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■ 排気ガスサークル

排気ガスサークル
作者 [ DONZU さま ]
ジャンル [ 探索アドベンチャー ]
容量・圧縮形式 [ 80MB・ZIP ]
製作ツール [ LiveMaker ]
言語 [ 日本語 ]
備考 [ 現在の最新バージョンは1.02 ]
配布元 ダウンロード先

排気ガスサークル 排気ガスサークル 排気ガスサークル 排気ガスサークル 排気ガスサークル

レビュワーハマリ度グラフィック サウンド合計総合判定
ES 7 /10 10/10 9 /10 130/150 B
hoikoro 8 /10 10/10 8 /10
牛人 8 /10 10/10 8 /10
天ノ原 8 /10 9 /10 10/10
赤松弥太郎 7 /10 10/10 8 /10

 《 ES 》  ハマリ度:7 グラフィック:10 サウンド:9

雰囲気にのめりこめ。決して飲まれるな。

今回のイチオシ「排気ガスサークル」で特筆すべきは、やはりそのグラフィックです。
『美しい』とは少々異なりますが、『フンイキ満点』という意味では、これほど魅せてくれる作品は中々ないでしょう。
ゴシック調でデフォルメされた各キャラたちはどれも個性が強く、出てきたすぐに消える『姫と王子』などのキャラも、存分にインパクトを持って迫ってきます。

ただし、この作品は「ノベル」ではなく「アドベンチャーゲーム」。この世界に没入し、マウスをクリックするだけで進むほど甘くはありません。
シーンの多くはダンジョン探索になります。意外なほどに複雑で、下手すると同じ箇所をぐるぐる回る事態になりかねません。方向感覚に自信のない人は、マッピングをしながら進めていきましょう。
「方眼紙マッピング」がオススメです。)
また、ダンジョンの最後には戦闘もあります。これは「通常攻撃>特殊攻撃>防御>通常攻撃」という3すくみ方式。敵の行動は完全ランダムにつき、運を天に任せる以外の攻略法がありません。

正直、私が本作のハマリ度を少なめにしたのは、この「攻略法がない」戦闘をネックに感じたからです。
安全策となる「希望の歌」ではどうしても長丁場になりますし、かといって他の攻撃的な仮面に着替えると、運が悪いとGAME OVERの繰り返しです。
また、仮面の切り替えは特定の場所でしかできません。いざ戦闘に入って「今の仮面、このボスには不利じゃん!」と思っても、鍵師の部屋までリロードしないといけないのです。
序盤は敵の攻撃が弱いため、それほど厄介な印象はありません。しかし、後半になるにつれ、回復・吸収など厄介かつ戦闘が長引く技ばかり使ってくるようになります。運が悪いと永遠に終わりません。

本作はマルチエンドのため、周回の必要があります。選択をするたびにキャラとの関係が見え、深まり、そして意外な箇所が明らかになっていくストーリテリングは見事です。
しかし、周回していくたびにストーリーの感動は薄れていきます。そうなると、運しだいでは永遠に足踏みを繰り返される戦闘など、退屈な時間ばかりが印象に残ってしまいます。

ストーリー自体は本当に魅力的です。
それだけに、攻略しがいの無い戦闘を強いられるのが大問題点です。この部分、敵の戦闘パターンを一定にした方が絶対楽しいです。ベストエンドを目指すための周回もだいぶ楽になるので、今からでも変更してください! 切実に。

 《hoikoro》  ハマリ度:8 グラフィック:10 サウンド:8

排気ガスサークル】今回レビューさせていただきました
ADVということで、時間を気にせずゆっくりと全EDをプレイさせて貰いました
ウラセカイことあとがきの背景の絵が非常に凝っており、とあるRPGの設定資料集のようで素晴らしかったです

独特な世界観、それもとても濃密な内容となっております
それらはどれも非常に“オシャレ”でした。センスであふれていると言っても過言ではありません

名詞が一般的に使っているものと違うものが多く、同じ意味を持つものも多数存在しました
仮面、鍵、欠片、乗車権などがそれに当てはまるでしょうか
某音楽家の乗車権という曲にとても似通った内容があり、プレイ後に聴いてみると些か感慨深いものがありました

とても謎が多く、全編通しても未だに判らない、判り辛い部分が大量に存在していました
自分の理解力の低さに悲しむと同時に、何周もする楽しみもあったのでフィフティ・フィフティでした

サウンドノベルというジャンルにおいて小説よりもお手軽にプレイできるにも関わらず
この作品をプレイする際には、それこそ純文学を読むような心持ちでプレイすると、非常に楽しめると思います
集中してプレイするなど、当然といえば当然なのですが…

