■ 三代目レビュー アドベンチャー 13
狂獣島 神石師 いのちのないうた Resurgent ロシュメルの赤い瞳
谷守の人形 DISCOLO(U)R Lavender 紅に染まれ 散華鬼

【 狂獣島 ―KYOJUTO― 】

狂獣島
ジャンル [ サバイバルホラー ]
作者 [ あるまソフト さま ]
容量・圧縮形式 [ 1.2GB・ZIP ]
製作ツール [ RPGツクールMV ]
言語 [ 日本語 ]
備考 [ 12歳以上推奨 ]
配布元 配布元

赤き蝶は血風を舞う

スカーレット・アイランド…最新技術を駆使した動植物園型テーマパーク。そのプレオープンセレモニーの最中、惨劇が発生した。
幕引きと共に出現したのは、巨大な獣の群れ。スカーレット・アイランドは一瞬にして、獣たちが人間どもを蹂躙する「狂獣島」と化したのである。
本作の主人公・アヤメも、獣たちに最愛の妹を殺され、自身もまた瀕死の重傷を負う。かろうじて生還したアヤメは、妹に生き写しの少女・エリカたち避難所の人間と共に、助けを待つこととなる。
しかし、ここでまたトラブルが発生する。エリカはスカーレット・アイランド創設者の孫娘だったのだ。避難所の人々から憎しみのまなざしを向けられたエリカ、そして彼女をかばったアヤメは、避難所からも追い出されてしまう。
獣たちの叫び声と人々の断末魔が絶えない「狂獣島」にて、エリカとアヤメは生き抜かなくてはならない。己の手を取り合いながら。

狂獣島 狂獣島 狂獣島

本作「狂獣島」は、「怨溺」から2年ぶりのあるまソフトの新作となります。しかし、謎解きが中心だった「怨溺」や「斧鬼」と比べ、本作は「サバイバル」を中心としたホラーとなります。
フィールドは常に咬まれれば2~3発でお陀仏の獣たちが巡回しています。それらの視線を回避し、時にはナイフで間引きながら、ステージを進めていくのが「狂獣島」の基本的な流れとなります。

そう、本作では謎を解くキーアイテムの他に、武器・回復薬などの「通常アイテム」も存在します。そして、それを買うための「資金」および「換金アイテム」も。
この「換金アイテム」の扱いが、本作ではある意味重要となります。本作での通常アイテム・換金アイテムの所持数には制限があり、初期値はたったの4枠。
※ 謎解きや鍵開けに使う「キーアイテム」は、所持枠が別に分けられ、所持数制限はありません。
所持枠を増やすためには、「ウエストポーチ」というアイテムが必要ですが、道中には落ちておらず、1つ6千円という高い金を出して購入する他ありません。
そのために、「換金アイテムのやりくり」が必要となります。換金アイテムの中には、「クラフト可」という注釈が付いたものが存在します。必要な材料を全て集めれば、「クラフト」にてより高価な換金アイテムを作成できるのです。各アイテムをバラで売るより更に高価格で。
クラフト可能な材料を1つ拾えば、残りの材料アイテムはいつでも「クラフト」メニューにて確認できるため、クラフトに必要なアイテムだけを拾っていきましょう。
…そうです。換金アイテムのクラフトでもネックになるのが、初期値4つのアイテム容量。手当たり次第にアイテムを拾っていくと、クラフト材料を揃えるための枠どころか、通常アイテムを確保する枠すら無くなってしまいます。

