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■ 魔機人形と棄てられた世界

魔機人形と棄てられた世界
作者 [ 饗庭淵 さま ]
ジャンル [ 仲間に戦闘を丸投げするアクションRPG ]
容量・圧縮形式 [ 241MB・ZIP, ブラウザゲーム ]
製作ツール [ RPGツクールMV ]
言語 [ 日本語 ]
配布元 ダウンロード先

(補足)
2023.06.28:ゲームアツマールのサービス終了に伴い、リンクを変更。

魔機人形と棄てられた世界 魔機人形と棄てられた世界 魔機人形と棄てられた世界 魔機人形と棄てられた世界 魔機人形と棄てられた世界 魔機人形と棄てられた世界

レビュワーハマリ度グラフィック サウンド合計総合判定
ES 9 /10 9 /10 8 /10 54/60 A
赤松弥太郎 9 /10 10/10 9 /10

 《 ES 》  ハマリ度:9 グラフィック:9 サウンド:8

本作、「魔機人形と棄てられた世界」は、同作者の前作「人類滅亡後のPinocchia」をベースにしている部分が見られます。
プレイしにくかった部分を分かりやすく、ウリにしていた・ウケの良かった部分をより発展させたゲームになっています。
本作で特徴的なのは、プレイヤーの剣・盾となる「人形」も「1日寝れば全回復」する仕組みです。戦闘不能者の蘇生もやりやすくなりました。「Pinocchia」で最も苦悩した「摩耗していくリソースによる焦燥」を緩和しているのです。
そして、リソース管理を緩和した分、素材集めのハック&スラッシュは、より細かく、より楽しく、そしてより難しくなりました。ノンフィールド型だった「Pinocchia」に比べ、「魔機人形」のダンジョンはかなり複雑な「迷宮」になっています。分かれ道の先には宝も眠ればモンスターハウスも待っている。常に危険と隣り合わせのアクションを体感させられます。

本作のスリル及び難しさの要因は2点あります。マップの暗さと主人公の脆弱さです。そして、どちらも作者が意図して調整したバランスなのです。
本作の基本は「安全地帯を確保し、広げること」です。一歩先に怪物がいる恐怖と戦いながら、怪しい暗がりに人形たちを突撃させ、掃討する必要があるのです。本作のマップの暗さ・主人公の脆弱さは、この暗闇の恐怖と、道を切り開く楽しみを味合わせるためのバランスなのです。
それほどに、本作の主人公は脆弱です。攻撃手段は皆無、それ故に敵に追いつかれるとなす術もなく殴られる他ありません。決して人形たちに先行してはいけません。手榴弾などの攻撃アイテム役・場合によっては壁役として縦横無尽に活躍した「Pinocchia」の主人公とは全く性能が違うことを覚悟してからプレイしてください。ゲーム内でも散々言われる注意事項です。

それを補うため、攻撃役である「人形」たちは、かなり強力に設定されています。「HPがいくら減っても回復薬の性能が落ちない」という点だけで、涙が出るほどありがたい仕様です。
そして、本作の人形の最大の特徴が「成長1つの効果が大きい」ということ。ステータスを増加させる「エンハンス」を1つ持たせれば劇的に性能が上がります。「ソードエンハンス」を1つ持たせれば攻撃力2倍(2ダメージ)、もう1つ持たせれば更に1.5倍(3ダメージ)というレベル。この1ダメージが本気で生存を分けるバランスなのです。
加入初期では4つしか装備枠が無く、エンハンス2つに回復薬を持たせるのがやっとですが、この装備枠もプレイから程なくして拡張装置を作成できます。もっとも、拡張装置に使う素材も、拡張そのものに使う素材も大量に必要なのですが。

そして、この素材集めの選択が本作の悩みどころです。本作で製造できるアイテムは、例外なく「星の欠片」という低レアアイテムを大量に使用します。低レアなのでどの怪物も万遍なく落としますが、それでもイの一番に無くなるのが「星の欠片」なのです。「星の欠片」を集めるために弱い怪物を大量殺戮するのか、高レアの素材を求めて難しいダンジョンに挑むのか、在庫と相談して状況判断する必要があるのです。
話をちょっと進めるだけで、そのままでは合成に使えないため分解炉が必要な「残骸」、素材種別の増加に伴って迫られる倉庫の拡張、欲しい物がどんどん増えていく仕組みになっています。

本作の楽しみである「人形の成長」ですが、ストーリー上では「成長できる人形」は悲劇の産物として扱われています。一筋縄ではいかないストーリーもまた「魔機人形」の特徴なのです。
ダンジョン最深部に眠る人形たち。彼女たちは、その性能・生い立ち・人形と化した理由が様々です。時には定期的に見る夢として、時にはダンジョンに落ちた資料として、彼女たちのストーリーが語られるのです。
性格も見た目も性能も様々な人形たち。彼女たちの真相を追うのもまた本作の楽しみなのです。

