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■ Moon Whistle XP

タイトル画面
作者 [ 神無月サスケ さま ]
ジャンル [ RPG ]
容量・圧縮形式 [ 5.7MB・ZIP ]
製作ツール [ RPGツクールXP ]
必須ソフト [ 特になし ]
ダウンロード ダウンロード先

(補足)
2011.06.12:現在の最新バージョンはVer1.03です。

開始直後 Xレンジャー ハルトとの初戦闘 巨大ロボ ムーンホイッスル 1日の終わり

レビュワーハマリ度グラフィック サウンド合計総合判定
ES 10/10 8 /10 10/10 57/60 A
赤松弥太郎 9 /10 10/10 10/10

 《 ES 》  ハマリ度:10 グラフィック:8 サウンド:10

時を超えても、色あせない過去がある。

本作のリメイク元「Moon Whistle」がコンパク金賞を受賞したのは1999年10月のこと。そう、もう12年前のことなのです。12年前のことなのです。大事なことなので2回言いました。
すでに、「Moon Whistle」作品内で飛び越えた年数(14年)とほぼ同じ年月が、「Moon Whistle」から「Moon Whistle XP」の間で経過しているのです。
この12年の間にも、世間、特にWeb界隈は様々に変わっていきました。コンパクは終了し、RPGツクールは95から2000, 2003, XP, VX, そしてアクションツクールへと進化を重ねてきました。何より、2000年当時の「Moon Whistle」のイチオシでは4.9MB程度で「容量が大きい」と言われていたのに、現在では「5.7MB!? めっちゃ小さいやん!」と言われる時代です。
そんな中で、リメイク作「Moon Whistle XP」は、システムをXPに近くして、隠し要素を追加し、表現がマイルド…「大人」になりました。しかし、「Moon Whistle」のもう一つの側面「冒険の楽しさ」は、何一つ変わっていません。いや、様々な面でプレイしやすくなったことで、より「冒険の楽しさ」は増しました。
事実、私は本作を全奥義・全最強装備獲得、最終レベル77までやりこみました。中には、リメイク前では知らなかった隠し要素もあります。
そして、「これは確かに人生を賭けた作品だな。」と改めて感じました。

私が以前レビューした「Another Moon Whistle」では、かなりエグい選択、少なくとも幼稚園児が考えるにはシビアすぎる選択を迫る「推論空間」なるシステムがあり、かなり戸惑った記憶があります。その戸惑いを、そのままレビューでも吐露しました。
厳しい「選択」は無いとは言え、無印の「Moon Whistle」も、かなりエグくて「理想的でない」表現はチラホラ見られます。
しかし、本作の「Moon Whistle XP」では、よほど後半に行くか隠し要素を探さない限りは「幼稚園児のちょっとした冒険譚」に留まっています。
ただし、人生のシビアさに関しての描写は、無印でもXPでも変わりません。そして、「シビアな人生だからこそ、夢・希望を持って立ち向かい、もがき、抗い続けなければいけない」というメッセージは、無印・Another、そして「ぼくのすむまち」で一貫して語られているものです。

システム自体は、RPGツクール95からXPへと進化したことで、大幅にプレイしやすくなりました。ツクール95だと、同じアイテムを一括購入できない点、セーブ時にファイルダイアログが表示される点、グラフィックのバグなど、システム上の問題が多く、純粋にストーリーを味わうための障壁になる程でした。また、現在だと「ツクール95製のゲーム」というだけでプレイできない環境さえあります。
XPとリメイクした際に「プレイしやすさ」はXP準拠にしていますが、雰囲気はツクール95時代を再現できるよう、スクリプトに手が加えられています。(戦闘画面のモンスター攻撃時に「ピョン」と前進してくる様子など)
なお、無印・Anotherと一貫している「ザコ戦闘のエンカウント率の高さ」は、本作XPでも健在です。戦闘・探索好きな私の場合はむしろ大歓迎ですが、ストーリーを楽しみたい人や低レベルクリアを目指す場合には障壁になります。エンカウント率を下げる隠しアイテムがあるため、詳しくはマップを探索するなり、掲示板で検索するなりして探してみてください。

無印からXPへのリメイク時に、表ルート(ストーリーを進めるだけのルート)上では「エグい」描写は(多少とはいえ)減りました。その分、隠し要素が増え、そこでの「エグい」描写も増えています。
ストーリーの「真」に迫るためには、かなり「能動的な」探索を行わなくてはいけません。そして、「能動的な」探索で見つかる数々の隠し要素を見ることで、より「Moon Whistle」のストーリーに深みが増し、ゲームにはまっていけるのです。
Anotherのレビューで私が主張した「夕暮れを迎えてもまだ帰りたくなくて、真っ暗になるまで遊んでいる子供の気持ち」が、本シリーズを「名作」としている要因である、そう私は感じています。

 《 赤松弥太郎 》  ハマリ度:9 グラフィック:10 サウンド:10

時を越えて降臨、満を持して!