狂獣島 狂獣島 狂獣島

通常アイテムの中でも、「後ろを突けば1本で3体まで獣を消去できる」「一部の扉も開けられる」ナイフを所持できないというのは、「狂獣島」にとっては大きなデメリットとなります。「後ろに回れば見つからない」「見つかっても全速後退してドアをくぐればいい」本作のスニーキングアクションですが、「獣をかいくぐった先にキーアイテムがある」「獣が互いの視界をカバーしあっており、誰かに見つかると即座に囲まれて死亡確定」という状況がほとんどです。「全員を排除するにはナイフの耐久度が足りないが、全員の目を潜り抜けるのは(不可能ではないが)至難」というマップばかりなのです。
「必要なアイテム枠を確保する」という意味で、「ウエストポーチ」は最重要アイテムとなります。アイテム枠が少ないうちは「クラフト」という注釈が付いた換金アイテムは拾わないようにし、「クラフト」が付いていない換金アイテムは速攻で売り払いましょう。アイテム枠が1つでも広がれば、換金アイテム集めも、布・スクラップ(通常アイテムをクラフトする素材)集めも、ダントツで捗るようになります。
道中の拾えるアイテムは常に光って分かりやすくなっていますし、調べた瞬間に(換金アイテム・クラフト可などの効果を含め)アイテムの説明が表示され、拾う/捨て置くを選択可能です。一度拾ってアイテム枠に入れた換金アイテムは、売り払うかクラフトで消費する以外にアイテム枠から外すことができません。拾う/捨て置くの選択は、一見での印象以上に重要な選択なのです。

なお、本作の換金アイテムは全てやり込み要素となっており、拾った先から売り払っても、無視してキーアイテムや布・スクラップだけ拾うプレイでも理論上はクリア可能です。
しかし、その状態でプレイを進めていた初見の私は、入り口から戻れない状況で獣がひしめく狭い道をナイフ無しで突っ切ることができず、詰まってしまいました。初期のアイテム枠4つだけで進めるのは、それほど高難度だということです。何しろ、布・スクラップですらアイテム枠を圧迫するため、拾った先からクラフトしてアイテム枠を節約せざるを得ません。「布が2つあるけど、後でスクラップを拾ってナイフに合成するため、救急セットに変換せず取っておこう」という作戦が取れないのです。
隅々まで探索して換金アイテムをかき集めるプレイは、「やり込み」という意味以上に、「難易度の緩和」という意味で重要となります。

そうして生き残ることに必死になっていると忘れがちなストーリーですが、当然、ストーリーにも「厄い」要素が勢揃いです。
ただ歩みを進めるだけで量産されていく死体、さっきまで言葉を交わしていた「いい人」が一瞬で肉片となる展開、そして、「獣」を生んだ陰謀と真相…。
ありとあらゆる試練が、アヤメを、エリカを、そして我々プレイヤーを襲ってくるのです。
なお、必須レベルではないものの、本作のプレイ前、または並行して「斧鬼」をプレイしておくことを推奨いたします。本作は「斧鬼」と世界観を同じくするストーリーなのです。

狂獣島

なんでお前がここに出るんだよ!!!
…と思ったそこの貴方、その真相も、ちゃんとストーリー中で説明されます。ご安心を。

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神石師(じしゃくし)

神石師
ジャンル [ 連作ホラーアドベンチャー ]
作者 [ oka さま ]
容量・圧縮形式 [ 137MB・ZIP, ブラウザゲーム ]
製作ツール [ RPGツクールMZ ]
言語 [ 日本語 ]
配布元 配布元

見える者と祓う者

(はじめ)(たかし)…普通の刑事だった彼が怪異と出会ったのは、ある猟奇殺人事件がきっかけだった。
過去に一家惨殺事件が起きた廃屋で、新たに起こった児童殺傷事件…その現場に触れる中で、崇は惨劇の記憶を「見て」しまう。
よろけるように中庭に出た彼が見たものは、更に不思議な光景であった。
とっくに切り株になっていたはずの桜の木が美しき花を咲かせ、その傍らには一人の少女が立っていた。

神石師

彼女の名は纉石(つづきいし)(あや)。「神石師(じしゃくし)」と名乗る綾と共に、崇は「特別事案担当課」にて怪異事件の捜査を行う。
様々な意味で「業」の深い事件ばかりの「特事課」。その「業」は、やがて崇自身にも降りかかっていく…。

