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■ EXTRAPOWER ATTACK OF DARKFORCE

タイトル
作者 [ LUCKY LAMP PROJECT さま ]
ジャンル [ シミュレーションRPG ]
容量・圧縮形式 [ 200MB・ZIP ]
製作ツール [ シミュレーションRPGツクール95 ]
言語 [ 日本語 ]
配布元 ダウンロード先

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レビュワーハマリ度グラフィック サウンド合計総合判定
ES 9 /10 9 /10 10/10 53/60 B
赤松弥太郎 7 /10 9 /10 9 /10

 《 ES 》  ハマリ度:9 グラフィック:9 サウンド:10

ヒーローになるとき!(Ah~ha~)それは今!

ハマり度:9/10
グイグイ引っ張られるストーリーが、良くも悪くも第一要素。
ただ、敗北条件がハッキリしないために、所々戦法ミスを引き起こしかねない場所(脱出ステージなど)があるので、こまめなセーブを取るなどの注意が必要である。
グラフィック:9/10
使える色が少ないシミュツク95だと、少し荒く見える絵柄であるが、これだけのキャラクターの顔グラ・マップチップ・イベント画像を全て一人で作り上げたニードル・サンドマン氏の実力は、素直に恐れ入る。
色数制限の無い場所でのニードル・サンドマン氏の実力は、Pixivで存分に味わっていただきたい。
サウンド:10/10
全51曲(!)にも及ぶBGMも、全てLUCKY LAMP PROJECTによる自作である。
ルリティア・グレンタイガー・ゲッコウウルフには専用テーマソングがあり、もちろん、彼らが活躍するシーンにはバッチリ流れる仕様! これで燃えなきゃヒーローは語れない!

今回お送りする「EXTRAPOWER ATTACK OF DARKFORCE」は、いわゆるクロスオーバーもの。クロスオーバーの元祖・アメコミヒーローのみならず、日本の特撮ヒーローや魔女っ子・ニンジャ・中華風道士・SFヒーロー・「寄○獣」まで、幅広くフォローしています。
もちろん、登場するヒーローたちは、ブラックベリー VS 勇者ゾフィ一行・ヒカリ戦士 VS ヤミ一族・フェイたち VS 呉大人・SPICA VS ベム軍団・そして、シャークン拷たちスーパースターとダークフォースの闘いなど、「EXTRAPOWER」のストーリー開始前の段階で、多大な戦いを繰り広げているはずですが…そんなプレストーリーは見事にハショられています。
最も、ストーリーと関わる部分は、後々のイベントで明かされていきますが…。

そう、「EXTRAPOWER」の大きな魅力は、「ぐいぐい引っ張るストーリー」ただ一つです(断言)!
…えっ、常々「ストーリーや絵だけで、ゲーマーを引っ張っていけると思ったら大間違いだ!」と言っている私が、まずストーリーに触れるのが、変ですか?
何を言いますか! そんな私がまずストーリーに触れると言うことは、それ程のめり込めるストーリーだと言うことです!

このゲームのストーリー構成は、「引き」を非常に大切にしていることがよく分かります。最初のステージから、「ブラックベリー VS 勇者ゾフィのダイヤモンド争奪戦」から「雲泥田の乱入」へと繋がり、全く別のストーリーである「PMEC・金霊館連合軍 VS 呉大人の超霊水争奪戦」に絡んでいく…と、「別々のストーリー体系が絡まりあう」という「クロスオーバー作品の面白さ」を体現した構成になっているのです。
ただし、普通のアメコミやダイナミックプロ作品などで描かれる「クロスオーバー」は、ネタ元のお話があらかじめ読者に知れ渡った状態、すなわち、「クロスオーバーされた登場人物の人となりが、ある程度理解されている状態」で描かれています。
対して、「EXTRAPOWER」の登場人物は、当然ながら、全員「EXTRAPOWER」が初登場作品。「登場人物の人となりをあらかじめ知る」ためには、同梱の「キャラクター紹介.html」を見る他ありません。
「登場人物の人となりを完全に知る」と言うのは、キャラ数の膨大な「EXTRAPOWER」では、とても完璧とはいえません。しかし、この部分は、いわゆる「謎が謎を呼ぶ」ヒーロー物には欠かせない要素。「EXTRAPOWER」の引っ張り要素として、我々プレイヤーを惹きつけてくれます。
語られない部分は、想像で補える方ならば、より一層楽しめること請け合いです。

以前の「B.B.ライダー」では、「プレイヤーが切り開くストーリーとイベントで流れるストーリーが乖離している」と言う「ストーリー性の高いゲームが持つジレンマ」を挙げましたが、この「EXTRAPOWER」では、その欠点も感じません。「プレイヤーが切り開いていくストーリー」と「イベントで流れるストーリー」がキッチリと合わさっているのです。
時には、「現在のレベルでは一発死確実の雲泥田・面相間のタッグに対し、目標地点まで逃げ切る」「孤軍奮闘のグラディウスを、大群+中ボスにボコされないように目標地点に運ぶ」と言う、普段の殲滅戦とは違う攻略法が必要なステージもありますが、ストーリーの流れで、「こいつら死なさない!」と思わせてくれ、作戦にも身が入ります。
(ただ、それだけに「敗北条件の明示」も欲しかった。このゲームの唯一の欠点だと思います。)

普段の私のレビューでは軽視しがちな「ストーリー」も、ここまでやってくれれば「見事!」と言うしかありません。
某氏のパクリですが、あえて、このセリフでまとめます。

お前ら皆大好きだ!

