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■ メビウスの迷宮

メビウスの迷宮
作者 [ KEN さま ]
ジャンル [ デッキ構築型/ローグライク系カードバトルRPG ]
容量・圧縮形式 [ 439MB・ZIP ]
製作ツール [ RPGツクールMZ ]
言語 [ 日本語 ]
配布元 ダウンロード先

(補足)
2024.07.12:現在の最新バージョンは、1.09です。

メビウスの迷宮 メビウスの迷宮 メビウスの迷宮 メビウスの迷宮 メビウスの迷宮

レビュワーハマリ度グラフィック サウンド合計総合判定
ES 9 /10 8 /10 8 /10 52/60 B
赤松弥太郎 9 /10 8 /10 8 /10

 《 ES 》  ハマリ度:9 グラフィック:8 サウンド:8

4色の冒険、4色の戦法、4色の人模様

本作「メビウスの迷宮」は、ローグライク要素・デッキ構築要素を取り入れたノンフィールド型RPG…このジャンルは、告知でも言及したとおり、「脳筋魔法使いは進学したい」「ローグライクVida」「不屈のスペラ」と多数取り上げています。
その中で、本作「メビウスの迷宮」の特徴は、主人公4名の「個性」。戦いで使うカードから、プロローグからエピローグまでの生い立ち。すべてにおいて四者四様の違いがあります。

本作のデッキ構築は、4人で全く異なります。
「脳筋魔法使いは進学したい」「不屈のスペラ」では、主人公は1人のみ。ほぼまっさらの状態から、ローグライト方式でスキルを厳選するシステムでした。
「ローグライクVida」では、初期デッキこそキャラ別固定ですが、アイテムで追加カードを選択できる仕様です。
対して、「メビウスの迷宮」のデッキは、初期デッキも追加カードも4人で共通点は全くありません。最大3つ持てるアイテムこそ存在しますが、1発限りの使い捨て。各4人で特徴の強いデッキをどう操り、どう育てていくか、それが「メビウスの迷宮」の基本戦法となります。

最初のキャラ・緑のレンジャー「ミレイユ」は、初回キャラだけありデッキの構築法が分かりやすくなっています。「衰弱」と「幻影の矢」、2つのコンボパーツです。
彼女のデッキには、「衰弱」によって威力の上がる攻撃が数多く、スタック(状態異常マーク右下に書かれた数値。持続ターン数と影響力…ターン毎に受けるダメージなどを表す)の大きさに比例して上がっていきます。
また、彼女の持つ特殊カード「幻影の矢」は、デッキに入った枚数分、弓マークの付いたカードの威力にボーナスが掛かります。「幻影の矢」を溜めるスキルをいかに連続して使える体制に持っていくか、これが彼女の真骨頂となります。

プレイ回数を増やすごとに、使用キャラも増えていきます。この「プレイ回数」は、進行度は問われません。志半ばで倒れても、初見で最下層までクリアしても、「プレイ回数1回」とカウントされます。
最初に開放される赤のウォーリアー「オーディン」。彼は「炎上」という状態異常を自己・相手に付与して攻撃の威力を上げるのがメイン能力。
ターン毎にスリップダメージを受ける「炎上」。当然、それを自分に付与するということはとんでもない不利ですが、炎上付与で上がる威力はかなり高めですし、「炎上」ダメージをある程度踏み倒せる強化もSP使用で獲得できます。
ただし、彼のスキルの中には「炎上を溜めれば溜めるほど強力になるカード・強化」と「炎上が0の場合に有効となるカード・強化」が共に備わっています。「炎上を解除するスキル」もあるため、炎上を溜めるか解除するか、状況に応じた切替が必要になります。

3番目の青のフェンサー「エリオ」。「炎上」がカギのオーディンに対し、エリオは「出血」がカギとなっています。スタックが溜まるごとに受けるダメージが増える「出血」。HPの低いエリオがその状態異常を自ら付与することはかなり不利ですが、それ故に「自身に出血を付与する」スキルをコスト0で連発したうえで、自身の出血スタック分シールドを付与する「死神との契約」を締めに使うというコンボは非常に強力。
エリオには「条件によってコストが下がるカード」が数多くあり、その条件を満たすために出す順番を考える必要があります。
相手に手を与えず、一方的に蹂躙する…それがフェンサー、そしてエリオの戦い方なのです。
ちなみに、コンボパーツの要ともいえる「死神との契約」ですが、自身の出血スタック分の自傷ダメージを受けることに注意。自傷ダメージでもHP0になった瞬間ゲームオーバーなので、タイミングを間違うと逆に敗因となってしまいます。

