダウンロード版が配信されました。グラフィック遅延の解消・広告非表示など、かなりの部分が改善されています。
2020.10.18:リンク先を変更

アリスの娘 アリスの娘 アリスの娘 アリスの娘 アリスの娘 アリスの娘

レビュワーハマリ度グラフィック サウンド合計総合判定
ES 9 /10 8 /10 10/10 76/90 B
シュン 7 /10 10/10 8 /10
赤松弥太郎 7 /10 9 /10 8 /10

 《 ES 》  ハマリ度:9 グラフィック:8 サウンド:10

愛されなかった、愛が欲しかった、愛らしい少女

本日ご紹介するイチオシ作品「アリスの娘」は、とてもホラーで、とても悲しい作品です。
判定の厳しいミニゲームを潜り抜け、次々と命を落とすキャラクター達を目の当たりにして、たどり着いた結末が絶望しかない!
そんなENDに驚いたことでしょう。
…しかし、そのENDは文字通りの見せ掛けです。真のENDは、この1週目ENDを見て表示されるヒントを見て初めて道筋が分かる仕掛けになっています。
その条件は、どれもこれも初見では見逃しがちな箇所にあります。幸い、各フラグは一度クリアしてセーブを掛ければ(ここが重要!)、グローバルセーブに保存されます。
あとは、別のセーブから開始しても、別の難易度でニューゲームする場合でも、真ENDのフラグが有効な状態でプレイできます。

そんなプレイのモチベーションとなるのは、Giggle氏お手製のドット絵で魅せる悲しくも残酷な物語に他なりません。
特に、細やかなドットで魅せる各キャラの仕草は、本当に見事なものです。アリシアの重要な要素である鈴付きの首輪、幅にしてたった3ドットしかありませんが、きちんとストーリーの時間軸に合わせて付け外しをしています。詳しく知りたい方は、ぜひ真ENDを見てください。
もちろん、その細やかなドットは、ゴア表現方面にも全力が掛かっています。今作の「青鬼」役であるマッドハッタ―の返り血、ストーリーが進むにつれキャラに降りかかる惨劇、その残酷さを物語るのにも、グラフィックが大きな役目を果たしています。
本作は特に年齢制限を掛けておらず、「本ゲームには、一部暴力的な表現やグロテスクな表現が含まれています。」という最低限の警告が入っているのみです。
正直、この程度の警告では足らないほど、ゴア表現はリアルです。R-15制限の入っている同作者の前作「ベルとお菓子の家」以上のゴア表現が入っています。最大限の覚悟をもって、プレイに望んでください。

「そんなにグラフィックを褒める割に、点数は振るわないじゃないか?」…そう思ったことでしょう。実を言うと、本作はブラウザ上でしかプレイできない故の弊害が出ている作品です。
本作は、「AndApp」と呼ばれるDeNA提供のシステムを利用しています。セーブデータをMobageアカウントで共有することにより、PC, スマートフォンなど複数の媒体から同じセーブデータでプレイできるようにするシステムです。
ところが、AndAppからRPGツクールMVをプレイするシステム、2016年9月現在ではChromeとSafari(Mac版)にしか対応していません。しかも、Chromeでプレイしている私の目でも、かなりグラフィック方面のバグが頻発しています。キャラクターが常に足踏みしていたり、時には意味も無いのに点滅する例までありました。
これがFirefox, IE, Edgeになると、まずまともに動きません。まず初めにChromeのインストールを勧められますし、無視して進めようとしても予期せぬエラーで中断させられてしまいます。
流石にここまで弊害が出るとなると、1プレイヤーの私でも無視できませんでした。Giggle氏にも「ダウンロード版が欲しい」という要望を出しました。Giggle氏からの返事も「是非実現すればと考えているところ」とのことなのですが、2016.09.11現在でも、本作品はAndAppを介してしかプレイできません。
おそらく、ダウンロード版をプレイすれば、本作の評価が2~3点は上がるのではないかと思います。ブラウザ種別によらずプレイできるという点が、最大のアドバンテージとなるでしょう。

もう一つの欠点として、やはりミニゲームの仕様を挙げるしかありません。本作のミニゲームでは、方向キー・決定キー・キャンセルキーを画面中心の英単語の順に押すことでフラグを立てる仕組みになっています。大抵の箇所ではミスると攻略のフラグが立たなかったり、即GAME OVERとなる代物です。
問題は、スマフォ版に合わせて「決定キーが右、キャンセルキーが左」になっていることです。これは、普段Z,Xキーでプレイしている人、ゲームパッドでプレイしている人には逆の並びになります。
おそらく、大半のミスは、時間切れではなく、この決定・キャンセルキーの押し間違いによるものでしょう。Giggle氏の元にも、その点での批判が多く来たらしく、ブログページ1つを割いて「テンキーの0, Enterを利用してください」と回答されています。
キー配置はツクールの仕様である上に、プレイヤー環境に合わせて決定・キャンセルを入れ替える仕様を追加すると、そこが新たなバグの温床となりかねません。ミニゲームだけは、作者推奨の「テンキーの0, Enterを利用する」ようにしましょう。
この点さえ注意すれば、実は難易度自体はそれほどでもありません。最大難易度のHARDであっても、受付時間は10秒近くあります。普段の追いかけっこホラーで鍛えている方ならば、余裕をもって打ち込める猶予時間です。
むしろ焦ってキー入力ミスをする方が命取りになります。余裕をもってプレイしましょう。