 ムンホイ信者の皆さん、こんにちは。そうでない皆さんも、こんにちは。
 ボクたちが数年来待ち続けた……途中開発が停滞したときも、開発無期限停止が伝えられたときも、ただひたすら待ち続けた作品が、ついに公開されました。
 ボクなんてもう、公開直後にダウンロードして、さっそく2日でクリアしましたよ。皆さんはいかがでしょうか。

 この作品自体、長い長い時の旅を続けてきた作品です。
 今、本作の舞台から28年以上の時を経たこの時に、このリメイクに触れることができるのは、なんと幸せなことなんでしょうか。
 さっそく、Moon Whistleクリア済みの方に向けて、リメイクされた本作の魅力を紹介したいと思います。

 なお、旧版Moon Whistleをクリアしていない方に向けては、諸事情によりボクからは紹介文を控えさせていただきます。
 結論から言うと、旧版Moon Whistleを是非プレイしてください。

◆システム面の改善

 旧版Moon Whistleの制作ツール、RPGツクール95は、大小様々な問題のあるツールでした。
 痒いところに手が届かなかったり、ちょっとした機能が実装できなかったり、できたとして非常に手間のかかる方法を採らなければなりませんでした。
 それがRPGツクールXP、ツクール史上初めてスクリプト言語を搭載し、自在なカスタマイズ性を謳ったツールで移植されたのです。
 マップ画面等はできる限り旧版を再現しつつ、旧版ではできなかった色々なことにもチャレンジしています。

ナナメ移動  特にボクが紹介したいのが、このナナメ移動。
 他のツクール製RPGでもナナメ移動ができるものは多いし、それが売りになることは少ないでしょうが、本作はちょっと違います。

 皆さんは子どもの頃、訳もなく道をナナメに横切ってみたり、うねうね蛇行して歩いてみたことがありませんか ?
 ボクはあります。ってーか、今でもやりたくなります。
 あと、訳もなく突然走り出したり。ボクは今でも時々やっちゃいます。

 本作は、そんな子どもっぽい挙動をしたいボクのために、わざわざ2種類のダッシュボタンを用意、さらには所謂ワープ技「でんしゃごっこ」を一発で呼び出すためのボタンまで用意しています。
 子どものRPGである本作の場合、こういう機能は、痒いところに手が届くだけでなく、あるだけで没入感が変わってきます。
 旧版よりも若干歩くスピードも速くなってますし、町をじっくり歩くには、とても嬉しい仕様です。

下水道  マップの構造自体は、旧版にあった場所は大きく変わっていないので、クリアした方には大きな違和感なくなじめると思います。
 ただし、旧版では表現できなかった部分も表現できるようになったために、中にはちょっと驚く場面もあるかも知れません。
 例えば秘密基地。前作では森の中という感じでしたが、今回、実は川縁にあったことがわかりました。遠景がちょっと爽快です。

 そして、旧版でわかりづらいと不評だったダンジョン、下水道もこの通り。
 天井の上に渡された金網の上を歩く、ちょっとハラハラする仕掛けになりました。
 「画面外」という意味の黒い部分を自由に歩ける、というのは、あまりない仕掛けだと思います。
 見た目はかなり変わっていますが、実はダンジョンの構造は変わっていないので、旧版の経験がそのまま生かせます。

 他にも、夏は天気が良ければ雲の影が映り、梅雨時には雨も降り、冬には雪も降る、と表現豊かになった季節の移り変わりも堪能でき、
 旧版よりもさらに想像力を刺激する、「空気」を感じさせる演出が随所に追加されています。
 まずは歩いてみてください。きっと新しいお気に入りが見つかるはずです。

◆サブメッセージの大幅追加

コーン  本作は、すごく狭い世界を舞台にした作品です。
 7つの海を股に掛け、なんて冒険大活劇とはわけが違います。たかだか2つの町を往復するだけです。
 しかし、一度寄り道を始めると、そこには奥深い世界が広がっています。
 季節毎に細かく変化する町の人のセリフは、この作品が長く愛され続けてきた要因の1つでもあります。

 旧版と比べ本作は、さらに多くのセリフが追加されていて、それを探すだけでも楽しめるでしょう。
 さらに本作は、各所に転がっている1つ1つの小物に対し、1つ1つ、調べたときのメッセージが追加されています。
 この気が遠くなる追加作業には、サスケさんの他、ぼくのすむまちVX移植を進めたブラック・ウルフさんも参加しているとのことですが、この三角コーンに対する異様な執着は、いったいどちらの方が書いたメッセージなんでしょうね ?
 まあ、そりゃあボクだって、ついついお持ち帰りしたくなったものですが。今でも時々。
 もちろん、旧版公開時からツッコまれてきたあの積み木にも、ちゃんと専用メッセージが用意されています。