最後に開放されるのは黄色のソーサラー「ノア」。彼女はカードの枚数もそのコンボパターンも随一。すなわち、最も使いづらいキャラでもあります。
dust(4つ溜めると「覚醒」し、大半のカードを強化するゲージ)が0でないと使用できないカード。「術式」「烙印」「頭痛」という彼女固有のスタックや状態異常。それらを付け外しすることで追加効果を発揮するカード。…覚えなければいけない項目も随一です。
「状況を操る」こそが彼女の強さ。寄ってくるカードに応じて、「術式」「烙印」「頭痛」のどれを主軸に据えるか考えながらデッキ構築をしていきましょう。

本作、「階層クリアごとにHP全回復」「[破棄]が無いカードは、山札が0になると捨て札から再装填される」など、難易度としては簡単な部類には入りますが、それでも「死ねる要素」は数多く存在します。
いいカードが来なくて、うっかり出す順番を間違えて、カギとなるスタックを溜めすぎて/溜められなくて…真価が発揮できない状況は多々発生します。
特に、最下層ではSPや資金を溜められないため、3層目をギリギリでクリアすると、ラスボスを倒すためのリソースが不足しがちです。
SPで解放する強化、妖精の店や宝箱で手に入るアイテムは強力無比なだけに、限りある枠を何に使うか、どこで解放するかが最重要となります。
1周のプレイ時間自体は短めなので、あきらめずにトライしていきましょう。

本作のもう一つの楽しみは、4人の進行状況によって解放されるストーリー。ミレイユ→オーディン→エリオ→ノアの順に解放されるストーリー、4人の意外な関りと、意外な「隠された面」を知るために、こちらも併せて読み進めて行きましょう。
最初に開放され、最後になるまで2章目以降は解放されない「エピローグ」、貴方は最後まで開放できるでしょうか?

 《 赤松弥太郎 》  ハマリ度:9 グラフィック:8 サウンド:8

奇跡 切り札は自分だけ

 カードゲーム、RPG、アクション、他にも色々ありますが、かなりの部分のゲームにおいて、ストーリーとバトルは二律背反です。
 ストーリーを楽しみたいと考えるプレイヤーは、えてしてバトルは楽したい、悩みたくないと考えます。どれほど楽しく面白いバトルであったとしても、ストーリーの流れがそれによって途切れたり、詰まってしまうことを恐れます。
 一方でバトルを楽しみたいと考えるプレイヤーは、ストーリーは最小限でいい、何なら無くたって構わないと考えがちです。バトルがストーリーによって途切れてしまうことを嫌うのです。
 ストーリーとバトルが相互補完関係にあるのが理想でしょうが、バランスを取るのは実のところ難しい問題です。

 イチオシで取り上げた作品でも、両者のバランスの取り方は様々です。
 極端にストーリーに振る作品もあれば、極端にバトルに振る作品もありました。
 中にはバランスが破綻しており、そのせいで不快感があることをレビュワーに指摘される作品さえありました。
 イチオシに選ばれたのは、それでもなお魅力があるからでしたが、このバランスの悪さが無ければ、と悔やまれる作品もまた多かったのです。

 本作はどのようにストーリーとバトルのバランスを取ったのか。
 バトルとストーリー、両方を丁寧に作り込んだ上で、両者を干渉しないように配置しました。
 バトルを楽しみたい人には、最小限のストーリーだけ見れば済むように、
 ストーリーを楽しみたい人には、考え込まずに楽しめる程度のバトルだけで済むように、
 間口を広く作ってあります。

オープニング

 とりあえずニューゲームを選択して始めると、本当に必要最小限のオープニングが流れます。
 ラスボスを倒したところで、ほんの少しの独白をつぶやいただけで幕引き、そのままリザルト画面に移ります。
 なんなら全部読み飛ばしたって問題ないレベルの内容でしかありません。
 そして、一度読んだオープニング・エンディングは二度と表示されません。
 別にこれは、ミレイユが最初に選べる操作キャラだからというわけではなく、どのキャラでも、最後に選べるようになるキャラでも、大きくは変わりません。
 敢えて知りたいと願わなければ、本作はまったくストーリーを気にせずプレイできます。