 《 赤松弥太郎 》  ハマリ度:7 グラフィック:9 サウンド:9

Just feel it, Don't think 'bout it キミだけの道 !

ハマリ度 : 7 / 10
 メンバー編成ができるようになる中盤からのバランス調整がシビアすぎ、育て方が悪いと詰む。仕様上セーブスロットが8つしかないので、1話クリアする毎にセーブファイルのバックアップを強く推奨する。
 SRPGツクールの仕様によるテンポの悪さに加え、PCが多く、戦闘アニメにもこだわっているため、1ステージ毎のプレイ時間はかなり長い。できれば省略しないでやってもらいたい反面、忙しい方は当サイトで紹介している各種加速ツールの使用も考慮する必要があるだろう。
グラフィック : 9 / 10
 ツールの仕様による制約の多い中、よくぞここまで描き込んだと思わせる量と質。
 しかし、キャラクター毎に画風をわざと変えるという方法は、完成したゲームのグラフィックとして考えると疑問がある。それで徹底しているわけでもなく、同じ一枚絵の中でも描き方が安定しないキャラもいる。
サウンド : 9 / 10
 全51曲すべて自作。今となっては古めかしく聞こえる作風ではあるが、それが本作の空気とは実によくマッチしている。
 残念なのは、ツールの仕様上、ロードをすると最初から再生し直されてしまうこと。多用されている曲、たとえば序盤から戦闘で使用されている「Heroes Spirits」はそのせいで聞き飽きもある。

 誤解のないように言っておきますが、私は本作を高く評価しています。
 しかし残念ながら、このように点数の形で評価すると、どうしてもその良さを伝えきることができません。激辛のシステム的問題ということではなく、どのような評点基準を持ってきても、本作の良さは伝えられないだろうと思うのです。
 とてもオーソドックスな作品で、独創性はありません。意外性のあるどんでん返しや、際立ったシステム面の工夫も、実は特に見あたりません。とても長い作品なのですが、単調という批判は免れないでしょう。
 確かにニードルさんのグラフィックは、本作の顔となる特徴です。しかし、荒削りです。「味がある」と評価されるか、「クセが強い」と避けられるか、それはプレイヤー次第のところです。
 本作が「スルメゲー」「まずは10話プレイしてください」と紹介されることが多いのは、つまり第一印象では語れない良さがあるということなんですが、上に書いた短所は結局、最後まで変わることはありません。
 本作が肌に合わない人もいるのは事実で、ダウンロードサイトの感想掲示板では批判や辛辣な意見も目立ちます。

 そうですね。まずは想像してみてください。自分の知っている参戦作品が1つもないスパロボを。
 参戦作品を1つ2つ知らなくても楽しめるように作ってあるとはいえ、まったく知らないとなると話は別です。
 元ネタのわからない掛け合いや、由来のわからない因縁が次々と出てくる超展開になってしまいます。
 好きこのんでやろうと思う人は、まあほとんどいないでしょうね。

 本作は、これにかなり近い部分があります。
 本作のヒーロー達は、誰もが単独で主役を張れるだけの背景を持っています。
 最終的にPCは22人に達しますが、うまく割り振れば、7作品くらいの中編が作れるはずです。
 それをみんなミキサーにぶち込んで、複雑に入り交じった世界を股に掛ける群像劇を、たった1つの作品で見せようとしているのです。
 53話程度では全然足りないということが、おわかりいただけるでしょう。
 それでも1人1人の魅せ場を描こうとするので、話はなかなか前へと進まず、それでも全体的に見ると説明不足になってしまっています。
 非常に困難、ほとんど無謀の領域です。
 特に中盤で、本作がお使いイベントの連続になってしまっているのも、この超難度のチャレンジをした結果かもしれません。

 「設計時点で無理がある」とか、批評家だったら言うんでしょうね。それも一理はあるでしょう。
 しかし、ちょっと待っていただきたい。その意見は、本作にとって有益なものでしょうか ?
 この作品のやりたいことに対し、それはあまりに本末転倒ではありませんか ?

