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■ Fanastasis

Fanastasis
作者 [ もさもさ さま・ている さま ]
ジャンル [ 探索RPG ]
容量・圧縮形式 [ 462MB・ZIP ]
製作ツール [ RPGツクールVX Ace ]
言語 [ 日本語 ]
配布元 ダウンロード先

(補足)
2023.12.16:現在の最新バージョンはVer1.17です。
2024.05.16:新要素、便利機能、見た目の変更などを追加した有料版「[DE:]Fanastasis」が発売中。(販売価格は各ストアページでご確認ください)

Fanastasis Fanastasis Fanastasis Fanastasis Fanastasis Fanastasis

レビュワーハマリ度グラフィック サウンド合計総合判定
ES 9 /10 7 /10 9 /10 51/60 B
赤松弥太郎 9 /10 9 /10 8 /10

 《 ES 》  ハマリ度:9 グラフィック:7 サウンド:9

魔界を彷徨う死者の群れ

本作「Fanastasis」に触れる前に、当サイトとして言及せざるを得ない作品が2作あります。「Nepheshel」「イストワール」です。
「隠し部屋探し」を醍醐味に置いた探索、体色によって強さを見分けるシンボルエンカウント、そして、魔法のみならず武器の属性まで選別が必要なタクティカルな戦闘。
ただし、「Fanastasis」の魅力はそれだけではありません。「ダークソウル」シリーズに例えた人もいるほど、濃く暗い世界観、探せば探すほどに明らかになっていく真相、ストーリー面でも「深い探索」が求められる仕掛けになっています。
ただし、世界を紐解く「探索」の難しさもまた高い作品です。

・戦闘難易度
「Nepheshel」も「イストワール」も、戦闘難易度の高さが語られる作品でした。マップ内にひしめく敵キャラに混じる体色の異なる強敵を回避する、これが基礎中の基礎として求められるスキルでした。
しかし、「Fanastasis」の戦闘難易度はそれ以上です。場所によっては「最弱のザコでも戦闘不能者が出る」レベルに強まったダンジョンすらあるのです。序盤で言うと、オークと殺人バチが出現する「王国洞窟」以降のマップでしょうか。
一部のマップでは「一定の法則に従って歩行する敵の動作を見切って回避する」「強力な魔物が監視しているルートは隠し通路で迂回できる」「戦闘を避けやすくする仕掛けがマップ内にある」など、工夫しがいのある、工夫しないと命とアイテムがいくらあっても足りない難易度設定になっています。

・アイテム制限
本作の激しい戦闘難易度にさらに拍車をかけるのが、「10個以下しか持ち歩けない」「[Battle]:戦闘時のみ使用可」「[Menu]:移動時のみ使用可」などのアイテム制限です。
基本中の基本であるHP回復アイテムからして、戦闘時のみ使用可能なハーブ類と、移動時のみ使用可能な「浄化のジェム」「治癒の軟膏」および食品で使い分けが必要になります。
効果の高いアイテムほど所持数制限は厳しくなります。ハーブ類の中で最下級の「ヒーリングハーブ」で6個まで、MenuでHP/MPを全回復できる「煮込みハンバーグ」だと1個しか持ち歩けません。
序盤だとやりくりの厳しさばかりが目立つこのシステムですが、少し話を進めて「理知の間」「創作者の厨房」が解放されると、途端にアイテムの使い勝手がレベルアップします。今まで使いどころのなかった「素材」を合成して、強力なアイテムを作成できるのです。
ただし、「創作者の厨房」は別方面で注意が必要です。素材は保管ゲートにある分も使用できますが、作った物を保管ゲートに直行させることはできません。一度に作成できるのはアイテム欄の所持制限数までなのです。
このシステムで最も困るのが、戦闘や宝箱で獲得したアイテムが所持制限を超えていた場合の処理。「持ちきれないので拾わない」処理はなかったため、「自動的に保管ゲートに移す」のか「雲散霧消する」のか分からないのです。ゲーム内にも説明書にも記載がありません。
3,4個しか持てない癖に、手に入る機会が多いが、店売りにできる時期は遅い「ワイン」や「はちみつ」などが「手に入れたつもりで捨てられていた」のならば、正直、血涙が出るほどに悔しいです。プレイヤー側の対策としては、拠点に戻るたびに保管ゲートに向かい、空きを作るしかありません。