そしてこれらの謎は作者自身によって明快な説明を行わないと明言しており
歯がゆい思いをしつつも、他人の考察を眺めたり、自分の物思いに耽ってみたりする
プレイ終了後の楽しみというものも豊富に存在していました

戦闘システムはわかりやすく、じゃんけんのようなもので構成されております
序盤はほぼ確実に負けることはなく、ルールの把握がとても簡単なシステムとなっています
キャラクターも何時もの何処か人形のような絵とは異なり、戦闘時のみリアルなタッチになっています
あとがきを見るにあちらが本物のようなので、通常時がディフォルメなのかもしれません

ただ、この戦闘はほぼ運で決着がつきます
アジトで仮面を変更することができるのですが、それを行わなかった場合戻ることが出来ず
適材適所な仮面を選択せずに戦闘に突入すると非常に厳しい戦闘を強いられます

運ですので、詰むということはないのですが、中盤、終盤の屑を喰らう屑戦が特にその傾向が顕著です
あまり多くない戦闘とはいえ、そこが少し気になりました、またゲームオーバー時の演出も少々長いと思います

・ハマリ度:8/10

数々の謎が少しずつ解けていく様子が、このゲームの時間を忘れさせてくれます
申し分ない数々のグラフィックや演出には何度も驚かされました
上記したように解けない謎も数多く、それらの考察そのものも含めてのゲームだと言えます

ただ、ダンジョンの迷路的要素が強く、なかなか辿りつけずやきもきする
メモを取らず適当に進んでいるとある意味詰みに近い形になってしまう、などという部分が少々気になりました

・グラフィック:10/10

何も文句を言うことがないほどに高水準で、ハイレベルなものが揃っています
アニメーションも素晴らしく、この独特の雰囲気はこのグラフィックあってこそ、と断言できるでしょう
ただかっこいい、可愛いではなく、気持ち悪い、不気味などというものもしっかりと混ぜ込まれたいい意味でカオスな作品でした
特に最終場面の追い込みには真に迫るものがあります

・サウンド:8/10

あまりBGMというものは印象に残っていません、むしろSEが程よく目立っていました
作中何度も差し込まれる砂嵐はこの作品の主の一つだと思います
それ以外の部分でも特に邪魔をせず、なかなかに良く合わせられているという印象を持ちました

しかし、ゲームオーバー、ゲーム起動時の砂嵐の音量が非常に大きく
戦闘の都合上何度も聞く場合がありました
そのたびに少々辛かったので、申し訳ありませんがその分減点させてもらいました

この作品もまたクセが強く、他人に手放しでおすすめできるものではありませんが
プレイした自分としてはやはりこのゲームについて語ることの出来る友人が欲しくなるような、そんな作品です
このような素敵な作品をプレイすることが出来て、満足の行く時間を過ごせました

結局排ガスさんとはどういう意味だったんだろうか

 《 牛人 》  ハマリ度:8 グラフィック:10 サウンド:8

面を着けろ!(これがグラフィックの力か・・・)

アドベンチャーですが、じゃんけんのような三すくみの戦闘があります。
少々グロいですが、ホラー要素はありません。

ゲーム部分としての戦闘・探索のパートはシンプルなものです。
しかし、独特のグラフィックと共にあると、想像力をかきたてられ、また、緊張感も違います。

ストーリー部分も、グラフィックにより説得力が倍増しています。

この作品はグラフィックの語る部分が極めて大です。グラフィックの力というものを思い知らされました。

エロ要素はない。

ハマリ度:8/10
ゲームとしてはあまり捻りが・・・
グラフィック:10/10
この作品の真髄
サウンド:8/10
雰囲気に合っています

 《 天ノ原 》  ハマリ度:8 グラフィック:9 サウンド:10

過去を受け入れる勇気は、今を進む為の鍵となる。

色彩が存在せず、乗車「権」により行き先が制限され、ヒヨスの森とヘンベインの歌に侵食されつつある異世界。閉塞感に満ちたこの世界に迷い込んだ主人公は、葬儀屋とMAG団、世界の再生を目指す2つの組織と行動を共にし、自身が現実へ帰る為の方法を模索していきます。

要所要所で発生する選択肢は、エンディング分岐に影響します。フラグが蓄積型かつその場でのフィードバックや状態の確認方法ががほぼ無く、「この選択肢これで良かったのか? てか影響あったのか?」が分かりにくいのが難点ですかね。どうしても分からない人は、公式のヒントに頼るのも有りでしょう。

