■ カルゥドの鳥
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作者 [ にわりん さま ] ジャンル [ 古代語収集 探索アドベンチャー ] 容量・圧縮形式 [ 258MB・ZIP ] 製作ツール [ WOLF RPGエディター ] 言語 [ 日本語 ] 備考 [ 第18回 WOLF RPGエディターコンテスト 総合1位 ] 配布元 https://kalwud-no-tori.vercel.app/
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レビュワー ハマリ度 グラフィック サウンド 合計 総合判定 ES 10/10 8 /10 8 /10 53/60 ![]()
赤松弥太郎 8 /10 9 /10 8 /10
《 ES 》 ハマリ度:10 グラフィック:8 サウンド:8
言葉に宿る「フレムレト」。それは「力」となり、「祭祀」となり、「物語」となる。
本作「カルゥドの鳥」は、舞台内の全てを解き明かしていく探索アドベンチャーです。ストーリー・仕掛け・関門と言った典型的なものばかりではありません。本作で解き明かす最大のモノは「言語」。本作のストーリー・仕掛け・関門のすべてにこの「言語」がかかわってくるのです。
本作のストーリーを紐解く重要アイテム「儀式書」は、現実地球のどこにも無い架空言語で記されています。このままでは作中人物にも我々プレイヤーにも意味不明な古代語。しかし、主人公・ユライは自身の知識と能力によって、古代語を紐解いていきます。
初めに行うべきは、各所に散らばる古代文の取得。強固な呪術に守られた「儀式書」は解読できないユライでも、呪力の弱い遺跡にある古代文は解読できます(できるのだから仕方ない)。古代語が眠るマップは、画面右下に表示された「取得した数/置かれている数」、古代語が記された箇所に表示される光、様々な分かりやすい対策が施されているため、まず取りこぼしは起きないでしょう。
ただし、この段階では「大まかな文意が分かる」程度。古代文と翻訳で単語の対応を作るには、もうひと手間が必要です。メニューの「儀式書」→「古代文」を開いてみましょう。解読した複数の文から共通の単語を割り出し、その単語を付箋にしてくれます。この「付箋」を用い、ストーリー・仕掛け・関門を解いていくのです。
付箋を「儀式手順」に貼ると、対応する単語を翻訳してくれます。ただし、取得した付箋の中で「儀式手順」に載っている単語はごく一部。基本的に「儀式手順」の翻訳は、各地方のクリア後・「神鳥の聖域」で儀式を再現する直前に一気に張り付けていくのがおススメです。
地方内でも付箋を使う箇所があります。各マップは様々な関門が…ほとんどは超自然的な関門が道をふさいでいます。その関門を除去する方法は、「対応した古代語」。氷壁を溶かす語を、高い山を崩す語を、毒ガスを吹き払う語を、状況に合わせて関門に当てていく必要があります。
関門に使用すべき語は、基本的にその周囲で手に入れた古代文を翻訳して手に入れるものです。「それまでに取りこぼしがあると関門を超えられない」仕様にもなっており、基本的に展開は一本道となります。その冒険と翻訳研究の中で、ユライとプレイヤーが知る物語…古代文を取得していくと定期的に流れる「災厄の記憶」、各地方の最後に待つ「棄てられた写福(図書館)」、それと共に眠る「災厄から救ってくれた者の末路」…それは意外と重いものです。
作風とユライの性格により、グロテスクなどの不快感は極力抑えられていますが、それでもやはり、紐解かれるストーリーは「悲劇」ばかりです。