本作は必ず最後までプレイしてください。序章で出てから1週目ENDまで登場しない「イザヤ」の正体も、アリシアが迷い込んだ不思議の国の正体も、ありとあらゆる謎が、フラグを全て解いた先にたどり着く「Last Act」にて一気に解明される仕掛けになっています。
その詳細は、流石にネタバレに当たるでしょう。ぜひあなたの目で直接ご覧になってください。

 《シュン》  ハマリ度:7 グラフィック:10 サウンド:8

救いの無い残酷な少女の運命を変えられるのは・・・?

 MV製でありながら横視点という変わったタイプの探索ADVです。
さて、今作の一番の魅力となるのはグラフィックでしょう。キャラたちのドット絵はよく動くので見逃さないようにしましょう!
ストーリーは全くもって一筋縄ではいきません。これ・・・どう足掻いても絶望じゃないですか!?

 アリシア・リデルは12歳の女の子。もうすぐ13歳の誕生日を迎えます。
彼女は何故か父親に辛く当たられており、屋敷の人物もはそのことについては何も言及しないようです。
今日はアリシアの誕生日。そんなときイザヤという青年は森に迷い込み、辿り着いた屋敷でアリシアと出会います。
彼とはすぐ別れたアリシアでしたが、その出会いを境に屋敷内にいた人物たちが奇妙な場所に飛ばされてしまいます。
そこはまるで『不思議の国のアリス』のような世界です。そして奇妙かつ残酷な出来事が襲い掛かるのでした。
アリシアに隠されていた残酷な運命、そしてイザヤとの関わりとは・・・?

 基本は横視点での探索ですが、それ以外にも幾つか要素があります。
途中キーボードで英語の単語を入力するというミニゲームもあり、大抵の場合失敗するとゲームオーバーになってしまいます。
それ以外にも連打や謎解きを行う場面もあります。難易度自体はHARDでも思ってたほど難しくはありませんが・・・。
忠告はきちんと聞いておかないとゲームオーバーになるパターンも多いので注意してください。
エンドは8つ。ほとんどが選択や行動による途中終了によるものであり、ACT10には入れるかどうかで大まかなルートが決まります。
ACT.10に進むためには幾つかの条件を満たす必要があります。条件の達成状況はゲームそのものに記録されるのでわざわざ最初からゲームを始める必要はありません。
各ACTで行動可能になったときと、ACT途中で自動セーブされる箇所のセーブデータを残しておくと効率が良くなると思います。
自分が確認してみたところ初見で満たした条件は3つでした。わざと条件を満たさないような行動をしていたので参考になるかは分かりませんが・・・。
終盤にある決定キー連打のミニゲームが結構難しく、自分も何度かミスしていました(HARDモード)。ここでつまづく人も多いではないでしょうか。

 アリシアの正体を知った時は驚きましたね。伏線はすっかり張られていただけにこれはミスリードでした。
何故父親に辛く当たられていたか、何故屋敷の人たちは誰も言及しなかったか、結局アリシアは何者なのか。
しかし、ACT10にてそれすら上回るとんでもない真実が明らかになります。恐らく誰も予想出来ないのではないでしょうか。
最初のACTに出て以降は名前だけ出てくるイザヤはどんな関わりがあるというのでしょうか?
救いの無い残酷な運命を変えられるのは意外な存在。イザヤがそんな人物となるかは・・・貴方の手にかかってます。
実は良いエンドを見るためには意外な行動をしなければなりません。まあ、エンドリストで予想がつくと思いますが・・・本当に予想外でした。
難易度HARDで全てのエンドを見ると特典があるので頑張りましょう!

 《 赤松弥太郎 》  ハマリ度:7 グラフィック:9 サウンド:8

叶わない願いなんて ひとつもない そう信じて

 ツクール製ホラーアドベンチャーがブームになったあの頃から、ずいぶんと時間が経ちました。たとえばIb公開からもう4年です。
 短期間に数多くの作品が公開されたこともあり、鉱脈のほとんどは掘られた状況にあります。
 本作は、決して斬新さを主張した作品ではありません。
 本作の構成要素、たとえば「貴族の洋館」「童話のモチーフ」「いきなりチェーンソー」などはもう、古くからのお約束と言うべきものですし。
 ゲーム性という意味でも、追いかけられや嘘つき当て等、見慣れたいつものゲーム性です。コマンド入力ミッションが割と珍しい部類、というくらい。
 やはり、本作の独自性はそのメッセージ性に求めるべきでしょう。
 本作の示すメッセージ、具体的にはその倫理観が、とても独特なものなのです。

 ええ、倫理観です。あまり笑わないでね。
 しかし、大事なことではないですか?
 理不尽に、不条理に、殺したり殺されたりする世界を手放しに肯定したら、それはホラーにはならないでしょう。
 しかもほとんどの作品で、登場人物は未成年。何が善で何が悪か、作品の中で基準を示さざるを得ないのは、当然の流れと言えます。