 それじゃあ味気なさすぎる、と思うストーリーを重視するあなた。
 ご安心ください。本作は手応えのあるバックストーリーを、作中に用意しています。
 一度でもゲームオーバーなり、クリアなりすれば、タイトルの「EXTRA」が解放、ストーリーが読めるようになります。

ストーリーモード

 用意されたストーリーは、各操作キャラのシナリオ10話と、ラスボス撃破後の顛末を描いたエピローグ8話、あわせて48話。
 各話かなりの分量で、なぜ彼らがメビウスの迷宮に挑むことになったのか、その経緯と因縁が語られます。
 すべてが語られるわけではありませんが、行間から想像できる程度の絶妙な塩梅です。
 新たなストーリーが解放される度に、複雑に入り組んだ人間関係が明かされていき、あなたの知的好奇心を大いに満たしてくれるでしょう。

人物関係図

 ……ミレイユって、比較的蚊帳の外じゃない? ということも、次第にわかってくるでしょう。

カード一覧

 カード一覧機能も、攻略情報というよりは、どちらかというと背景の補足という面が大きいです。
 本作は、状態異常を除く全カードがキャラ固有です。最も少ないミレイユでも35個のスキルがあり、状態異常も含めたカードは全部で162枚
 そのすべてに、まとまった分量のフレーバーテキストが書き込まれているのです。
 贅沢と言わずしてなんでしょうか。

 ただし、この豊かなストーリーを満喫するには、全キャラクリア、最低限4周が必要になります。
 1周のボリュームが少ないとはいえ、4周も同じゲームをクリアして飽きないか?
 そう懸念するのはもっともですが、ご安心ください。ボクの経験上、まったく飽きませんでした。
 ルールこそ共通ですが、全カード・全スキルがキャラ固有という特徴が、キャラ毎に大きく異なるプレイ体験をもたらしてくれます。

 ミレイユは、堅実に守り攻めることができるハイスタンダードキャラで、本作の入門にうってつけです。
 その後、自傷による攻撃力増強がカギとなる、HPは高いが管理に気配りが必要な「ウォリアー」、
 攻撃力は高いがHPが低く、攻めと守りのバランスを欠くと一気にゲームオーバーが近づく「フェンサー」、
 カード数が一番多い上に癖が強く、使いこなせば強力な手札の選択が楽しい「ソーサラー」が順次解放されます。
 キャラ毎に狙いや勝ち筋がそれぞれ違っていて、各キャラの得意パターンに持ち込んだ時の爽快感も違ってきます。

チュートリアル

 ローグライクになじみの薄い方でも安心してください。
 難易度BEGINNERでは、ローグライク的な難しさは最小限に留められています。
 ローグライクの難しさって、不完全な情報、先行きの見えない状況を把握しながら取捨選択していくことの難しさだと思うんですよ。特に「捨てる」という決断が難しいんです。
 その点難易度BEGINNERでは、「捨てる」という選択をする必要がありません。

 BEGINNERではキャンプに入るだけでHPが十分回復するので、その上休息する必要が無く、すべてのキャンプを鍛錬に回せます。
 さすがに全スキル修得できるほどのSPは稼げませんが、それでも8割方のスキルは修得できるので、手当たり次第好きなスキルを修得しちゃって大丈夫です。
 取得カード選択も、提示されたカードから「これ」とピンと来たカードをとりあえず突っ込んじゃって大丈夫です。
 チュートリアルで「あえて入手しないことも重要」とか、妖精の店や神殿でのカード破棄の手順とか紹介してますが、BEGINNERでは一切する必要がありません。
 敵はとりあえず全部倒し、自分の好きなスキルを修得し、好きなカードを選ぶだけ、という脳直プレイでも初見クリアできる程度の難易度に収まっています。
 あとはルールを把握し、戦闘できちんと立ち回れば、ほどよい緊張感をもって4周クリアできるでしょう。
 ルールも簡潔明瞭ですからね。

 さて、お待たせしました、バトルを待ち望む皆さん。
 「そんなぬるいローグライクなど求めていない」とおっしゃいたいのでしょう?
 情け容赦のないローグライクを望みますか?
 常に取捨選択に頭を悩ませ、一瞬の隙で敗北する、ひりつくようなローグライクを望みますか?
 よろしい、ならばVETERANだ。