道中で遭遇する影達の苦悩、ヒヨス達の言葉責め、それに対する主人公達の応答は、人ならば日頃から意識的・無意識的に繰り返されている葛藤の具現化ととも言えます。具体的な言葉として投げかけられる失意・悪意、それらを受け止め成長していく主人公、影達、屑達の残した欠片を受け入れ同じく成長していく主人公の影。主人公の台詞は基本的に無いので分かりにくいですが、目に見えて成長していく影と同じく、異世界での体験を通じて確実に変わっています。その成果は、トゥルーエンドで確かめましょう。

私としては、MAG団のレッドが印象深いですね。猪突猛進で思慮が足らず、実力も無いので失敗ばかり(パンチが当たれば強いけどネ)。実質的なまとめ役は参謀のブルー。‥‥それでも自身がリーダーとして矢面に立とうとする使命感と責任感、義理人情の篤さは人一倍。どんなに挫折を繰り返しても芯は折れないその真っ直ぐさ。それゆえに、何だかんだ言いつつ皆もレッドをリーダーとして慕っているのでしょう。無論、周りがそうだったから、レッドはレッドでいられましたし。
彼は元々彼の望んでいたヒーローには成れなかったかも知れませんが、無鉄砲で無様で、そして自身の信念に一途な有り方が、周囲に前進する勇気を与えていたのは確実です。それもまた、ヒーローの一つの形と言えるでしょう。
勿論他の登場キャラも、ツンデレのブルー、愛を愛する姫と王子、各々思索にふける屑達等、個性的で魅力的な連中ばかりです。登場はたった1シーンなのに印象深いキャラも多く、自キャラ達に対するDONZU諸氏の愛を感じました。

キャラクター達のデザインも、非常に独特かつ秀逸です。特に屑達は、人に成りきれないとも、人を止めきれないともとり得るような中途半端さが、実に丹念に描かれております。素晴らしい。
ただ、会話時と戦闘時で顔の造形が一変するキャラがいるのが気になりました。特にリヒトと(※反転:主人公)は初戦闘時「誰だアンタ!?」と驚くこと必至です。後書きで公開されるデザイン画を見る限りでは、戦闘時のが元の絵に近い様ですが。

BGM・効果音は個人的に文句なしです。耽美なクラシック、イベント時や探索時の不安感を煽るようなサイレンやノイズ‥‥楽曲は素材サイトのものですが、このゲームのために作られたかの様なマッチングでした。

さて。
退廃的な世界観、舞台劇のような台詞回し等、非常にハイクオリティな本作、楽しませていただきました。が、これだけは我慢できぬ。

完全運頼みのジャンケン戦闘は、マイナス以外の要素を見つけられませんでした。

1周後、公式の攻略情報にて、相手の手はランダムという記述を見て、頭抱えましたよ私ぁ。
何? 1周目の2戦目6ターン程度で終わったの、序盤で行動パターン単純だからとかじゃなかったの? ジャンケン勝つまで延々回復繰り返すのがデフォなの!?
‥‥案の定、2周目の同戦はアイコと回復で数倍のターン消費しました。寿命がストレスでマッハってこういう事か。

ヤバイのは終盤にて、特殊使用禁止になる戦闘です。つまりチョキと回復不能。その状態でハズレを5回引く前に、当たりを5回(この戦闘は双方ダメージ固定)引けなければ問答無用でゲームオーバーです。プレイヤーにできる事は、Ctrlでメッセージ(とゲームオーバー画面)をとっとと進め、当たってくれる事を念じながら適当なボタンをクリックする事のみ。
「マインドシーカー」という単語が脳裏に浮かびましたが無かった事にします。シナリオの牽引力込みでも、正直きっついです。
それ以外の戦闘も、根本的に仕様が戦略もへったくれも無い運ゲーなので、属性等死に要素でした。仮面による回復機能の有無も、やり直しが回復かゲームオーバーからのリロードか、という極端な択になっちゃっているんですよ。

特に乱数ってのはプレイヤーが直接介入し辛く、影響力を少し変えるだけでゲームジャンルまで変貌させる非常にデリケートな代物なんですから。ホント慎重に扱わなくてはならないものです。プレイヤーが怨念化しないように。