 きっと読者の皆さんの中にも、昔、自分だけのヒーローを作っていた方はたくさんいらっしゃると思います。
 しかし、そうしたヒーロー達のほとんどは、誰に語られることもなく、やがて忘れ去られていきました。
 「中二病」だの「黒歴史」だのと書かれた箱の中に入れられた彼らの怨嗟の声が、しかしボクには聞こえてくるのです。
 そういうあまりにセンチメンタルな感情を忘れて生きていくのが大人というものなら、ボクは一生大人になれそうもありません。残念だけど、仕方ないね。
 だって、一度は愛したキャラクターではありませんか。
 それなのにボクたちは、彼らの顔も名前も、ほとんど忘れてしまっている。
 こんな哀しいこと無いと、ボクは思うんですよ。

 本作のヒーロー達も、中には作者が中学生の頃から、ずっと構想を温め続けていたものもあると聞きます。
 しかし、彼らは公に活躍する機会を与えられ、そしてボクたちの心の中に息づくことができたのです。
 本作に登場できなかったヒーローもまだまだいると聞きますが、彼らもまた、他の作品で登場する機会に恵まれるかもしれません。
 名も無きヒーロー達を自分の手で葬ってきたボクたちは、ある種の嫉妬にも似た感情で、彼らにボクたちが見ていた夢を託している……
 それはつまり、不器用であってもあるがままで、自分の作ったヒーローを世に問うという、作者の姿勢そのものによって引き起こされる感情だったりするのです。

 本作は、決して万人に受け入れられる作品ではないとボクは思っています。
 この作品に共感できるかどうかは、この作品の、ひいては作者の姿勢に共感できるか、という非常に私的な感情によって左右される部分が大きいからです。
 この作品はプレイヤーに媚びません。「こんなキャラなら人気が出るだろう」みたいな打算は一切ありません。
 ただ自分の感じたものを、自分の満足いく形で訴えただけなのだと思うのです。
 それが、これだけのプレイヤーの共感を得られたという結果は、まったく作者の想定を越えていたに違いありません。

 こういう、作者の意図せざる結果が生まれるところにこそ、創作の面白味があると思うのです。
 公開された創作物には、コミュニケーション手段としての側面が必ず存在します。
 意図したことをそのまま伝えるのが、きっと理想のコミュニケーションで、作者として目指すところなのでしょうが、
 プレイヤーとしてのボクは、それでも起こる意図せざる事故にこそ、ダイナミズムがあり、ドラマがあると信じています。
 そしてそれは、決して定式化できません。
 本作も、より楽しめるようなギミックを盛り込んで、ストーリーもメリハリを付けていけば、きっと今よりも楽しめる作品に仕上がっただろうとは思います。
 しかしそのために、例えばストーリーの安定性のために、キャラクターをばっさり削るようなことをしていたなら、
 本作からは今あるような魅力は失われていただろうと思うのです。

 言ってしまえば、本作は、そのあり方自体がまったくフリーゲームらしいのです。
 作者はプレイヤーに媚びることなく、自分の信じるところを作品に込め、
 プレイヤーは真摯に作品と長時間対話する、そういうコミュニケーションの在り方は、
 たとえばシェアゲームや、他の手段による創作ではできないものです。

 ボクが危機感を持っているのは、この作品がフリーゲームをまったく知らなかった作者によって生み出されたことです。
 思えば、今から十数年前、フリーゲームの傑作はみんなこんな感じだったような気がするのです。
 今よりずっとネット環境も悪く、フリーゲームの数自体が少なかったあの時代。
 プレイヤーが何を求めているのか、作者はずっと手探りの状態だっただろうと思います。
 だから、作者は自分が面白いと思ったものを、そのままストレートに出すより方法がなかったのです。
 その時代を支えたプレイヤー達がやがて、フリーゲーム界で1つの時代を築いていきます。

 ボクたちは、そういう「フリーゲームらしさ」に慣れすぎてしまって、大事なことを忘れていたのではないでしょうか。
 ボクは、今の20歳前の若い人たちこそ、この作品に触れてほしいと思っています。
 2chやら、ニコニコやら、即時性を売りにしたメディアとはひと味違う、
 時間を掛けたがっぷり四つのコミュニケーションの醍醐味に、ぜひ気づいてほしいのです。

 ……ということで、「アツい」「燃える」の単語を封印した感想文を書いてみました。
 ごまかしたくなかったんですよ、そういう抽象的かつあやふやな言葉で共感を得るようなやり方では。
 正直、本作の良さを伝えられた自信はないんですけれど、
 それでもこの文章から、本作をプレイしていない方にも「何か」を伝えることができれば、ボクとしては本望です。

 最後に、「ブラックベリーはぁはぁ」「むしろマリアに踏まれたい」といったレビューを期待していた全国の紳士の皆様にお詫び申し上げます。
 上記2名、およびシイラさんの18禁画像を描いたヤツはこの俺が許さんのでこっそりとボクのところに持ってくるように。以上。

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