そんな楽しみが多数詰まった本作ですが、それを味わうための試練はやはり難解です。ダンジョン内には定期的にモンスターハウスが発生し、(「Pinocchia」より素材は軽めになったとはいえ、それでも)貴重な回復薬を消費させ、場合によっては人形たちを再びダウンさせてしまいます。貴重な「再起動コア」で再起動させるか、回収して撤退するか、少しでも手間取れば主人公自身がダウンしてしまいます。
成長の道筋が見えるまでの苦労は、今までの饗庭淵氏と同じくかなりのストレスです。しかし、本作ではその「成長の道筋」も見えやすくなっています。ただし、場合によっては「成長の道筋」を開いてくれる資料を見落としているかもしれません。それを防ぐためにも、隅々までマップを見渡しましょう。心配せずとも、本作は右も左も分からない探索さえ楽しめる仕掛けになっています。

 《 赤松弥太郎 》  ハマリ度:9 グラフィック:10 サウンド:9

立ち止まるなら 心に二度と 火は付かないさ

投票くださった皆様、ありがとうございます。
滅んだ世界って、いいですよね……。
これからもいろんな世界を滅ぼしていきたいと思います。
よろしくお願いします。
 フリゲ2019 あなたが選ぶ今年のベストフリーゲームより 饗庭淵様コメント

 いいですよね!!

 改めて振り返ると饗庭さんの作品って、滅んだ世界……というより、壊れた世界を描くことについては姿勢が一貫しています。
 処女作の「mec」に始まり、「カリス」「ピノキア」もまさにそれ。「ロリ巨乳の里にて」「英雄候補者たち」も大概壊れてます。
 「幽獄の14日間」も広い意味で、詰んでいる状況の閉塞感を楽しむ作品、と言えるでしょう。
 饗庭さんの描く世界は、だいたい過酷で緊迫感溢れるものですが、その中にも、滅びの美がどこかしら感じられるのです。
 黒先輩? あれはほら、壊れた先輩を探索するゲームだから……

 そして、滅んだ世界の美という観点は、フリーゲームの歴史に根付いた文化でもあります。
 やはり「Nepheshel」「イストワール」が与えた影響は、避けては語れないでしょうね。
 最低限の世界観を作って、放り込んでおけば、あとはプレイヤーが妄想で補完してくれる、という作者にとっての利益が、おそらく普及の背景にあると思われます。
 饗庭さんにも、ネフェ・イストから影響を受けたと明言しているRPG「カリスは影差す迷宮で」が既にあります。
 本作の位置づけは、設定的なつながりをさておくとしても、「カリス」に対する「まももと言って良いでしょう。

ワールドマップ  今回舞台になる世界は、このなんだかギザギザした大陸です。
 マップからも、森や山、そしてかつての都市の跡が見てとれます。
 しかし、見てくれだけで判断するのは危険です。ネフェだって、あんな小さなワールドマップにとんでもない量の探索ポイントが積み重なっていたわけですし。
 ここはかつて、魔術師達が住んでいた世界。そして今なお、人間を即死させる毒素で満たされた世界です。
 何があってもおかしくはありません。

初期マップ  だって初っ端からリメイさんが、「彷徨い森が捕獲されている」って不穏な言霊を吐いてますし。
 森を捕獲しているって、どういうこと?
 しかしこれは何の間違いでもなく、某財団が聞いたらたちどころに確保・収容・保護に乗り出す案件であり、妥当な表現なのです。
 なんだか不穏だけど、世界が滅んでから数百年、特に何もなかったわけですし、ここは安全ですね。ヨシ!

 聞き慣れない言葉というと、記憶を武装するとか書いてありました。
 リメイさんに最初に装備させた「剣」は剣そのものでは無く、剣の記憶なんですって。
 でも、宝箱の中に入ってたよね? 装備はできないけど、主人公も「持つ」ことはできるんだよね?
 一体どういう形状の代物なんでしょうか?
 作者の人そこまで考えてないと思うよ謎は深まる一方です。

鉱山  次の目的地は「夢追い鉱山」ですって。
 本作のダンジョンのネーミングには光るものがあります。過去の先例と比べても見劣りしていません。
 なんでも、鉱山の奥に秘密の研究所があって、そこにもう1体人形があるとのこと。
 洞窟の奥を歩いている内に、突如人工物でできた建物の中に侵入していくのはいいものです。中に誰もいなくとも、潜入している気分になれます。

 それ以外の場所は、普通に鉱山です。
 鉱物素材収集のために何度も来るでしょうし、かなり奥が深いダンジョンなので、3日くらいかけないと踏破は難しいでしょう。
 ボクのように、無理して2日で踏破する必要はありません。
 本作には日数カウントがありますが、日数制限はありません。ペナルティも、一部の場所の敵が強くなる程度です。
 むしろ日数経過によって、人形の夢というストーリー要素が解放されるため、日数をかけることが推奨されます。
 ボクのように、初見で10日かけずにクリアすると、色々ストーリーを見逃すことになるので、もったいないですよ。