 《 赤松弥太郎 》  ハマリ度:7 グラフィック:10 サウンド:8

人は誰でも幸せ探す旅人のようなもの

 とにかく難解だと評判の本作のストーリーについて。
 圧倒的に説明不足、の一言に尽きます。
 どうも作者は本作の設定・ストーリーについて、意図して語っていない、隠蔽している節があります。理解させないようにしている、とさえ言っていいかもしれない。
 この世界の真相、なぜ主人公がこの世界にやってきたのか、語られるのは最終局面に入ってからなのですが、その最終局面に至っても直接的な描写がほとんどなく、示唆・ほのめかしというレベルに留まっています。
 タイトルに掲げられている「排気ガス」という単語すら、作中で使用されるのは数回のみ、その意味するところに触れるどころか、ほのめかす場面すら一切ありません。
 作者が何を意図して、それとも意図せずして、こんなわかりにくい話になってしまったのかはわかりませんが、個人的には「もう少しはっきり伝えろよ」という気持ちも、若干あります。

 ただ、説明不足すぎて作品のメッセージがまるで伝わらない、ということはないと思います。
 解釈なんかしなくても、作品のメッセージ自体はストレートに体感できるので。
 「解釈はご自由に」などと丸投げしておいて、作者本人でさえ何が言いたいのかよくわかってない、内容空疎で支離滅裂なものを押しつけてくる、なんてひどい態度を取る作品って、世の中割とありますからね。正直に「意味なんて無い」と言ってくれた方がどれだけ助かるか。本作はそれには該当しないです。

 あまりに引っかかりすぎて、先に進めなくなってしまうのは勿体ない話です。
 しかしながら同時に、色々と思わせぶりなところがある本作の場合、「解釈など無粋! 考えるな感じろ!」と言い放ってしまうのも、いささか乱暴ではないかな、と。
 プレイ前の心構えとして、この作品世界に関連しそうな単語について、ちょっとだけ触れようと思います。
 作者本人が、公式には作品以上の設定・ストーリーを語らないことを明言しているので、どんな解釈も「正解」ではないです。あくまでボクの個人的見解です。
 ただ、そこまで拡散した解釈ができる作品でもないと思いますけどね、個人的には。

 で、具体的に何が関連しそうかと言うと、「深層心理学」、これですな。
 人間の心は、自分で意識できる表層心理と、意識できない深層心理とに分かれている、という考えに基づく一連の議論です。
 導入部分で、主人公は生と死の狭間の世界に誘われるんですが、臨死体験って夢と同じく、深層心理学の古典的研究分野だったりします。
 意識が働かない状態にあるので、無意識にある深層心理がはっきりと反映される、と、こういうわけ。
 たぶん本作はそれを踏まえて、深層心理学の用語や構造を割と援用しています。
 「影」とか「ペルソナ」とかの単語をちょっと調べていると、プレイしたとき納得できる部分も多いのではないでしょうか。

 ただ、本作はあくまでフィクションですから、学問的な概念そのものを扱ってるわけがないですよね。
 あくまでフィクション世界に適合した、深層心理学的なテイストを使ってるだけで。
 特に注意が必要だと思うのが、「集合的無意識」についてです。
 これ、学問的な意味とフィクションにおける意味がだいぶ違う概念でして……。
 一部読者には「ムンホイ的なアレ」と言えば通じるかもしれませんが、説明するとなると結構難しい!

 ユングが最初に言った意味としては、「人類共通に現れる、夢や空想の元型」という程度のものでした。
 はるかかけ離れた、とても互いに影響を受けているとは思えない文化なのに、例えば死後の世界とか、地母神信仰とか、共通した類型が登場することを、ユングは人類に備わった、先天的なものだと考えたのです。
 無意識の個人的由来にフロイトがあまりにこだわりすぎたので、具体的にはセックスセックス言いまくったので、それだけじゃないでしょう、と。そういう意味もあっての仮説でした。
 まあ、あくまで仮説です。実証するには、「文化的に隔絶された人間」を用意する、という非人道的な実験が必要ですから。
 これに限らず、人間の文化的活動のどこまでが先天的・遺伝的と呼べるものなのか、ボノボの赤ん坊と人間の赤ん坊を同じ文化的環境に置いたとして、なぜ人間だけが文化的活動を行うようになるのか、蛇を忌避する文化は人類共通のものと呼べるのか、ヒトゲノムのどこにニンジャに対する恐怖が書き込まれているのか等々、現代科学をもってしてもわからないことは多いのです。