(補足)
2021.02.15:保管ゲート右にある石板に「所持制限を超えたアイテムは、自動的に異空間倉庫に送られる」と記載されています。

・経験値稼ぎと分配
本作では戦闘を避ける立ち回りが重視されるバランスになっていますが、「速度・物量的に戦闘が避けられない」マップも多くあります。属性対策もアイテムや装備と多彩に実装されていますが、アイテムは先述の所持数制限があり、装備はほとんどが一点もの。勢い、経験値稼ぎで足踏みする場面が多々発生します。
本作は1レベル上がった時の強化幅も大きくなっています。逆に言うと、入ったばかりの仲間はレベル差がありすぎて、お試し戦闘にすら出せないほど弱いのです。
本作に限っては、控えキャラのレベルを上げられる「魂宴の間」が解放されるまでは、パーティメンバーを絞って攻略する方針をおススメします。弱点属性を突ける初期レベルのキャラより、序盤から育ててきたキャラを使う方が楽になるバランスです。特に、序盤のキャラは使い道が分かりやすく、後半になるにつれて「使い方」が分からないと実力を発揮できない尖ったキャラばかりになります。序盤のキャラほど装備のバリエーションも広いため、属性対策は装備で対応しましょう。

本作「Fanastasis」は、良くも悪くも「迷いやすい」探索RPGです。特に辛いのが、「ちょうどいい強さの敵が見当たらなくなった」あたりです。本作はダンジョンごと・フロアごとのエネミーレベルの差が広いバランスになっています。最初のダンジョン「海岸洞窟」から数マップで行ける「海の道」は、入り口をふさぐ強敵「クラーケン」がギリギリ倒せるレベルでは手も足も出ないほど、モンスターも仕掛けも強力なダンジョンです。そこまでの道中で手に入れたオーブで開くダンジョンのどこを攻略できるか、探り探りの牛歩を要するのです。
場合によっては、先述した「王国洞窟」のように、「次の転送結界まで戦闘を避けて突き進む場面」「オーブで開放したダンジョンよりも、そこから地続きの別のダンジョンの方が敵が弱い場面」も存在します。
そのためにも、宝箱の回収と、そこに繋がる隠し扉の探索は重要です。「Fanastasis」の隠し通路は、かなり見分けるのが難しくなっています。「Nepheshel」「イストワール」序盤のような「あからさまに模様の違う壁」はほとんどありません。「一マスだけ植生が異なる地面(罠の場合もある)」「側面に影が無い壁」「くぼんだ壁のごく一部」「小マップで見ないと他と区別がつかない壁」「逆側からたどって初めて分かる隠し扉」など、序盤から見分けづらい通路ばかりです。
攻略Wikiも流石にマップ画面は掲載されていません。本作の攻略は、プレイヤーたるあなた自身の目と手で探る他ないのです。
そのための試金石として「王国洞窟」はかなり厳しく指導してくれます。事実、私も「オークのたまり場は隠し通路で迂回できる」「ほとんどの蜂は木の周りをグルグル動くだけなので、回転方向を見計らって回避する」と赤松さんに教えていただくまで、「王国洞窟」で詰まっていました。

 《 赤松弥太郎 》  ハマリ度:9 グラフィック:9 サウンド:8

誰の為か 何の為の夢か

 プレイ時間65時間程で、すべてのエンディングを見ました。
 残念ながら最終盤で攻略情報を見てしまいましたが、おかげでアイテム図鑑コンプもできたし、だいたい満足できました。

 さて、探索系RPGというと、すぐに「ネフェ・イスト系」とひとくくりにしがちな昨今ですが。
 確かに探索系RPGの歴史において、の影響は絶大なものがありますが、しかしNepheshelは探索系RPGの開祖ではありません。
 ボクが度々取り上げる「禁術と呼ばれる術」はNepheshelの5年前の作品、そしてgezigeziさんがプレイしていないと明言している以上、直接的なつながりは無いのですが、そうとは思えないほどシステムが似通っています。
 探索系RPGのもつ振れ幅、すなわち可能性を確認するためにも、こうした古典と本作を比較するのは、有意義かと思います。
 系譜としては亜流になりますけど、魔王物語物語も入れてみましょうかね。