 ぶっちゃけ、ボクの初回プレイ時間の半分以上が、この小物のメッセージ探しでした。ついつい本筋を忘れてのめり込んでしまいます。

◆イベントの追加・修正

バイクのヘルメット  本作は、公開から10年以上経った作品のリメイクです。
 旧版は非常にセンセーショナルな作品でしたが、10年以上経ち、色々と世情に合わなくなった部分も出てきました。
 そうした部分を本作は、あるところは繊細に、あるところはより大胆に、修正を加えています。
 追加・修正されたイベントは、旧版のプレイヤーならその違いも含め、楽しめるものが多くあるはずです。

 これは、厳密に言うと追加イベントでは無いのですが……
 ボクには、Moon Whistleをクリアし、Another Moon Whistleをクリアしたときから、ずっと安否が気にかかっている人物がいました。
 きっと皆さんの中にも気になっている方がいると思いますが、ここでは結論だけ言いますよ。
 彼女は無事です。元気でやってます。
 そのことがわかっただけでもボクは、この作品をプレイした価値があったと思ってるんです。

 一度Moon Whistleをクリアした方には、ぜひプレイしてほしい作品です。
 サスケさん自身の「Moon Whistleの時間を置いた2週目」という表現は、的を射ています。
 では、Moon Whistleをクリアしていない方にとっては……

 残念なことですが、本作は旧Moon Whistleをプレイしていない方には、旧Moon Whistleほどオススメはできません。
 Moon Whistleの魅力は、なんと言ってもそのストーリーの強いメッセージ性にあります。
 奥深い隠し要素や快適なゲームバランスも魅力的ですが、それらは全て、伝えたいことがあるから、それに向けて設計されたものと言えます。
 しかしMoon Whistleのメッセージは、言葉にできないような想いを伝えようとしていて、非常に繊細です。
 Moon Whistleは極めて完成度の高い作品であり、ゆえに現在でも高い評価を得ている名作なのですが、
 それはつまり、どこか一箇所でも変われば瓦解しかねないような、危ういバランスの上に成り立っているとも言えるのです。

 本作は、一度Moon Whistleをクリアした人を楽しませる作品には仕上がりましたが、正直初プレイの方に向けては不安の残る作品です。
 追加・修正されたイベントは、旧Moon Whistleの驚異的な構成の美を、少なからず損ねている部分があります。
 また、旧Moon Whistleが持っていた、少々尖りすぎた部分も削られてしまったため、若干ピントがぼけてしまった感もあります。

 ボク個人の意見としては、旧Moon Whistleもそのままの形で、時代を超えてプレイしてほしいと思っているし、その力のある作品だと思っています。
 『罪と罰』や『仮名手本忠臣蔵』のように、公開当初センセーショナルだった作品が、後々まで名作として語り継がれていく例は多々あります。
 しかし、RPGツクール95は、今や風前の灯火です。
 もともと作りの良くないツールだったため、今では動作保障されているOSはほとんど消え失せており、現行のOSではちょっとした障害を乗り越えて、ようやくプレイできる状態です。
 将来的には、まったく動かなくなってしまう日も近いでしょう。

 もしボクのいうことに共感し、行動力のある方がいるのでしたら、
 ぜひ旧Moon Whistleをベタで、現OSに移植する仕事をやってみてはくれませんか ?
 あるいは、Dante for Winのような、RPGツクール95専用のエミュレーションソフトでも構いません。
 もしRPGツクール95製のゲームを現行OSで障害無く動かすことができるようになれば、数々の名作を後世に引き継ぐことができるのですから。

 ボクは、無責任なことは言えません。
 しかしもし、そのプロジェクトに名乗りを上げる方がいるのなら、ボクのできる範囲で協力は惜しまないつもりです。

 これが、ボクがこの作品から1点だけ減点した理由です。
 追加された数々のグラフィック、さらにMicrosoft SW Synth向けにリテイクされた氷石さんの楽曲の数々は、ボクにとっては満点の出来でした。

 ……実は、この作品のレビューではない、感想文も書いてみました。
 書いてみたものの、これは、正直人に読ませるものになっていないと言うか……
 本当に興味のある方だけ、こっそりと読んでもらうことを望みます。
 なお、当然のようにMoon Whistle、Another Moon Whistle、そして本作Moon Whistle XPをクリアしていることを前提に書いています。当てはまらない方はどうぞお読みにならないよう。

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