神石師 神石師

本作は5章に分かれた事件を、現場百遍で探索しながら解決していく探索アドベンチャーです。その探索範囲は一章一章が幅広く、見落としがちな場所も数多い構成になっています。
何しろ、探索すべき場所は現実世界だけではないのです。時には、現実世界と裏表になった「異界」からも証拠物件を集める必要があるのです。
ただでさえ惨劇の記憶がこびりついた「異界」。こちらに害を与える霊体など、身体的な危険まで存在します。その危険を潜り抜けて、証拠物件を集めなければならないのです。
道中の戦闘アクションとして、鬼ごっこ(回避アクション)やかくれんぼ(スニーキングアクション)もあり、かなりの「屍」を積む難易度になっています。

謎解きとフラグ分岐に関しても、本作は難易度が高くなっています。「時間制限のある情報収集」「見落としがあると、途中でバッドエンドとなる分岐」など、フラグ集めの難易度は相当高く、場合によっては「最後まで解かなくてもストーリーが進んでしまう謎解き」=総当たりが効かない場面まで存在します。
事実、2章「願いが叶う木」のクライマックスであるパーティ分岐探索では、7不思議の謎を全て解決しなくても、「異界から出る条件」だけ解いてしまえば、特に問題なく3章に進んでしまいます。私は1周目は攻略を見ずに進めていたため、まだやり残した謎があるのに次に進んでしまったことに、相当驚きました。

本作は、短編ホラーゲーム1つ分のお話が4話分詰め込まれた内容であるため、プレイ時間は意外と長く、3時間ほどかかります。
また、隠し要素も数多く、そのほとんどは1周クリアしてから初めて分かる条件ばかりでしょう。条件によっては見れないエピソードさえ存在します。
人によっては、攻略を見ないと進めない謎、何度やってもバッドエンドになる箇所もあるでしょう。
公式ホームページにある攻略を頼ってでも、本作のストーリーを最後まで解き明かしてください。本作の最大の「謎」は、ストーリーそのものと主人公である崇にこそ込められているのです。

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【 いのちのないうた 】

いのちのないうた
ジャンル [ オムニバス ]
作者 [ hata ikeda さま ]
容量・圧縮形式 [ 367MB・ZIP ]
製作ツール [ Unity ]
言語 [ 日本語 ]
配布元 配布元

このトラックに詰め込まれているのは、デス&ライブの生命賛歌

これから貴方にお見せするのは、7トラックの物語。そう、このトラックに入っているのは音楽だけではない。
映像、物語、謎解き、ミニゲーム、数多くのエンタメが詰まっている。そして、そのどれもが「シュール」を体現したものばかり。
貴方はこの7トラックの物語から何を見出すのであろうか。

いのちのないうた いのちのないうた いのちのないうた いのちのないうた

本作は、CDやDVDのトラックを模した画面の中で、7話に分かれた物語を順不同で閲覧していくゲームです。ただし、7話のバリエーションは意外と豊富。物語のジャンルだけでなく、ゲームのジャンルとしても多種多様に分かれています。
ほとんどは画面クリックで進み、選択肢もないノベルゲームですが、謎解き要素のあるtrack 5「棺 Remixed」、果てにはアクションゲームとなるtrack 2「A-Garden : Remake.ver」まで存在します。
ただし、ゲーム的な難易度はどれも優しい部類です。唯一反射神経が求められる「A-Garden : Remake.ver」でも、操作はマウス一本でシンプル、初見でも見てから回避できるスピードとレベルデザインに収まっています。

その反面、難易度が高いのはストーリー。7つのトラックそれぞれが別々の世界観を持っていながら、「ひょっとして、ココと前のトラックのアレ、繋がっている!?」と思わせる、単体で見てもまとめてみても謎ばかりなストーリーこそ、本作の真骨頂なのです。
それを盛り上げるのが、hata ikeda氏が構築したシナリオとグラフィック。時に情緒的な「絵画」で、時に無機質な「ドット絵」で、時にはシュールでグロテスクな「イラスト」で、そして時にはメインキャラの女学生2人を描いた「現代美術」として、7話7様に分かれた世界観を彩ってくれます。
文章によって繰り広げられる物語ですが、その中で語られるストーリーは極わずか。物語の中で得た「感想」「考察」が作者の意図と一致しているかの保証もありません。
読解としては「読みづらい」物語ですが、消費時間としてはかなり「読みやすい」物語です。まずは、そのシュールな世界観を「ありのまま受け入れる」ことから始めていきましょう。