 なお、饗庭さんの作品で、普通に洞窟だということは、普通にニワトリがいて、普通に爆発する、ということです。
 なぜニワトリが爆発するかって? そんなこと、俺が知るか。

屋敷  ここからは自由度が上がってきますが、やはり人形を増やすことを優先した方が良いでしょう。
 人形が1体から2体に増えた時、確実に強くなったことが実感できたと思います。こと本作では戦いは数です。
 味方を繰り出して壁を作り、無防備な主人公を守るのが本作の基本スタイルなので、味方の数が継戦力に直結します。

 ということでやって来た、3体目の人形がある屋敷です。
 「岬の屋敷」ということで、風光明媚な場所を想像してきたら、なんだか薄暗いし、中では人魂が飛び交ってるし、とってもイヤな雰囲気です。
 なーんか、どこかで見覚えある気がするんですよねこのお屋敷。
 難易度も1つ上がって★2つになっています。2体の人形をかなり鍛えないと、3体目の確保は難しいでしょう。
 3体目を確保できれば、これからの探索はだいぶ楽になります。人形は記憶を同種類でも何個でも装備できるので、多刀流を試しましょう。

 今までのところ、薄暗くてヤな感じな場所ばかりですが、もちろんそうじゃない場所もあります。
 深くて長い坑道を抜けると、明るい日の差す場所に出られます。
 全体を通しても非常にドラマチックな場面なので、ぜひご堪能あれ。

 本作の場合、どこまでも主役はこの世界そのものです。
 それについては文句は無いのですが、その他の点についてまとめていきましょう。

ハマリ度 : 9 / 10
 戦闘不能時のコストはやや高いものの、拠点での回復は無制限かつ回数を重ねることが推奨されているし、おのずと退路を確保して戦うようになっている。
 探索RPGのネックになる見落としについても、回収率は文章とレシピの一覧でおおよそ判断できるため気付きやすい。
 基本ストレスフリーだが、ラストダンジョンだけは少し困った。
 ストーリーにのめり込み、引き返し時を見誤って突っ込んでしまうと、拠点にしばらく帰れず、敵の激しい攻撃によって消耗も避けられない、厳しい戦いが始まってしまう。セーブするとハマりかねないという圧力から、再び拠点に帰れるようになるラスボス手前まで、一気にプレイしてしまう。そもそもラスボス手前で引き返せる確証も無いので、初見プレイではかなりしんどい。往年のRPGのラストダンジョンを思い出させてくれる。
 戦闘では細かいことを考えず、探索に全振りした設計は潔いが、しかしあまりにも大雑把すぎ、単調、作業になっている感は否めない。好みは分かれるだろう。
 キャラごとに初期ステータスやスキルで差を付けているのに、細かい指示ができないせいで、実際の運用ではわざわざ全員横並びに強化する方が効率がいい、というのももったいない。隊列や役割分担の仕組みがあれば、大きく変わったところだとも思う。
 ストーリーについて、根幹設定に「ピノキア」ラストのネタバレがある構造は、「ピノキア」未プレイの人にはやはり厳しい。ストーリーは伝わりそうだが、今後「ピノキア」をプレイするにあたって肝心の所がスポイルされる。
 紹介する時も、「ピノキア」の方を先にプレイしてもらう理由を説明する段階で、既にネタバレになってしまう。
グラフィック : 10 / 10
 相変わらず、尖ったキャラデザをよくドット絵に落とし込んでいる。特にエスギニル。帽子とか割とわけわからんのによくできている。
 マップは、前作品からの構造やイメージの流用も若干あるが、すべて十分に魅力的で、ビジュアル的にもバリエーション豊か。霧の谷等のフォグ処理が重いという問題点はあるが、また別の話。
サウンド : 9 / 10
 序盤のマップはストリングやブラスメインでファンタジーらしさを出し、核心に迫るほどよりエレクトリックなサウンドでスチームパンク・サイバーパンクの風味を出す、という構成。
 本作のバトルはシームレスなので、RPGと比べると曲を長く聴く機会が多く、素材の良さが十分に活かされている。

 だってェ、エスギニルってもはや存在自体がネタバレの塊じゃないですか。
 ボクがいくらメガネが好きだからって、ここでは一切詳細に触れられないんですよ。
 なんとなく縛りをつけてキャラを作ってみたけど、最後で思いっきり自分の趣味に走ってしまう気持ち、わかります。
 最後のキャラがメガネだと、特別な気分に浸れるのでボクは好きです。

 まあ、一番好きなキャラは探索士プロゴエなんですけどね。
 ウィーグラフ・トランへのストレートなリスペクト、往年のフリーゲーマーにはたまらないのです。

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