 VETERANでの変更点は「敵のステータス強化」と「キャンプでの自動回復の削除」、あとは所持金削減、と至ってシンプルですが良く効きます。
 敵のステータス強化と一口に言っても、赤ドクロに対策無しで挑むとゲームオーバーになるレベルです。
 序盤のうちは青ドクロでSPとカードを稼ぎ、祭壇で必要なスキル構築をしていく必要がありますが、そこで立ちはだかるのがキャンプの自動回復削除。
 BEGINNERではSP稼ぎに利用されていたキャンプが、ほぼ休息にしか回せなくなり、修得できるスキルが激減します。
 状況に応じて、今持っているカードに合わせてスキルを修得する、また今修得しているスキルに合わせたカードを選択する必要が出てくるのです。
 そうなってやっと、敢えてカードを入手しない、また不要になったカードを破棄するといった、デッキ構築行動に意味が出てきます。

 本作のバトルの真髄を味わうための難易度、ではありますが初見の方にはまったくオススメしません。
 ボクのように1回や2回BEGINNERでクリアした程度ではまだダメで、そのキャラの動かし方をきちんと理解しないと、とてもVETERANクリアには至りません。
 しかし、焦る必要はありません。VETERANでも自キャラの性能はまったく変わっていません。動かし方はBEGINNERで学習できるのです。
 挑戦的な難易度ですが、クリアできればきっと、大きな充足感が得られることでしょう。
 ……ええ、それだけですが、何か。
 だって、ストーリーの追加とかコンテンツ解放とか、バトルジャンキーのあなたはそんなもの求めてないでしょう?

 このように、本作はストーリーを求める人、バトルを求める人両方の要求に応える作品になっています。
 両者が住み分けられるよう配慮したこのやり方、しかし見ようによってはストーリーとバトルの融合を諦めているとも言えるのでは……?
 などと穿ったことを考えつつ評点に移ります。

ハマリ度 : 9 / 10
 4人分、個性の異なるカードを用意した作り込みの勝利。下手をすれば4つ分のゲームが作れるだけの調整を1つのゲームで行っている。
 各キャラのオープニングとエンディングは、それでも人によっては演出が長いと感じられるかもしれない。どうせならいつでもスキップできるようにして、ストーリーの中で回想できるようにした方が徹底しただろう。
 各フロアボス・ラスボスは各キャラごとに個別だが、バトルの中ではあまり際立たず、ストーリーとのリンクはごく一部のスキル名程度に留まる。ストーリー解放通知はキャプター単位、つまり当該キャラを選択した最初のプレイ終了時にしか無く、フロア攻略単位では通知されない。控えめにでも新しいストーリーが読めるようになった通知は欲しい。
グラフィック : 8 / 10
 キャラ立ち絵と一部カードのみ描き下ろし、だが立ち絵が表示される機会はキャラ選択画面程度しか無く、効果的に使われているとは言いがたい。
 スキル選択画面、既に修得済みのスキルに枠を表示するのは構わないが、カーソル枠と重なってしまってカーソルを見失う仕様は是非改めてほしい。
サウンド : 8 / 10
 実は収録曲数がかなり多い。ストーリーとダンジョン曲、特にダンジョンは各キャラ・各フロア毎に探索曲も戦闘曲もボス曲も変わっていくため、曲あたりの聴く時間はかなり短く、印象に残りづらい。
 ここもストーリーとリンクがあった方が印象に残っただろうと思う。

 難易度VETERANはカードゲームやローグライクに慣れた人を大きく満足させるでしょうが、そういう人は放っておいても本作をプレイするだろうからいいとして。
 ボクとしては、今までローグライク・カードゲームに慣れ親しんでいない、苦手意識のある方に本作をオススメしたいです。
 本作はそうした初心者の人にも、カードゲームやローグライクの楽しみを雰囲気だけでも味わえる、とても良い作品です。
 クリアできなくても、2回ゲームオーバーになれば、次のキャラが解放される仕様なので、ぜひ4人全員の解放をまずは目指していただきたい。
 その頃にはきっと、ストーリーの続きが読みたくて仕方なくなっていることでしょうから。

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