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【 Resurgent 】

Resurgent
ジャンル [ ポストアポカリプス・サバイバルホラー ]
作者 [ Tristan Harris さま ]
容量・圧縮形式 [ 10MB・ZIP ]
言語 [ 英語 ]
配布元 配布元

セピア色のメトロポリス

ボロボロのビルの中、男が目覚める。彼はバックパック一つで、このボロボロの都市を彷徨っていた。
安全な食料があれば拝借し、残されていた資料から情報を得ながら、彼は歩みを進めていく。
彼の目的は何なのだろうか。日が経つごとに彼の足は重くなり、飢えと渇きがその身体を苛んでいく…。

本作は、カーソルキーとZキーだけで進めていく、シンプルなロードマップ型探索ADVです。
操作がシンプルである理由は、難しい操作に頭を悩ませることなく、本作の世界観を味わってほしいから…そう私は感じました。
それほど、本作の「ゲームボーイ風」の色彩・ボロボロ感あふれるドット絵は、砂ぼこり舞うポストアポカリプス世界を十二分に表現しているのです。
ただし、本作は単純な「歩くだけ」のゲームではありません。

Resurgent

ストーリー中盤辺りで、主人公以外の「人型の歩行者」が出現します。ただし、彼らは皆一様に「感染者」…すなわち生ける屍です。目があえば即座に主人公は喰らいつくされ、チェックポイント(マップ入り口)からのやり直しとなります。当然、チェックポイントから死ぬまでの間に取得したアイテムも、再度取得に行かなくてはいけません。
彼らをやり過ごすために、時にはアイテムで気をそらし、時には階下に潜って、「同じ階層で向き合わない」ように位置調整が求められます。
最も、この「感染者からの回避」も、それほど難易度は高くありません。むしろ、あまりにノロノロした感染者の動きにイライラして、勇み足になる方が危険です。通り過ぎたのを確認してから動くように心がけましょう。

そんな、「死と隣り合わせ」の歩みを進めていく主人公は、どこを目指しているのでしょう。そして、どこに行き着くのでしょう。
プレイ時間は30分程度です。その結末を含めて「ポストアポカリプス」であり「サバイバルホラー」でもある本作の物語、最後まで楽しんでください。

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【 ロシュメルの赤い瞳 】

ロシュメルの赤い瞳
ジャンル [ 尋問追憶アドベンチャー ]
作者 [ 晴井さむ さま(ちゃんとする) ]
容量・圧縮形式 [ 216MB・ZIP, ブラウザゲーム ]
製作ツール [ RPGツクールMV ]
言語 [ 日本語 ]
備考 [ R-15指定(性的/暴力的表現) ]
配布元 配布元

血の赤、炎の赤、記憶の赤

「マリア」は愛する夫と共に幸せに暮らしていた。ある日突然、火あぶりに処されるまでは…。
そして、そこからの目覚めもまた突然だった。骨まで灰となっていたはずの彼女は、ある夜突然、肉体を取り戻したのだ。その胸に赤い宝石を輝かせ。
傍の人間に手を出したところ、彼女は超常の力を得ていたことが分かった。恐怖で精神をすり減らした人間に触れると、その記憶を読み取る能力である。
復活した彼女は、夜の街を彷徨う。自らを火あぶりにした真相を究明するため、自らに冤罪を掛けた者を知るため、そして、愛する夫と再会するために…。

ロシュメルの赤い瞳 ロシュメルの赤い瞳

本作は、5章に分かれたストーリーの中で、相手を「尋問」し、記憶を探り、真相を糾明する物語です。そして、マリアは法律の素人にして超常の能力者。「尋問」とはいっても、「物証」や「セリフ内の疑問点」を駆使した弁論バトルは存在しません。
本作で言う「尋問」は、恐怖と肉体言語を駆使した「戦闘」となります。