 特に本作、ネフェ・イストというより、禁術に先祖返りしているような部分もあるから、どんどん比較していきたいですね。
 ……え? 禁術、プレイしたこと無いんですか?
 なら、今もダウンロードできるから、すぐにプレイして……まあ23年前のゲームだから、最新の環境だと動かなかったり、カクついたり、グラフィック崩れたりするかもだけど……システムが使いづらいのはツクール95のせいだから、我慢して……なんならプレイ動画とかもあるし……
 わかってます。わかってますよ。
 ここは年寄りの責任として、「禁術と呼ばれる術」がどんなゲームなのか、当時の背景を含めてちょっとだけ解説します。

禁術と呼ばれる術
 1998年公開のフリーゲーム。RPGツクール95製。
 RPGツクール95には大小多種多様な問題点があり、中でも戦闘の底の浅さは早々にわかってしまったため、ストーリーに注力したRPGやアドベンチャー、またはアクションやパズル等、バトルに重きを置かないジャンルに人気が集まる傾向が強かった。
 中でも「宝探し」は人気ジャンルの1つで、本作の他にも複数人気作はあったのだが、
  • 何重にも折り畳まれた、見た目以上に広大なマップ。
    隠し通路や隠し部屋には必ずなにがしかの手がかりがあり、探索意欲を刺激する。
  • ランクをS~Eまでのアルファベットで表示する、視覚に訴えすぎるシンボルエンカウント。
    アルファベットそのものが襲いかかるダンジョンまである。
  • 隠し宝箱から手に入る、あまりにも強力な装備品の数々。魔法ダメージ90%カットなんてものまである。
 以上の点は本作の特徴であり、敵シンボルをできる限り避けて強力な装備を手に入れ、その装備で強敵を打破する、という探索系RPGの基本スタイルを確立した。

 シナリオは、オーソドックスな異世界転生もの。奇をてらわない、堅実なストーリーラインである。
 交通事故に遭い、記憶喪失で異世界転生する、というフォーマットは当時の時点で使い古されたものではあった。
 元の世界に戻ることを目的に行動し、エンディングでちゃんと元の世界に戻っている点が、今から見ると懐かしく思えるところかも。

 ほら、なんか似てません? 記憶喪失とか、転生とか、禁術とかの単語が共通してるし!
 いやいや、Nepheshelの主人公だって記憶喪失だし。便利なんですよ記憶喪失って、プレイヤーと認識レベルを揃えられるから。
 雑な箇条書きマジックやってないで、さっさと本題に入りましょ。

◆隠し扉感知技能と回収率表示の撤廃

 Nepheshelならセンスオブワンダー、イストワールなら隙間風の匂い。
 そしてNepheshelのリン、イストワールの成長読本、まももの戦績、おまけで禁術の存在の書のことです。

 せっかく作った隠し宝箱なのだから、みんなに存在を知ってもらいたい、というのは、作者としては当然の発想に思えます。
 上記の機能は、おそらくそんな気持ちで実装されたものでしょう。
 しかしこれは、プレイヤーにとっては知らなくてもいいことを知ってしまうリスクもあるものでした。
 身に覚えがありませんか? 最後の一個だけ見つからなくて右往左往した、あの苛立ち。
 やっと見つけた隠し宝箱に、「そんなの気付くかよ!」と苛立ちをぶつけたことも、あったんじゃないですか?