本作は、ユライとそれを操るプレイヤーで「その悲劇の繰り返しを止める」物語でもあるのです。過去の悲劇が作中現代にどう繋がるのか、ユライは、プレイヤーは、その悲劇に何という言葉で救いをかけるのか、それは、これからプレイする貴方の手で繰り広げ、そして、貴方の目で見てほしいのです。
特に、最も盛り上がる最後の問題は、ゲームファイル内にも「【最後の儀式答えの書】.txt」として記されているほど高難度かつ意外な解法ですが、私としては、全ての回答はノーヒントでクリアして欲しいです。特に最後の問題は「自力で解く」ことこそ感動のキーポイントとなるものです。私は、最後までストーリーをノーヒントで解き、そして、「ノーヒントで解いたからこその感動」を存分に味わいました。ハマり度を10点満点にした理由です。
ただ、本作に欠点が無いわけではありません。特にグラフィックにおいて。本作、立ち絵のあるキャラがユライと「仮面の男」の2人しかいません。重要人物がこの2人だけというわけではありません。ストーリー上重要なネームドキャラも、それ以上に濃いモブキャラも、本作内に多数登場します。
ダウンロードリンク先にある「旅に登場する人々」欄にも、シンド・テティ・フィダと言う各地方編のパートナーキャラクターが存在します。しかし、彼らにはキャラグラフィックがありません。役割としてもキャラクターとしても個性が強く、忘れがたい好人物ばかりなのに。
彼らのグラフィックを、ころころと変わる表情を見たかった…それが私の心残りです。本作は、ストーリー展開的に「ユライの冒険の一章」に過ぎません。「イース」シリーズなどに代表される股旅ものなのです。いくらでも続編を作れるこの展開、次回以降のウディコンでも新たなユライの物語を待望しております。その際には、キャラグラフィックを大幅に増やして。
《 赤松弥太郎 》 ハマリ度:8 グラフィック:9 サウンド:8
行け 軽やかに 行け 爽やかに
本作はジャンルの記述の隣に必ず、以下の注釈が書いてあります。それはもう、しつこいくらいに。
- いわゆる「言語解読ゲーム」ではありません、あくまで言葉の収集がメインです
まあ、そもそも言語解読ゲームをプレイしたことのない方にはピンとこないでしょうが、当サイトでもいくつか取り上げているので、プレイしてもらうとして。
一度でも言語解読ゲームをプレイしたことのある人なら、本作がどれだけ贅沢に架空言語を扱っているか気づくでしょう。
同じ単語の抽出や文意の推定、意味の入力まで、儀式書を開けばユライさんがフルオートでやってくれる……
解読システムも作り込んでたのに、それを捨てちゃったらしいんですよ。
せっかく作った架空言語を堪能してもらいたい、という気持ちをぐっと抑えて、面倒だからとバッサリカットしてしまうのは、すさまじい引き算の発想です。なかなかできることじゃない。
言語解読ゲームが好きな方にとっては、もったいないという気持ちが勝るでしょうね。
言語解読ゲームで一番楽しいところをみすみす捨て去ってるわけですから。
プレイヤーが手と頭を使い試行錯誤していく部分を、すべてオート進行にした結果、やることといえば定期的に儀式書を開いて古代文を確認するだけ。
解読した単語で儀式を読み解くところは手動ですが、頭を使う作業じゃありません。
ダンジョンの仕掛けに対しても、基本的に直近解読した単語を使えばいい親切設計なので……
いや、これは親切設計なのか? ショートカットを許さず、手抜きせずに古代文を漏らさず収集させたいというわがままじゃないのか?