真相を「探る」たび、この街に漂う狂気が、そして狂気に侵され狂気に耐え抜こうとするマリアの葛藤が物語られます。
果たして、真相を知った彼女の選択は…復讐? 逃亡? 安らぎ?…それは、彼女の、そして我々プレイヤーの選択によって変わります。
ENDの枝分かれについては、本稿で言及するのは差し控えておきます。こちらで語らずとも、本作を1周でもクリアすれば、詳細なヒントを教えてくれる「ボーナスコンテンツ」が開放されるため。
その残酷なる真相に耐えられる方に、そして、曲者ぞろいの犠牲者(!!)たちの細かい恐怖リアクション(!!!)を楽しめる方に、ぜひ本作をプレイしていただきたい。

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谷守(たにもり)の人形 】

谷守の人形
ジャンル [ 探索ホラー ]
作者 [ shizuka さま ]
容量・圧縮形式 [ 145MB・ZIP ]
製作ツール [ RPGツクールMV ]
言語 [ 日本語 ]
配布元 配布元

ひとのかたち、ひとのかわり

木谷(こたに)と呼ばれる集落、ここには変わった風習があった。冠婚葬祭のありとあらゆる行事に人形を備える風習である。もちろん、それは「厄除け」も含む。木谷の谷底から湧き上がってくる厄を封じるため、足を抜き取った人形を谷底に落とす…と言う風習である。
片山(かたやま)(あゆむ)国守(くにもり)和真(かずま)が木谷を訪れたのは、木谷に在住する知り合い・大塚(おおつか)春仁(はるひと)の祖母の引っ越しを手伝うためである。木谷の人形文化の研究を兼ねて。
所狭しと保管されていた人形の整理も一段落ついた時、和真は、谷底から鳴る鐘の音を聞く。様子を見に向かった和真の目の前には、谷底で鐘を鳴らす一人の少女の姿があった。
少女の姿を目の当たりにした瞬間、和真は「もう一つの」木谷に迷い込む。目が壊れた2体の人形…谷底から這い上がってきた禍封じの人形たち…そう、和真は再び「怪異の世界」に迷い込んでしまったのだ。
和真は2つの「木谷」を奔走する。「禍」に捕らわれて死ぬこともできない「人形」たちを救うため。

谷守の人形 谷守の人形

「湖底の童歌」「黒蛇の子守歌」から続く国守和真シリーズの最新作、それが本作「谷守の人形」です。
ツクールMVに舞台を移し、よりパワーアップしたグラフィック面は、キャラ要素に加えホラー要素も爆増していきました。それほど、本作のホラーは手が込んでいて、恐ろしく、そして美しくあるのです。
本作では「同作者の他作品からのゲスト出演者」も少なく、「本作からでも楽しめる」作りになっています。しかし、「話が複雑ではない」という意味ではありません。
「目の壊れた2体の人形」「谷底で鐘を鳴らす少女」「もう一つの木谷」…この物語に登場する人物・キーワード自体が複雑に絡み合っているのです。その秘密は、ストーリーを進める中で、そして探索で見つかる「日記」を繋ぎ合わせることで、徐々に浮かび上がる仕掛けになっています。
ちなみに、初見の印象では「END分岐のフラグ」と思っていた日記ですが、実は本作、END分岐はありません。日記はあくまで「登場人物たちの真相」を知るためのコレクションアイテムに過ぎません。イベントアイテムの場所も「隠し場所にエフェクトが出る」と分かりやすくなっているため、コンプリートの難易度も低くなっています。

すなわち、本作で一番の魅力は「複雑で、恐ろしく、そして美しいストーリー」にあります。登場人物の正体、過去に何があったのか、なぜ「大塚家」だったのか…ストーリーや日記を読み進めることで、数々の謎が1つの真相に向かっていくのです。
こんな重要人物について、「人形」「鐘を鳴らす少女」とぼかしても大丈夫なのでしょうか? 大丈夫です! 彼女の個人名についても、ストーリーや日記を進めれば明らかになっていきます。そして、その明らかになっていく過程こそ楽しんでほしいのです!