 本作では、そうした隠し宝箱を集める圧力がほとんどありません。
 一応、アイテム図鑑コンプで記念品くらいはもらえますが、それだけ。位置を示してくれるものは何もありません。
 これは、「感知機能なんかなくても、マップをよく見れば気付きますよ」という宣言でもあるわけで。
 そしてその宣言を、きっちりと実行しているのです。
 攻略情報を確認したところ、ボクが見落としていた箇所は、後回しにしたまま忘れていたり、取った後でリセットしたのに取り忘れていたり、なぜか見落としていたり、という場所ばかりでした。
 一部手がかりの無い隠し階段・隠し扉もありますが、それは全て逆側から開けることを想定している場所です。
 他はすべて、残留思念がヒントを出していたり、見れば気付く仕掛けが必ずあります。

 とはいえ、広大なマップから、特定のアイテムを探し出すのは、とても困難なのですが。
 見落としたアイテムに気付くのは、だいたい禁忌契約、つまりアイテム合成がきっかけです。
 Nepheshel以来の定番システムですが、多くの場合、要求されるのが一品ものアイテムなので、どうしても今までのダンジョンを駆けずり回ることになるんですよね。
 救いは、本作の合成アイテムの性能が控えめなこと。
 シナジーを起こしたり、極端にステータスが上がるような合成はないので、取り逃がしても直接戦局を左右することは少なそうです。

◆時限アイテムの撤廃

 これも過去、コレクターたちを苦しませてきた要素でした。
 なんだよ存在の書って! 読んだ時点でもう回収不能になってるアイテムってどういうことだよ! もう一周しろってか!?
 Nepheshelのあの最強装備も、開発陣がテストしていないという厳しい時限条件があったことを忘れてはいけません。
 イストワールのあの剣といい、誠に度しがたい。

 こうした古典をプレイしてきた人なら、自分は同じ轍を踏むまいと思うのも、さもありなん。
 本作には、時限アイテムは一切ありません。
 ボスのドロップ率は100%で固定されており、ザコ敵が装備をドロップすることはありません。
 合成や調理・調合の素材アイテムも、ザコ敵のドロップを狙わずとも、宝箱等で全種類1つずつ作るのに十分な数揃います。
 合成については、使用頻度は低いだろうに、有料で合成前のアイテムに戻すオプションまであります。
 取り戻せないのは、ストーリー進行上使用する必要がある、イベント専用のアイテムだけです。

◆敵とは戦わなくてもいい

 となると、敵と戦う意味があるのか?
 はい、本作は敵と戦う動機がとても薄いのです。

 探索RPGにおける戦闘の位置づけも、作品毎に大きな振り幅があるところです。
 禁術の場合、エンカウントしたら逃げられないという仕様のせいで、障害としての意味合いが強いです。
 適正ランクより上のランクの敵と当たってしまったら、なすすべなく殺されます。
 その代わり、どこでもセーブできます。マップでドラクエ式の隊列を組むため、味方を盾として使えば、ある程度エンカウント回避もできます。
 とはいえ、敵シンボルは倒すと二度と復活せず、経験値を得る手段がシンボルエンカウント以外とても限定されているため、適正ランクより下の敵シンボルはとりあえず全殺しするのが基本行動です。

 ツールがツクール2000になり、耐性パズルが組めるようになったNepheshelやイストワールでも、基本はそう変わりません。
 逃げられるようになったこと、特にイストワールで、逃走成功時に敵シンボルの当たり判定が消えるようになったのが、一番大きな変化でしょうか。
 しかし逃走成功率自体が低く、ランクが上の敵に当たってしまったら、運を天に任せるしかありません。
 敵シンボルの追尾性能も上がっており、気を抜くとあっという間に囲まれてしまいます。
 低レベルで高ランクのダンジョンに突入、セーブポイントからの長い道のりを、可能な限りエンカウントを回避しながら装備品を回収するプレイは、既にアクションゲームに片脚突っ込んでいます。
 経験値稼ぎや合成素材回収のため自分からエンカウントした場合を除いて、エンカウントしてしまったので、仕方なく戦うというのが、プレイヤーの本音でしょう。
 比較するとまももの、エンカウント回避困難かつ逃走不可能、ランクが低い敵でも油断すると大惨事になるエンカウントシステムは、相当に異色とわかります。
 戦闘は避けられないものとして、それをいかに切り抜けるか、という戦略と戦術が試されます。