 思えば、童話というのもそうでした。
 原型となった中世の民話などは、多くが不条理であったり、場合によっては反道徳的だったりしたのです。
 それを近代的な倫理観に照らし合わせて改編・創作し、子どものための教訓話として広めたのが、19世紀の童話作者たちでした。
 それは反面、中世民話の持つ魅力をまったく別のものに変えてしまったのですが、責任ある大人として、彼らはできることをやろうとしたのでした。

 しかしながら、善悪は、時と場合によって大きく変わっていくもの。
 19世紀の時点ですら、今の道徳観念とのズレは大きく、激しいものがあります。
 グリム童話初期の「千匹皮」は、娘と父が結ばれてハッピーエンドでした。
 ルイス・キャロルが少女のヌードを撮影したことより、聖職者たる彼が大人の女性と付き合っていたことの方がスキャンダルだと考え、彼の遺族は後者だけを隠蔽しました。
 その時代、その社会の人々が求めるものが変われば、絶対と信じられた正義もやがて変わってしまいます。
 たとえ殺人であっても、条件付きで肯定され、推奨された社会が、地理的・時間的にすぐそばにあることを忘れてはなりません。

 様々な文化が混ざり合い、めまぐるしく変化するこの現代社会では、普遍の善悪を説くことはまず無理です。
 それでも、ホラーゲームという体裁をもって何かが言えるとしたら、それこそが、その作品が本当に大切にしたいこと。
 表面的なお題目では無い、その作品の核となるものはきっと、そんなに複雑なことではないはずです。
 簡単だからこそ重みを持つような、そんな一言だと思うのです。

 本作にも、様々な問題提起があります。
 アリシアも、館の人々も、自分の罪悪を突きつけられ、理不尽な苦難は罰なのかと悩みます。
 しかし、本作で本当に罪とされているのは、たった一つのことだけのように見えます。
 本作の8つのエンドは、数多くの死亡エンドに紛れていて、初見ではどれが名前付きエンドか見抜きづらいです。
 しかし、トゥルーエンドに到達し、コンプリートした後で見ると、ある一貫した法則があることに気付かされるでしょう。

 本作は、決して難しいゲームではありません。
 しかし、初見でトゥルーエンドに辿り着くのはほぼ無理な設計になっています。
 ヒントこそあるものの、初見では多すぎるフラグを踏破するのは到底無理な話。一度はノーマルエンドを見るハメになります。
 それはもう理不尽で、救いの無い、後味の悪いエンディングですとも。
 しかし、それこそが作者の狙いなのです。
 このノーマルエンドを迎え、トゥルーエンドへのヒントが開放されることで、はじめてこの作品は、その全貌をプレイヤーの目の前に現します。
 ノーマルエンドを目の当たりにして、それを回避したいと願ってはじめて、見えてくるものがある。
 その瞬間は、確かにドラマティックでした。本作のハイライトと言えるでしょう。

 とはいえ、そこに至るまでが少し……中盤の飽きやすさとか、トゥルーフラグつぶしの作業感とかが、ちょっと。
 評点入りますね。

ハマリ度 : 7 / 10
 移動を原則左右のみに絞ったため、探索要素が薄まっている。代わりにコマンド入力やトゥルーエンドのフラグ探しがメインというバランスは面白い。コマンド入力も操作キャラの「必死さ」を現すのによい表現だと感じられた。
 中盤、アリシアが扉をくぐってからしばらくは牽引力不足が否めない。登場人物が一方的に不条理に巻き込まれる展開は、プレイヤーにとってまったく先の展望が持てず目的を見失う。探索要素が薄まったことが裏目に出た形。
 セーブする度に広告ポップアップを閉じなければならないこのサイトの仕様上、セーブ直後にコマンド入力が始まってしまう点は大幅減点。トゥルーエンドフラグはグローバルセーブではあるが、フラグを立てた後セーブしない限り反映されないので気をつけること。
グラフィック : 9 / 10
 自作ドット絵にはぎこちなさが残るが、一枚絵はさすがの迫力。
 トゥルーエンドのフラグは非常に見にくいが、言われれば気付く設計なので問題は無い。普段の進行で引っかかるポイントは無かった。
サウンド : 8 / 10
 普段の探索はBGS、ワンポイントで音楽を使うスタイル。選曲はいずれもマッチしている。こだわりのボイスも存分に魅力的。
 しかし、アクセントとなる普段の靴音が甲高くうるさい。森の中では草を踏む音がするかと思いきや、そうでも無い場面がある。ギャグアニメの足音のような違和感がある。海外サイトで探せばいい音源は見つかるので、こだわってほしかったポイント。

 「Googleにウチの敷居は跨がせん!」と頑張っている頑固な方にお伝えしますと、2016.9.11時点ではOpera 39.0で完動しました。Firefoxでは一度動いたものの、再起動したら動かなくなってました。
 まあ、サポートするブラウザを1つに絞る方が楽なのは理解してるつもりです。試す時はあくまで自己責任で。

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