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【 DISCOLO(U)R 】

DISCOLO(U)R
ジャンル [ 探索謎解きADV ]
作者 [ Sherlock さま ]
容量・圧縮形式 [ 249MB・ZIP ]
製作ツール [ RPGツクールMZ ]
言語 [ 日本語 ]
配布元 配布元

探偵諸君、事件へようこそ。

「あなた」は新進気鋭の探偵。今回の事件は、とある不動産会社の依頼から始まる。
不動産会社の依頼は、古屋敷の調査。40年前に家主・アレクシアの失踪と、彼女の親友・エミリーの殺人事件が同時に起きて以来、空き家となっていた古屋敷だったが、今になって相続人が現れたという。
相続人に明け渡すため、老朽箇所や不法侵入者を調査するのが依頼内容…のはずだった。
実際に古屋敷に向かうと、そこは奇妙な謎に満ちていた。入り口から手間数の多い謎解きに閉ざされ、やっと開いた入り口は、潜った瞬間に石壁で閉ざされる有様。そして、廊下向かいには四肢と頭部を失った人形が、侵入者たる「あなた」を睨むように立っていた。
その奇妙な古屋敷の「呪い」は、やがて「あなた」自身をも蝕んでいく…。屋敷各地に散らばった四肢を集め、人形を修復した瞬間、今度は「あなた」自身が人形と化したのだ…。40年前からこの屋敷で消息を絶った人々と同じく…。

DISCOLO(U)R DISCOLO(U)R

本作の特徴は、何といっても屋敷全てに敷き詰められた謎解きにあります。量のみならず難しさもかなり高めに仕上がっています。
何しろ、最初の「入り口を開ける謎」からして

  1. ナンバーロックで閉ざされた入り口と、その上に掛けられたメッセージボード
  2. メッセージボードには「8人の天使、その中の片翼の天使」という簡単なメッセージのみ
  3. やっと見つけた「片翼の天使」にも、ナンバーロックの番号は書かれていない
  4. 「片翼の天使」が持つヒントからナンバーロックの番号があるメモを見るために、更なる一手間とアイテムが必要となる
  5. 手に入れた番号から「正解」を割り出すために、今までのヒントを更に深堀りしないといけない

…と、書いているだけで気が遠くなる手順が必要になるのです。しかも、これは単なる最初の一歩。玄関をくぐってからは、玄関先とは比べ物にならないほど難しく手間がかかり、なおかつ危険な謎解きが、探偵たる「あなた」を襲うのです。
「そんな謎解き、攻略なしに解けるわけない」って!? 心配いりません。「あなた」には「探偵の頭脳」が付いているのです。玄関先で拾ったSherlockのバッチと共に。

画面右上に表示する「Hint」と書かれた「かの英国名探偵」のアイコンをクリックすると、いま目の前にある謎のヒントや次の目的地など、必要な情報を教えてくれます。ヒントは「完全な回答」レベルまで表示されるため、少なくとも「謎解きが分からなくて先に進めない」という事態は発生しない作りになっています。
作者がスクリプトを使ってまで懇切丁寧に作った要素であるため、遠慮なく頼りましょう。

話が中盤に入ると、先述のストーリー概要に示した通り、「あなた」は人形と化してしまいます。ストーリー上ではピンチですが、謎解き上では「人間の状態では行けなかった場所に行ける」チャンスでもあるのです。
人形モードでは浮かんで移動するため、今まで穴で閉ざされていた2階階段への道を飛び越せるようになります。逆に、人形の軽くて簡素な手では「スイッチを押す」「紙を拾って読む」「ドアの鍵を開ける」が精一杯。鍵以上の重いものを運んだり、「梯子の昇降」など細かく力のいる動作が必要な場合は、どうにかして人間に戻る必要があるのです。「人間と人形を切り替えるイベント」の発生にも、複雑な謎解きが必要なので、都度Sherlockバッチを頼っていきましょう。

話を進めれば進めるほど、この古屋敷に起きた悲しい事件の真相、そして「諸悪の根源」が明らかになってきます。「諸悪の根源」と言っても、実態は無力な人間。ホラーでよくある「追いかけっこ」は、本作には登場しません。
果たして、探偵たる「あなた」は全ての謎を解けるのでしょうか? そして、全ての真相を目にしてどのように「解決」するのでしょうか。その過程はまさに「推理サスペンス」。ぜひ、あなたも「探偵」となって、本作を楽しんでください。