 本作、戦闘も十分に楽しいと思いますよ。
 60時間に及ぶ長編でも、きちんと敵ごとに個性があり、どの敵から対処するか考える面白さがあります。
 でも、戦闘を楽しめるのも、避けようと思えば避けられるという余裕があるからこそです。
 敵の追尾性能は、あってもとても低く、移動パターンもはっきりしています。
 斜め移動もうまく使えばエンカウント避けに使えるし、今まで上げた作品の中でエンカウント回避は一番楽じゃないかな。
 さらに本作、逃走率の上昇も比較的お手軽でして。
 敏捷が1.5倍になる装備があるので、装備を敏捷上昇だけに集中させれば、中盤以降はノーダメージ撤退が安定します。戦闘はまったくできなくなりますけどね。

 さらに本作、ストーリー進行上の強制戦闘がとても少ない。
 道を塞いでいるように見える敵でも、隠し通路や進行ルート次第で回避できることが多く、噂によればエンディングまでに必要なバトルは20回足らずだとか。
 とどめに、敵を倒さなくても経験値が得られるシステムまであります。
 レベルを上げればごり押しできるバランスなので、レベル上げが大好きな人はどんどん戦って蹂躙すればいいのですが。
 しかし最終盤、わざわざ適正レベルまでレベルを下げる施設が登場するので、想定された楽しみ方ではなさそうです。

 ボス敵との戦いは、むしろストーリーやキャラクターの補完が主目的です。
 そのボスに対応する仲間を連れて、撃破した場所を調べると、ボス敵が人間だった頃の思い出が聞けるかもしれません。
 意外なところで接点があったりして、複雑な人間関係を織りなしています。

◆キャラクターの掘り下げと運用のリンク

 Nepheshelは、キャラクターの掘り下げという意味でも、とても革新的な作品でした。
 各地に散らばる書の断片を集めることで、キャラクターの過去が次第に判明する、というスタイルは、Nepheshelが世に広めたものの中でも最大級の影響があったのではないでしょうか。
 その分イベントは短く端的で、プレイヤー自身が主体的に読み解こうとしてはじめて理解できるストーリーだからこそ、印象に残るのです。
 仲間は3人と少ないながらも、キャラクター性能ははっきりと差別化されています。
 中盤まで(人によってはもっと先まで)主人公 + 仲間1人の編成を常時切り替えながら進行するので、どのキャラをどの状況で前に出すか、考える面白さがある……
 といっても、その時点では強制戦闘もさほど多くないので、悩む場面は多くないのですが。

 イストワールは、仲間の数は主人公 + 7人 + αと多いし、操作キャラとしての個性もより際立ちました。
 だからこそ、仲間2人を決定するとクリアまで変更できない、あの仕様がもったいない。
 初見プレイで20時間を越えるRPGを周回してまでプレイする人は、決して多くは無いのです。
 禁術とまももの場合は、ストーリーによってメンバーが固定されている安心感はありますが、やっぱり戦略は自分で決めたいところですよね。

 こうした歴史を振り返れば、いずみさんの「アクター預かり所」がどれだけ神プラグインか、よくわかります。
 本作の仲間は、主人公 + 17人。拠点で編成可能です。
 これだけ多いとキャラ被りも心配になりますが、操作面だけで見ても、十分差別化できています。
 大まかにタンク・ファイター・メイジ・サポート・ヒーラーに分類されていますが、同じ役割でも、キャラクター毎に立ち回りは大きく変わります。
 ひとくちにタンクと言っても、HPで攻撃を受けるのか、充実した装備とスキルで防御するのか、あるいは回避特化なのか。状況に対する得意不得意もまったく異なります。

 とは言っても、これだけの人数を使いこなすことは、そうそうできないわけで。
 傾向として、終盤になるほど性能が尖った、使いづらい仲間が加入するので、なかなか使いこなせません。
 ボクのような、レベルは均等に上げなくては、という強迫観念の持ち主でもなければ、キャラごとのレベル差は開くのが自然です。
 そこで中盤開放されるのが、魂宴の間。
 アイテム「魂の塊」を1つ消費することで仲間のレベルを1つ、5つ消費すれば主人公のレベル - 1まで一気に上げられます。
 特定のボスを倒すために、この仲間の力が欲しい! と思った時、魂の塊さえ持っていれば即戦力としていつでも投入できるのです。