ともあれ、どれだけ言語解読ゲームっぽいパッケージにしてあろうとも、内容はお使いゲーであることはすぐ露呈します。
近くで収集できるキーアイテムを拾って、障害を除去する、という流れは、至ってオーソドックスな探索ゲームのそれです。
儀式書を開いて解読する、というワンクッションも、ゲームとして楽しいわけではありません。
じゃあ、本作は何を楽しんでほしいのか。
提供できるだろう言語解読ゲームとしての楽しみを引き算して、何を際立たせたいのか。
……ストーリーだ、としか考えられません。
言語解読を中心にすると没入感の妨げになる、というより、多分本作は言語解読ゲームでは語りえない物語なのです。その特徴は、主人公・ユライの立ち位置に端的に現れています。
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ユライは祭司見習いの旅人です。
修行中だとは言っていますが、何かのミッションがあるようには見えません。
祭司になろうとする情熱は人一倍ですが、どんな祭司になりたいのか、祭司になって何をなしたいのか、明確なビジョンはまだありません。
そんな半可者の流れ者が、土着の儀式に、なかば興味本位で首を突っ込むところから、本作はスタートします。
そう、ユライは軽いのです。
なんとしてもその言葉を解読したいというモチベーションも、どうしてもその言語を使わなければならないという事情もありません。
ユライは祭司見習いのスゴイパワーで、単語も文法もわからないまま文字から意味を読み取れてしまうので、言語を学習する意欲を持ち合わせていません。
頭をふり絞って解読するシステムと、ユライのこの軽さはどうしても噛み合わないのですよ。
もちろんユライは責任感も持ち合わせていますよ! 念のため。
首を突っ込んだ理由も半分は、祭司として儀式を行うべきだという直感と使命感によるものです。
やり始めた責任があるから、うわべだけ眺めたり本を読むだけで済ませず、広い国土を旅して、実際の経験を通じて学ぼうとしているのです。
しかしそれでも、彼女が根を下ろしていないからこその限界はあります。
結局は来訪者であり、アロキャス言語の研究に生涯を捧げたり、レグノの地に骨を埋めるつもりはありません。
作者さんはユライを「知識欲のバケモノ」と呼びますが、その欲は、生涯をかけてヒルの脳細胞だけを究める「研究者」ではなく、広く浅く興味の赴くままに食い散らかす「もの知り」の方向性です。
本人にもその自覚はあるからこそ、土着の人への敬意を払うのですが、それは所詮旅人の礼儀であり、敬意に過ぎません。
そんな根無し草はどうしたって、土着の民との摩擦が避けられません。
各地で来訪者として迎えられたユライが、地元の協力者とともに、その土地の記憶を辿り、現在の問題にアプローチする。
3回繰り返される各章はいずれも同じ流れを辿り、最初は「部外者」と線を引かれていたユライが、次第に各地方の人々と交流し、打ち解け、相互に理解していきます。
一方で、決して「融合」することはありません。
同じ共通語で、近しいことを話していても、ユライと地元民の内心は、全く違う方向を向いていたりします。
これはバックグラウンドの違いというより、背負う者と背負わざる者の違いです。
あくまでユライは儀礼の実行にだけ責任を持ち、それ以上の地元の問題は背負わず、地方の中で解決するよう促します。
協力者もそれがわかっているから、ユライに依存せず、立場の違いがあるからこその協力関係を築いていくのです。
みなさんがユライに好感を持つかはわかりません。
ですが、共感はある程度せざるを得ないと思いますよ。
ボクたちフリーゲーマーもまた旅人であり、次々と作品を訪れては去っていく渡り鳥なのですから。
本作でなければ語れないストーリーは、たしかにある作品です。
ただゲームとして、プレイ体験としてはどうだったか。
評点します。
- ハマリ度 : 8 / 10
- 用意された仕掛けに対して達成感が低い。単語解読は爽快感に乏しい上、利用頻度がとても高いため、「儀式書を開かなくても自動解読してほしい」「演出ももっと短くしてほしい」と思わずにはおれない。その不満は究極「なんで古代語収集なんてするんだ?」という本作の骨格への疑問に直結する。古代語を収集すること自体の楽しみを十分に提示できておらず、余計なクッションに見えてしまう。
先述のとおり、各地域の3章は同工異曲で予定調和。それぞれに違いはあり飽きが来るほどではないが、もう少し各章の作り自体を変えたほうが味が出たように思う。
- グラフィック : 9 / 10
- 現実的な光景を描いているとは思えない、色鮮やかで抽象的なマップ画面が一番目につく本作の顔であり、同時に好みの分かれるポイントだろう。描き下ろし2人の立ち絵とキャラチップもとても良い味を出している。
- サウンド : 8 / 10
- 数々のピアノ曲を中心に、非ピアノ曲でアクセントをつけていく選曲。曲数は多いものの、特にピアノ曲はイメージが重なりやすく、一曲一曲の印象は薄まりがち。
定住民に対する憧れと敬意は持ちながらも、それでも「軽薄だって根無し草だっていいじゃない」という、エールのように感じられました。
なかなか軽やかには生きられない、ボクのような人の心も、きっと本作は軽やかにしてくれるはずです。