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【 Lavender 】

Lavender
ジャンル [ 謎解きADV ]
作者 [ ClockworkPrince さま ]
容量・圧縮形式 [ 151MB・ZIP ]
製作ツール [ RPGツクール2003 ]
言語 [ 英語 ]
配布元 配布元

亜麻色の無垢な少女

森深くに高くそびえる塔。そこには2人の母娘が暮らしていた。娘のLavenderは、誕生日プレゼントとして綺麗な櫛を母からもらう。
早速、自分の髪を梳かそうと窓際に寄り添うものの、不運なことに、Lavenderはもらったばかりの櫛を窓の外に落としてしまう。
このままでは母に怒られる…そう判断したLavenderは、落とした櫛を取り戻すため、塔の外に出ることを決意したのであった。
そう、生まれて以来出ることを禁じられた塔の外へと…。

Lavender Lavender Lavender

本作は、平たく言えば「謎解き脱出ゲーム」。しかも、謎解きの割合がかなり高いゲームになっています。
Lavenderの住んでいる塔は、1階層ごとに特徴的な「謎」が仕掛けられています。
定期的に水をあげないと枯れてしまう花を、3つとも咲かせる謎…
4つの駒だけで解く詰めチェス…
お馴染み倉庫番…
これらの謎は、かなり難易度が高くなっています。言語の壁を差し引いてもです。言語の壁により更にヒントが分かりにくくなり、難易度は更に上昇します。
正直言って、私の言語力では、後半のポーションを作る謎が自力では解けませんでした。「Each limb grows one sharp blade」の訳を「クマの爪1本」と勘違いしていたのです。「各四肢に1本ずつの鋭い刃」…と言う意味であることを、先人の攻略動画を見るまで気づかなかったのです。

そして、本作には更に謎があります。各階を調べていると手に入る「Pink Hair」の存在です。ヒントの入った本棚・リセット用の紐スイッチ・何気ないオブジェクトまで、至る所に隠されている点から「真ENDに至るフラグ用アイテム」と見当はつくのですが、いったい「誰の髪」なのでしょうか。
そう、本作のストーリーは、暗喩している部分が多めになっています。オープニングで語られる「魔女に子供を奪われた母親」のお話、各階に飾られている絵画、1階の謎に使われている人形、至る所にストーリーの暗喩が入っています。
そのストーリーは、真ENDを見ても、その後のオマケ部屋を見ても、分からない箇所があるかもしれません。ここでも言語の壁が立ちふさがるからです。
本作は、謎解きもストーリーも、積極的にヒントを集めて考察する、そんな高難易度なアドベンチャーです。あなたも、ぜひ言語の壁を乗り越えて、この短く残酷な童話をお楽しみください。

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【 紅に染まれ 】

紅に染まれ
ジャンル [ ヤンデレホラーゲーム ]
作者 [ 皐月の夢 さま ]
容量・圧縮形式 [ 44MB・ZIP ]
製作ツール [ WOLF RPGエディター ]
言語 [ 日本語 ]
配布元 配布元

誰が誰に「病んで」いる…?

花ノ木(はなのき)このはには悩みがあった。彼氏である(ひいらぎ)天音(あまね)が突然消息を絶ってしまったのだ。学生の身分では大々的な捜索もできず、手をこまねいているばかりであった。
親友である峰明(みねあけ)夏月(かづき)や天音の家族とも相談を重ねているものの、事態は一向に進展せず、やきもきする日々を送っていた。
そんな天音は、実はある場所に監禁されていた。誘拐犯の正体も意図も分からず、こちらもやきもきする日々を狭く暗い部屋で送っていた。
果たして、天音を誘拐した犯人は!? タイトル画面で怪しい表情を見せるこのはの意図とは!? 真実の深くまで探らないと、きっとあなたは騙される…!