 でも、ここで触れたいのはそっちの意味じゃない。
 「集合的無意識」という字面、そして「人類に共通する夢や空想」という説明から、主にオカルト方面でおおいに誤解されることになります。
 「人間の無意識の世界は、みんな根っこで繋がっていて接続可能だ」、というね。
 ここまで来ると、まったく科学じゃないです!
 が、集合的無意識がフィクションで言及された場合、十中八九こっちです。
 だって、夢があるじゃないですか。自分の空想の世界の冒険が、他の人、ひいては世界と繋がっていくなんて。
 夢の世界で自分の知らない人間と出会い、現実で邂逅するとか、同じ夢を見ている人間同士で冒険するとかのモチーフは、はるか昔からありました。
 ユングやフロイトは、そこに「学問的」バックボーンとして導入されちゃったんですね。その結果、空想世界でのできごとが現実世界の他人に影響を与えるとか、以前は荒唐無稽と言われたことが、割とためらわずにできるようになりました。
 フリゲの場合、有名どころでは前出のムンホイの他、西高科学部作品にも影響が顕著に見て取れます。「Ruina 廃都の物語」の作者さんも一時期ハマってたらしく、ちょいちょいと雰囲気を醸したりもしますね。

 本作は、最終局面では主人公の内面に降りていって、主人公の「願い」の正体に触れていく、という流れになっていきます。
 じゃあ、この世界はすべて主人公の内面世界か、オープニングで語られた事故死者は主人公の犠牲になったのか、とか考えちゃうとドツボにハマるんじゃないかな、と。
 終盤で「元人間だった」と語るキャラがいるので、過去の事故死者たちと主人公の世界は接続しているはずです。
 しかし、主人公と彼らにはそれ以前に接点が全くなく、かつトゥルーエンドで初めて登場した、見ず知らずの人物との関連を窺わせるキャラもあの世界にはいたので、完全に主人公の中で自己完結した世界とは考えにくい。
 なので、あの世界の事象をなんでもかんでも、主人公の内面の~~に由来する! とは考えない方がいいというのがボクの考えです。
 だいいち、そんな縮こまった世界じゃつまらないじゃないですか。
 「集合的無意識」として、死に向かいたくなる人間の世界が存在していて、あの列車はその入り口なのだ、くらいのファンタジーが欲しいと思うのです。

 プレイ前にだいぶ予断を与える解釈でしたが、これくらいの導入がないと難解極まりないですからね!
 各キャラの関連や正体が、終盤以降はこんがらかって大変なことになってますので。
 まず初見は、細かいところは抜きにして、大雑把な流れや世界を楽しんだ方がいいんじゃないか、と思ってます。
 どうせ1回プレイしただけじゃトゥルーエンドにはなかなかたどり着けませんし! 評点。

ハマリ度 : 7 / 10
 ストーリー面は、難解なのはともかく、不親切なのがかなり問題。数多い選択肢のうちエンディング評価に関係する選択肢は13個、その中には間違えるとトゥルーエンドにたどり着けないものも多く、しかも不正解を選んだときのフィードバックがほとんど無い。
 しかし白い男エンドは、トゥルーエンドとはメッセージがまったく異なっており、さらに悪いことに他のエンディングの存在を示唆する演出も説明も一切無い。白い男エンドを見た時点でプレイを止めてしまった人とトゥルーエンドに到達した人で、本作への理解がまったく異なるという事態を招きかねない。
 戦闘がひたすら運ゲーで面白味が無く、吸収を使う敵は長引きがち、という欠点は、特に2週目以降プレイする際の枷になってしまっている。移動もスムーズでは無いため、全メッセージをスキップしてなおクリアまでには1~2時間かかってしまう。
グラフィック : 10 / 10
 キャラクター総数が30を超えるのは、探索ADVとしては異例の多さと言える。ほとんど仮面着用という制限の中で、それぞれのキャラクターが表情豊か、個性豊かに描かれているのは見事としか言えない。背景写真やアイコン・フォント、演出も含め、全てがハイレベルにまとまっている。
 唯一引っかかったのが、メニュー画面の切り替えの遅さ。切り替えの度にフェードアウトがかかるために、細かく変化していく仲間との会話をチェックする気が削がれてしまう。ツールの制約があるのだろうか。
サウンド : 8 / 10
 ノイズ音を多用するため、ヘッドフォンでのプレイには注意が必要。ただし、それは本作には必要な演出。音楽、効果音の選定、「沈黙」の使い方にまで行き届いたこだわりを感じる。
 唯一、カーソル音が甲高く耳障りで、構築した雰囲気を壊してしまっている点が非常にもったいない。

 ボクも初見は白い男エンドに到達したので、だいぶ戸惑いました。
 しかし、白い男エンドを見ていた方が、トゥルーエンドがわかりやすかったりするのが難しいところなんですよねー……。
 できればトゥルーエンド到達までプレイしてほしいです。できる限り希望を語り、生きる意思を見せ続けることがポイントです。

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