 キャラクター毎のストーリーを読み解くことで、操作キャラとしても強化される点も見逃せません。
 仲間の生い立ちから臨終までの記憶は、4つの断片となりマップに散らばっています。
 4つを全て集めることで、仲間は完全な状態となり、強力な技能を1つ習得します。
 これで運用が変わるキャラもいますし、そうでなくても、キャラクターの掘り下げはしておきたいところですよね。

 ただ、ここでも問題になるのが、回収の難しさ。
 記憶は、だいたい攻略ルートに沿って落ちているのですが、本作はメインルートだけでも広大です。
 ヒントはとても乏しいです。前後の記憶の流れから位置が特定できるか、というと、そうでも無い場合も多いです。臨終の記憶が遺体から離れていることもザラにあります。
 戦局を左右することがわかっているので、これについては探さずにはいられないんですよ。
 せめて、臨終の記憶だけは仲間にした時から持っていて、他の記憶の位置が順々に推理できるようにはならなかったかな、と思います。

◆ストーリー: この世界に神はいない

 ボクが一番書きたかったのはここです。
 ネフェ・イストという流れだけ見ていると、本作のストーリーはまったく異質に感じるだろうからです。

 そう、Nepheshelとイストワールは、神の物語でした。
 造物主と被造物との愛と葛藤の物語であり、そこからの超克でした。
 しかし、Nepheshelの最大の問題点は、このメインストーリーにあると、ボクはここで断言してしまいます。
 ラスボスの正体を示唆するのは、ラストフロアの演出とラスボス自身の名前だけ。
 それを理解した上で、非常に簡潔なあのエンディングから、主人公たちのその後を読み取れ、というのは、あまりにも厳しいものがあります。
 ボクも今まで色々とゲームをプレイしてきましたが、伝え方のせいで、ここまで難解になっているストーリーは、他にそうそう思いつきません。
 本当にもったいない話なんですよね。

 イストワールはその点、館主とは何者か、そして主人公は何者か、と段階を追ってプレイヤーに謎を解かせていくので、とても理解しやすくなっています。
 それ以降の探索系RPGもなんとなく、メタフィクションの構造をとることが多くなったのも、主にイストワールの功績でしょう。
 メタフィクションにも長所短所ありますが、プレイヤーと世界の距離が遠くなるという欠点はあります。
 なぜこういう世界なのか、と考えた時、「そういう設定だから」という逃げ道が生まれてしまうのです。
 そこにプレイヤーと作者の関係が頭をかすめてしまうと、没入感は間違いなく損なわれます。
 ボクとしては、探索RPGにももっと様々な可能性があっていいと思うのです。
 禁術を見てもわかるとおり、探索RPGがメタフィクションである必要は、本来ないんですから。

 本作の世界に神はいません。
 より正確に言うと、神が居ようと居まいと、人間は今を生きなければならない、それだけなのです。
 ただ生きようともがいて、野望を抱いて、野望と野望、欲望と欲望がぶつかり合った結果が、この滅びかけた世界です。
 神は何かをしでかしたわけでも無く、何をしてくれるわけでもありません。人間が自分の尻を拭わなければならないのです。

 主人公も、決してこの事態と無関係ではありません。
 というか、ぶっちゃけ悪です。
 ……これ、別にネタバレじゃ無いよね?
 だって、肩書きが「リアニメイター」、本人の意思にかかわらず死人を使役し、悪魔と契約して装備や技能を手に入れてるんですよ?
 どこをどう見たって悪じゃないですか。

 プレイヤーという狂気を引き連れ、そもそも生前から半ば以上狂気に取り憑かれていた主人公の精神構造を、理解することは甚だ困難なのですが。
 しかしそれでも、彼の足跡を辿れば、彼は彼なりに、懸命に生きようとしていたことは、十分に伝わるはずです。
 たくさんの人々の、色々なやらかしのせいで、世界はここまで深刻な状況に陥ってしまいました。
 そのきっかけは、とても小さな、ほんの少しの掛け違いだったのです。
 最終的に下した決断は、とても擁護できない、人倫に反した、明らかに誤ったものでした。
 でも、人間は、誰だって完璧ではないでしょう?