紅に染まれ

本作「紅に染まれ」は、今まで取り上げた皐月の夢 さまの作品と同じく、思春期の友情と愛憎をホラー味たっぷりでお届けする作品です。
そして、本作では、その中でも攻略が楽な部類に入ります。「親愛なる○○へ」のような細かい選択肢やフラグ立ては無く、1周20分未満で物語を味わえる掌編に仕上がっています。
ただし、「紅に染まれ」には4つのマルチエンドに分かれています。そのうち1つはゲームオーバー扱い、枝分かれのない物語でたどり着いた結末がもう1つのENDとなっています。では、残り2つはどうやって辿り着くのか…。
実は、本作にはクリア後に再び「初めから」を選ぶと閲覧できる「2周目」があります。1周目ではカットされた心情描写や、シーンの間にあった空白箇所の描写、そして選択肢や隠しルート(自由行動中にマップを動き回ればたどり着けるレベル)が追加されます。2周目になって初めて「紅に染まれ」の真相が分かる仕掛けになっています。
このは・夏月・天音の三角関係を、ホラー・ヤンデレ描写=暴力を交えて描いた作品だけに、その結末は(ベストエンドに分類される物でも)少なからぬ後味の悪さを残しています。今まで紹介してきた皐月の夢 さまの作品と同様、本作もホラー描写を伴う重い物語が好みの方にのみお勧めしたい作品です。

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【 散華鬼 】

散華鬼
ジャンル [ ほんのりダークな和風探索ゲーム ]
作者 [ にゅーとろん さま ]
容量・圧縮形式 [ 218MB・ZIP, ブラウザゲーム ]
製作ツール [ RPGツクールMZ ]
言語 [ 日本語 ]
備考 [ plicyでもプレイ可能 ]
配布元 配布元

「鬼」は恐怖であり、希望でもある。

人里離れた山奥に、一人の幼い訪問者があった。彼女の名は「つゆ」。麓の遊郭で禿を務める少女である。
彼女は、病に倒れた先輩を救うため、万病に効く薬草があるというこの山まで一人で来たのであった。
程なくして、彼女は山の案内人・ガクと出会う。図らずも「廓抜け」という大罪を犯してまで山を訪れたつゆに、親身に厳しく薬草を求める理由を問うガク。その問いかけの中で、つゆは「覚悟」を固めるのであった。
…そして、ほぼ時を同じくして、山にもう一人「客」が訪れるのであった。彼の目的とは…。

本作は、同じマップで2つの話がほぼ並行して進む、特異な構成の作品です。「2つ目の話」は、本来2周目以降に解放されるストーリーですが、「ふりーむ!」の紹介ページにも1枚だけ画像があるため、当サイトでも軽く触れておきます。
そして、本作の特徴として、「ゲームの攻略情報をゲーム内に完備。コンプリートも快適」と言う仕様になっています。メニュー内の「道中の出来事」にイベントの発動条件が、「物語」にイベント開放で発生するミニストーリーの条件が、余すところなく記載されているのです。
逆に言うと、ここに頼らずして物語の真相を探るのは至難です。大きなイベント分岐条件である[????]と隠されたパラメータ、そして経過時刻の条件は、「道中の出来事」「物語」を見ないと、存在すら気づかずにエンディングに行ってしまいます。

実際、私のプレイではしばらくの間「道中の出来事」に気付かず、「物語」を70%から埋めることができずにいました。「2つ目の話」の分岐条件に[????]以外にパラメータがあったことに、「道中の出来事」を見るまで気づかなかったのです。
それでも、物語を「一旦の結末」まで進めるのにかかる時間は10分未満。攻略に少々手間取る点があったとしても、コンプリートのかかる時間は1時間も掛かりません。
そして、物語に占める情報も、開放される「物語」も、「2つ目の話」の方が格段に高くなっています。「つゆの話」を一度最後まで進めたら、「2つ目の話」に進んでみることをお勧めいたします。つゆの覚悟を、「もう一人の主人公」、ガク、そして「薬草」の正体、過去、行く末を、本編だけでなく「物語」を全て解き明かして堪能いたしましょう。


(補足)
2023.06.28:plicyへのリンクを追加。

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