 人間だけではありません。
 本作に登場する、異種族も、悪魔も、誰一人として完璧なものは存在しません。
 少しだけ、人間よりも力が強かったり、寿命が長かったりするだけで、何も超越した存在ではありません。
 誰も皆、自分たちが生きのびていくために、欲望を持ち、野望を抱いて、懸命に生きているだけです。
 どんなに世界が深刻な状況であっても、絶望しているだけで過ぎていくような時間はありません。
 それでも日々の生活はあって、日々の幸せや悦びも、どこかにきっとあるのです。

 そんな世界に、今さら死人である主人公が、何をしようというのか?
 彼は何も語ろうとはしません。
 しかし彼の足取りからは、ある方向性が伝わってきます。
 彼は生きている人間と、ほとんど関わろうとしません。
 王都アルカムは未だ健在であり、多くの人々が生活しているのですが、彼はアルカムに足を踏み入れることがありません。
 ただただ魔物が闊歩する土地を歩き続けるのです。

 本作で冒険を終えた時のあの感慨は、人間の物語だからこそのものだと思います。

 決して斬新さのある作品ではありませんが、丁寧に積み上げられ、練り上げられた作品です。
 本文で触れなかったところも含めて評点しましょう。

ハマリ度 : 9 / 10
 長いプレイ時間の中で、常に新しい驚きを用意してくれる、エンターテイメント性たっぷりのダンジョンの仕掛けがなんと言っても魅力。つらい時もあるが、不快であることはほとんど無い。
 ボス戦の緊張感も見事。完全耐性装備が全員分揃うことがなく、どこかしら耐性に穴が空いた状態で戦わなければならないため、戦術が試される。優秀な装備で殴る、探索型RPGの伝統とバトルの面白さの両立という課題に対する、1つの答えになっている。
 気になるのは、隠し通路や隠し部屋を探す文化がない人に対して、本作の示唆や誘導ははたして十分かという点。
 隠された宝の存在を台詞やチュートリアルで明示した禁術、Nepheshel、イストワールと比べ、本作はさらに台詞の量が少なく、「隠し通路や隠し扉が沢山あります」という記述は説明書にしかない。かといってプレイヤーに気付かせるきっかけにも乏しい。カザッフを仲間に加えるまでのチュートリアル期間、必要になる隠し部屋はロバート撃破後と海の祠の2つだが、本作の隠し部屋の文法を学ぶには簡単すぎる部類。
 探索RPGを「わかっている人」だけをターゲットにしていた可能性は高いが、知識を前提とする作りが、一見さんを誘いにくくしてしまっている。工夫次第でもう少し誘導できた気がする。
グラフィック : 9 / 10
 マップ作りこそ探索RPGの肝。その点で本作のマップ作りは群を抜いて丁寧。注意して見ると違和感に気付く、ちょうど良い塩梅に仕上がっている。
 湿地帯の宝物庫だけは、とても厳しかった。必須の謎解きではないから、わかっていてもうっかり失敗するゾーンを狙ったのだろうが、人と環境によっては見分けるのが困難になるゾーンでもある。そこまでしなくても十分楽しめる仕掛けだったはず。
サウンド : 8 / 10
 全100曲に及ぶ楽曲は、作中でいつか開放されるサウンドモードでクレジットと使用箇所が確認できる。有名どころの安定した選曲。
 ピッチ変更の多用は、曲そのものの良さを聞きたいボクとしてはいいと思えない。不気味さを出したかったのかも知れないが、特に声入りの楽曲の場合、気持ち悪さ、もどかしさの方が先立つ。

 本当にあっという間の65時間でした。まったく退屈しない、楽しい時間を過ごせました。
 過去の伝統とかどうでもいいので、探索系RPGをまったく知らない人でも、ぜひぜひプレイしてほしい作品です。

 このあたりを押さえておけば、きっといいことがありますよ!

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